ロストになる前の夢を見たジャガーノート=ロスト。寝付けなくなった彼女に、魔剣使いが一緒に寝ることを提案する。

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ロストインデイドリーム

 ジャガーノート=ロストは救済を続けていたかつての自分とマスターの夢を見た。救済の魔剣と救いたがりのマスター二人。行く先々で苦しみ救われることを願う人々を救い続けていく救いの旅。

戦争の続いている地で、重傷を負い助からない命を救った。

それによって争っていた国と敵対し、襲ってきた兵士たちを救った。

逃げおおせた小屋で、ジャガーノートという神の手で葬られることを願う老人を救った。

物資を求めた都市で、病で動かなくなった、領主の父親を救った。

魔物に襲われた村で生贄として命を奪われた少女を看取って救った。

研究者に弄ばれた命を救った。

妻を殺した罪に苛む男を救った。

十二の殺人を犯した犯罪者を救った。

街に火を放ち、略奪をした盗賊を救った。

二人の命を狙い襲ってきた魔剣使いを救った。

その魔剣使いと共に終わることを望んだ魔剣を救った。

 救って、救って、救って、そこから先は、今でも心に焼き付いている。この何の意味も無かった旅の果てに、かつて救いたがりだったマスターはジャガーノート=ロストの下から消えてしまうのだ。

 そうしてジャガーノートはジャガーノート=ロストになった。

 何と言うことはない何度も見た夢だ。何度もこの業を見せつけて「忘れさせなどしないぞ」と指を突き付けてきた夢だ。

 大丈夫だよ。忘れたりなんてしない。今まで私が救ってきた人たちみんな、私が殺した、ってちゃんと覚えてるよ。いつかきっと私の番がくる。

 けどもうちょっとだけ。私の番が来るまで。こっちのマスターさんと、私たちと、もうちょっとだけ一緒にいられたら、なんて。

 そんな都合のいい願い、やっぱり許されないよね。

 

 

 

 寝ぼけた頭と目はすぐには働かず、布団の温さと、寝汗でじっとりとした寝間着の気持ち悪さの感覚だけがはっきりとしていた。

目の前に見えるのが部屋の天井だということ、ここがマスターとジャガーノートたちとで暮らしている家のロストの部屋だということ。それらを思い出すのに意識が覚醒してから数秒かかった。

目が覚めた今でもさっきまで見ていた夢の内容はしっかりと覚えていた。他の夢は朧気にしか覚えることが出来なくても、この夢だけは別だ。かつての記憶と感触、何一つ欠けることなく認識して、起きた後も夢の内容はしっかりと頭に張り付いている。こうなると、とても寝れる状態ではなくなる。

水でも飲んでしばらく落ち着こうと一階の洗面所に向かうと、リビングに明かりが点いているのが見えた。

「マスターさん?」

おや、とリビングの机に向かっていた魔剣使いが振り向く。ジャガーノート=ロストが廊下からリビングに顔を覗かせているのを見て、意外そうに声を返した。

「ロスト、寝てなかったのか」

「ちょっと眠れなくてねぇ。マスターさんはなんで起きてるの?」

「家計簿」

魔剣使いが、これ、と一枚のノートを持ち上げてみせる。

「ふーん。そんなのつけてたんだ」

それを珍し気に見ながらロストが魔剣使いの隣の椅子を引いて座った。

「見てていーい?」

「いいけど、面白いものでもないよ」

「いーの」

「あと、眠くなったらすぐに寝ろよ」

「はいはーい♪」

 調子の良い返事だなと思いながら魔剣使いは作業を再開した。

前回記録したときから今日までに買ったものや家賃、その他かかった費用、それらの金額は都度メモ帳に書き残している。言ってしまえばそれらを帳簿に整理して記録するだけの作業だ。

