主人公になりたくて!   作:無名魔剣士

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明かされる残酷な真実

 

「完成しました!」

「「おぉー」」

 

外は夜。長い事ああでも無いこうでも無いと試行錯誤していたシェリーが遂に最終調整を完了し、アーティファクトが完成した。

 

俺達もシェリーを待つ間にシナリオの最終確認を済ませたし、後は実演するだけだ。

 

今回のシナリオは、この後俺とシェリーの二人で講堂へ真正面から侵入し(古き良きサムライスタイル)教団の人間と交戦。その最中になんか上手い事やって敵から強欲の瞳を回収し、シェリーに強制停止してもらう。その後は生徒達も混ざっての大混戦となるはずなので、そのままボスバトルに突入。

で、良い感じに追い詰めた所でラスボスレベルの強さの敵が現れるはずなので、そこでシャドウに魔力信号を放つ。

主人公の窮地に颯爽と現れた陰の実力者がもう一人のラスボスと言うべき強敵と戦闘を開始。俺もラスボスとの最終戦闘に入り、最後は俺達の勝利で終了……という物だ。

 

臨機応変な対応が必要になるだろうが、そこは俺らの腕の見せ所。

唯一の懸念点はもう一人のラスボスと言うべき強者―――つまりはシャドウの相手になる存在が居ない可能性がある事だが……その時はその時で、なんか上手い感じに俺が展開を変えよう。

 

「でもヒロ君、本当に正面から行くんですか?」

「地下通路があるんだっけ?でも直通だし目立ちにくい―――えーと、アレだ。生徒達を逃がす時に、入口を先に制圧しておかないと大変でしょ?」

「なるほど!ちゃんと侵入後の事も考えているんですね!」

 

咄嗟の言い訳だけどねー、なんて、こんなキラキラした笑顔を前に言うわけにはいかない。

 

「因みに地下通路ってどこにあるの?」

「えーっと、確か……」

 

シドに尋ねられ、シェリーは本棚へ近づき、本を数冊無造作に抜き取った。

すると本棚が回転し、薄暗い通路が現れた。

 

こういう仕掛け大好き。

 

「今回は使わないんですけどね。……それで、シド君は……」

「騎士団が外で待機してるのは確認済みだし、講堂以外の場所に敵も見当たらなかったから、ちゃんと保護してもらえるよ」

「うん。仮にもこんな怪我だしね」

 

どうせ屋上あたりでカッコよく待機するだけだろうけど。

何も知らないシェリーにシドの凄さを見せ過ぎてしまっては後々面倒なので、そういう体で解散する事にした。

 

「では、行ってきます」

「うん、行ってらっしゃい」

()()()()()

「うん、()()

 

生きて生還するぞ、とシェリーには聞こえたのだろう。彼女は特に俺達の言葉に反応する事なく、副学長室を出て行った。

 

さぁて、待ちに待った見せ場だ!

 

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

 

講堂に集められた生徒達は、特に拘束される事もなく放置されていた。

魔力は使えず、黙っていてもじわじわと吸い上げられていく。周囲を取り囲む黒服達が、暇潰しと称して生徒を銃で撃って弄ぶ。

最悪、の一言が良く似合うこの状況下で、しかしローズの目は死んでいなかった。

 

命懸けで彼女を守るほど彼女を愛していた(と彼女はそう思っている)シド・カゲノー。そして殺された友のために戦ったヒロ・ムノー。

二人に報いるためにも、ここで自暴自棄になるわけにはいかない。愛した女が、友人が命を懸けて守った女が呆気なく死んでは、二人も浮かばれない。

本気でそう考えているからこそ、彼女は冷静に状況を分析し、だからこそ耐える選択をした。

 

 

それが正しかったと言うかのように、扉が勢いよく蹴破られる。

 

 

「ッ!?生きていたの!?」

 

突入してきたのは二人の生徒。一人はシェリー・バーネット。こちらもこちらで驚きだったが、何よりも剣と銃を手に堂々と立つヒロの方が彼女を驚かせた。

今の今まで死んだと思っていたのだから、当然だろう。

 

 

「……取り戻しに来たぜ、全部な」

 

