政治の本質はフィクションだ
政治は演劇と同じ、国家が行うショーだ
小さな嘘はすぐバレるが、大きな嘘は真実になる
虚偽を想像する巨大なメカニズム、それが国家だ
大衆共に壮大で甘美な夢を見させてやるのが我々の務め、国家はそのためのドリームマシーンだ
ハインリッヒ・フォン・ヒトラー
トリニティ総合学園
ギヴォトスに存在する学園であり、三大学園の一つに数えられる
校舎はまるで宮殿かと見間違わんというほど豪華であり、礼拝堂や図書館などが存在する
当然そこに在籍する生徒も優雅で善良な生徒が多く、所謂お嬢様学校
ではない
内部には「パテル」、「フィリウス」、「サンクトゥス」と呼ばれる派閥が存在
そしてその派閥間で連日、陰湿な苛めや足を掬いあう騙し合いなどが横行しており、見た目はお嬢様学校であっても、内部では陰謀策謀渦巻くドロドロとしている人間関係が存在している
まるでどこぞの
そして学園の運営も、各派閥から選ばれた代表による『ティーパーティー』と呼ばれる生徒会が運営しており、その中から持ち回りで『ホスト』と呼ばれる代表を決めて運営していた
しかし先の『エデン条約』でのアリウス…
そしてそんな学園に
「お待ちしてたっす、檀クロトさん」
「いえいえ、わざわざお出迎えいただきありがとうございます、仲正イチカさん」
まるで別人かのような新檀クロトがいた
「最近はどうですか、正義実行委員会の方は」
「今は大分落ち着いてるっす、と言ってもエデン条約の前くらいに戻ったくらいっすけど」
「おやおや、そんなに忙しいのならばに私を迎えに出向いてくださらなくとも良かったのですが」
「大丈夫っす!それにクロトさんは『ティーパーティー』のお客様っすからね」
「光栄ですね、かの『ティーパーティー』のお客様と呼ばれるとは」
…誰だこいつは
ネクタイをしていないとはいえきちっとした服装で、謙虚な態度、トリニティの生徒にさわやかな笑顔を見せながら手を振る…
本当に誰なのだと言いたくなる
少なくとも我々が知っている新檀クロトではない
なお、トリニティ内ではこの性格と容姿から人気であり、ひそかにファンクラブなるものがあるとかないとか…真実は分からない
「他にも大変なんすよ、パテル分派の生徒たちが
「おやおや…まぁ気持ちも分からなくはありませんが、ミカ様は生きているうえにリーダー格が行方をくらましている以上敵討ちも何もないでしょうに」
「ほーんとそれっす…」
そうしてイチカと談笑しながら歩いていた新檀クロト、やがて、一つの扉の前にたどり着く
「それじゃあ自分はここまでっす、帰るときにまた」
「えぇ、あぁそうだ、つまらないものですがこれをどうぞ」
「あ、どうもっす…これ新しくできたスイーツ店のスイーツじゃないっすか!頂いていいんすか!?」
「ここまで案内してくれたお礼です、よろしかったら正義実現委員会の皆さんでお召し上がりください」
「ご丁寧にありがとうございますっす、それではまた」
「えぇ、では」
…本当に新檀クロトなのだろうか
そうしてイチカがステップしながら去っていくのを見届けると、扉をノックする新檀クロト
中から「どうぞ」という声がして、扉を開ける
その先にいたのは
「御機嫌よう、檀クロトさん」
「やっほー!久しぶり!」
「久しぶりだね、相変わらず元気そうで何よりだ」
当代の『ティーパーティー』である桐藤ナギサ、聖園ミカ、百合園セイアがテーブルを囲んでお茶会をしていた
それを見た新檀クロトは
「ったく…堅苦しい恰好は疲れるぞぉ」
そう言って首元のボタンを開けると、椅子にどかりと座り込む
「あと檀クロトという名はもう捨てた、これからは新檀クロトと呼ぶが良い!」
そう言ってフハハハと高笑いを上げる新檀クロト
…良かった、いつもの新檀クロトであった…いや良かったのだろうか…
「…こほん、本日は急に呼び出してしまい申し訳ありません、檀k『新檀クロトだ!』…新檀クロトさん」
そう言って軽く頭を下げるのは、ドン引きからいち早く回復した桐藤ナギサ
一方の新檀クロトはというと、足を組んで紅茶を飲んでいる
「…あはは、ちょっとびっくりしたけど相変わらずだね!」
「…少しは性格が変わってほしいと願った私が愚かだったよ」
他のメンバーもドン引きから何とか回復していつもの調子を取り戻す
「で、一体何の用だぁ?まぁ私の方もそろそろデータを回収しようと思ってたところだったがなぁ」
「あぁ、それについてはこちらにあります…セイアさんに関しましてはもう少し待っていただければ」
そう言って差し出されたUSBを手に持って眺める新檀クロト
「ほぅ、クリアしたのかぁ、流石は陰謀策謀渦巻くここでトップやるだけの事はあるなぁ」
「…誉め言葉と受け取っておきます」
