私も、これを見ている皆様も、いつもと変わらない何気ない日常の中で、
選択や決断を迫られる時がきっと来るでしょう。
週末。今日は家から出なかった。
受験勉強の合間、洗濯をしながら今後の事について考えていた。
一花、五月・・・・茜。
俺を好いてくれる子が3人に増えてしまった。
【茜ちゃん。もしかして、ナギの事好きなんじゃ。】
三玖先生の言うとおりだった。俺がアホだった。気づかなかった。
もう誰もバカにできない。というか風太郎の方が俺よりマシだと思う。
よく考えてみろ。あいつ、三玖から修学旅行の時に告白詐欺されたとき、
よく知ってるぞって言ったもん。
【ああ。よく知ってるぞ・・・・だが・・・・】
あの野郎、今まで三玖の好意をわかっててスルーしてやがったんだ。
畜生。超鈍感だと思ってた。俺の方が酷い。
三玖のアシストなんてするんじゃなかった。マジでピエロじゃないか俺。
どいつもこいつも恋愛強者め。こちとら彼女なんていたことないんだぞ。
もっと手加減しろ。ハンデキャップに異議を唱えます。
休日だったが・・・外出する気にはなれなかった。ひたすら、自分の家で考えた。
・・・・・・・・・・・・答えは出ないんだがな。
翌日の学校。
一人ぼっちで登校していた。なんか今はもう風太郎にすら会いたくない。
あいつ今まで俺をだましてたんだぞ。絶対許さねぇ。
結局あれから風太郎は四葉くんと付き合っているんだろう。一回ちょっとだけ滅べ。
登校して下駄箱を開けた時。
・・・小さな手紙が入っていた。このご時世に、手紙ね・・・・
外側から見て差出人の名前は書いていない。
しかし。手紙を止めるシールは3つのハートマーク。
・・・・これでもう差出人がわかる。
後で読もう。
手紙を持って教室へ。まだ朝。当然ここで開けるわけにはいかない。
「有坂コラ。元気ねぇーな。どうしたんだ。」
「前田くんか。色々あってね。」
「君に元気が無いのは珍しい。どうだい、特別にこの僕に話してみないかい?」
「武田くんは・・・・・今回頼りにならんなぁ。」
「な、なんと!」
凸凹コンビから声を掛けられる。
別に元気がないわけではないけれど。気になったらしい。
「まァ、こういう時おめーは相談なんてしねぇからな。
どーせ何があったかなんて喋ってくれねえよ。武田。」
「よくわかってるねぇ前田くん。有坂博士の称号を上げよう。」
「嬉しくねぇな・・・」
「秘密の多い男、ってやつだね?」
嬉しくないらしい。
俺が四葉くんから貰った時はちょっと嬉しかったけど。
四葉くんはいつも元気だなあ。
「まあ、気が向いたら話してみろや。ダチなんだからよ。」
「そうだよ?僕たちは良きクラスメートで、友達だ。何でも言ってくれたまえ。」
「気が向いたらね。ありがとう。」
彼らなりに心配してくれているという事はわかった。
覚えておこう。ありがたい限りだ。
ちなみに風太郎は始業時間まで自習をしていた。机から顔も上げなかった。
親友が困っているんだぞ。気づけや。許さん。
昼休み。
飯も食わずに屋上に来ていた。
授業中、五つ子の誰をも見る気にはなれなかった。
誰もいないな。こいつを見る時が来た。
手紙の封を切り、開ける。
・・・・・・・・・・・・・・・・
『ナギ君 ナギくん 凪センパイ』
『この手紙は、3人で書いたんだよ』
『茜ちゃんから、話を聞きました』
『こういう形を取らせてもらったっす』
『私たちは気づいてたよ。茜ちゃんがナギ君を好きだってこと。』
『ライバルが一人増えてしまいました。』
『自分にとっては、元から二人がライバルだったっすよ?』
『ナギ君は、最近モテモテだから。』
『あのライブステージを見た後輩に囲まれて、デレデレしてましたね』
『クラスの皆に自慢なんかしなきゃよかったです。』
デレデレって。してねぇよ。
困ってただろ明らかに。正体バラされんばかりの勢いだったんだぞ。
助けてくれよ。
『でもね。もうライバルが増えるのは、嫌なの。』
『私も、あまり時間をかけたくはありません。』
『自分もっす。何年も前から好きだったのに。』
『だからね?』
『申し訳ありませんが』
『月曜日の今日、答えを出してほしいっす』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何。
今日・・・・・・・・だと。
『私、今日はロケの都合で早く帰ってこれるの。学校に顏出せるんだ~。』
『中々無いチャンスです。帰ってこれる日でも、最近の一花はいつも遅くて。』
『流石女優っす!すけーるが違いますね!』
『ナギ君』
『ナギくん』
『凪センパイ』
『中野 一花は、19時に、屋上で、貴方を待っています』
『中野 五月は、19時に、教室で、貴方を待っています』
『朝倉 茜は、19時に、グラウンドで、貴方を待っています』
『一つだけルールを作ったんだよ』
『ナギくんが誰を選んでも、恨むようなことはしません』
『選ばれなくても、凪センパイを困らせるようなことはしないっす』
『わたしは、修学旅行で言ったとおり、ナギ君のこと、好きだよ?』
『正直・・・・私はまだ、はっきりわからないです。
好きなのか、憧れによる尊敬なのか。でも、二人きりで話がしたいです。』
『自分は、言わなくてもわかりますよね?わからないなんて言わせないっす!』
『だから貴方を』
『この場所で』
『待っています』
『中野 一花 中野 五月 朝倉 茜』
「・・・・・」
今日、19時。・・・今日だぞ?