ヒロはそう呟くと、二階で銃を構えていた黒服を素早く射殺した。全員綺麗に脳天を撃ち抜かれて死亡し、残りは一階に残る者のみ。

 

リーダー格の男、痩騎士が無言でヒロを指す。

残る黒服達が駆け出すのに対し、彼はただゆっくりと前に進んだ。

シェリーもそれに付き従うように、ヒロの背に隠れながら歩く。

 

「凄い……魔力は使えないはずなのに」

 

生徒たちの視線は、ヒロの圧倒的な剣技に集中した。

襲いくる黒服達を、魔力も無しに淡々と迎撃する。

攻撃を防いだり、逸らしたり、敵を真っ二つに斬り裂いたり、顎下に銃口を突きつけて射殺したり……全ての動作が、達人のソレ。いや、それすらも遥か超えた高み。そう思わされるほど自然で、完成された『技』。

 

これが先日王都を騒がせた大事件を解決した男かと、知らずの内に全員が息を呑んだ。

 

「少しはやるようだな」

 

そう言って、痩騎士は残った黒服達を下がらせ、剣を抜いた。

それに呼応するように、ヒロは銃を投げ捨て、剣を構えた。

 

「強欲の瞳は何処にある?」

「ここだ」

 

ヒロの問いかけに、痩騎士は素直に答えた。わざわざ懐から強欲の瞳と思しき、ピンポン玉サイズのアーティファクトまで取り出した上で。

 

「ヒロ君、それが本物で間違いありません!それとこのアーティファクトを組み合わせれば……!」

「よっしゃ、任せろッ!!」

 

ヒロが力強く踏み込み、剣を振り下ろす。

痩騎士はその一撃を片手で防ぐと同時、なぜか強欲の瞳をシェリーに向かって投げた。

 

「えっ!?……わっ、わわっ!」

 

なんとかキャッチしたシェリーが、困惑しつつもペンダント型のアーティファクトとくっつける。

途端に眩い光が講堂内を包み、生徒達は魔力が使えるようになったと感覚で理解した。

 

「なっ………一体、どういうつもりだ!」

「教える必要は無い。……殺せ」

 

痩騎士がシェリーを指す。黒服達が一斉に彼女へ接近し、刃を振るう。

生徒達では間に合わない。間に合ったとて武器がない。

 

シェリーは目の前に迫った死に、恐怖から硬く目を閉じて、

 

「ぐぁっ!!」

 

鉄同士がぶつかる音……そして、血が噴き出す音と、苦悶の声を聞いた。

慌てて音の聞こえた方を見ると、ヒロがシェリーを庇うようにして、黒服達の凶刃をその身で受けた姿が目に映る。

 

「ヒロ君!!?」

「くっそっ、流石にこの数から同時だとキツいな……!」

 

全身を赤く染めつつも、ヒロは立ち上がる。

だが立ち上がった時には、既に痩騎士が目の前に迫っていた。

 

振り下ろされる一撃を咄嗟に防ぐも踏ん張れず、床を転がる。

守る者の居なくなったシェリーを殴り、痩騎士はアーティファクトを奪い取った。

 

「目的は達した」

「ふざ、けんな!まだ、まだ終わっちゃいねぇ!」

 

微かに可視化された魔力を纏いながら、ヒロは痩騎士へ突撃する。一見大振りでわかりやすい攻撃だったが、痩騎士が防ごうとした瞬間に大きく軌道を変え、首元を狙った一撃となる。

 

痩騎士は驚いたように声を漏らしつつ、首を動かして回避しようとする。

結果として刃は痩騎士の首を斬り落とすことは無かったが、しかし彼の顔を隠していた仮面にぶつかり、弾き飛ばした。

 

 

カラン、カランと仮面が床を転がる。

現れたのは、どこまでも残酷な()()

 

 

 

「―――お義父、様?」

 

哀れな少女の力ない声が、やけに響いた。

 

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

 

最悪だ。何もかも最悪な方向に動いていやがる。

 

突入するところまでは良かった。こっから逆転が始まるって感じのセリフも、観客達の反応も、望んだ通りのものだった。

だが主犯格が動いてから、狂い始めた。

戦闘の最中に強欲の瞳を奪うハズが、相手から投げ渡してきた。魔力が戻っても生徒達が動かず、大混戦も逃げ出すような事も起きなかった。

 

