主人公になりたくて!   作:無名魔剣士

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ずっと、ずっとこれがやりたかった。


『This isーーー』

 

 

 

 

 

 

 

うんとこしょ、どっこいしょ。

それでも聖剣は抜けません。

 

お前が選ばれし者では無かったせいです。あーあ。

 

「アアアアアアッ!!」

 

諦められない。認められない。

俺は主人公になりたいんだ。そのためには、なんとしてでも選ばれし者にならなくてはならないんだ。

 

台座が悲鳴を上げる。アラートが耳をつんざく。

 

でも、それ以上に俺が叫ぶ。声を張り上げて、力を振り絞って、全力で引っ張る!

 

 

―――そして、遂にその時が来た。

 

「ッ、行っけェエエエエエエッ!!!」

 

突然手ごたえを感じた俺は、姿勢を直して全力を、限界を超えたその先の力さえも引きずり出した。

その結果、見事に剣は抜けた!!

 

 

……台座ごと。

 

 

「痛っ!?」

 

勢い余ってひっくり返った俺は、地面を転がる聖剣(+台座の一部)を寝転びながら見つめる。

 

これは、その………なんだ?成功で良いのか?

 

 

「―――な、何をやっている?!」

 

困惑する俺に、これまた困惑した声がかけられる。

声のした方を見ると、ネルソンとオリヴィエが何故か並んで立っていた。

 

「見ての通りだよ。聖剣を抜こうと思ってたらこんなことになった」

「は、はぁ!?そんな事が……い、いや、もはやどうでも良い。それよりもヒロ・ムノー、それと奥に居る小僧。災難だったな。まさか魔女に誑かされるとは」

「んー?ねぇヒロ、この人知り合い?」

「知り合いっちゃ知り合いだな。ネルソン大司教代理。表舞台でそれなりの地位を持っているが、その正体はディアボロス教団のトップ、ナイツ・オブ・ラウンズの第11席、『強欲』のネルソン」

「ハゲなのに物々しい肩書だなぁ」

「まぁ本来あるはずの12席目が不在だから事実上の末席だよ。四天王の中でも最弱……的な」

「なるほど、それなら違和感ないね」

 

シドと呑気に会話をしていると、ネルソンの顔がどんどんと赤くなる。

結構馬鹿にするような内容だし、仕方ないか。

 

「き、貴様ら、馬鹿にしおって……!!この際なぜ貴様が私の正体を知っているかは問わん!殺し―――いや、殺せ!オリヴィ」

「あー、ちょっと待った」

 

一触即発、というか戦闘開始直前みたいな状況を、挙手してぶった切る。

ネルソンは不満げな顔で「なんだ」と言い、一応俺の発言を許可してくれた。

 

なんだかんだ聞く態度を取ってくれる辺りそう悪い人でも無さそうだな。いや、苦労人気質ってだけか?

 

「質問なんだけど、アルファ達ってもう出てった感じ?」

「ふんっ、もう全員脱出し―――待て、アルファ達、だと?なぜシャドウガーデンの者を案ずるような…………まさか!!」

 

目を見開くネルソン。

俺はその言葉に鷹揚に頷いた。

 

「ああ。そのまさか、さ。―――さて、全員出てったみたいだし、これで心置きなくやれるな。オリヴィエを使うならどうぞご自由に。勿論、アンタが戦ってくれても良いぜ?」

「ま、待って!思い出せないけれど、彼女は」

「ならば望み通り殺してやる!やれいッ、オリヴィエ!!」

 

アメジストさんの言葉を遮って、ネルソンが指示を出す。

命令を受けて初めて動いたオリヴィエは、結構な速度で俺に接近し、

 

 

 

()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

 

ズドンッッ!!

 

 

部屋が振動する程の勢いで壁に激突したオリヴィエを、アウロラとネルソンは呆然と眺めていた。

何が起こったのか、理解できなかった。

本来オリヴィエの刃に殺されているはずのヒロは平然とその場に立っていて、オリヴィエは血塗れで壁伝いに床に落ちた。

 

 

「な、なんだ!?貴様、一体何をした!?」

「何をって言われてもな。オリヴィエの攻撃のエネルギーを受け流して、その勢いのまま自滅させたとしか」

「な、なにそれ……」

 

落ちたオリヴィエが光の粒子となって消えて行く。

 

ヒロはシドの方を見ると、視線だけで尋ねた。

その内容をしっかりと理解した上で、シドは首を縦に振る。

 

「で、追加補充は?」

「なっ……くそッ、もう一度だ!殺せ!」

 

再び現れたオリヴィエが、今度は可視化された魔力を纏ってヒロへ飛びかかる。

先程よりもさらに加速していたにも関わらず、やはり彼女は壁に激突し、ひしゃげて消滅した。

 