細かい雑費や、ロストから見れば何に使っているのか分からない品目の数値だらけで、ロストが見物に飽きるのに時間はかからなかった。

「…マスターさん」

「どうした」

「やっぱりつまんないなぁって」

 予想通りの反応に魔剣使いが苦笑する。

「だから面白くないって言ったろ…。いい機会だから言っておくがな、ロスト」

魔剣使いが家計簿帳をロストの目の前に置き、その記録欄のいくつかをペンで差した。

「ここ最近お菓子の消費が増えてるんだが、これはお前が原因だよな?」

「えー?そんなに食べてたかなぁ?大きいわたしたちじゃなくて?」

「ジャガーノートとルナにも確認はとってるぞ、主に食ってるのはお前だってな。そして俺もお前が食べてる姿はよく見てる」

「あは♪ばれちゃってたかぁ」

「共用のお菓子全部食べるようだったら、罰としてお小遣いを減らすから。覚悟しろ」

「うっ、マスターさんの意地悪―」

「返事」

「はーい…」

 唇を尖らせながらの了承の声によしと頷いた。

 だが頷いた後で、ロストにしてはやけに素直だ、と違和感が残る。魔剣使いから見た普段のロストのイメージと噛み合わない。

 ロストは魔人機関によって改造されたジャガーノートであり、改造の影響かオリジナルよりも更に幼い容姿を持つ。見た目は子供そのものだ。そして精神が肉体に引っ張られるからなのか、改造前からこちらのジャガーノートよりも自分本位な性質だったのか、オリジナルのジャガーノートよりも欲望に素直に従おうとするきらいがある。ジャガーノートのアイスを横取りしようとするロストを目撃して以来、魔剣使いはロストのエゴイスティックとも言える面を確信していた。

 その点を考えると、禁欲の脅しのような魔剣使いの言にもう少し反発する方がらしいと思える。大人しく従う姿はかえって心配の気持ちが勝ってしまうくらいだった。

 ペンを帳簿に走らせながら横のロストを見る。不貞腐れて机にもたれかかり、両手を伸ばして不満ですと分かりやすくアピールしていた。そんな姿を見るといつも通りの様子にも思えてしまうが、気にかかる気持ちは収まらなかった。

「眠れないって言ってたけど」

「うん?」

「よくあることなのか」

「んー、まぁ、いつもって訳じゃないんだけど。たまにね」

 ロストはそう言葉を濁して、机に突っ伏した体勢のままうんうんと呻った。少しの間そうすると、広げていた腕を組んで、その腕に頭を預けた。

「夢を見るんだ」

「夢?」

「そ。昔の夢。救いたがりだった頃のわたしが、救われたがりな人たちを救ってた頃の夢」

「それは」

言葉に詰まる。

 過去にロストから語られた話だ。ロストがジャガーノート=ロストになる前の救済の物語。救いを求める人々を救った果てに自らのマスターも失って独りとなった、ジャガーノートの一つの終着点。

「…嫌な夢だな」

「ほんとにね。けど、わたしはあんまり悪く言う気もないかなぁ。確かに寝てる途中で起きちゃうし気分も悪いけど」

気分は良くないどころか最悪だし、汗を異常にかくから寝間着がじっとりして二度寝出来るものじゃなくなるし、頭の中も考えが錯綜してそもそも寝られる状態じゃなくなる。それでもロストは悪夢と言ってしまおうとは思えなかった。