本当にもっと手加減してほしい。
心臓の鼓動が早くなる。・・・・・・・・・・一体どうすれば。
「読んだのか。凪。」
「風太郎。」
屋上に風太郎が来ていた。いつから居たんだ。振り向いたらもう居たぞ。
こいつ、狙ってやがったな。このタイミングを。
「それを書くに当たって、俺も相談を受けたからな。
これを書くことで、お前を追いこむ事にはならないか、と。」
「やはりお前か。許さんぞ。」
「な、なんだ急に。何の話だ。」
「うるさい。今まで俺の事を騙しやがって。あざ笑ってやがったな。心の底で。」
「お、落ち着け!話が見えん。」
「絶賛俺は今自分の心が見えねぇよ。」
立場が今までと逆転した。
たまにはいいだろう。ワガママを言わせてもらおう。
「ともかく!大丈夫だとあいつらには伝えた。
その結果がその手紙だ!何と書いてあるかまでは知らないがな。」
「・・・・大丈夫じゃねぇよ・・・・」
大変いい迷惑である。大きなお世話。しかしまあ、そうだよなあ。
答えなきゃいけないよなあ。
「・・・落ち着け。お前はやれる男だ。全国3位の俺が保証してやる。
お前はどんな難問も、自分なりに答えを出してきた。例えそれが間違っていようとも。
無回答なんてところを見たことがない。」
「・・・・・・」
「だから、今回も答えを出せるはずだ。」
「なんでお前にそんなことがわかる。」
「わかるに決まってんだろ。もう6年近くの付き合いだぞ。
お前の事はこの学校の誰よりも一番よく知ってる。」
「・・・・・・・・・修学旅行では俺の事わからなかったくせに。」
「はぁ?何の話だ。では、俺は行く。今度はお前の番だ。祈っているぞ。」
「・・・・わかったよ。ありがとう。」
まあ、こいつなりに俺を案じてはくれているようだ。
あっという間に放課後。まだ時間はある。ここからが勝負だ。
授業なんて何も聞いちゃいない。しっかり考えよう。受験生としては終わってるが。
一度、教室の外、いや・・・・学校の外に出ることにする。
「有坂くん?急いでるようね。」
「毛利さん。ああ。ちょっとね。」
「一言だけ聞いてくれるかしら。」
「なんだい。」
「あなたの道に光があらんことを。」
「・・・・わかったよ。」
さすが毛利さん。筒抜けらしい。
俺の行動を見て察したんだろうな。
学校外。
公園に来ていた。この前、茜とひと悶着会った公園とは別だ。
夕焼け。17時を回ったかな。・・・・・ふー。
「あー!有坂さんじゃないですかー!こんなところでどうしたんですか?」
「やあ、四葉くん。」
四葉くんが通りがかった。
偶然かどうかは怪しい。
「その、ありがとうございました!これ、お返ししますね!」
「・・・お守りか。」
清水寺の恋愛守を返される。
一応、受け取っておこうかなぁ・・・・・。
「風太郎とは上手く行っているかい。」
「はい!この間、二乃と三玖と話し合いました!」
「あの二人か・・・・手ごわかったんじゃないか。」
「そうですねー。でも、スッキリ出来ました。二人は、ライバルです。」
「ライバル・・・?」
「はい!隙を見せたら、上杉さんがとられちゃいます!」
あの二人らしい。やけ食いした後に話をしたんだろうな。
「その上杉さんをほったらかして、こんなところで油売ってていいのかい。」
「今日は大丈夫です!上杉さんに有坂さんを・・・・あ。」
「言われたわけか・・・・」
「う、うぅ。みんなにはヒミツにしてください・・・・」
なんも聞いてないけどボロを出した。
それにしても 上杉さん なんだな。
まだ時間がかかるようだ。
