例えば身が焦がれる程の恋をしたとして、本当に身を焦がす事なんてない。
なんででしょうか?
決まってます、それは──本当の恋じゃないから。
本当の恋、真実の愛に出逢ったなら全身を焦がして…
と、熱く語ってしまったので名乗りもついでにあげときましょう…私は
昔からの疑問なんですが、なんで世のカップルや夫婦はあんなに
私の両親もどっちもまだ元気バリバリだったりするんですよ。ね〜…いや、別に早くくたばれとか思う程に薄情でも冷え切った家庭でもないですよ?
ただ、冷え切ってないから思うんですよねぇ…なんでお母さんはボロボロにならないんだろうって。
ほら、子供の頃に風邪とかひいた時ってすっごく周りが心配して優しく面倒みてくれるじゃないですか。
私、子供の頃は目茶苦茶身体が弱かったのでしょっちゅう病院のお世話になってたんですよね〜…だから、気付いちゃったんです!
これが、本当の愛なんだって!!
愛って言うのは、痛くて辛いから優しくて…
恋って言うのは、吐きそうで嫌だから甘いんだって!
献身的に私を愛してくれる両親、お見舞いに来てくれたクラスメートの皆…私が辛くて、死にかければ死にかける程に
不幸になれば不幸になる程に───皆は私を愛してくれました。
これはもうお馬鹿な私でもわかります!ハッキリすっかりVの字バッチシですよ…私が世界で一番痛くて辛くて不幸になれば──私は世界で一番愛される…そうでしょ?
と、言ったものの…私の身体は残念ながら中学に上がる頃には良くなっちゃったんですよねぇ。
私はすっごく悩みました…無いアタマもフル稼働!むむむ〜っと悩んで……思い付きました。
そうだ!イジメられよう!!
そこからは観察です!イジメられてる子がどんな子なのかよ〜く観察して…どうすれば私がそうなれるかを考えて…ってカンジですかね。
まぁ、だいたいはあれです。ビンボーな子とか、ちょっと太ってる子とか…後はかわいい子とかですね〜。
自分より劣ってる子をイジメたりしてるのを見ると、あぁ…動物〜ってカンジしません?
まぁ、自分より優れてる子までイジメるのは人間ってカンジですけどねぇ〜。
そんなこんなでイジメられっ子を観察して、いざ実践!
頑張って可愛くなりましたとも!!
……ん?あぁ、他は無理だったんですよ。
ほら、私の家って裕福ですし…私も美少女なので!!
…………ここはちょっとツッコミ待ちだったりして…
ま、まぁとにかく!!お化粧したり可愛い文房具とか…とにかく周りと違う事をして頑張ってアピールしました!
そしたら大体…2週間ぐらいで上履きが無くなったり、教科書がビリビリにされたりしだしましたねぇ。
はい!努力は裏切らないってヤツですよ!
いや〜頑張った甲斐もあって、他のクラスメートから心配して貰ったり担任の先生からもすっごく優しくしてもらえて…あぁ、愛されてるなぁって実感しちゃいましたね!!
特に特に!階段から突き落とされて腕を折った時なんか!もうスゴかったんですよ!!
イジメてきてた人達までここまでする気じゃなかったの、とか言って優しくしてくれて…いやぁ〜、あれは良かったですね!!
でも、その後全然イジメてくれなくなっちゃって……それだけはダメダメでした……
だから、私──いっぱい頑張りました!!
い~っぱい勉強して、観察して、実践して!
絶対もっとイジメられるぞ〜って目茶苦茶に頑張りました!!
いやぁ〜我ながら努力の子でしたよ!
で、で、で…なんと!私には一つ、とある才能があったんですよ!!
イジメられる才能が…ね!
……んー、そういうリアクションは求めてなかったと言いますか…もっと単純に驚いてくれればそれで良かったんですけど?
まぁ、そんなこんなでなんとか中学卒業まで頑張ってイジメられてハッピーに過ごしました!
しかもしかも!ちゃあ〜んと私をイジメてた皆もテレビ局に報道してもらって
皆泣いて喜んでました…いやぁ~良いことしてすっごく気分良かったですねぇ!
なんとイジメっ子ちゃん達は両親に殴られる子とかも居て…いやぁ~流石の私もあそこまでされた事無かったのでアレは羨ましかったですよ!