「救った側が勝手に夢に見て、勝手に気持ち悪くなってるだけなんだから、ね?」

「勝手に、か」

「そう、勝手に」

 それ以上言葉は続かなくて、ペンを再び走らせた。

 救われた側が救われた気になっただけ、救った側が救った気になっただけ。本当の救済なんてものは無い。口癖のようにロストが語っているのを魔剣使いはよく覚えている。

 そんなロストの持論の線で言えば、救済という業も救った側が勝手に背負っているだけ、ということなのだろうか。

 言ってしまえば因果応報、悪因悪果、自縄自縛。それらからは逃れられず、それだけの宿業かもしれない。

しかしそれだけで片付けるには、ロストが余りに痛ましく見えた。

「よし」

帳簿も付け終わってペンを置いた。欠伸をしながら腕を伸ばして弛緩する。

「あ、終わったー?」

「ああ。ロストはこの後どうする?もう寝れそうか?」

「わたし?んー、そうだね、そろそろ寝れるかなぁ」

「じゃ一緒に寝るか」

「…えぇー!?」

 全く予想していなかった言葉にロストの声が裏返りそうになった。魔剣使いの顔を改めて見ても笑って誤魔化すことも無い。冗談のつもりではないらしかった。

「ほら、一人より誰かと寝る方が安心したりするだろ?あの夢だって見ないかも」

「じゃあ大きな私たちとでもいいでしょー!?」

「二人にも知られることになるけど、それでいいのか?」

「それは…!」

 ロストが大きいわたしたちと呼ぶ同型魔剣の二人、ジャガーノートとジャガーノート=ルナ。日ごろから彼女らの救済を皮肉したような言動をしているロストからすれば、この件を知られるのはばつが悪いどころではなかった。

「…うぅー。マスターさんの人でなしー!」

「ははは。なんとでも言うがいい」

 魔剣使いがおどけたように高笑いをしながらロストに向かって迫る。

「マスターさん?どうするつもりー…、って、うわぁぁ!?」

 魔剣使いは椅子に座ったロストの膝裏と背に手を回して、彼女が驚くのも構わず抱きかかえた。つまりはお姫様抱っこの形だった。

 落ちないように慌てて魔剣使いの服を手で掴むと、ロストが恥ずかしそうに口を震わせながら魔剣使いの顔を見る。

「マ、マスターさん。この抱え方、って」

「諦めて自分で歩くなら下ろすよ」

「…ま、まだわたしは納得してないからねー?マスターさん」

「じゃあこのまま無理やり運んでいくからな」

「…うん」

 自分のあからさまな態度に後から顔が熱くなってきて、魔剣使いの顔を見れなくなる。恥ずかしがる顔も見せたくなくて、ロストは魔剣使いの肩に顔を埋めた。それもまた分かりやすすぎだなと思いながら、それで誤魔化せたことにした。

 

 

 

 頭が回らなくなっているうちに魔剣使いの部屋のベッドに下ろされ、二人同じ布団の中に入っていた。

「暑くないか?」

「う、うん。大丈夫」

 密着してこそいないが、手を少し横にずらせば触れてしまいそうな距離。いつのまにか照明も消されていて真っ暗な中で、それ以上正確な距離はわからない。思っているよりも近いのか、それとも遠いのか、布団の中で伝わる体温だけが頼りだった。

それ以上を知るには真横を向いて確かめるしかないのだが、緊張してそんなことは到底できなかった。枕やベッドに染み付いた魔剣使いの匂いや、静かな部屋でやたらはっきり聞こえる魔剣使いの呼吸の音が緊張に拍車をかけていた。

何だかさっきからマスターさんに翻弄されてばかりだとか、わたしはこんなに頭がおかしくなりそうなのにマスターさんは何ともないのかなとか、それは何だかむかつくなぁとか、次々といろんなことを考えてしまって落ち着きが余計なくなる。

ただそうやって考え込んでいると、魔剣使いが今の状況をどう思っているのか気になり出した。思った通りに事が運んで喜んでいるのか。それとも言い出した本人も恥ずかしがったり緊張したりしているのか。

(マスターさんはどうなの?)

 どうにも気持ちが収まらず、魔剣使いの様子を窺おうと顔を向けた。照明も消されて天井も見えない暗闇の中、真横にある魔剣使いの顔だけはよく見えた。慌てたり緊張したりした様子もなく、静かに目をつむっている。

 問題なく寝れそうな様子で納得がいかないが、そこでやっと魔剣使いの分の枕が無いことに気づいた。ロストのベッドから枕を取ってくる間もなかったから魔剣使いのベッドに枕は一つしか無い。魔剣使いはそれをロストにあてがったのだから魔剣使いの枕は当然無かった。

