カタカタカタカタカタカタ…
ここは、シャーレ…にある先生の執務室
そこでは、パソコンのキーボードを凄まじいスピードで叩く音が響いていた
普段先生は、ここで大量の書類と日夜格闘している
連邦生徒会長が突如として行方不明となり、治安が悪化したキヴォトス
先生が来たばかりの時とは違って多少マシになってはいるものの、治安が悪いことに変わりはない
無論、治安が悪いということはあちこちで銃撃戦が起きているということであり、同時に被害も相当なものになるということ
信じられないかもしれないが、これがキヴォトスである
そしてその被害の報告書や補償、その他諸々を含めると先生の睡眠時間は無いようなものである
各学園から生徒達が手伝いに来てくれてはいるが、多いのである
さて、前述のパソコンのキーボードを凄まじいスピードで叩く音
先生もよくパソコンを使って仕事をしているが、生憎これは先生ではない
何だったら先生はハラハラして、心配そうにしている
では誰がしているのかというと…
「ブハハハハハハ…!!ハァーッハハハハ…!!」
頭に『神の頭脳と才能』と書かれた鉢巻をして、椅子の上で体育座りをして、眼の下を隈で真っ黒にしながらそう笑う、新檀クロトであった
先生はハラハラを通り越して、最早なんだこの子みたいな目で見ていた
アリウス分校でのベアトリーチェでの戦闘、その後のアリウス生徒からの追跡を粉砕し、そのままシャーレに来た新檀クロト
なんとその日から一睡もせずに働いているのである
なお、エデン条約関連の出来事から既に一カ月が経過している
「く、クロト『新檀クロトだ!』…新檀クロト、そろそろ休んだ方が…」
「何を言っているぅ!この量は私の手じゃないと捌けないぞぉ!」
そう言ってパソコンのキーボードを叩く新檀クロト
よくよく見れば人差し指だけでキーボードを叩いている
ここで疑問に思うことは、先生は一体何をしているのかということだろう
無論先生も新檀クロトだけに任せているわけではないのだが…
『頼りにされる大人が倒れられては困る、寝ろ』
そう言って半強制的に睡眠させられている
だったら新壇クロトもでしょとツッコんだ先生だが
『私はぁ、不滅だぁぁぁぁぁ!!…うっ!?』
そう言って倒れこんだ新檀クロトの体が消滅したかと思うと、何処からか生えてきた土管から飛びだしてくる新檀クロト
なお、この時六徹だった
『残りライフ…81…私はコンテニュー出来るから問題ないのだぁ!!』
そう言って高笑いする新檀クロトを見て、ドン引きしたのは先生の記憶に新しい
「あともう少しだぁ…!もう少しでこの書類がぁ…!うっ!?」
狂気的な笑みを浮かべながら凄まじいスピードでタイピングをする新檀クロトだったが、苦しげな声を上げたかと思うと、次の瞬間には新檀クロトが消滅
したかと思うと、土管が出現してそこから新檀クロトが飛び出してきた
既に何回も見た光景であるが、やはり自分の目の前で生徒が死んでいることに変わりがないので一向にに慣れることはない先生…慣れたら駄目である
「残りライフ…75…先生!私の事は気にするな!」
そう言って再びとんでもないスピードでキーボードで叩く新檀クロト
気にするなと言われて気にしない方が無理だろう、とツッコみたくなる先生であった
「終わったぞぉ…」
「お、お疲れ様…コーヒー飲む?」
「貰うとしよう…」
そう言って先生から受け取ったコーヒーを一口で飲み干す新檀クロト
あっ、と先生が止めようとしたのも遅く
「うっ!?」
そう言って倒れこみ、消滅する新檀クロト…そしてまた土管から飛び出してくる
まぁ何も飲まず食わずで徹夜していて、しかも缶コーヒーを一本飲み干せばそりゃ死ぬだろう、詳しくは知らないが
「残りライフ…70…ここに来てから既に二桁はライフを使ったぞぉ…!」
「ご、ごめんね…」
「気にするな、寧ろ先生が倒れたら困るからなぁ!!」
そう言って椅子をくるくると回す新檀クロト
そんな新檀クロトを見ながら、そう言えばと口を開く
