主人公になりたくて!   作:無名魔剣士

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ディアボロス教団、誕生?

 

俺とシドが出会った夜から月日は流れ、俺達は十歳になった。

ファーストインプレッションこそ最悪だったが、この程度の付き合いにもなれば互いの事が大分わかるようになってくる。

 

で、俺からのシドの評価がどれだけ変わったかというと……

 

「で、強敵を前に膝をつき、けど諦めないぞと顔を上げた俺の目に映るのが―――」

「突如現れた、陰の実力者……僕」

「そう!天井を破壊して降り立った実力者を、幻想的に照らし出す満月……そして、言葉を失っていた敵が絞り出すように尋ねるんだ。『貴様、何者だ……!?』」

「そしてそれにすかさず答える僕!『我は陰に潜み、陰を狩る者―――』」

 

パチパチという焚火の音をBGMに、俺達のテンションはどんどん上昇していく。

 

「その圧倒的な力で敵を屠った陰の実力者は、俺を一瞥して去っていく。そして一人残された俺は、自然と呟くんだ。『あの実力者、何者なんだ』―――ってな」

「良い!そのシチュエーション採用!特に月に照らされるシーンとか最高!」

「だろ!俺も圧倒的強者の背中に魅せられて成長パートに入る主人公ムーブとか、王道中の王道で燃えるしさー!」

 

盗賊狩りやらスパーリングやらで夜中に遭う度、なんなら昼間友人として遭う時(結構なご近所さんな上、シドの方も田舎の下級貴族と境遇が同じだった)すら盛り上がる、何度目かもわからない『理想のシナリオ談義』。

 

毎日交互にアイディアを出し合い、それを批評して実行するか否か、するにしてもどのようなタイミングでするかを話し合うこの談義は、はっきり言って超楽しい。

 

シドへの評価?爆上がりだ。ここまで話の合うヤツが居るとは思わなかった。展開の趣味も近いし、ノリも良い。

何より俺に必要だった、成長イベントのトリガーとなるキャラクター、陰の実力者を目標にしているのが良い。

 

「ただ、今までのシナリオ全部に言えることだけど、明確な悪の組織は必要不可欠だね」

「盗賊相手にごっこ遊び、じゃ流石になー。ギリギリの良い勝負を演じようにも、クレアより弱いヤツ相手にギリギリの戦闘ごっこは今の俺の演技力じゃ難しい」

 

クレア・カゲノー。シドの姉であり、黒髪赤目の美女……だが、重度のブラコンという残念な女。

ファーストインプレッションではヒロイン候補としてありだなと思った物の、口を開けばシドシドシドの連続で、しかもなにやら俺を敵視しているようなのがアレだったので止めた。

 

アレでカゲノー家の未来を背負っているというのだから何とも言えない。

ただのヤバいブラコンなのに。

 

「なんならいっそ悪の組織を育成するとか」

「それもあり。―――けど、ソレやるんならその前に陰の実力者組織も作りたいじゃん」

「陰の実力者とその仲間………【シャドウガーデン】の結成ね。現状、物語開始地点のミドガル魔剣士学園入学前にやる事はソレかなー」

「候補としては適当な奴隷を買って役者として参加してもらうか、強盗をとらえて洗脳して付き合わせるか……だっけ」

「前者は金銭的理由、後者は洗脳が手間過ぎてどっちも立ち消えたけどね。あーあ、どっかに都合よく付き合ってくれるような人落ちてないかなー」

「居たら苦労しねーよ―――っと、終わったな」

 

俺とシドが談笑している間も元気に雑魚処理してくれていた血液の塊を呼び戻し、俺の周囲を回転させる。

 

そう。今の会話の最中、ずっと俺が遠隔操作で盗賊たちを殺していたのだ。

 

この一年弱で俺の魔力の扱い方は格段に向上し、操作距離から操作の精密性まで、かなりの急成長を遂げた。

これも全部、前世から魔力の鍛錬を行っていたというシドのおかげだ。俺は魔力とかそう言った神秘の力は一切ノータッチだったから、先駆者が居てくれて助かる。

 

「周囲に生き残りの気配は無し。操作も完璧だな。会話に集中してても動かせるようになった」

「凄いね、分割思考。前世から鍛えてたんでしょ?」

「単語の暗記と数式の暗記と歴史の暗記と文法・語法の暗記を同時に進める為にな。おかげで学年一位の男さ」

「こっちの学園の方でも、是非一位を取ってくれ」

「それは断るっつったろ。俺は目立たないモブスタート系主人公になる」

「うーん、ま、それもそれで良いか」

 

