主人公になりたくて!   作:無名魔剣士

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アニメを見てハマったので衝動的に書きました。

いつまで続けられるかわかりませんが、良ければ見ていってください。


『主人公』と『陰の実力者』

いつまで経っても大人になれなかった男。きっと、俺という男を言い表すならソレだろう。

 

物語の花形、主人公。誰もが憧れるヒーローってヤツに、俺もその他大勢と同じく憧れた。

ただ一つ違ったのは、その憧れという熱は一時の病では無く、さりとて伏流水が如き微熱でも無く、いつまでも燃え続ける情熱として俺の中に残り、そして俺の行動原理となったという事だ。

 

だが主人公と言っても色々ある。それこそ熱血成長系主人公から、鈍感難聴やれやれ系主人公など。振れ幅が広すぎるせいで、どのような努力を積めばよいのかさえ、最初はわからなかった。

考えれば考える程、『人間』という壁、『個人』という壁が俺の前に立ちふさがり、どれか一つの主人公像しか選ばせてもらえない現実を突きつけられた。

 

 

―――だから、考えるのを辞めた。

目指す主人公像を決める前に、何にでもなれる努力をすれば良いのだと。

 

 

そこからは早かった。あらゆる武術、武道、戦闘術などをマスターし、同時並行で学力で頂点に君臨できるように勉学に励んだ。

具体的には、銃を持った退役軍人がテロを行っても俺一人で鎮圧できるだろう戦闘能力と、あらゆる学力テストで満点を取れる程度の頭脳は高校入学前には手に入れた。

人付き合いの方も、ギャルゲー、エロゲーの主人公にもなれるように極めた。常にクラスの人気者で、話の中心に居るアイドル的存在。卑屈でやっかみばかり呟く陰キャからアンタッチャブルと言われた不良までもが俺の友達で、俺を介する事でクラスの輪に入るようになった。

ゲームも極めた。リズムゲーム、FPS、格闘ゲーム、パズルゲーム……ありとあらゆるゲームを極めた。いつ全てがゲームで決まる世界になっても大丈夫なように、プロチームに誘われるレベルには鍛えた。

 

 

他にも、色々な物を鍛えた。現実に存在する全ての事象は、ほぼパーフェクトにこなせるようになったと言っても良い。

 

どんな主人公になるのかを最後の最後まで決められなかった俺には、何か一つを極める為に()()()()()()()()()()()()()()()()()()事が出来なかったからだ。

 

 

 

―――ここまでの話を聞いて勘違いしている人が多いだろうが、俺は天才ではない。寧ろ凡才、或いは無能と言えるだろう人間だった。

 

ではそんな無能が、万象を学生時代までに極め尽くす為に必要な代償は何か。

 

答えは簡単。命だ。

 

 

端的に言おう。俺こと主人 公太郎(あるじひと こうたろう)の人生は、夢半ばで終わった。

夜中、突然心臓の動きが鈍くなり、必死の自己蘇生も虚しく息絶えたのだ。

薄れゆく意識の中、俺は多分衰弱死的なモノなんだろうなとどこか納得した事を覚えている。

 

同時に、寂しかった。

万象を極めたのだから、後は主人公ムーブに興じるだけだったはずなのに何もできなかった事。

 

そして何よりも、剣道や柔道の道場、ボクシングのジムからヨガのクラブまで、どこへ行ってもその姿を見かけた一人の少年。

俺と同じクラスの生徒で、常に目立たず生きていた――――しかし、その瞳の奥に俺と似たような色を湛えていた彼の行く末を、見れなかった事。

 

 

確か彼の名前は――――影野、ミノル……だったっけ。

 

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

 

……と、もう俺の物語は終わったよ~みたいな語り方をしておいて申し訳ないが、そんな事は全然ない。

夢叶わず静かに死んだ俺だが、次の瞬間には主人公イベントを味わっていた。

 