「ねぇクロ『新檀クロトだ!』新檀クロト、サオリ達は元気にしてる?」
「元気だ、寧ろ頑張りすぎなぐらいだ」
「そっか、良かった」
現在、サオリらアリウススクワッドは新檀クロトが立ち上げた会社ー『ゲンムコーポレーション』に身を寄せている
まぁ早い話が、新檀クロトが身を寄せる場所がないであろうアリウススクワッドをスカウトしたのだ
初めは迷惑をかけるとためらっていた面々ではあるが、
『神の才能を持つ私のために働いてもらおう!』
と新檀クロトが一方的に押し切った
なお、『私の才能のために働いてもらおう』とは言っているが、ホワイトすぎる会社なので安心して欲しい
それはそうと、先生はもう一つ気になることがあった
「新檀クロトって確かミレニアム出身だったよね?」
「そうだぞ、というかよく知ってたな」
「いやね、ユウカから話は聞いてたんだよね、その…結構天才だけどやばかった生徒がいたって」
「私の事を天才と呼んでいたのか、光栄だな」
フハハハハと笑いながら椅子を回し続ける新檀クロト
その時のユウカの様子は、疲れ切った目をしていたということは伝えないでおこうと決めた先生だった
「で、その話をしたということは、ミレニアムに戻る気はないのかという事か?」
「う、うん『残念だがそのつもりはないぞぉ』…理由を聞いても?」
「簡単な話だ、戻って私に何のメリットもない」
そこから新檀クロトが語った内容である
・私は必ず死んだと思われて恐らく生徒証は消滅している、よって今の私は所属ナシ
・サオリ達アリウススクワッドを養わなければならん
・そもそも戻る理由がない
「…以上だ、まぁ戻れって先生が言うなら考えてやらんこともないが」
「考えるんだね…まぁ私から無理に戻れなんて言うつもりはないよ」
「そうかぁ、それじゃ私は会社に戻るぞ」
「うん、気を付けてね」
そうして新檀クロトが出て行ったのを確認した先生は、ふと思い出した
「あ、そう言えばコタマの盗聴器…忘れてたな…」
今の会話を聞かれていたら、多分相当まずいことになるのでないかと思った先生
ユウカの話には続きがあった、それは
『ウタハはクロトの恋人だった、表向きは普通だったけど実は相当重くて今でも悲しんでる』
ということ
「ウタハが知ったらどうなるんだろ…」
もし生きていたら何をするか分からないとユウカは言っていた
が、自分が気にしても無駄かと判断した先生はシャワーを浴びることにした
…因みにここ最近新檀クロト印のものをシャワーで使っているせいか、先生の髪の艶が良くなっているのではないかと生徒の間で言われているのを、先生は知らない
「…くしゅん」
何か噂をされているような気がした
…それにしてもミレニアムに戻らないのか、か
正直な話を言うと、戻りたい
けどね…死人に戻る理由なんてない、ましてやあそこには猶更
死んだ人間が戻っても迷惑なだけだろうしね
やがて新檀クロトは、廃マンションにたどり着く
誰も見ていないことを確認して廃マンションに入って、階段を二段飛ばしで駆け上がる
そうしてとある部屋につくと鍵を取り出して扉を開ける
「戻ったぞぉ」
そう言いながら靴を脱ぐと、新檀クロトに向かって駆けてくる足音が聞こえる
視線をそちらに向ければ、既に新檀クロトに覆い被さろうとしていたけど
『PAUSE』
そうして新檀クロトが避けた後にまた時間を動かすと、新檀クロトが居なくなっところで転びそうになっている少女ーアツコ
「…何で避けるの?」
「そりゃ避けるに決まっているだろう、私は別に受け止めたりする人間じゃないからな」
そう言うと頬を膨らませるアツコ
だがそれを無視してリビングに向かう新檀クロトの後に続くアツコ
リビングに辿り着くと、試作品のゲームソフトを入れたVRを被ったサオリが椅子に座って、両手にコントローラーを持ってプレイしていた
「えぇい…ちょこまかと動くな…!」
何やら苦戦しているらしい、まぁ当然か
何せ最高難易度に設定してあるのだから