「相変わらず凄いね、ヒロの受け流し」

「知っているの?」

「そりゃあ最初は僕もやられたからね。覚えるのにも時間かかったし」

「あ、貴方もできるってこと?」

「僕とヒロは互いに高め合う関係だからね」

 

愉快なショーでも見ているかのような様子で、ヒロを眺めるシド。

アウロラは圧倒的強者であるはずのオリヴィエが呆気なく殺された事への動揺が未だ抜けず、困惑し切った表情をしていた。

 

三人目のオリヴィエが現れる。

だが今度はすぐに突撃するのではなく、静かにヒロを観察した。

 

「な、なんなのだ貴様は!!オリヴィエだぞ!?英雄を、なぜ魔力も無しに一方的に!?」

「戦闘に対話が起こらない、中身のない劣化コピーだからだろ。多分本物なら同じ技を使われても、壁に激突して死ぬことは無いと思うぞ」

「くっ………いいや、一理あるな。いくらオリヴィエとはいえ劣化コピー。一体ずつならば相手できよう」

「魔力も無しに……?」

 

アウロラを無視して、ネルソンはヒロを指差す。

 

「だが!聖域の力はこの程度では無い!人知を超えた力が、ここには眠っているのだ!」

「はぁ、なるほど。……で、今度はなんだ?魔人のコピーでも作ってみるか?」

「いいや、貴様のようなバケモノを殺すのは英雄が相応しかろう。殺せ、オリヴィエ!」

 

オリヴィエが再びヒロへ突撃する。

先程までと変わらない光景。しかし、オリヴィエがヒロに接近したところで、彼を囲うように無数のオリヴィエが現れた。

 

「100を超えるオリヴィエが相手ならばどうだ、ヒロ・ムノー!はははっ、コレで貴様も終わり………はぁッ!?」

 

やはりというか、オリヴィエはヒロに傷一つ付ける事なく地に落ちる。

だがその死に様は先程までとは大きく異なり、体の内側から赤い槍が無数に飛び出して、食い破られるようにして死亡した。

 

そして同時に、ヒロの体から力強く溢れ出す()()

 

「ま、魔力だとッ!?なぜ、何故魔力が使える!?」

「魔力が吸収されるなら、吸い上げられないくらい強固に練り上げれば良いだけだろ」

「そんな事が、出来て良いの……?いえ、それよりもオリヴィエを攻撃した手段。アレは……」

「あぁ、血液を操って槍にしただけだよ」

「それはわかるわ。だけど、貴方が操作したのは他人の血液。自分の血を混ぜれば私だって同じことは可能だろうけど……純度100パーセントの他人の血を、一体どうやって」

 

血液を魔力で操る戦い方は、アウロラがオリジナルだ。

だからこそ、ヒロの今使った技の異常性を否応にも理解できてしまう。

 

彼女に言わせれば魔力を強固に練って吸い取られないようにする、というのも相当理解が追いつかない事なのだが、それは敢えて気にしない事にした。

 

「見ての通り、魔力の制御を奪って、そのまま肉体の操作権も奪っただけだよ。血液操作は昔からやってるから、他人の肉体でも結構簡単にできる。つっても、シドみたいに魔力制御が完璧すぎるヤツ相手だと干渉出来ないから、あんまり万能ってわけでも無いんだけど」

「そんな無茶を通せるだけの魔力量と魔力操作技術を持っているというの……?」

「俺よりシドのが凄いけどな。複数人の体を糸人形みたいに操るなんて俺には無理だし」

 

嘘でしょ、と言いたげな顔でシドを見るアウロラ。

シドは「人数多いと頭痛くなるけどね」と軽い反応を見せる。

 

「あ、あり得ん、あり得てはならん……本当になんなのだ貴様は。そんな人知を超えた存在が、居て良いはずが無い」

「でも居るんだから仕方ないだろ。……さて、そろそろ終わらせるか。シド、約束通り今回は俺がやるぞ」

「うん。派手にやっちゃいなよ」

 

シドの返事と同時に、真っ白な室内が漆黒に塗りつぶされる。

何も見えない暗闇の中、ヒロの声が響く。

 

「アメジストさん。結局、あの扉の向こうにあるモノさえ壊せば良いんだよね?」

「……え、ええ……ッ、待って、貴方まさか!?」

 

金色の双眸が暗闇の中で爛々と光る。

呆然としていたネルソンは、ここでようやく暗闇の正体を悟った。

 

「これが全て、魔力だとでも言うのか……?」

「御明察。ついでにネタバラシしておくと、さっき会場を真っ暗にしたのも俺の魔力だ。ヒロ・ムノーとしてではなく───【シャドウガーデン】の『番外位』、ヴォイドとしてな」

 

漆黒の魔力が拍動し始める。

もはや誰一人彼を止めようとする者がいない中、ヒロは語る。

 

 