「マスターさん、起きてる?」

 魔剣使いが瞼を開いて視線をロストに合わせてから答えた。

「まだ起きてる。どうした?」

「せっかく一緒に寝てるんだし、もうちょっと近くで寝よ。…ね?」

 枕をぽす、と軽く叩いて招き寄せる。

「…それじゃあ」

 言われるまま、魔剣使いがもぞもぞと布団を被りながら枕の端に頭が乗るくらいまで移動する。

「…っ」

 顔が近い。誘ったのはロストであるが、魔剣使いと鼻がぶつかりそうなくらいの近さに息を呑んだ。視線が重なったまま目を離すことも出来ないくらい固まって、魔剣使いが顔を背けたことでようやく体が動くようになった。

緊張が解ける。ほっとして胸をなでおろすと、改めて魔剣使いの方を見ることができた。至近距離まで近づいたことで、心なしか魔剣使いの耳が赤くなっていることに気づいた。もしかしてマスターさんも恥ずかしがってた!?とロストの心が跳ねた。

「ねぇマスターさん。こっち向いて?」

「…ちょっと無理」

「マスターさん」

「いや、ほんと…」

「…照れてるの?」

「…」

 魔剣使いは否定もせずただ顔を背ける。

「もしかして、おひ…さっきわたしを抱き上げてた時も、実は照れてたりしたの?」

「…」

「…へぇ~」

 ロストがにたりと口を端まで歪ませて微笑む。調子ついたロストがえい、と魔剣使いの左腕に抱き着いた。

「ぎゅ~っ!」

「!」

 突然のロストの行動に魔剣使いの体がビク!と大きく震えた。

「あれぇ~?どうしちゃったのマスターさん?そんなに身体をびくびくさせて。一緒に寝ようって言ったのはマスターさんでしょ?こういうことも期待してたんじゃないのかなぁ~?」

 ロストが身体を魔剣使いの左腕に押し付けるようにしながら、魔剣使いの耳元で囁くように甘言を吐く。耳にロストの吐息が当たり、熱が伝わる距離に魔剣使いの背筋が跳ねそうになる。

「く…!こっちは、純粋に心配してだな…」

魔剣使いの文句に構わずロストがスキンシップを加速させ、右手は変わらず魔剣使いの腕を抱いたまま、魔剣使いの体に左手を這わせてからかう。

「え~?聞こえないなぁ~」

「お腹を弄るな!」

「あはは。マスターさんこわーい」

 おどけて降参するように弄っていた左手を挙げながら弄るのを止めるが、魔剣使いの腕に抱き着く姿勢は変えなかった。魔剣使いも何も言わず左腕を抱かれるまま体を仰向けにした。

「もう寝るぞ。騒いでても目が覚める」

「はーい」

 魔剣使いをからかうのは楽しいが、いつまでも続けていたら確かに眠れなくなってしまう。ロストも同意して大人しく眼をつむったが、そういえば、と一つ思い出して魔剣使いに声をかけた。

「…ねぇマスターさん」

「まだなにかあるのか…」

「一つだけ。…さっき、純粋に心配して、って言ってたでしょ。ありがとうって、それだけ」

純粋な感謝の言葉に魔剣使いは一瞬戸惑った。

「俺は」

 つい、と口から出た言葉を一度止める。しかし一拍置いて、逡巡しながらも続けた。

「俺はロストがどう思ってるとしても、ロストが幸せになれればいいと思ってるだけだよ」

「…それって、わたしがどんな魔剣だったかを知ってて言ってるの?それともただ惚気てるだけ?」

 魔剣使いの言葉に驚きながらも、ロストが魔剣使いの目を見つめながら問いかける。いつにない真剣な表情だった。だがもとより魔剣使いもふざけて言っているつもりではなかった。

「知ってる上で言ってる。ロストが救ってきた人がどれだけ居ても、それが本当の救済じゃなかったとしても。…償いとか贖いって、不幸に生き続けることじゃないだろって、そう俺は思ってる。ましてや死ぬことも」

「…ふーん、そっかぁ」

 魔剣使いの吐露にそう一度返すと、ロストは魔剣使いから目線をそらして、考え事をするように何度か鼻を鳴らしながら魔剣使いの言葉を反芻した。そうしてから一つ笑ったような息を零し、魔剣使いの眼を見つめて微笑んだ。