でも友人枠が主人公し過ぎてるとモブになり切れない気もするなぁ……とかブツブツ呟くシドを無視して、お宝回収へ勤しむ。

 

今回は絵画など、美術品が多かった。

俺達はそうしたモノを安全に売りさばく伝手が無いので取り敢えずの拠点に隠すことにしているが、この量を運ぶとなるとげんなりする。

 

「あ、これ『モンクの叫び』だよ。幻の名画だ」

「前世の名画とそっくりな名前に構図だ………これとかもそうだけど」

「『モーナ・リーザー』だね。確かにそっくりだ。案外、僕ら以外にも転生者っているのかもね」

「できれば会いたくねぇな」

「だねー」

 

俺達は偶々似たような夢と志で通じ合えているが、同時に互いの夢が、何より自分の夢がバカげている事を理解している。

それを真面目に、馬鹿正直に望むなんて愚か者だと、後ろ指を指されても仕方ないと思っている。

 

それでも諦められず、止められないのが俺達なのだ。

だからまぁ、恐らく普通の感性をしているだろう他の転生者達には、余り会いたいという気持ちにならない。居るかどうかもわからないけども。

 

 

スライム風呂敷(シド作成のスライムグッズだ)に必要な分だけ回収し終えた俺達は、そのまま盗賊たちのキャンプ地を去ろうとする。

 

が、もしかしたら金貨一枚とり逃しているかもしれない、という「ガスの元栓閉めたっけ」現象が発生した俺が背後を振り向いた時、巨大な布で覆われた何かが揺れた。

 

「?どうしたのヒロ」

「いや、ちょっとな」

 

近付いて布を剥ぎ取ると、隠されていたのは獣を閉じ込める用の檻。

しかし入っていたのは、動物なんて可愛らしい物ではなく。

 

「……これが悪魔憑きってヤツか。ゆるキャラみたいだな」

「子供泣くでしょ。―――っていうか、ヒロ」

「ああ。この波長、間違いない」

 

「「魔力暴走だ」」

 

ドロドロと溶けながら、蠢く肉塊。常人なら正気度がガリガリ削られそうなソレを前に、俺とシドは別の事に意識を裂いていた。

 

魔力暴走。俺もシドも魔力という未知なるエネルギーをモノにすべく試行錯誤を繰り返してきた身。その最中で魔力の制御を誤り、肉体が腐った肉塊のように変質した事がある。

悪魔憑きと呼ばれる、この世界でメジャーな宗教団体から迫害を受け集められては殺されているという哀れな肉塊は、まるであの日の俺達が失敗した場合、という答え合わせのようだった。

 

「どうする?じゃんけん?」

「あっちむいてほいもセットの一発勝負な」

「オッケー……じゃあやるか」

 

「「最初はグー!じゃんけんぽん!!」」

 

「あっちむいて」

「させるかぁッ!!」

「馬鹿め。それは残像だ」

「なんてな、フェイントだよ」

「いいやトリックだよ」

「全部俺の仕掛けた罠ァ!」

「それも全部夢幻―――」

 

肉塊の所有権を巡り、唐突に始まった男気じゃんけん+あっちむいてほい(俺達バージョン)。

じゃんけんに勝利したシドの顔面目掛けて俺が拳を振るい、残像でシドがそれを回避し、それを見越していた俺がフェイントの蹴りを本体に向かって放ち、蹴りの向かう先に居るという事すらシドの仕掛けたトリックだったがその一連の流れは俺の罠であり、シドの用意した夢幻で――――と、長い長いやり取りを経て、遂に勝者が決まる。

 

「っと。今回は僕の勝ちだね」

「ちぇー。次は譲れよなー」

「譲る?いやいや、またじゃんけんでしょ。ま、次も僕が勝つけど」

「おいおいおい、言ってくれるじゃねぇかオイ。なんなら今、次の取り分じゃんけんしてやっても良いんだぞこっちは」

「ふ、先刻の勝利で絶好の状態にある僕に敵うとでも?」

「その逆境を越えてこそ主人公だろうが……ッ!」

 

なんて茶番を挟み、俺とシドで協力して肉塊を運ぶことに。

アジトまではそこそこの距離があるので、美術品運び含めて結構な重労働だ。ま、いいトレーニングだよな。

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

 