よくやってる方だとは思う、新檀クロトがデータを見てみれば既に最終盤の方まで進んでいた
普通の人間だったら最初のところで100回は死ぬ難易度なのだから、サオリはセンスがあるのだろう
新檀クロトがそんな事を考えていると、ゲームオーバーになったらしく、掛けていたVRを取り外すサオリ
「はぁ…はぁ…帰ってたのか」
「ご苦労ぅ、必要なデータは取れているぞぉ、その調子で頑張りたまぇぇ」
そう言いながらタオルを放り投げる
そのタオルで汗を拭きながら、サオリがふと疑問に思ったことを口にする
「新檀クロト、このゲーム発売する予定はないと言っていたが…じゃあ何で私にやらせてるんだ?」
発売予定はない、完全オリジナルゲームをやらしている行為が分からないサオリ
因みに新檀クロトと呼ぶ事は初日で慣れたメンバーである
「知りたいかぁ…錠前ぇ、サオリぃぃ」
「あ、あぁ…」
そう言うと椅子に座ってクルクルと回り始める新檀クロト
「私が今欲しているのはぁ、君達アリウススクワッドの戦闘データだぁ、今まで発売したゲームもぉ、データを採集はしているがぁ、君達はぁ、特殊部隊の中でも精鋭、ならばぁ、その動きをゲームに取り入れればぁ、最強の敵が出来上がるのだぁ!!」
フハハハ!!と笑いながら椅子を回し続ける新檀クロト
いちいち区切るのはどうなのかとツッコみたいサオリだった
すると、新檀クロトが回していた椅子を止める手
視線をそちらに移してみれば、何処か呆れた顔をしたミサキがいた
「どうしたミサキぃ、何かあったかぁ?」
「…これ、一応プレイデータが入ってる」
そう言うとUSBを差し出すミサキ
それを見た新檀クロトは狂気的な笑みを浮かべながら受け取る
「おぉ、感謝するぞぉ、聞いておくがどの辺までプレイしたぁ?」
「…終盤の一つ前まで、足りないんだったら何とかクリアするけど」
「いや、大収穫だぁ、褒めてやろう」
そう言うと椅子から立ち上がって歩き出す新檀クロト
やがて部屋の前で止まったかと思うと、ふと思い出したように顔をぐるりと向ける
「私はこれからクリエイティブに没頭するぅ、部屋から出てくるのは相当先だから自由にしろぉ」
そう言って部屋に入る新檀クロト
それと同時にリビングに顔を出すアツコとヒヨリ
「ご飯出来たよー…ってクロトは?」
「クリエイティブに没頭するって、多分声かけても出てこない」
アツコの言葉にそう返すミサキ
するとあからさまに落ち込む様子を見せるアツコ
「し、仕方ないですよ…それにこうやって私達を匿ってくれてるだけでもありがたいんですから…」
そう言って励ますヒヨリだが、何のフォローにもなっていない
実を言うと、このメンバーと新檀クロトは一度も一緒にご飯を食べていない
何せ匿って仕事を与えたのち、シャーレの手伝いに行ったのだ
「ほんと…勝手な奴…」
そう言うミサキだが、寂しさが隠しきれていない
「…早く食べるか、食べなかったらクロトが怒るからな」
そう言って隊のリーダーとしてメンバーを促すサオリ
「まだ、謝れてないのにな…」
そう呟きながら
完全防音のその部屋でキーボードをすさまじい勢いで叩く新檀クロト
そのパソコンの画面に映っているのは、新檀クロトが発売したゲームをプレイした生徒たちのデータ
そして、パソコンから伸びている線に繋がれているのは、僅かながら金色の輝きを放つガシャット
それは、新檀クロトが、あらゆる危険を弾き返せると意気込んで、開発しているガシャット
「あと少しだ…あと少しで…」
そう呟きながら、キーボードを叩き続けた
「…この声…そんな…まさか…」
その身に、いろんな意味の危険が及んでいることを知らずに
先生 女性
ゲンムコーポレーション
新檀クロトが立ち上げた会社
質の高いゲームやその他商品で徐々に名を上げつつある
なお、そのせいでカイザーに恨まれているが拠点が分からないのでハンカチをかみしめるしかない
『便利屋68』とは業務提携を結んでいる
まぁ、OWとかも出そうと思ってる
あの世界だったら開発しそうだし