挙句の果てには、コレだ。

 

確かに知っていた。昔調べた時に、重要人物として記憶していた。

だが今動くようなヤツじゃ無いと思っていた。こんな事にはならないだろうと勝手に思い込んでいた。

少し考えればわかるような事を、俺は全く気にしていなかったのだ。

 

またしても読み違った。アレクシアの時とは比べ物にならない程の地雷を、見事に踏んでしまった。

 

 

 

「―――お義父、様?」

 

シェリーの声が講堂に響く。

彼女の視線が向かう先には、甲冑姿の初老の男性……ルスラン・バーネット副学長。

 

今回の一件の主犯は、彼女の義父だった。

 

「ふむ、良い剣だ。まさか私が欺かれるとは。………しかし困ったな。こうも大人数に見られてしまっては、殺して口封じというのも手間だ」

 

甲冑を脱ぎ、ルスランはなんてこと無いように話す。

信じられない光景に誰もが言葉を失う中、俺はなんとか口を開く。

 

「……なぜ、こんな事を?」

「ふむ………どうせルスラン・バーネットとしては終わるのだし、せっかくだ。少々長くなるが、昔話でもしよう」

 

遠くを見るような目をしつつ、彼は語り出す。

 

「ずっと昔……君達が生まれるよりもずっと昔に、私は頂点に立った」

「それって、ブシン祭優勝……?」

「ふっ……いいや、ブシン祭など比べ物にもならない高みが、この世にはある。私はその頂点に立ったのだ。言ってもわからないだろうがね」

 

生徒の誰かの呟きに、どこか自嘲的な笑みを浮かべて答える。

 

「頂点に立ったのは良いが、その後すぐに病にかかってしまった。当然一線を退き、苦労して掴んだ頂点の座からもすぐに降りることになった。それからは病を治す方法を探す事に専念してね。結果、ルクレイアという研究者に目をつけた。彼女の頭脳と、彼女の研究内容……アーティファクト研究にね」

「………お母様?」

「そうだ、シェリー。君の母だ。彼女は実に優秀な研究者だったよ。それこそ学会から嫌われ、孤立する程にね。だがおかげで私は彼女に接近し、アーティファクト研究の成果を間近に見る事が出来た。―――そうして遂に出逢った。この『強欲の瞳』に」

 

見せびらかすようにアーティファクトを掲げる。

照明に照らされて怪しく輝くソレを、ルスランはどこか恍惚とした瞳で見つめた。

 

「これがあれば病も治る。このアーティファクトの性質を利用すれば、私は全盛期に―――いや、それすら上回る力を手に入れられる。だがあの女はあろうことか『強欲の瞳』を危険なアーティファクトだとして、国に管理してもらうよう申請しようとした」

「………まさか」

「ああ、そうだ。そうだよシェリー。だから殺した。君の母親を惨たらしく殺したのは他でもない、私だ!」

 

悲痛な叫び声と共に、シェリーが崩れ落ちる。

あまりに衝撃的な話に、生徒達も泣き出したり、不快感に顔を顰めたりした。

 

「だが研究はまだ途中段階だった。いくら私の手元に『強欲の瞳』があろうと、その段階では私の望む使い方はできない。しかしね、私は実に幸運だった。なぜなら都合よく、簡単に利用できる研究者を彼女が残してくれたからだ。それがシェリー、君だよ。私を母の仇だと疑いもせず、私の為にと研究を進めてくれる愚かな子………おかげで、ここまで来れた。ありがとう。君のおかげで、今日という日が非願成就の最高の一日になった」

 

晴れやかな表情を見せるルスランに、俺は無言で接近し剣を振るう。

攻撃は防がれるが、隙は作った。二撃目で致命傷を与えるくらい余裕―――。

 

 

()()()()()()()

「ッ、テメェ!!」

 

体勢を整える暇を与えずに攻撃しようとした俺だったが、ルスランの言葉を聞いて即座にその場を離れ、シェリーを守れる位置に移動する。

 

