あずさが演説を始めた時のこと。
「中条先輩、大丈夫そうだね」
「あれたけ練習したんだもの、きっと大丈夫だよ」
とのび太とドラえもんはあずさの演説を聞いていた。するとそこに
───ガタンッ!
「「えっ?」」
背後から大きな物音が聞こえ振り向くと大きなカプセルが置かれていた。
「なに、これ?」
「未来デパートのカプセルだ!」
「・・・・ドラえもん、また何か頼んでたの?」
「いや何も頼んでないよ、と言うか頼んでたとしても家に配送してもらうさ」
だよね。とのび太は返す。
何が届いたのかと気になり近づくとカプセルが開き、中に入っていた物が起き上がる。その姿を見たのび太は驚愕し、後退りを始めた。
「な、ななななっ、なんでっ!?」
「・・・・・あれ?」
中に入っていたのはなんと女の子。緑の髪に大きなリボン、黄色いワンピース姿、顔立ちの整った女の子だった。
「ロ、ロロロ、ロボ子ちゃん!?」
その名もロボ子。嘗てのび太の為にドラえもんがレンタルしてきたトモダチロボットなのだ。
「・・・・・あっ!のび太さん!」
「な、なんでこんな所にロボ子ちゃんが来てるの!?」
「知らないよ!僕が聞きたいくらいだ!」
のび太とドラえもんはお互いに訳が分からないと言い合いとてつもなく焦っている事が垣間見える。その理由は
「のび太さん・・・・私以外のロボットとなんで喋っているんですか・・・・っ!」
そう、彼女はものすごく嫉妬深い。性別は疎か種族問わず話したり相手にしているだけで嫉妬全開な目で睨む。最終的にドラえもんが緊急停止させて未来へ返した、はずだったのだがどういう訳かこの場にいる。
そして今も尚ロボ子はのび太と話をしているドラえもんに嫉妬全開で睨みを効かせている。
ロボ子はカプセルから立ち上がるとじりじりとのび太ににじり寄る。のび太は後退りしていく、しかしドラえもんから視線を外したのが裏目に出たのかドラえもんはこっそりロボ子の背後に周り、ロボ子の緊急停止装置のリボンを引っ張ろうと飛びついた!
「もらった!」
「ふん!」
「あが!?」
左手を背後に回してドラえもんの顔面を鷲掴みしそのまま放り投げた。
「うわぁぁぁぁ!!!?」
ドラえもんは放物線を描きながら下手の方へ落ちていく、そして床に頭を突っ込んでしまい身動きが取れないでいた。
「ドラえもーーん!っ!!」
「ふんっ!」
ドカァァァン!!
「うわぁぁぁぁ!!」
のび太はロボ子のパワーと迫力に怖気付きその場から逃げ出した。
そして今、突然演壇の上手から飛び出してきたドラえもんとのび太に驚く生徒達。ドラえもんが床に頭を突っ込んでいる所には演説中だったあずさが心配しながらドラえもんのお腹辺りを持って床から頭を引っ張り出そうとしている。
そしてのび太はロボ子に追いかけられており全力で逃げている。
状況が飲み込めていない他の風紀委員達、しかしのび太の叫び声でなんとか正気を取り戻した数人が魔法でロボ子を止めようとした。
「止まれ!」
「動くな!」
CADを操作して加重系の魔法でロボ子を拘束しようとする。
「ッ!」
ロボ子は一時的に止まった。この時かけた重力はおおよそ200kg程で普通ならまともに動けなくなるような重力なのだが・・・・
パリンッ!