冷静に答えるナギサ、実際言われていることは間違っていない
「あはは!ナギちゃん酷い言われよう!」
「君もよくクリアで来たなぁ怪力姫、その頭は筋肉で出来ているはずなのだが」
「もしかして喧嘩売ってる?売ってるよね?買うよ?」
頬に青筋を立てながら腕に力を入れるミカ
そんなミカを宥めるセイアとナギサ
やっと落ち着いたのはそれから十分後だった
何時ものことである
「で、今日お呼びしたのは一つ聞きたいことがありまして」
「聞きたいことぉ?」
「えぇ」
そう言うと真剣な面持ちになるナギサ
二人もどこか真剣さを醸し出している…新檀クロトはいつも通りだが
「単刀直入に聞きます」
「『聖園ミカはベアトリーチェと呼ばれる人物に脅迫されていながらも百合園セイアを守り通し、大切なものを失う覚悟でトリニティを崩壊から守り通した英雄』という噂を流したのは、貴女ではありませんか?」
その言葉を聞くと紅茶を飲むのをやめる新檀クロト
三人の表情を見てみると、どれも真剣な表情であった…あのミカさえもだ
「まず聞こう、その噂は真実なのか?」
「…この噂がトリニティで広まりだしたのは調印式のすぐ後からです、そしてそれに並行するようにこの文書を裏付けるような証拠が次々と出てきました、アリウスの生徒達から身をもってセイアさんを守るミカさんの映像、ミカさんが脅迫されている音声、そしてベアトリーチェと呼ばれる存在の会話…確実な裏付けも取れている証拠でした…まるで、仕込まれていたかのように」
「…」
黙り込む新檀クロト、そして更に言葉を続けるナギサ
「結果、ミカさんに対する処分は観察処分、ティーパーティーとしての権限も剥奪されることはなく、現在に至っています…しかし、弁護をした私達が言うのもおかしな話ですが事実とは明らかに異なっています」
「あの時、『裏切者』、『魔女』と呼ばれていたミカさんを庇う人は限られています、しかしトリニティ内部の心当たりがある人物は全て調べましたが結果は外れ、ならばトリニティの外…外部の人間である可能性が高い、しかし先生は…失礼ではありますがこんな大掛かりな事を行えるはずがない、トリニティの生徒たち全員が信用できる証拠なんてそう簡単に仕込めるはずがありません、となると残された可能性は一つ」
「新檀クロトさん、貴女があの噂を流し、尚且つ証拠を捏造したのではありませんか?」
そう言って黙り込む新檀クロトを見つめるナギサ
数秒後、ティーカップを置くと
パチパチパチパチ…
拍手をする彼女…新檀クロト
「流石、トップをやってるだけの事はあるなぁ、桐藤ぃ、ナギサぁ」
「何故、こんなことをしたのですか…貴女にとって利益など無いに等しい行動ではありませんか?」
ナギサには分からない、彼女の考えていることが
彼女のした工作によって、自身の幼馴染に対するヘイトは少ない
しかし、それらは新檀クロトに対してなんのメリットも及ぼさない
ナギサは今ここで、彼女…新檀クロトの真意を確かめようとしていた
もし、これらでミカを脅そうとしているのであれば、あらゆる手段を使って排除するという考えを持って
「利益がない…かぁ、寧ろぉ、私にとってはデメリットを阻止しただけだぁ」
「デメリットを阻止した…?」
スコーンを口の中に放り込みながらそう言う新檀クロトの言葉に疑問を口にするナギサ
デメリットを阻止するとはどういうことなのだろうか
「何故私がぁ、貴重なライフを4つも削りぃ、こんな工作をしたのかぁ…知りたいかぁ、桐藤ぃ…ナギサぁぁぁ…」
「え、えぇ…」
ナギサがそう答えると足を組んで腕組みをする新檀クロト
なお、その時にセイアの目線が若干暗くなったが…気の所為だろう
「簡単なことだぁ、聖園ミカがぁ、糾弾されてぇ、退学などの処分になればぁ、貴重なデータサンプルでもあるぅ聖園ミカとの接触がぁ、非常に困難になりかねなぁい、だからこの情報を流したぁ、それだけのことだぁ」
フハハハ!と笑う新檀クロト
別に新檀クロトにとって、トリニティが崩壊しようかなんだろうがどうでもいい、ただ聖園ミカというデータ収集の対象を失っては困るという理由のみでここまでしたのだ
一方のナギサはというと、あまりの理由に呆気にとられていた
データを取りたいがためにあのような大掛かりな情報を流したというのだろうか
それはミカも同じであり、自分に対するヘイトを少なくした理由がそんな事なんて…と落ち込みすらしていた
「…まぁ、そんなことだろうとは思ってたさ」
唯一セイアだけが、そんな事を呟いていた
「…こほん、失礼、取り乱しました」
「もー、ナギちゃんったらしっかりしないと駄目だぞ☆」
そう言ったミカの口にロールケーキをぶち込むナギサ
その早さは新檀クロトが唸るほどであった