俺達のアジトである廃村には、無事な建物は殆ど無い。

元々盗賊に荒らされていたというのもあるが、何より俺達の来たるときに備えての戦闘訓練、魅せ方演習の被害が思ったよりも大きかったからだ。

なので美術品などを詰め込む建物は自然と一つだけになり、ボロボロの小屋なのに中身だけは美術館のように豪華という不思議なことになっている。

 

 

で、そんな不思議空間の真ん中で、シドの魔力実験が行われていた。

厳正なるじゃんけんの結果所有権が決定した肉塊をああでもないこうでもないと弄繰り回すシドを、俺は背後でボーっと眺めては魔力の使い方を目で盗む。

 

どれだけ鍛えても、俺は魔力関係では絶対にシドに及ばない。

だからこうして、シドの卓越した魔力操作技術を見て学ぶのだ。

 

「―――ふっ、()()()

「あん?」

 

カッコつける時特有の低い声音と共に、魔力の動きを加速させる。

唐突な動きの変化に驚く俺を無視して、状況は大きく変化する。

 

呻きながら蠢いていた肉塊が途端に姿を変え、うぞうぞと人の形を取り出し、遂には完璧に人の姿へ―――金髪の、美少女エルフの姿へと変化したのだ。

 

それも、全裸の。

 

「うぉぁっ!?な、なんだ!?」

「制御さえできれば、腐った状態からでも元に戻る……何かに使えるかも」

「使うなそんなモン。―――ってかお前、こんな可愛い子が突然裸で現れてなんも無しかよ!?」

「え?うん。別に何も」

「それでも男か!?」

「陰の実力者には必要ないからね」

 

そうだった。コイツはそういうヤツだった。

 

俺は主人公像が定まらなかったが故に何も捨てられなかったが、コイツは明確なビジョンがあって突き進んできた。だから俺と違って、不要なモノを定めてはどんどんと捨てて行った。

 

きっと性欲とかそういう物も、不要だと真っ先に切り捨てたんだろう。

俺はスケベ系主人公ムーブもありだという事で、寧ろ容認派なんですけどね。

 

 

……ってそんな事言ってる場合じゃねぇ!この子が目を覚ましたら、もしかしたらあらぬ誤解をされるかもしれない!

そうなったら、シドはともかく俺は耐えられねぇ!

 

急いでスライムスーツ(シド作成の衣装。魔力で自由自在に形を変えられる優れモノ)を一枚の布にして、エルフの子の体が隠れるようにかぶせた。

 

これで良し、と俺が額の汗を拭うような動作をしたと同時に、彼女は目を覚ました。

地肌にスライム布が触れたせいで、起きてしまったのだろう。

 

「……あ、れ?私、どうして……」

「目が覚めたかい?」

 

驚きつつ体を起こしたエルフの子に、シドは意気揚々と声をかける。

チラ、と彼を見ると、なんか木箱の上にお洒落な座り方で、よくわからん古代文字の本を片手に携えていた。

 

コイツ、いつの間に?

 

「……どうして、私の体が、戻って……?」

「君の体を蝕んでいた『呪い』なら、既に解けた。故郷なりどこへなり、好きな場所へと帰ると良い」

「『呪い』……?」

 

ははぁ、なるほど。コイツ、咄嗟にカッコいいムーブに着手する事を決めた訳だ。

『呪い』とか適当な事言っているが、要は『もう治ったからお家帰っていいよ』って事だろう。

 

 

……シドとは『全シナリオ実現の為、互いに二つの顔を持っておく』という取り決めをしている。

シドはモブAと陰の実力者、俺は主人公と陰の実力者の側近という顔を。

俺の主人公ムーブにモブとしても陰の実力者としてもシドが必要なのは言わずもがなだが、シドにとっても「陰の実力者には、その存在を際立てる№2が必要不可欠!」らしく、俺は主人公ムーブのみならず陰の組織【シャドウガーデン】の『番外位』としてのムーブも必要になった。

陰の実力者にならぶ強者であるという事を示すべく、正式なナンバリングから外れた存在―――だからこその『番外位』、とかなんとか言っていたが、まぁよくわからんがカッコ良いからその立場を受け入れることにした。

 

 

という事なので、俺は今『番外位』としてシドが喜ぶようなお洒落な№2を演じる必要がある。

自然な動きでシドの隣に立ち、なんかちょっとカッコいい立ち方を意識する。

そうだな。今日はクールキャラの気分だし、寡黙で喋らない男を演じよう。どうせこのエルフの子、帰すっぽいし。

 