だから、心に誓いました…高校生になったら絶対ニュースになるようなイジメられ方をして世界一の愛されハッピー美少女になるんだって!!
優しいお母さんやお父さんから顔面ぶん殴られるぐらいに不幸になってやるぞ〜と心新たに頑張りましたねぇ。
で、高校生になってからなんですけど……
なんと、私────ラブ、見付けちゃったんです。
えへへ〜、一コ上の先輩なんですけど〜、目茶苦茶格好良くてぇ〜…えへへ〜!!
もう目茶苦茶ラブラブ、ホの字なんですよ!!
だから、思いましたね……絶対先輩が私を好きになってくれるくらいに不幸になってやろうって!!!
もう気合入りまくりのやる気むんむんでしたよ!
でも、悲しい事に中学で私をイジメてた子達は登校拒否とか病院に入っちゃってたりで一人も同じ高校に居なかったんですよねぇ…
いやぁ〜!悩みました!!もう脳味噌オーバーヒートです!!
でもでもでも!!天はこのろろろちゃんを見捨てていなかったのです!!
なんと、先輩と同じクラスのイケメンさんが私の恋路を応援してくださると言ってくれたんですよ!!
いやぁ~嬉しかったですねぇ…!なんとイケメンさんは先輩と幼なじみで「君みたいな可愛い子がアイツを好きになってくれて嬉しいよ」な〜んて言ってくれちゃって!!!
もう私も大船に乗った気で色々頑張りました!!
でも……イケメンさん、あんなに協力してやるとか恋のキューピットとか言ってたのにいざ殴ってくださいとか言っても全然イジメてくれなくて困っちゃいましたよ。
俺にはカノジョがいるから〜とか言ってレイプもダメ、大学の推薦が決まってるから〜とか言ってお友達を紹介するのもダメ。
なんなら自分の身体大事にしないと、とか言ってきて……ホント困っちゃいましたよ。
だから…ちょ〜っと奥の手を使いました!
中学の時に知り合った怖〜い人達から買った怪しいおクスリをイケメンさんに飲んでもらって…無事にレイプされたのです!
いやぁ~、ああいうのって凄いですね!!初めてだったのもあるんでしょうけど目茶苦茶痛くて血がドバドバ出てたのに、先輩さん私が痛いって言ったらうるさいって顔面パンチですよ!
まさに恋のキューピット!幸せの青い鳥とはイケメンさんの事だったんですねぇ〜。
あっ、勿論動画撮ってましたよ!
後はまぁなし崩しですね~イケメンさんのお友達も呼んできてもらって、いっぱいい~っぱいヒドイ事してもらって…
堕ろしたのは……4回ぐらいでしたっけ?
でもでも、それだけやっても足りなかったんですよ〜…
先輩、私がレイプされてどろどろの所を見てくれて…バッチリ愛してくれると思ったのに、悲しそうにするだけで全然だったんですぅ……
これにはろろろちゃんも頭を抱えましたねぇ…大大大ピンチです!
この身を焦がすラブが伝わらないなんて…どうしたらつたわるんだろう……ってすっごくすっご〜く悩んで…
そうだ!もっともっと不幸になろうって思ったんです!!
脳筋?え〜…良いじゃないですか、脳筋プレイとか私好きですよ?ゲームとかでも属性とかギミックより攻撃力重視派なので!
それで、とりあえず援助交際から始めてみました!
いやぁ~その頃にはイケメンさんも滅多な事では喋らなくなってたんですけど、援助交際しますって言った時には凄く色々言ってきましたねぇ。
自分の身体を大事にしろ〜とか、お金だったら皆でバイトして工面する〜とか…いやぁ、そんなんどうでも良いんですけどね?
お金には困ってませんし、身体なんて大事にしてどうすんだ〜ってカンジで…
やっぱり推薦で大学に行くような人って人間出来てるって言うか…こう、良い人って言うんですかね?
