彼のように圧倒的な才能はない
だから、常に努力をしてきた
その結果が、檀クロトという少女なのだ
「フハハハハハ…ハァーッハハハハハ!ハハハハハ!」
『ゲンムコーポレーション』に存在する新檀クロト専用クリエイティブ部屋
完全防音が施されたその部屋で、新檀クロトが、高笑いをしていた
顔にはとても深い隈が出来ており、一体何日寝ていないのかと
その手にはとあるガシャットが握られている
トリニティから帰ってこの部屋に籠り、過労死でいくつものライフを削っていた
そして今日、遂に完成したのだ
「やはりぃ…私の才能はぁぁぁぁ…神だぁぁぁぁぁ!!!」
フハハハハハハハハハハ!と笑いながらガシャットを掲げる新檀クロト
そしてそれを持って外に出ようとした瞬間
「うっ!?」
そう言って倒れこむ新檀クロト
そして、その体が消滅する…かと思えば土管から飛び出してくる
「残りライフ…51…!!」
そう言って倒れ込んだ際に落としたガシャットを拾って部屋から出る新檀クロト
「あ、新檀クロト…何持ってるの?」
そんな新檀クロトに声をかける、ソファで休憩していたミサキ
そんなミサキに首をぐるりんと回してミサキの方を見る新檀クロト
「知りたいかぁ…戒野ぉぉぉ、ミサキぃぃぃ…」
「いいから、早く教えて」
新檀クロトの反応に全く興味を示さないミサキ
そんなミサキの態度に気を悪くした様子もなく、手の中でガシャットを回しながら話し始める新檀クロト
「今まで私はありとあらゆる所に開発したガシャットや武器を提供し、使用した際のデータを回収していたぁ…それは何故だと思うぅ?」
「何故って…そう言えばなんで?」
ミサキがそう言うと腰を曲げて指さす新檀クロト
「それはぁぁぁぁ、全てがぁぁぁ、このガシャットを開発するためだぁぁぁぁ!フハハハハハ!!!」
そう言って手に持っていた金色のガシャットを掲げる新檀クロト
ここにきて、今まで見てきたガシャットと違って輝かしく見えるガシャットであった
「何そのガシャット…大分派手な色がついてるけど」
そう言うと高笑いをやめて改めてミサキの質問に答える新檀クロト
「その名も『ハイパームテキ』!今まで採集したデータを全て詰め込みぃ!ライフを幾つも削りぃ!開発したぁ!まさに最強で無敵のガシャットだぁぁぁぁぁぁ!!!」
ハーッハハハハハ!!!!ブハハハハハハ!!と笑う新檀クロト
そんな新檀クロトを見て、ミサキはドン引きし、大きな声で笑いだすから何事かと顔を出したサオリらアリウススクワッドのメンバーであった
シャーレのオフィスビルにある先生の執務室で、先生は書類と格闘していた
相も変わらず銃撃戦が頻発しているギヴォトス、そのせいで書類が減ることはない、増えることはあるが
「ごめん先生、私がもう少ししっかりしてればゲヘナ内の書類がこんなに多く…」
「いやいや!ヒナのせいじゃないよ!」
申し訳なさそうにそう言いながら手伝ってくれるヒナにそう言う先生
実際問題ヒナたちだけじゃどうにもならないのだから仕方がない
そんなふうにヒナを慰めながら書類をしていると、扉が勢いよく開く
何事かと思いそちらに視線を向ければ
「先生ぃぃぃぃ!君にプレゼントだぁぁぁぁぁ!!」
一カ月ぶりに見る新檀クロトが、手に金色に輝くガシャットを持ちながら、そう叫んでいた
「ひ、久しぶりだねクロt『新檀クロトだ!!』…し、新檀クロト」
「一か月ぶりだなぁ先生、相変わらずシャーレはブラックの様だなぁ」
そう言いながら入る新檀クロト
そこでようやく、ヒナがいることに気付く
「誰かと思えば空崎ヒナではないかぁ、久しぶりだなぁ」
「…そうね、貴女が陸八魔アルの口座凍結解除を持ち掛けてきた時以来ね」
それもそうだなぁと言いながらいつものテンションで笑う新檀クロト
先生はというと、まさか新檀クロトも関係していたとは知らなかった
そう言えば新檀クロトが経営する『ゲンムコーポレーション』は『便利屋68』と業務提携をしているとヒナから聞いたが…それも関係あるのだろうか
