「
「うん、イヤよ」
「ガーン!?」
昼休み、見上げれば抜けるような青い空が広がっている高校の屋上。
僕の想いの丈を詰め込んだ渾身の叫びは、目の前の彼女に届くことはなく消えていった。
屋上には僕とマナちゃん以外には誰もいないから、僕のこの想いは本当に誰にも届くことはない……うぅ、断られたショックも相まって、泣いちゃいそうだ。
でも男子たるもの、女子の前で泣いたりするのは恥ずかしいから我慢だ我慢。
「ぼ、僕の何が、駄目だったの……?」
「いや、何って、アンタね……」
涙を堪えながら、どうにか言葉を絞り出す。
マナちゃんは頭に手を置いて、呆れたような溜め息を一つ。
「――――これで!! アンタからの告白が!! 通算100回目だからよっっっ!!」
それから僕の告白に負けないぐらいの声量を出して、思いっきり叫んだ。
……そっか、もうそんな数の告白してたんだなぁ。
「小五で初めてアンタに告白されてから、足かけ五年!! 月にだいたい2回ぐらいのペースで告白、告白、告白の山!! そりゃアンタとずっと同じ学校通ってる私も私だけどさぁ!!」
「マナちゃんずっと告白した数を数えてくれたんだ、嬉しいなぁ」
「そこじゃないでしょ!? あぁもう、アンタはホント昔っからピントがズレてるわねぇ!!」
良く分からないが、マナちゃんは僕に怒りだしてしまった。
うむむ、嬉しいことを嬉しいって言っただけ、なんだけどなぁ。
ピントがズレてる、かぁ。昔から言われてることだけど、何がどうズレてるのかって言うのが未だに理解できないんだよなぁ。
「……ってゆうか、アンタの方こそなんでそんなに諦めが悪いのよ。普通、男子が女子に一回断られただけで、心なんてボッキボキに折れるもんじゃないの?」
「うーん? 普通って言うのは、良く分からないけど……僕がマナちゃんを好きになったからだよ?」
「はぁ? アンタ、何言って……」
マナちゃんは怪訝そうな表情を浮かべて僕を見やる。
むぅ、ここまで言っても分からないものなのか。僕は彼女を見つめ返して、丁寧に説明をしてあげることにした。
「初めて告白した小5の時は、金魚に餌をやってる時の笑顔が可愛かったから。次の時は、クラスのいじめっ子に怯まずに向かってく姿がカッコよかったから。小6の時は登校班の小さな子に優しく話しかけてる姿にキュンときてー、中1の時は……」
「す、ストップストップ!! 待ってまって、情報量が多い!! 多い、ってば……」
僕の説明に、何故かマナちゃんは顔を真っ赤にして目を逸らす。
あれ、そういえば、ここまで言ったことってなかったっけ?
でも、聞かれたことがなかったからなぁ。
「じゃ、じゃあアンタ……毎回私を好きになってたから、告白してきたってこと……!? 100回も!?」
「うん、そうだよ? そういうもんじゃないの、告白って?」
「いや、アンタのは割と珍しい部類だと思うけど……」
僕からしたら当たり前の事だったけれど、彼女からすればそうではなかったらしい。
うーん、そういうもの、なのかぁ。
好きな人の好きなところなら、それぐらい見つけられると思うけどなぁ。
「……アンタの告白、もっと軽いもんだと思ってた。てっきり、数ばっかこなしてる適当なモンだとばっかり……」
「失敬な!! 僕はいつだって本気だよ!!」
「そうね、それがようやく分かったわよ……」
どうやら、僕の告白は冗談みたいなものだと思われていた、のかな?
うーん、それは結構ショックかもしれない……まぁ、結局伝わったんだったら、別にいいかぁ。
「はぁ……わかったわかった、私の負けよ。降参……」
「え……? 僕たち、何か勝負とかしてたっけ?」
「アンタねぇ……この流れで分からないワケ……?」
マナちゃんは突然手をヒラヒラとさせ始めたが、僕には彼女が何を言いたいのか全然分からなかった。
うーん、流れって言われても……告白の話をする流れだったよなぁ、としか言えなくない……?
「あー、もう……こうやって、お互いに思ってることをハッキリ口にしなかったのが原因で長引いたのよね、私達……仕方ない、か……」
僕が彼女の発言に首を捻っていると、マナちゃんはブツブツと何かを呟いてから僕の顔を真っ直ぐに見た。
何かに緊張するみたいに、すー、はー、と深呼吸。
それから、おずおずと口を開いて……予想もつかなかった言葉を、投げかけてきた。
「あ、アンタの事が、好きよ……私と、付き合って!!」
顔を真っ赤にして、声を振るわせながら告げられる、告白の言葉。
僕からは100回告げたけれど、彼女からは初めての、その言葉。
――――僕の告白はこうして、100回目にしてまさかの大成功を収めたのだった。