はぁ。滅茶苦茶美人だし、俺のヒロインにでもなってくれればうれしいんだけどなー……まぁ、助けたのシドだし、横取りはマナー違反か。肝心なシドがそういう事に一切興味ないんだけど。

 

「『呪い』って、一体?」

 

真剣な眼差しでエルフが問う。

 

確かに、シドはなぜ『呪い』という言い回しをしたのだろう。魔力暴走って、どちらかというと質の悪い病気みたいなイメージだったけど……と、横目に顔を覗くと、シドは少し口許がひくついていた。

 

ははーん、さては何も考えずにカッコよさ重視で選んだな?

仕方ない、コイツが何か考える時間でも稼いでやるか―――っと?

 

「…………君達『英雄の子孫』にかけられた、魔人ディアボロスの『呪い』だ」

「魔人ディアボロスの『呪い』……『英雄の子孫』……?でも、それってお伽話じゃ」

「あぁ、そうだ。お伽話に過ぎないと誰もが信じ込んでいる。だが真実は違う。詳しく話せば複雑だから今は省くが……そう。ともかく、魔人ディアボロスは死の間際に呪いを放った。ヤツを倒した三人の勇者にね。そして、勇者の血を引く『英雄の子孫』は今もなお『呪い』に身を蝕まれている」

 

途中途中怪しげな部分はあるモノの、基本堂々と話すシドに感心する。

即興で作ったにしては良い設定だ。この世界で有名なお伽話を上手く織り交ぜた()()()()()話に、俺は小さく頷いた。

 

設定が固まってきたのか、シドが段々と饒舌になっていく。

 

「かつてはその『呪い』は今のように治すことができた。治療法があった。そして『呪い』は『英雄の子孫』である証……それこそ、英雄のように尊ばれ、崇められていただろう。だが何者かが歴史を歪めた。治るはずの『呪い』は対処不能の『悪魔憑き』となり、君達『英雄の子孫』は忌み嫌われ、殺されるようになった」

「そんな……っ!」

「黒幕の名は……名は………今はまだ明かす時ではない。いや、君はそれを知るべきではない。まだ元の日常に帰れるのだから。知れば、戻れなくなる」

 

流石にカッコいい悪の組織の名前はパッと出せないか。

普段のシナリオ談義でも、便宜的に『悪の組織』としか言ってないし。陰の実力者組織は【シャドウガーデン】で定まってるんだけどね。

 

こんな荒唐無稽で突飛な話でも、シドのトーク技術のおかげで妙なリアリティを感じさせる。

エルフの子はシドの世界観に引き込まれたのか、感情的になって身を乗り出した。

 

「構わないわっ!もう、何も知らずに生きていくなんて嫌よ!」

「この道の果てに待つのは、残酷な真実だけだぞ。ただ闇に堕ちゆくのみだとしても、構わないと?」

「例え行き着く先が地獄であっても、私はこの選択を悔いることはしない。どれほど残酷だろうと、私は真実を生きたい」

 

時間稼ぎを兼ねた俺の言葉にも強い覚悟を感じさせる瞳で答える。うん、俺から言えることはもう無いな。

問題は、この短時間で組織名を考えられたかなんだけど……

 

「………そ、そうか……ならば教えよう」

 

うわー、ダメそー。

 

冷や汗まで流して視線をあちらこちらへ向けるシド。組織名のヒントになりそうな物でも探しているんだろう。

数秒間沈黙が訪れ、もう一度俺が時間稼ぎに何か言うべきかと口を開こうとした所で、シドがポツリと呟いた。

 

「―――『ディアボロス教団』」

 

ディアボロス教団。なるほど、安直だが悪くない。

前世の宗教だって、〇〇教の〇〇部分は案外ストレートな言葉が入っていたものだ。何を信仰しているかが分かり易いその名前は、子供騙し感はあるもののあってもおかしくないと思わせられる。

 

小さく名前を復唱したエルフの子に、シドは鷹揚に頷いて続ける。

 

「魔人ディアボロスの復活を目論む組織さ。奴らは常に歴史の裏に潜み、暗躍している……」

「……貴方たちは、その目論みを阻止する為に活動している……という事ね」

「その通り。我らは【シャドウガーデン】。悪き野望を阻止する組織」

 

そして、と言って木箱から降りる。

スライムスーツを無駄に渦巻かせた上で装着し、伸ばした右手の上に魔力を輝かせる。

 