「ありがとう。」
「ど、どういたしまして!」
「これは、返しておこう。」
「え!?」
恋愛守を四葉に投げる。
・・・・気が変わった。
「い、いらないんですか?」
「ああ。言っただろう?俺は夢を見ない。
そんな願掛けに期待なんてしないんだ。不要なものさ。」
「そ、そうですか・・・でも、私は何をお返ししたら・・・・」
「ジュース、買ってきてくれるかい。」
「は、はい。何を買ってくれば良いですか?」
「抹茶ソーダ。今はあれが最高に飲みたい気分だ。」
「え。・・・わ、わかりました!すぐ買ってきます!」
頭に麻酔をかけよう。困った時の抹茶ソーダ。
あんまり好きではないが、今は絶好の機会。四葉くんに依頼した。
願掛けはしないと言ったが・・・・頭痛守だけは、手放せないな。
こいつを買ってからはまだ1度も薬を飲んでない。
そう思うと、神頼みも悪くないと、少し思えた。
だが、恋愛なんて大事なものを他人に任せる気にはならんな。
例えそれが神であろうとも。自分の道は自分で決めたい。
迷える子羊の時間は終わったんだよ。
「有坂さーん!いきますよー!」
「ああ。いいよ。」
四葉が抹茶ソーダを投げてきた。
・・・・ナイスボール。無回転の山なりでとても取りやすかった。
「じゃあ、すいません!私はこれで行きますね!頑張ってください!」
「ああ。ありがとう!」
「祈ってまーす!」
・・・キミもそう言うのかぁ。応援してくれるのは嬉しいけれど。
ベンチに座り、抹茶ソーダを開けた。刹那。
プッシャァァァァ
「あらぁぁぁぁ!?」
缶から緑色のスプラッシュが噴出した。抹茶ソーダ・・・当然、炭酸である。
四葉くんめ。そういえば公園の中には居なかったな。
缶を持った状態で走ってきたんだ。クッソ。やられた。
本人にその気は無いだろうけど。
「・・・・・・」
顔面にいくらかかかった。
あの二人。ぜってぇ許さねぇ。
まったく・・・・・・
「・・・・ふふふ・・・・あっはははははは!!!」
なんだか笑えて来た。
あーあ。また高笑いでちゃった。直さなきゃいけないのに。
こんなに笑ったのは久しぶりだ。いつ以来だろうか。覚えていないな。
まあ、こんな話を・・・・・・・・・・あ。
全くバカバカしい。いったい何を悩んでいたんだ俺は。
今、とっさに浮かんだじゃないか。
このバカバカしい話を共有したい、一人の女性の顔が。
そうだ。俺はその子が好きなんだ。
18時40分。
まもなく、学校に付く。
部活動の連中は既に終わっている。
帰宅途中の生徒と何人もすれ違う。
見知った顔・・・・陸上部もいた。
グラウンドは間違いなく空いているだろう。
教室は、一つも電気がついていない。
・・・てっきり電気をつけて勉強しているかと思ったが。
グラウンドと教室がその状態なのだ。
屋上に人がいるはずもない。
・・・・教職員は、まだ残業をしているようだが。
間違いなく、生徒はあの3人しかいないだろう。
玄関の前についた。
暗闇。辺りは既に暗いが、さらなる暗がりに意識を傾ける。
一度立ち止まって、目を瞑る。
・・・・やはり、そうだ。ある一人の顔しか思い浮かばない。
さあ、行こう。
俺は、誰のところに行くべきなのか。
・・・・・間違えた。そんな難しい話じゃない。
俺は、誰のところに行きたいのか?
既に答えを知っているはずだ。
心の声に、従おう。
何処へ向かったかは皆様に選択して頂きます。
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