もがもがと苦しむミカを他所に、ナギサはスコーンにジャムを塗っている新檀クロトと向き合う
「まず新檀クロトさん、貴女が流した噂や情報によってミカさんに対するヘイトは最小限に済んだだけでなく、『ティーパーティー』の信用失墜もかえって長年続いた政治に変革をもたらせました、『ティーパーティー』を代表…いえ、ミカさんの幼馴染として、感謝を申し上げます」
そう言って頭を下げるナギサ
『ティーパーティー』としての桐藤ナギサではなく、一人の少女として、結果とは言え幼馴染を守ってくれたという事に感謝を込めて
「私の才能を有難く思うがいい!フハハハ!!」
…新檀クロトはいつも通りだった
「そしてぇ、今日はぁ、君達にぃ、私からぁ、プレゼントを用意したぁ」
そう言って懐から取り出したガシャットを机の上に投げる新檀クロト
因みにミカは復活している、というより復活するまで待っていたのだが
「まず桐藤ナギサぁ、君にはこの『英国ガシャット』を与えよう」
「え、英国ガシャット…?」
「そうだぁ、そのガシャットを使うことでぇ、君は攻撃されている時でもぉ、優雅に紅茶を嗜むことができるのだぁ!!」
…つまり防御壁が展開されるということである
というか攻撃されているときに紅茶を嗜む事ができるのがこの世に何人いるであろうか
「そして百合園セイアぁ、君にはこの『予知ガシャット』を与えようぅ、失った予知能力を再び使えるようになるガシャットだぁ」
「あ、あぁ…ありがとう…」
…この女の才能は一体どうなっているのだろうか
セイアだってドン引きしているではないか
「そして聖園ミカぁ、君にはこの2つのガシャットを与えようぅ、有難く思うがいいぃ」
「あ、ありがとう…因みにこのガシャットは…?」
ミカがそう聞くと首を鳴らしながらそちらを向く新檀クロト
「知りたいかぁ…聖園ぉ、ミカぁぁぁぁ…」
「う、うん、というか貰った物が何なのかは知りたいかな…」
当たり前である
すると足を組み直して、得意げな表情になる新檀クロト
「まず1つ目は『マスブレードガシャット』、起動するとロケットブースターがついたコンクリートが出てくるからそれで相手を殴りたまえ、とんでもない筋力を持つ君専用のものだぁ」
「えぇ…な、なんてものを…」
ドン引きしているミカ達を他所に、説明を続ける新檀クロト
「そしてもう一つは『グラインドブレードガシャット』、起動中は左腕が使えなくなるがぁ、それを差し引いても十分な威力を持つ大型近接武器、これも君専用だぁ」
「…私のこと近接大好きとか思ってない?」
「思っていないぞ、まぁ怪力ゴリラ女とは思ってはいるがね」
「だったらその怪力味合わせてあげようか?うん?」
新檀クロトの言葉にキレるミカ
まぁゴリラと言われたら誰だってキレるであろう
一方のナギサやセイアは呆れながらもその光景を見ていた
…これが、新檀クロトとティーパーティーのいつもの光景であった
「あぁ、桐藤ナギサぁ、一つ聞きたいことがあるんだが」
「は、はい、何でしょうか」
「阿慈谷ヒフミとは上手くやっているのかぁ?」
「……はい、」
「ダウトォ」
「!?」
「……」
画面に映るデータを参考にして、キーボードを叩き、システムを作り上げていく
『ティーパーティー』に渡したガシャットは、私が目指してるガシャットを生み出す過程で出来た副産物
それに、必要なデータは集まった、後はこれらを合わせてシステムに反映して、作り上げるだけ
完成すれば…あらゆる危険から身を守る事ができる、究極のガシャットの完成だ
何が起こるか分からない、とりわけ先生は銃撃戦が頻繁に起きるギヴォトスでは何時死んでしまってもおかしくない
だから
「必ず…作り上げるぞぉ…」
私になにかあった時、サオリ達を任せられる存在を守る為に
「…嘘」
「…これは、驚きましたね」
「クロトは生きてる、証拠も全て出した…生徒証を再び発行出来るはずだ」
「分かりました、生徒証を発行しましょう…ところで檀クロトさんの居場所は掴めているんですか?」
「いや、まだだよ…如何せん写真だけだと何処に居るのかは分からなくてね…チーちゃん達にも協力はしてもらってるけどね」
「まぁいずれ見つかるでしょう、あの子達に不可能なんてない筈…と言い切れないのがクロトなのよね…」
「なに、心配はいらないさ」
「何処に居ても、必ず見つけ出して、一緒に暮らすんだから」
「…クロトさん、死んだかもしれませんね…」
「…あんなに悲しんでたのに、生きているってわかったらあぁなるわよ…まぁ、御冥福をお祈りしておこうかしらね」
「っくし!…寒気かぁ?まぁいいか」
ここまで読んで、訳が分からないだろう
安心しろ、私も何が何だかもうわかんない
疲れてるから寝る