「嘘だろ!?」
「かなりの重力をかけたはずなのに!!」
「ロボ子ちゃんのパワーは100万馬力なんですぅぅ!!」
「「空母かっ!!」」
そうツッコム2人だったが一瞬でもロボ子から目を離したのが良くなかった。その隙にロボ子は2人の風紀委員の胸ぐらをつかみ軽々と持ち上げてどこかのオー〇よろしく、ヌンチャクのように振り回す。何度か地面に叩きつけた後ポイッと投げ捨てる。
これは不味いぞと他の風紀委員達も集まり始め、どうにかロボ子を止めようとするも100万馬力の前では全てが無力化されてしまう。
「あわわわ・・・・ど、どうしよう・・・・・トンッ、あっ、ごめんなさ・・・・い・・・・・っ!!?」
のび太は後退りすると誰かにぶつかった瞬間のび太の背筋に冷たいものが走り、振り返る。そこには・・・・
「・・・・・」ゴゴゴッ
「み、深雪、ちゃん?」
笑顔(怒)のままのび太の前に立つ深雪だった。流石ののび太でも今の深雪が怒っているのには気がついているが何故怒っているのかが分からなかった。
何も言ってこないのがのび太の不安を煽るのには充分だった。
「・・・・・のび太君・・・・随分可愛い子ですね・・・・私にも紹介して、頂けますか・・・・?」
「み、深雪ちゃん?な、なんだか、ロボ子ちゃんみたくなって トンッ・・・・えっ?」
深雪の迫力に押され徐々に後退りする。するとまた誰かとぶつかった。もしかしたらロボ子を止めている風紀委員の誰かとぶつかったのかもしれないと思い振り返る。そこには・・・・
「っ〜〜〜〜〜〜!!」
「ぎゃぁぁぁ!!ろ、ろ、ロボ子ちゃん!!?」
風紀委員が止めているはずのロボ子がいた。
「随分綺麗な子ですね〜〜っ!私にも紹介して、頂けますか・・・・!!?」
正しく前門の
「ど、どうしよう・・・・た、達也君!」
近くにまで来ていた達也に助けを求める。達也も現状が不味いことだってことは理解していた為直ぐに深雪を止めようとした。
「おい、みゆk「お兄様」っ!?」
「『そこで、待機していてください』」
「は、はい・・・・」
「達也君!?」
達也は深雪の『命令』には逆らえない。だから達也はその場で待機せざるを得ないのだった。頼みの綱の達也が無力化され再びピンチ、今度は真由美、摩利、服部の方へ目を向けると3人とも目を逸らした。
「なんで目を逸らすんですか!」
「いや、だって、ねぇ・・・・」
「そうだな、あれだ。夫婦喧嘩は犬も食わない的な?」
「・・・・すまない野比」
「最後のが1番傷つく!もうこうなったら!」
もうなりふり構っていられなくなったのか行動に集まっていた生徒達に視線を向け助けを求める。しかしその全員が目を逸らした。
「さっきまで喧嘩してたよねぇ!?なんでこんな時は息合ってるの!!?」
『そんな地獄に首突っ込みたくない!』
「wwww」
約一名を除きほぼ全ての生徒がこの場から離れたいと一身に願っていた。
その頃あずさはドラえもんをなんとか助け出そうと必死にドラえもんの体を引っ張っていた。
「ふぬぬぬぬ〜!!」
『いたたたた!も、もちょっと優しく!』
「無理言わないでー!」
ぐぐぐ〜〜〜スポンッ!
「「うわぁ!」」
「はぁはぁ、や、やっと抜けた・・・・」
と安堵するがあずさはそうではなかった、なぜならドラえもんを助けている横目でのび太達の騒ぎを見ていたからだ。
「ど、ドラちゃん!あ、あれ!あれ何とかなりませんか!?」
「あれって・・・・・なにあれ!?」
ようやく現状を理解できたドラえもん、あずさはドラえもんの肩を揺らしながらどうにかしてくれと泣きながら頼み込む。
「な、何とかって・・・・えっと、うーんと・・・・」
何とかしようとする為にポケットの中を探す。
「んーこれならどうかな!テッテレー『なりきりキャプテンハット』!!はい、これ被って!」
とあずさになりきりキャプテンハットを被せてあずさを火中のど真ん中に放り投げた。
ふぎゅ!と顔から落っこちたあずさは顔を押さえる。
「「(ↂ⃙⃙⃚_ↂ⃙⃙⃚)」」
「ひぃっ!?」
「なんですか貴女・・・・まさか貴女ものび太君を取るつもり?」
「中条先輩、今、取り込み中ですので、どこかへ行っていただけませんか?」
「ひぇぇぇぇ、ど、ドラちゃん!!」
「大丈夫!!船長の命令は絶対だから!!」
「め、命令って・・・・」
「「・・・・・」」ゴゴゴゴ!