さっきと同じだ。無理な移動のせいで一手遅れる。

本来なら無傷で全ての攻撃を受け、さらにカウンターまで加えられる所を、攻撃を弾くだけで終わる。

 

 

「ヒロ・ムノー君。君は強い。無論、私が本気で相手すれば勝てない相手ではないが………一人殺すのに時間をかけては、少々面倒だ。卑怯だと笑っても構わないよ」

「開き直ってんじゃねぇ!」

 

黒服達をまとめて相手しながら声を荒げる。

傷口から噴き出す血がシェリーを汚すが、彼女は俯いて肩を震わせるのみ。

 

……まずいな、この状況を切り抜けるくらいは問題ねーけど、ローズ会長達の前でそこまで力を見せるのは……

 

「ローズ会長!!全員を連れて逃げてください!もしそっちにまで行かれたら()()()()!」

「あっ……い、いえ!私達も戦えます!」

「『強欲の瞳』の効果で殆ど魔力が残っていないんじゃないですか?」

 

俺の言葉に口をつぐむローズ会長。他の生徒達も苦々しげな表情で、今さっき抜いた剣を降ろした。

 

「大丈夫です!これでも紅の騎士団!シェリー先輩共々、すぐ合流しますから!」

「同時に守るのは難しい、か。良い事を聞いた」

 

ルスランが生徒達へと手を向ける。

黒服の一部がそちらへ向かう。

 

仮にも魔剣士学園の生徒。無抵抗に殺される事は無かったが、それでも防ぐだけで精一杯の様子。

ローズ会長でさえ魔力切れ寸前みたいだし、無理もない。

 

仕方ない、火事場の馬鹿力で誤魔化そう―――そう考えた次の瞬間、ルスランの刃が俺の腕を突き刺していた。

 

やべぇっ、油断した!

 

「殺すつもりは無い、みたいな事を言ってた気がするんだけど?」

「他はともかく、君は私を追うことができそうだ。例え顔を変えたとしてもね。だからここで、その芽を摘んでおく」

 

冷たい眼差しと共に武器を構える。

その姿勢の美しさは、なるほど。頂点に立ったと豪語するだけは………かつてラウンズに至っただけはある。

 

「君にも教えてあげよう。ルクレイアをどうやって殺したのかを!」

 

その言葉に、シェリーが顔を上げる。

 

超高速の刺突が俺を襲う。俺一人なら全然対応できるが、嫌なタイミングで黒服がシェリーを狙うので、どうしても攻撃を受けてしまう。

 

「体の端から、中心に向かって突き刺して行き!」

 

手首、腕、ふくらはぎ、太腿、肩、脇腹………増えていく傷口から血が溢れる。

前世で習得した痛覚遮断が無ければ、シェリーを守る事すらできなくなっていただろう。

 

「そして最後は心臓を突き刺して捻じるッ!!さらばだ、若き強者よ!」

 

攻撃が一度止み、僅かな溜めの後に、心臓を狙った精確な突きが放たれる。

 

 

―――まだ、もう少し。

 

 

切っ先が俺の体を、心臓を貫く。

シェリーやローズ会長たちの悲痛な声が聞えてくる。

 

勝利を確信した表情のルスランが、剣を捻じって心臓を完全に破壊しようと―――

 

 

 

―――今だ!!

 

 

 

 

 

 

「っ、なんだ!?」

 

ガラス張りの天井が、轟音と共に破壊される。

漆黒を纏った陰の実力者が、月光を浴びて舞い降りる。

 

体の方を動かして刃から逃れた俺は、わざとらしく息を切らしながらシェリーの隣に座り込む。

 

「……我が名はシャドウ」

 

赤い瞳がルスランを射抜く。

手の中に生成された黒い剣が怪しく輝く。

 

「シャドウ……そうか、貴様が――――ッ!?」

 

ルスランが後退る。きっと、見ただけで分かったのだろう。

シャドウの強さが。今の自分では敵わないだろうという現実が。

 

そして一拍遅れて、講堂内に円を描くようにして黒装束の者達が立っている事に気づく。

彼女達は一切の乱れなく名乗った。

 

『我らは【シャドウガーデン】』

 

その名前に、ルスランも、黒服たちも、生徒達もシェリーも、誰もが驚愕する。

当然だ。この名前を知らない者は居ないと言っても過言では無いのだから。

 

