話の中で出てくる設定らしきものは9割くらい妄想で補完した捏造です。
謎時空。
ある日の正午前、ヴェルティが偶々一人になり、
更に約束もなかったため一人外食で昼食を済まそうと思っていたところに、意外な人間が訪れた。
「よぉ。あんたも今一人か?なんだったら今後の仕事の打ち合わせ込みで飯でも一緒に喰わねえか」
パヴィアだ。
軽薄そうな装飾過多のサングラスをかけた白黒に髪を染め分けた青年は、
口元に軽薄そうな笑みを浮かべてヴェルティを誘った。
「いいよ。何か希望はある?」
「普段なら俺の連れどもにも食わせられる飯屋っていうんだが。
今日は連れの犬どもはたらふく食った後でよぉ。
食後に甘いものがつけられるところならどこでもいいぜ」
「そう。犬の食事までカバーできる店だと知らない所だったけど、それなら当てがある。行こうか」
「はいはい。お供させて貰いますぜボス」
そうして、二人はスーツケースを置いた拠点から、
10分ほどでたどり着く大通りに面したカフェーに到着する。
入店し、カウンター席に並んでつくと各々適当にオーダーする、のだが。
パヴィアは食後のデザートを決めるのに、若干時間をかけた。
それを見たヴェルティは、普通メインで迷うものだろうに、よほどデザートが好きみたい、と思った。
「それで、仕事の打ち合わせだっけ?」
「あー、まぁ打ち合わせって言うほどのモノになるか分からねえが。
俺のターゲットになったお可哀そうな皆様は全員「処理」したぜ。
それも殺し屋流じゃなく、注文通りに「財団の定める手法」に従ってな。
俺に良い子のお仕事させたんだからボーナスが欲しいくらいだぜ。
「そう。それは何より。何か困ったことはなかった?」
「しいて言えばターゲットが軒並み弱くてちぃーっと刺激が足んなかった事くらいかね」
「君は頼もしいな。パヴィア」
「は!それは嬉しいね!あんたは悪くねえ、長く付き合いたいタイプの依頼人だから、
そういってくれるとありがたいぜ」
ニヤリと口角を上げたパヴィアに、そっとヴェルティが微笑みかけるとしばし会話が止まる。
そして、青年が会話の種を探すようにサングラスの下で視線を動かしている途中で、
注文した料理が提供された。
「お。きたきた。食おうぜボス」
「そうだね。美味しそうだ」
「見た目だけ良くても中身はなんて人間には…あーすまん。飯時の話じゃなかったな」
「察してくれて助かるよ、パヴィア」
その後は、静かに食事が進み、デザートが運ばれてくる段になってようやく会話が戻ってきた。
「あー、これは俺の神秘学の話なんだが」
「へぇ、どんな話?」
「俺の神秘学は犬「のような生物」を呼び出して嗾けるって感じなんだ。
これがなかなか難儀な能力でよぉ」
「ふーん。例えば?」
「第一に、飯をやる必要がある。生き物なんだから当然だよな。
呼び出さない間は食わせなくていいのかって思ったことはあるが、
万が一を考えて試したことはない。
第二に犬どもには適度な「運動」も必要だ。
まぁここら辺は俺がこんな家業をしてるのにも関わってくるんだけどよ。
あいつら狩猟する生物だからか、敵を追って長距離を走る時が一番体力使うんだよ。
休日にあいつらを散歩させるとなると一苦労どころじゃないんだぜ?マジでスタミナの化け物。
まともに付き合ってたら俺が次の日起き上がれなくなっちまう」
流暢に語りつつ、決して洗練されたテーブルマナーではない手つきで、
それでもデザートを零さず食べる姿に、
ヴェルティは洗練された野生とでもいうべきものを感じた。
「確かにそれは大変そうだ。私に雇われるならともかく、財団に拘束されるタイムキーパーなんて、
とてもじゃないけれどできそうにないね」
「そうだなぁ。ま、俺は俺の神秘学、気に入ってるがね。
ピーターもアンドレイも、マレフィセントもトニカとレオンも犬どもは皆可愛い。」
「自分の犬たちに愛着がちゃんとあるんだね」
「当たり前だぜ。愛情が無くてこの神秘学が扱えるかってんだ。俺の勘だがな。あいつらを雑に扱えば、
次の瞬間かみ殺されるのは俺自身だと思う」
「それは……本当?」
あまりに真に迫って言うパヴィアに、思わずヴェルティは前のめりに聞いてしまう。
「勘だよ、勘!まぁ少なくとも、それくらいの覚悟で俺は犬どもを使ってる」
「……そう」
「だから……なぁボス。犬だから犠牲にしていい、なんて指示は出さねえでくれよ。
もしそんな指示が俺の耳に入ったら。俺の銃はあんたの頭を弾くかもしれねえ」
「はぁ。肝に銘じておくよ。Mr.キラー」
「おう。よろしくな。ここの払いも一緒に」
「はいはい。雇い主の威厳をご覧あれ」
「よっし。ごっそさん、ボス」
若干、剣呑なデザートタイムが終わり。
二人が去った後の店内に静寂が宿った。
これがある日の、ヴェルティとパヴィアのふれあいの記録である。