【ネタバレ注意】この小説はよう実2年生編第10巻「生存と脱落の特別試験」のネタバレが含まれています。ネタバレが嫌な人はブラウザバックしましょう。

 内容は特別試験が終わった後の坂柳さん(10巻最終ページの続き)です。

 見やすさ優先で常体で書いています。

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無くしたもの

 綾小路くんと別れた後、私は寄り道をせず寮に帰った。

いつもと何も変わらない自分の部屋。帰る間際に遠隔で暖房をいれていたので今のままでは少し暑い。

コートを脱ぎ、一息つくために紅茶を淹れ、出来上がった紅茶を飲む。何も変わらない、いつもの日常。何も、変わらない……

 

 『悪いけどあんたとはここまで。悪いけど私はもうこの学校の生徒じゃないし、面倒を見る必要もないでしょ?』

 

 「………はぁ」

 

 真澄さんが退学した。それも私のせいで。

その事実でため息がでた。今更後悔しても遅いが、やはり考えてしまう。

 

 あの時までの私は真澄さんは代わりなんていくらでもいる人間だと思っていた。だからくじ引きで退学者を決めようとしていたのだろう。

しかし5分の1、4分の1、3分の1……遂には2分の1で退学になるところまでいき、挙句の果てには貧乏くじを引いてしまった。

今考えると、あのとき私が山村さんを退学させようとしたのは真澄さんが退学することを無意識のうちに嫌がっていたからかもしれない。 

 

 『何か用?』

 

 真澄さんとの出会い方はあまり良いものではなかっただろう。万引きしていたところを脅したのだから。まあ、彼女は脅し程度で屈する人ではなかったが。

 

 『何やってんの』

 

 1時間もしない前、真澄さんは転んだ私をいつものように抱き起こしてくれた。しかし、いなくなってしまった以上、もう2度とそのようなことはしてくれない。

 ため息はついていたが、優しく起こしてくれた。思えば介抱すること以外でも、いつも口では文句を言いながらもお願いしたことはきちんとやってくれた。偵察や見張りなど、混合合宿や無人島では身の回りのことも手伝ってもらった記憶がある。

 

 

 ポトッ

 

 

 「………え?」

 

 何処からか手の上に水が落ちてきた。一体どこからだろうか。

 

 「わた……し…?」

 

 辺りを見渡そうとして一瞬映った鏡の中の自分が、目から涙をこぼしている。

泣いていたのだ。この私が、家族でもない人のことで。

 

 「ふ…ふふふ……」

 

 ベットに寝転ぶ。そして再び辺りを見渡し始めた。

 

 

 ___このぬいぐるみはたまたま行ったゲームセンターで真澄さんがとってくれたもの。

 

 

 あのマグカップは真澄さんが部屋に来た時によく使っていたもの。

 

 

 あれは、これは、それは……

 

 

 「……っ、ぅ……」

 

 綾小路くんと話して自覚した通り、私は真澄さんのことを友人だと考えていた。

 

 

 ____もっと、真澄さんと喋りたかった。

 

 

 

 ____まだ…真澄さんと一緒にいたかった。

 

 

 

 ____卒業まで……隣にいてほしかった。

 

 

 「…あ、ぅあ……!」

 

 

 しかし、それはもう叶わない。

 

 無くしたものは、二度と戻らないのだから。

 

 

 

_____

 

 

 

 どのくらい泣いただろうか。そんなことを考えながら起き上がる。

淹れた紅茶はもう冷めていたが、泣いて出た水分を補給するために飲む。

 

 ぬるく、そして少ししょっぱく感じた。涙も混ざっていたのだろうか。 

 

 「……失った人は戻ってきません」

 

 どれだけ祈っても無理なものは無理だ。友達だと思ったこともあって現実逃避したくなる。

 

 「でも、私は逃げるわけにはいかない」

 

 

 ___強くならねば

 

 

 一之瀬さんや龍園くん、そして綾小路くんだろうと。

 

 誰が相手でも勝てるようになるために。

 

 ………もう、私が悲しまないために。

 

 

 『クラスの裏切った奴には必ず同じ道を辿らせて』

 

 

 「……まずは約束を果たしましょう」

 

 裏切り者……橋本くんの始末。二人きりになって強姦の疑いでもさせれば達成できるだろうが、そんな生ぬるいことでは終わらせない。

 

 もっと残酷で、無慈悲な形で。彼の全てを否定して退学させる。

 

 スマホのアルバムを開く。いつの日かに撮った私と真澄さんとの2ショット写真。真澄さんは相変わらず不愛想な表情だったが、今となっては愛しく感じる。

 

 

 私はこの気持ちをいつでも思い出せるように、その写真を壁紙に設定した。

 

 




解釈違いとか文字数が少ないとか思ったらごめんね

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