「我が名はシャドウ。陰に潜み、陰を狩る者………」

「シャドウ………貴方は?」

「俺か」

 

視線を向けられ、少し考える。

結局、『番外位』としての名前は決めてなかった。そのままヒロと名乗るのは流石にカッコ悪いし……かと言って、それっぽい名前かぁ。

 

シドをチラ見すると、アイコンタクトで「カッコ良く決めちゃって!」と言われる。

……そうだな、なんかカッコいい語感の―――。

 

「ヴォイド。それが俺の名だ」

「ヴォイド………」

 

噛み締めるように俺達の名を何度か小さく呟く。俺はその場で考えただけの活動名だったが、何回聞いても良い響きだ。

少しの間そうしていた彼女だったが、ふと顔を上げると強い意志を感じさせる瞳で俺達を見つつ、恭しく頭を下げた。

 

「シャドウ、ヴォイド。私の命を、貴方達が救ってくれた。だからこの命は貴方達の為に―――世界の真実を暴き、潜む悪を誅する為に。好きなように使って欲しい」

「おぉ……良いね」

「あぁ、悪くない。―――それで、お前の名前は?」

 

やや威圧的な尋ね方になってしまったが、彼女は特に気分を害する様子も無く、しかし首を横に振る。

 

「かつての私は死んだも同然。良ければ、貴方達に名前を付けて貰いたいわ」

「そうか……」

(治したのお前だし決定権やるよ)

(あ、そう?じゃあ……)

 

目線でそんな会話を交わすと、シドは一度咳払いをして、彼女へと告げた。

 

「アルファ。君の名前はアルファだ」

「アルファ………ええ、わかったわ」

 

………いや、まぁ、譲ったのは俺だし、彼女自身気に入ってるっぽいから良いけどさ。

流石に部下A感強すぎない?今後仲間増えたらベータとかガンマとかになるって事でしょ?

 

うーん、これなら俺がパッと考えついたアルトリアとかヴィヴィアンとかの方がまだ良かったような気も………いや、何も言うまい。名付けられた本人が喜んでいるのだから、俺が何か言うのも無粋という物だ。

 

 

―――それにしても、アルファの演技力には目を見張る物があるな。あんな荒唐無稽な話を本気で信じているとは………状況が状況だし思えないわけでは無いが、まぁ多分無いだろうし。

クールビューティーな感じがデフォルトであるのもポイント高い。【シャドウガーデン】のコンセプトにピッタリの逸材だと言えよう。

 

もし余裕がありそうなら、俺の主人公ムーブの手伝いも頼もっかな。

クールな先輩キャラとか、ミステリアスな第三勢力キャラとか。うーん、想像の幅が広がるぅ!

 

 

「じゃあ君にやってもらいたいことだけど……まずはやっぱり、ある程度は戦えるようになってもらおうかな。純粋な戦闘技能はヴォイドが。魔力とかスライムスーツの扱いとかは僕が教えるよ」

「ええ。戦力の底上げは必要だものね」

「そうそう、そんな感じ!」

「同時に、各地の『英雄の子孫』を救出する必要もあるわね。あまり時間をかけては、私達よりも先に教団の魔の手が届いてしまうもの」

「う、うん。そうだね」

「となると、新たに活動拠点を作る必要もありそうね。この建物、見た感じ収容人数も多くなさそうだし……世界各地の『英雄の子孫』を結集させるのだから、大きくて頑丈な建物が必要になるわ」

「あ、あー……そうかも?」

「勿論、資金集めも必要ね。財界に即進出というわけにはいかないでしょうし……」

「と、取り敢えずは君の鍛錬からかな。早速で悪いけど、どの程度出来るのか見せてもらうよ」

「わかったわ」

 

 

 

…………なんかここまで真剣な様子を見せられると、ディアボロス教団があるんじゃないかって気にさせられるな。

万が一にもあったら困るし、後で探ってみるか。

 

 

布で体を覆っただけの姿であるにも関わらず特に気にする様子も無く外へ出ていくアルファと、一瞬面食らった物のノリノリで陰の実力者プレイに参加してくれる仲間が増えた事が喜ばしいようで鼻歌混じりのシドを後方から眺めつつ、俺はそんな事を考えるのだった。





ヒロは『魔力に固執せず前世の時点で極められるものを極め尽くしたシド』のイメージです。
転生してからは魔力のトレーニングもしていますが、シドとは周回遅れなので結構な差があります。
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