イケメンさんは最初のおクスリを使った時以降、毎回ゴムしてましたしねぇ〜。
まぁ、穴あけてたんでイケメンさんの子も孕んだんですけど。
それで妊娠3ヶ月目だって伝えたら…イケメンさん、なんとあんなに好き好き言ってた彼女さんと別れちゃいまして…
本当にごめんって何度も言ってきて、一生かけて償うから〜って。
いやいや、私が好きなのは先輩なんですって(笑)
たかが不幸の種如きがそんな事言わないで欲しいんですよねぇ〜、困っちゃいますよ。
まぁ、そんなふうに言ってたら…イケメンさん、吹っ切れちゃったんですかね?急に暴力的になっちゃいまして…
あんなに言ってた援助交際も積極的にするように言ってくれましたし、ようやくキューピッドの自覚が芽生えた…ってところですね!
でも…先輩ったら、私を見て言うんです。
「誰にやられたんだ」って。
もう!酷くないですか!?私、すーっごく頑張ってるのに…私以外ばっかり見て……だから、ぜーったいに教えてあげないんです!
全く、乙女心は複雑なのに…先輩の朴念仁!!
しかもしかも!先輩ったら私を差し置いてイケメンさん達の方を全員病院送りにしちゃうんですよ?
………まぁ、私の為に怒ってくれてたのがすっごく格好良かったので許しますけども!!
あっ、そうそうそれです。ニュースにもなってましたもんねぇ〜。
でも……結局イケメンさん達は誰も私の事を言わなかったみたいなんですよねぇ。
なんででしょう…?私一人が被害者扱いされたせいで実名報道とかもされませんでしたし……
こういう時の為にアイドル頑張ってるのに…大ショックですよ!
「ねぇ、どう思います?天音ちゃん」
コンサート会場の控室にて、少女は同じ年の程に見える金髪の少女に尋ねる。
「ん〜??まぁ……うん…俺…そういうのは人それぞれだと思う……うん…」
天音は生暖かい笑顔と共にバツが悪そうに返す。
「なんでそんな他人行儀なんですか!?」
「今の聞いて返事もらえるだけありがたいと思うけどな…」
黒髪の青年が呆れたように少女に言う。
「じゃあ亜藍君はどう思うんですか!!」
「えぇ……んー……なんか…そういう虫みたいだなぁって…」
「アゲハ蝶とかそういう可愛い系の?」
「いや……蟻とかそういう何考えてるかわかんない系の…」
蜘蛛とかムカデでもいいけどな、虫じゃないけど…と亜藍が呟くと少女はさも怒ったように腰に手を当てる。
「もう!!そういう悪口とかは先輩の前じゃないと意味ないじゃないですか!しっかりしてくださいよ亜藍君!」
「別に悪口言ったつもりはないし、そういうトコが虫みたいだって言ったんじゃんかよ…」
「でも惜しかったですよねぇ〜!あとちょっとで清純派アイドルのろろろちゃんが経験人数3桁超えだって事がバレて、誹謗中傷とかで死にたくなるぐらいに不幸になれたのに…」
「話題の転換が下手過ぎるだろ、あともしそうなったら俺らも大変になんだよ」
「お裾分けですよ!私は優しいので!!!」
少女の答えに青年は苦々しく口を閉ざすと、虫っていうか宇宙人みたいだな…と眉間を抑えるのだった。
虚嶋ろろろ
別に被虐趣味でもなく、無痛症でもないので痛い事は痛いしそれで興奮する訳でもない。
アイドルグループに所属しており、担当はベース。
辛くて苦しい不幸があるからこそ人に優しくしてもらえ、誰よりも不幸だからこそ愛されると信じて疑わない。
不幸ではない自分では誰からも愛されないと思っており、先輩に好かれる為にもっと不幸になろうと努力している。
先輩
目茶苦茶腕っぷしが立つ以外は極々普通の高校生。
生来のお節介で人助けをしまくってきているが本人は別に助けた相手を一々覚えていない。
好きな人が不幸になっていく中、何もできない自分に失望している。
好きな人にはもっと別の誰か、不幸を未然に防げるような誰かが相応しいのではと思っている。
イケメン君
今作一の被害者。
先輩に小学生時代イジメから助けてもらった事をずっと覚えており、ずっと恩返しをする機会を伺っていた。
前話のインタビューは真実を語って楽になりたい気持ちと自分がした事の重大さの狭間で壊れてしまった為。
天路々天音
虚嶋が所属するアイドルグループのボーカル兼リーダー。
俺っ娘属性。
亜藍青
虚嶋が所属するアイドルグループのメンバー。担当はシンセサイザー。
女装子属性。