―――していたのだ。異世界転生。

 

ネット小説で死ぬほど見た展開。まさにテンプレという状況を、俺は味わう事になった。

 

転生した世界は、中世ヨーロッパ風のこれまたテンプレートな世界。

魔力という力が存在し、魔剣士と呼ばれる魔力で身体能力を強化して戦う騎士たちが存在するこの世界に、俺は田舎の下級貴族ヒロ・ムノーとして生まれ直したのだ。

 

当然、俺はムノー家長男として家族から熱い期待を───なんて事は無く。

取り敢えず落ちこぼれスタートの成長系主人公をメインにするかな、という脳内会議の決定に従い、魔力量から身体能力、戦闘技能まで何もかもが平々凡々かそれ以下の男を演じる事にした。

 

 

 

……とはいえ。本気の戦闘もしなければ、技は腐るし新たな肉体のスペックも測れない。

そこで俺が目を付けたのが、狩りだ。

 

獲物は盗賊。道行く人を襲っては金銀財宝を奪い取り、女ならば慰み者に、時に男を奴隷として捕まえるゲスな奴ら。

だから殺す……とかそんな事は無いが、まぁ自分の欲求の為に他人を殺す連中だ。俺の欲求の為に死んでも文句が言えるような奴らじゃない。

 

「―――よし、剣術の確認はこの程度で良いな。間合い管理もほぼ完璧と言って良い。んー、やっぱ戦闘は間合いゲー。退役軍人も酔っ払いの不良も、距離を測りそこなったヤツから負けていく……ってな」

「て、テメェ、何言ってやがんだ?」

「頭ァ、このガキ強すぎます!!」

「馬鹿野郎!んなガキ一匹にやられる俺らじゃねぇだろうが!五、六人斬られた程度で喚いてるんじゃねぇ!!」

 

一応身バレ防止のために麻袋に目と呼吸用の穴を開けた物を被っている俺に、盗賊たちが剣を向けて喧嘩する。

 

本当ならそんな隙を見せた時点で細切りにしてる所だけど、今日は他にも試したいアイディアがある。

剣術に関して粗方勘が戻って来た今、無駄に死なせてはいけない。

 

「ざっと十人……うんうん、最高。俺の編み出した新戦術の実験に丁度良い!!」

 

懐から取り出したナイフで、躊躇なく己の左手を切り裂く。

唐突な自傷行為に盗賊たちが動揺するが、そんなの無視して魔力を操作。

 

重力に従って落ちて行くだけだったはずの血液が、空中に滞留する。一定量血を出した後は傷を魔力で即時修復し、失った分の血液も魔力を上手くこう、アレして生成。

空中の血液は俺の周りを衛星のように円を描いて回転し、なんかお洒落に待機。

 

これこそ俺の戦闘形態!なんか中二系異能バトル世界観の主人公みたいでカッコいい!!

 

 

……さて、なぜ俺が血液を回転させているのか、真面目に説明をしよう。

 

魔剣士を始め、この世界の人達は魔力を使って戦う。が、武器に魔力を伝えたりする際、どうしてもロスが発生してしまう。

100の魔力を出せば100伝わるなんて事は無く、どれだけ高級な素材の剣であっても半分伝われば良い方とかザラにある。

そんなのあまりに勿体ないので、俺は魔力の伝導率が高い物質を必死に探した。

結果として辿り着いたのが、血液というわけだ。

 

己の血というだけあって、魔力伝導率は驚異の100パーセント。一切の無駄が無い。

まぁ、俺の血液が普段から魔力を混ぜて生成されている物だから、というのもあるだろうけど。

 

因みにもう一つの候補にスライムという魔法生物があったが、実験の途中からスライムの調達がなぜか不可能になり断念した。探しても見つからなくなっちゃったんだよなー。普通に可愛い生き物だし、ペットとして買う案もあったんだけど……と、それはさておき。

 

 