「そ、そういえばプレゼントって?私に何かくれるの?」
「そうだぁ、というより現時点では先生しか扱えないからなぁ」
そう言うと懐から何か取り出す新檀クロト…そして何処か警戒しているヒナ
まぁヒナとしては一体何を取り出すつもりなのか分からないから警戒するのは当然だろう、寧ろ警戒しない先生がおかしいのだ…まぁギヴォトス内の話にはなるが
ましてや目の前で撃たれた光景を目にしているのだから
そんなことは露知らずに、懐から取り出したものを先生に差し出す新檀クロト
「や、やけに金色に輝いてるね…というより見たことないけど…新しいガシャット?」
差し出されたガシャット…『ハイパームテキ』を受け取りながらそう言う先生
すると腕組をして、仰け反るような体勢になる新檀クロト
「今まで私はミレニアム以外のギヴォトスに存在する学園全てに開発したものを提供してきたぁ、その理由はありとあらゆる生徒の戦闘データを取るため…それらデータを全てガシャットに詰め込むことによってぇ、ギヴォトス中に存在するありとあらゆる攻撃から身を守る…その名も『ハイパームテキ』が完成したのだぁ!!」
ハーッハハハハハ!!と高笑いを上げる新檀クロトと、それを見てドン引きする先生とヒナ
暫くして高笑いをやめたかと思うと、再び説明を始める新檀クロト
「だがそのガシャットには大きな欠点があってだな…私を始めとしたギヴォトスの人間が使用すると10秒間しか持たないのだ…しかぁし!!」
そう言って先生を指さす新檀クロト
「先生、君ならばぁ!!ギヴォトスの外から来た存在である君ならばぁ!!その『ハイパームテキ』をぉ!存分に扱うことができるはずだぁ!!」
そう言って先生が持つガシャットを指さす新檀クロト
仮にこの話が事実なのであれば、先生の身の安全は確実なものになる
何せギヴォトスでは銃撃戦が日常茶飯事で銃弾一発でも先生には命取りとなるのだから
「でも先生に危機が迫ったときに咄嗟にそれを起動して守れるとは思えない、言っちゃ悪いけど先生鈍くさいし」
「ひ、酷いこと言うなぁ…」
しかしヒナの言うことにも一理ある
頭に銃口を突き付けられている状態でこれを出して起動できるか…答えは否
当たり前である
しかし、その辺も新檀クロトは想定内であった
「問題ないぃ、そのガシャットは適合者の危機に反応して自動で起動するようにプログラミングしてある…だからいくら先生が鈍臭かろうとぉ!!問題はなぁぁぁい!!」
「鈍臭いって強調するのやめてよぉ!」
新檀クロトの言葉に耐えかねた先生が、そんな泣き声を上げる
だがそんな先生など眼中にないのか
「私の神の才能にぃぃぃぃ、不可能などなぁぁぁぁい!!!フハハハハハ!!」
そんな高笑いを上げる新檀クロトだった
そしてそんな新檀クロトを見て、ヒナは頭を抱えた
面倒だと思いながら
「戻ったぞぉ」
そう言ってオフィス兼拠点のドアを開ける新檀クロト
『煩い』とヒナに言われ、用事も終わったのでそのままお暇した
そして途中で今日はすき焼きにでもしてやろうかとスーパーに立ち寄り、帰還した新檀クロト
…なのだが、どうも血の匂いがする
何事だと思いつつ先に進むと、そこには傷を負ったサオリとそれを治療しているアリウススクワッドのメンバーが
確か今日は洗剤などの日用品を買いに出かけたはずだが一体どうしたというのか
と、帰ってきた新檀クロトに気付いたサオリ
「し、新檀クロト…っつう…!」
「リーダー動いちゃダメ」
そう言って再び寝かされるサオリ
「なぁにがあったぁ」
「帰りにカイザーと不良生徒達に襲われたの…私たちは大丈夫だけど殿を務めたサっちゃんが怪我して…」
新檀クロトの言葉にそう返すアツコ
成程なぁと言いつつ買ってきた食材を机に置くと、近づいてサオリの様子を見る新檀クロト
骨とかが折れていたらトリニティで暇つぶしで学んだ医療が必要になるかと思ったが、軽い捻挫と傷だけなので出番はないかと判断する