「む、無理ですぅぅぅぅ!!」
こんな状況自分にはどうにも出来ないと嘆く
「中条先輩助けてぇぇぇぇ!!」
「っ!〜〜!!ふ、2人とも!!『喧嘩はやめてください!』」
「「っ!??」」
あずさの言葉が講堂に響くと2人から放たれていた威圧が一瞬で消えた。これに周りの生徒達はかなり驚いていたのだがもっと驚いていたのは本人達だった。あずさの言葉を聞いた途端体の自由が効かなくなったのだ。
どうなっているのか理解できないでいると今度は体が勝手に動き出す。あずさの方を向くと敬礼をして
「「あ、あ、アイアイサァァァ!!」」
2人の号令が響き渡り生徒会選挙は幕を閉じた。
次の日
「おめでとう、あーちゃん」
「おめでとう、中条」
「おめでとうございます、中条さん」
朝一番に生徒会室に飛び交った真由美・摩利・鈴音による祝福の声と拍手に、あずさは頬を紅く染めて遠慮がちに頭を下げて応えた。
投票数、554票。
有効投票数、554票。
内、中条あずさの信任投票、554票。
つまりあずさは、全生徒の信任を得て生徒会長に選ばれたことになる。いくら候補者が1人しかおらず事実上彼女でほぼ決まっていたとはいえ、100%の信任率を得るとまでは誰も想定していなかった。おそらく、彼女自身が一番想定していなかっただろう。
「流石にあれを止めたんだからこれは妥当な結果よ」
「あ、あれは、ドラちゃんの道具を借りただけなんですけど・・・・」
「いや、それでもあんな修羅場に口挟めるだけ大したもんだ。アタシ達はもう見捨てる気でいたから」
「のび太君には申し訳ないですけど・・・・」
と昨日の出来事に反省と申し訳なさを感じていると生徒会室に来客を知らせるインターホンが鳴った。それは普段ほとんど生徒会室に来ることのない克人によるもので、唯一の下級生としてあずさが動こうとするよりも早く鈴音がドアへと歩き、それを開けた。
「どうしたんだ、十文字? 随分と珍しいじゃないか」
「中条の新生徒会長就任を祝いに来た」
「あ、ありがとうございます! 十文字会頭!」
慌てた様子で頭を下げるあずさに対し、真由美と摩利がニンマリとからかうような笑みを克人に向けた。もっともそれで動揺する彼ではなく、堂々とした佇まいでそれを受け流したのだが。
「・・・・それはそれとして、“あれら"はなんだ?」
真由美達が敢えて触れなかったことにズカズカと入り込んでいく十文字、そう、あずさの新生徒会長就任祝いをしている後ろで2組のやりとりが行われていた。
先ずは風紀委員本部に通じている階段の方では
「もう、間違えないでくださいよ!」
「「すみませんすみませんすみませんすみません!」」
と、ドラえもんが作業着姿の大人2人に文句を言っていた。
「あっちは未来デパートの従業員らしいわ。なんでも今回襲ってきたロボットの子、昔ドラちゃんが借りたらしいんだけど未来デパートの手違いでこの時代に送られてきちゃったみたいね」
「・・・・未来ではロボットは常に暴走するものなのか?」
「それはドラちゃんの調整ミスらしいよ」
「そうか・・・・それであっちは・・・・」
ドラえもんの方からそのまま視線を横にズラすとそこでは
「・・・・・深雪」
「・・・・・はい」
「俺が言えたギリじゃないのは分かっているが言わせてもらう。やり過ぎだ」
「はい・・・・申し訳ごさいません」
「俺に謝ってどうする」
本来なら家でやれと思う様な光景が繰り広げられている。それも氷漬けになっているのび太の氷像を間において・・・・
と言うのも生徒会室にやってきたのび太を氷漬けにした深雪に対して達也は兄として怒っていたのだった。
もっと早く止められたんじゃないのかと思う人達もいるかもしれないが今日はたまたま達也とのび太はバラバラに生徒会室にやってきており、達也が来た時には時すでに遅しだったのだ。
「はぁ、やっと終わった・・・・さて、次はこっちか・・・・のび太君、そろそろ起きてよ」
そう言いながらポケットから道具を取り出した。
「テッテレー『オールシーズンバッジ』夏」
オールシーズンバッジをのび太に貼り付けギアを夏に設定、すると部屋の気温が高くなり真夏の猛暑並に暑くなり、そして凍っていたのび太がじわぁっと溶けだし氷像から開放されたのだ。
「し、死ぬかと思った・・・・」
「のび太君!ごめんなさいごめんなさい!私っ!」
「い、いいよ、命があるだけありがたいから・・・・・」
「・・・・・っていう感じね」
「そうか・・・・」
その日の夜
「深雪、掘り返すようで悪いがなんであんな事したんだ?」
理解という意味では昨日の深雪の怒りの矛先が生徒達からのび太に変わっただけだと捉えることができるからだ。しかし、本日ののび太凍結事件はその理解の範疇を超えていた。
「そ、それが・・・・私も、無我夢中で・・・・自分でもなんであんな事したのか分からないんです・・・・」
「・・・・」
────深雪の感情のコントロールが未熟なのは今に始まった話じゃないが、ここまで無意味な事をするなんて・・・・一度、叔母上に相談した方がいいのか?
はい、生徒会選挙編はここまで、次はちょっと小話でも書こうかと思います。なんでって?その次に繋がるかもしれないからかな