ともかく俺のメインウェポンは血液のリング。これを自在に操作して、敵を殺すのだ。

 

早速魔力を操り、血液を動かす。回転していたリングから槍のように飛び出した血液が、男の驚愕に硬直した体を貫いた。

 

「なっ……くそっ、よくわかんねぇけど死ねぇえええっ!!」

「力を込めるタイミングがお粗末」

「ぐぺっ」

 

今度は貫通力を抑え、ハンマーのようにして頭部を叩く。

全然なっていない動きで俺に突撃してきた男は見事に顔面が潰れ、地面に崩れ落ちた。

 

うんうん。破壊力も抜群、っと。

 

「こ、このガキ……!!ぶっ殺す!!」

「刺突、打撃とくれば………まぁ、防御性能のチェックもするか」

 

血液の輪から一定量が離れ、俺の前に壁を張る様に展開する。

男の斬撃に合わせて展開された血液の壁は見事に攻撃を防ぎ、そして刀身にまとわりついた。

 

男が慌てて剣を振るうも、遅い。血液に包まれた剣はそのまま噛み砕かれるように破壊され、金属片を散らしながら血液は輪の中へと戻っていく。

 

……っと、完璧かと思ったら少し操作を離れちゃった血液があるな。精密操作が可能なのは半径五メートル圏内って所か。

 

「要実験、だなぁ。今度こそ過労死しない程度に、つって」

「っ、な、何者なんだテメェ!!そのわけわかんねぇ力、ガキとは思えねぇ剣術!なんなんだよテメェはぁああああああっ!!」

 

叫ぶ男に対し、俺は輪を描く血液の全てを右手に集約し、剣の形へ変えて答える。

 

「―――主人公になる男だ。あの世で宣伝しといてくれ」

 

 

 

結局、剣状態で使うのが一番便利かもしれない。

最後の一人を真っ二つにして、俺はそう結論付けるのだった。

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

 

さて、盗賊たちを殺せば後はボーナスタイム。報酬確認の時間だ。

結構大規模だったし、金銀財宝の山があるに違いない。

ただこういう規模の盗賊って奴隷を抱えてるパターンもあるからなー。流石に売りさばけないし、金にもならないから困る。

主人公になるには色々と金が必要なのだ。奴隷解放なんて慈善事業ばかりしてても、今は顔出ししてないんだから意味ないし。

 

まぁのんびり運試しと行きますかー、っと宝のありそうな方へ足を向けた次の瞬間、俺はそこでようやく()()()()

 

 

(居る。いや、居た……か。実験と盗賊に集中してたからって、戦闘中の俺の気配察知を掻い潜って……?)

 

「誰だ、お前」

「あー、気づかれちゃった?」

 

剣を構えて睨みつけた虚空から、小さな影が―――と言っても俺と同じ程度のサイズの影が着地する。

悪戯っ子のような邪気の無い笑い声。声から察するに子供……背丈的にも、俺と同年代だろうか。

 

こんな夜中に、盗賊たちのねぐらに遊びに来るような同年代なんて、明らか厄ネタだけど。

 

「いつからそこに居た?」

「君が連中の酒盛りに乱入する少し前くらいかな?僕も盗賊狩りで実験なり小遣い稼ぎなりしてるんだけど、最近妙に減りが早くってさ。気になったからそこそこ大きな獲物を残して、同業者の正体を探ろうと思ってね」

「男の覗き見とは悪趣味な事で」

「なんか悪意ある言い方だねー。ま、それはどうでも良いとして………単刀直入に言おうか」

 

暗がりから、焚火の近くへと歩み寄る。

フードを外し、隠れていた顔を見せたソイツは、子供のような無邪気さと、悪人のような邪悪さの入り混じった笑みを浮かべ、そっと右手を差し伸べた。

 

「僕と組まないか?」

「お断りだ」

 

何を言い出すんだコイツ。

きっとこの時の俺の視線は絶対零度だっただろう。

 