「そうか、本物まで現れたか……!!だがヒロ・ムノーもじきに死ぬ。目的は全て達した以上、わざわざ馬鹿正直に戦ってやる必要は無い」

「逃げられるとでも思っているのか?」

「逃げに徹すれば当然、可能だとも」

 

言葉と同時、ルスランはシャドウへ斬りかかる。

当然防がれるが、ルスランの狙いはダメージでは無く僅かな隙を作る事。勢いのまま奥の方へと向かい、薄暗い部屋へと入っていく。

 

逃げると言っていたのになんでわざわざ追いつめられるような場所に―――?

 

疑問を覚えたのも束の間、講堂が突然勢いよく燃え始める。

それだけではなく、どこからか突然、教団の者と思しき黒服がさらに現れた。

 

まだ控えてるヤツらが居たってのかよ!?

 

「行け、我が輩下たちよ」

 

控えていたシャドウガーデン達が雑兵に対応する。

シャドウはルスランが消えた方へと歩き出し、炎の奥へと去って行った。

 

 

 

「……シェリー?」

 

仮にも心臓を刺されたのだ。

再生できるとは言え、成長途中の主人公、ヒロ・ムノーとしては大人しく気絶しておく必要がある。

そう思って倒れようとしたのだが、寸前にシェリーが俺の体を支えた。

 

重かったのか、苦悶の声を漏らしていた。

 

「あの、俺一応心臓刺されてるんだけど。普通助からないし、放って逃げない?」

「逃げません!身を挺して私を守ってくれたのに、見捨てるなんて……!」

「………あんな事を知らされて、なんですぐに動けるんだ?それも他人の為に」

「それは……」

 

ローズ会長たちが、シャドウガーデンの誰かに誘導されるようにして脱出していく(無論本人たちが誘導されている事に気づかないような誘導だ)のを確認しつつ、シェリーの返事を待つ。

 

「……今は、動けるんです。私を命懸けで守ってくれたヒロ君を助けたいって思い……それだけを考えていれば、辛い事も少しは忘れていられます。―――酷いですよね。私の為に、心臓まで貫かれて……そうまでしてもらって、私はヒロ君を、自分が楽になるために利用してる……」

「……ははっ、良いじゃん。存分に使ってくれよ」

「え?」

 

不思議そうにこちらを見て来るシェリーを優しく撫でる。

シドのヒロインだって事はわかっているが、今ばかりは許して欲しい。なんとなく、こうしたいと思ったのだ。場の雰囲気的にも許されそうだし。

 

「俺を助けたいって思ってる内は、辛いのを忘れられるんだろ?生きていたいって思えるんだろ?なら良いじゃねぇか。俺なんかで良いなら、寧ろ使ってくださいって頼み込んじまうな」

「………優しいんですね、ヒロ君」

「優しくねーよ。寧ろ酷い事をした。俺が仮面を外させなけりゃ、こんな事を知る必要も無かったのに」

「いいえ。知っていても知らなくても、現実は同じなんです。―――何も知らないまま生きていくより、ずっと良い」

 

 

……強いな。

 

 

「―――なら俺も、応えなくっちゃな」

「えっ?―――あっ。た、立っちゃって大丈夫なんですか?」

「うん。もう俺達以外誰も居ないから」

「それってどういう……」

 

魔力信号でシドに連絡を取る。

返事はすぐに来た。

俺は口角を上げ、シェリーの方を向いた。

 

 

「二つ、選択肢がある。これ以上は何も知らずに終わるか。俺と一緒に来て、最後まで見届けるか」

 

 

炎の海の中で、そっと手を差し伸べる。

 

 

ほんの少しの逡巡の後、シェリーはその手を掴んだ。






ちょっと詰め込み過ぎた気もしますが、一先ずはこんな感じで。
こっから投稿ペースが落ちると思いますが、取り敢えずアニメ分は書こうと思っているのでよろしくお願いします。


因みにヒロはシドのように魔力で心臓をズラすことができないので、しっかり心臓を貫かれています。
当然、貫かれたのも今の自分では回避も防御も不可能なはずだ、という演技の為です。
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