記憶はどこに?   作:くしゃ


原作:リバース:1999
タグ:残酷な描写
belgdolsiさんの「記憶はストームの中に」の三次創作です。
なぜソネットがいないのか、を補完しようとした内容です。

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ストームの中に

 そっと手を添えてその頬を撫でると、ふわり、ふわりとしずくが浮き上がった。

 瞼を遡るようにして天へ、それは流れ出る。

 赤く透き通った脳漿が。

 

「ヴェルティ?」

 

 そこまでのことを、ソネットはよく覚えていない。

 ただ、雨粒のない屋根の下、ひとり、またひとりと消えていく中で、ふとヴェルティに視線を向けたとき。

 彼女からなにかが宙へ立ち昇っていくのをみたとき。

 駆け寄って、声をかけて……

 

 

 ソネットは瞳孔と瞳が別々となって、白目からこぼれるのをみた。

 頭蓋が輪切りになって浮かんでいく。

 手を伸ばして、それに指先で触れると、まるで水に手を差し込んだように崩れる。

 眼窩から、涙のように脳漿があふれ、浮かんでいく。

 

「ヴェルティ?」

 

 

 気がついた時、ソネットは旧友のミスメル・Jrとともに病室にいた。

 自分がどうしてここにいるのか尋ねたそのとき、彼女が酷く驚いた顔になって、それから……

 

 1920年代、ストームは世界を終わらせることもなく終息した。

 だが、時代の替わりに、一人の少女の記憶を消し去っていたのは、聖パブロフ財団でも一部の人間しか知らない事実であった。

 ソネットはそのひとりとなった。

 

 

 ヴェルティ。

 穏やかで責任感が強く、計画性があって行動力もあり、そのうえで優しくて、凛としていて……

 

 

 目の前に、見覚えのある少女が座っているのを、ソネットはみた。

 彼女が、「あなたは?」と問いかけている。

 誰に?

 

「わたし?」

 

 不思議そうな表情に、ソネットは自らも、不思議そうな声をこぼした。

 なぜ問いかけるのか。

 いや、それよりも。

 

「あなたは」

 

 世界が遠ざかっていく。

 視界が急に狭くなって、頭が冷たくて、おかしいから触れようと思った。

 なぜかお尻が痛い。

 どうしてか遠ざかったヴェルティが驚いた様子で、心配そうな顔になって。

 大丈夫ですよ、そう返そうと思って。

 ふと息が苦しいことに気づいた。

 

 

 彼女が近づく。

 その顔をみた。

 穏やかで責任感が強く、計画性があって行動力もあり、そのうえで優しくて、凛としていて……

 まさに美そのもの。

 あなたを知っている。

 

 肺を振り絞り、声を出そうとして、耳がきぃんと鳴っていることに気が付いた。

 なぜ?

 何をいっているのか、聞き取れない。

 

 ヴェルティ。

 彼女が私に触れている。

 言葉は伝わらないけれど、確かにその心が……

 心。

 私は遠ざかる視界の中で、彼女の顔をみた。

 無垢で不安げな表情をみた。

 

「だれ?」

 

 

 気がついた時、ソネットは旧友のミスメル・Jrとともに病室にいた。

 自分がどうしてここにいるのか尋ねたそのとき、彼女が寂しそうな顔になって、それから……


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