組む?実力もわからない……つっても俺に気配を探らせなかったって実績はあるのか。いや、にしたって未知数な奴と、たかが盗賊殺しの為に組む必要は無い。

寧ろ取り分が減るだけじゃねぇか。大損だ大損。

 

そんな旨を伝えると、一瞬キョトンとした顔をしてソイツは笑った。

 

「あぁ、違う違う。盗賊狩りの協力じゃないよ。僕が言いたいのはもっと大きな、それでいて長期的な話さ」

「長期的ぃ?」

「ああ。――――君と僕は同じだ。目指す先は違えど、歩み方は同じ。そしてその進路は、明確に交差している………」

「目指す先、ねぇ。俺にどんな目的があると思ってんだ、お前」

()()()、だろう?」

 

何も言えなくなった。

なぜそれを、と睨みつける俺に、ソイツは「さっき自分で言ってたじゃん。主人公になる男だ、って」と答え、そのまま語る。

 

「良いじゃないか、主人公。誰もが一度は夢見る先を、いつまでも求め続けている」

()()()()()?おいおい、俺はまだ十歳にもなってないんだぞ。子供の頃のバカな夢程度で終わる可能性だって」

「こっちの世界では十歳未満でも、前世を含めれば違うだろう?」

 

ギィンッッ!!

 

金属同士が激しくぶつかる音が響き、夜の闇に火花が輝く。

誰にも話した事の無い、誰にもわかるはずが無い俺の秘密。ソレを言い当てられ、流石に黙っていられなくなった。

 

俺の剣をどこから取り出したのかもわからない黒い刃で防ぎながら、ソイツは笑う。

 

「良い太刀筋だ。ともすれば達人級、或いはそれ以上だね」

「そりゃどうも。前世じゃ死ぬまで鍛えたんでな。褒めてもらえてうれしいぜ、転生者さんよぉ」

「流石に気づくか。うん。僕も君と同じ、転生者さ。―――そして」

 

ヤツは俺を押し返し、刃を振るう。俺は受け止めるのではなく受け流し、適当な間合いまで距離を取った。

相手の攻撃が当たらず、かつ俺がすぐにでも攻撃できる範囲だ。

 

だが相手はそれをわかっているのか居ないのか、両手を広げて声高に告げる。

 

 

「君と同じく、前世から一つの目的の為に突き進んできた者―――君のように言うのならば、そう!陰の実力者になる男!!」

 

 

陰の実力者。それって所謂、物語の重要なシーンに姿を見せてはその圧倒的な力を披露するなんかカッコいい立ち位置の?

 

自然と剣を握る力が弱まり、鞘へとしまう。なんだか脱力してしまった。目の前の男に、俺は今の所敵意を抱けない。

 

だって、あの目。陰の実力者になると宣言した時の目がまるで鏡で見た自分のようで、或いは前世で勝手に仲間意識を抱いていた少年、影野ミノルのようで。

とてもじゃ無いが、殺し合いをする気にはなれなかった。

 

「………なるほど。主人公を目指す俺。陰の実力者を目指すお前。目的地は違えど、道は重なる、か」

「その通り。それで、どうだい?僕と組む気になったかな?」

 

期待する様に俺を見つめる、陰の実力者(予定)。なるほど、悪い話では無い。

主人公云々言ったって、誰かが俺を主人公として俺の人生を見てくれるわけでは無い。だが、協力者が居れば、共にこのようなシーンを、このような展開をと話し合える仲間が居れば、同じ物語を共有できる。

 

俺は、主人公になれる。

 

 

「―――ヒロ。ヒロ・ムノーだ。よろしくな、陰の実力者」

「うん。僕はシド・カゲノー。こちらこそよろしくね、主人公」

 

 

 

こうして、俺達の物語はようやく一ページ目を迎えた。

俺という主人公と、シドという陰の実力者が織りなす物語が。

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