「…ふふ。こんなどうしようもないわたしの幸せを願うなんて、マスターさんもろくでなしでどうしようもないなぁ」

 ぎゅう、とロストが魔剣使いの腕を強く抱き締める。

「どうしようもなくて救えない、救いたがりのマスターさんだ」

頬が紅潮し、ロストがその顔を魔剣使いの腕に埋めながらも、その声はたしかに満足気なものだった。

魔剣使いが右腕を起こしてロストの頭をゆっくりと撫でる。

「…もう寝れそうか?」

「うん。ちょっと眠くなってきたかなぁ」

「そうか。じゃあおやすみ。ロスト」

「おやすみなさい。マスターさん」

 

 

 

 瞼越しに見える光が眩しくて、いくら身じろぎをしても寝かせてくれず、気づいたらロストは体を起こしていた。あくびをしながら目を開けると、いつもと違う部屋の様子に気づいた。

 いつもと違う部屋の間取り、本で埋まった棚、椅子にかかった男物の服。

「そっか。そういえば、マスターさんと寝たんだった」

 一拍置いて思い出す。と同時に頬が熱くなる。まさか一線超えてしまうとは(超えてない)夢にも思わなかった。もうこれはお嫁さんになったということなのでは?ロストは訝しんだ。

「ふふっ。なんてね」

横で寝てる魔剣使いや窓から差し込む朝日を見て、あっけなく寝れちゃったなと笑う。魔剣使いの寝顔を見て、その頭をなでて我ながら単純だなぁと自嘲する。

「…」

 魔剣使いの顔を覗く。魔剣使いの寝ている顔は今までに見ない無防備なもので、なんだか撫でる手が離れない。短い髪の毛にすっと手櫛を通して、また入れて、それだけで笑みが零れてきた。マスターさんはよく自分の頭を撫でてくるけど、こういう気持ちなのかな?なんて考えながら、今度は魔剣使いの顔に手を当てて軽く頬をさすった。

「…くぅぅ」

「あ、マスターさん起きたぁー?」

 先程までのロストの様に身じろぎを何度かして、ロストの方を向くと魔剣使いは目を朧気に開けた。

「ほら、もう朝だよー?起きなくていいのー?」

「ん…。ん?……おぉ」

「おはよーマスターさん。…どうしたの?」

「あぁ。いや、なんでもない」

 目をこする。そういえばと、ロストと添い寝することになった経緯を思い出した。

「ロストは眠れたか?大丈夫だったか?」

「うん、大丈夫。あっさり寝れちゃった」

「そうか。なら良かったよ」

「…あ、でもねぇマスターさん」

「やっぱり何かあったか」

「ううん。今朝は何ともない。…ふふ。だけどぉー、また眠れなくなるかもしれないなぁー。あーあ。またあの夢みちゃうのかなぁー。怖いなぁー」

 自分の胸を抱いて体をくねくねと動かし、やだなーとロストがわざとらしくアピールする。そうして気が済むと一転、動きを止めて両手を不安げに合わせて、伏し目がちに魔剣使いを見た。

「だから…そうなったらまた一緒に寝てくれる?」

「もちろん」

 迷うことなんてなかった。

「わぁ即断。…ふふ。愛されてるなぁー、わたし!」

「添い寝くらいならいくらでも。けど、それだけで大丈夫なのか?」

「うん。マスターさんも知ってるでしょ?」

魔剣使いが首を傾げる。

とぼけちゃって。

マスターさん。居ないと思ってたわたしの王子様。どうしようもなくて救えない、救いたがりの救世主さん。

マスターさんが自分を救世主なんかじゃないって思ってても、救われたがりは救われてるものなんだよ?だから、自覚のないマスターさんに教えてやるんだ。そんなマスターさんだからこそ本当に救える、どうしようもない救いようの無い、そんな救われたがりの女の子も居るんだってこと。

「救われる側は、いつだって勝手に救われた気になってるんだーって!」

 

 

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