因みにだが、救護騎士団からぜひ入団しないかと声がかかるほどである
まぁそれはさておき、サオリの怪我の具合を一通り確認する新檀クロト
「軽い捻挫と裂傷かぁ…傷口を洗って捻挫したところは固定しておけぇ」
そう言うと何処かへ歩き出す新檀クロト
いつものクリエイティブ部屋へ行こうとするのかと思いきや、その部屋の前を通り過ぎて外に行こうとしているではないか
「何処行くの?」
「ちょっとした用事を思い出したぁ、君たちはすき焼きでも作って食べていたまぇぇ」
そう言って外へ出ていく新檀クロトだった
「見つけたぞぉぉぉ…カイザァァ、PMCぃぃぃぃ!」
それから数十分後、新檀クロトの姿はカイザーPMCとヘルメット団の報酬受け渡しが行われる場所にあった
いきなり上から降ってきたかと思えば、そんなことを叫ぶ存在に困惑する両者
まぁすぐさま敵だと判断して銃を構えるのは流石というべきなのか
「誰だお前」
「君たちに世話になった部下の上司だぁぁぁ…」
不良生徒たちの言葉にそう言うと懐からスマートフォンを取り出す新檀クロト
なお、カイザーPMCの三分の一は新檀クロトに完膚なきまでに叩きのめされた者たちであり、腰が引けていた
まぁ不良生徒たちは知ったことではないが
「私の貴重な実験サンプル兼部下を傷つけてくれたお礼だぁ…最近アップグレードしたこいつでぇぁ、相手をしてやろうぅ」
そう言ってスマートフォンに何かを打ち込む新檀クロト
そして
『standing by』
『complete』
そんな低くくぐもった音声が流れたかと思うと、黄色い光と共に新檀クロトの両手にトンファーのようなものが装着される
明らかに銃の方が有利なこの状況で、何故近接武器を選択するのか
それらが分からない両者は笑って馬鹿にした、何と愚かな選択なのかと
…なお、数分後に、それらは悲鳴と泣き顔に代わることとなる
「戻ったぞぉ」
「あ、おかえり…今日もクリエイティブに没頭するの?」
帰った新檀クロトにそう声をかけるアツコ
何をしていたのかは聞いたら駄目な気がしていた
「そうだぁ、まだクリエイティブは終わっていなぁい」
「そっか…」
そう言うアツコの傍を通り過ぎてクリエイティブ部屋の扉に手をかける新檀クロト
と、そこで思い出したかのようにリビングに顔を出す
「サオリぃ、怪我の具合はどうだぁ?」
「あ、あぁ…まだ少し痛むが、問題ない」
「そうかぁ…ならば君たちに一週間の休みを与えよう」
「!?問題ないって…」
「怪我をしているのに仕事などさせられるかぁ…いいから黙って神からの恵みを有難く受け取れ!」
フハハハハハ!と笑いながらクリエイティブ部屋に籠る新檀クロト
残されたメンバーは唖然としていたが、言うとおりにしようと考え、すき焼きを食べ始めた
「残りライフ50…やっぱり無暗に使うもんじゃないな…」
そう言いながらキーボードを叩く新檀クロト
まだ50もあるのに何を言っているのか
「まだだ…まだゲーム開発とガシャットの開発は終わっていない…!」
そう言ってVRをかけて、キーボードを叩く新檀クロトだった
「ねぇ先生、一つ聞きたいことがあるんだけど」
「珍しいね、ウタハがシャーレに来るなんて」
「それもそうだね…さて、聞きたいことなんだけど…クロト、ここに来てるよね?」
「…な、ナンノコトk『正直に答えてほしいなぁ』はい、何ならついさっきここに来ました」
「教えてくれてありがとう…居場所は知ってるかい?」
「いや、それは私も本当に知らないんだ…ごめんね?」
「…うん、本当みたいだね、ありがとう先生、お邪魔したね」
「うん、またね」
「…ごめんねクロト、でもあの状態のウタハに嘘はつけないよ…」
「…段々と近くなってきてるね、クロト」
「待ってて」
「モウスコシダカラ」
残りライフ 50
ハイパームテキの開発に18
カイザーと不良生徒集団との戦闘で1
適合者じゃないから灰になる