「───これは、新たな星の生誕が如き一撃」

 

漆黒の中に、微かに歪んだ血管のような模様が浮かび上がる。

 

「死にゆく星が魅せる、終の極光……!!」

 

 

 

 

掲げられた深紅の剣が、

 

「“This is―――”」

 

 

振り下ろされた。

 

 

「“Super Nova”」

 

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

 

長い、夢を見ていたようだった。

暗闇の中で、鎖に繋がれた片腕が俺を掴もうとしてくる夢。

俺がその手に何をしたのか、その手をどう思ったのかはすでに思い出せない。

 

だが、一つだけ言えることがある。

こういう意味深な夢を見るのは、主人公の証だという事。

 

 

結局、俺は聖剣を抜けなかった。選ばれし者では無かった。

………被害妄想に過ぎないが、()()お前は主人公になれるような男では無いと、突きつけられたような気がした。

 

だからというわけでも無いが、オリヴィエとの戦闘から必殺技『This is Super Nova』を使うまでの間、主人公ムーブを全く意識せずに振舞ってしまった。

冷静になって考えれば、俺は何をやっていたんだという話だが………今はこの先に待ち受ける運命を示唆するような意味深な夢を見たおかげで、主人公欲というか、自尊心と言うか……そう言ったモノがバッチリ復活している。

 

ありがとう謎の腕!手伝って欲しい事があれば何でも言ってくれ!お礼に助けてやるからな!

 

 

「目は覚めた?」

「……あれ、アメジストさん?」

 

腕の夢を見た事で平常心に戻った俺は、俺のすぐ隣に座っているアメジストさんに声をかけられた。

寝起きに美人。うんうん。主人公ポイント高いぞ。

 

―――あっ、やべ。こういうのって「うわぁっ!?なななっ、なんでお前が俺の布団の中に居るんだよぉ!?」とか言って慌てふためくのが王道だったか。

早速やらかした!……けど失敗なんてまたいつか取り戻せば良いよな!

なんてったって、俺はシドと一緒に超長生きする予定だし。今の所、六百年くらいは確定で生きられるはずだ。

 

と、今はアメジストさんだな。

消えるって言ってたのに、全然元気そうじゃないか。………いや、よく見たら透けてね?

 

 

「ちょっ、なんか幽霊みたいになってるけど!?」

「言ったでしょう?私はただの記憶だから、解放されたら消え去ってしまうの」

「肉体ならスライムで用意できるし、まだまだ消える必要は―――いや、止そうか」

「ええ」

 

どこか寂しそうな色が混じりつつも、アメジストさんの笑みはとても満足げだった。

そりゃ、無限に続く記憶の牢獄とやらに居て、何度も何度も辛い過去を見せつけられて―――それが今、ようやく終わったんだ。さっさと消え去って楽になりたいって気持ちの方が強くて当然か。

 

「貴方達を聖域に呼んだのは私。黙っててごめんなさい」

「シドはともかく、俺は自分から入る予定だったし問題ないよ。―――っていうか、そういう話なら俺だけじゃ無くてアイツにも……」

 

彼女は無言で首を横に振る。

 

「―――ずっと、消え去りたいと思っていたの。全部、何もかも全部忘れ去って、楽になりたいって。そう思ってた」

「うん」

「だけど、貴方達は特別な思い出をくれた。最後の最後で、忘れたくない大切な記憶が出来たの」

 

目尻に涙が光る。

朝陽に照らされた彼女は、段々と体が薄く消えて行く。

 

「ありがとう。私に思い出をくれて。私を守ってくれて。そして―――私に名前をつけてくれて、ありがとう」

「………どういたしまして、アメジストさん。俺からも、ありがとう。楽しかったよ。きっとシドも同じだ」

 

試練として戦ったあの瞬間。無数のゾンビ相手に久しぶりの寸鉄投げ。そして最後に、シド以外の前で使った必殺技。

 

どれもアメジストさんが俺を、俺達を選んでくれたからできたことだ。

そういう意味では、寧ろ俺が感謝したいくらいだ。

 

「もし、本当の私を見つけたら、その時は―――」

 

俺の頬に手を当て、そっと顔を近づける。

まるで今までそこに居なかったかのように彼女は消え去り、俺は一人そよ風に吹かれた。

 

 

「……私を、殺して……か」

 

 

記憶としてのアメジストさん。その頼みはきっと、本当のアメジストさん、とやらの切実な願いなのだろう。

 

 

―――だけど、本当に死にたかったのなら、俺に頼んだのは()()()だった。

 

 

「悪いけど俺は()()()なんだ、アメジストさん。―――それもどんなダークなストーリーも、ご都合主義になろうとハッピーエンドで終わらせるタイプの……ね」

 

 

今日は彼女の意志を尊重して消え去ってもらったが、これ以降は俺の意志に従ってもらおう。

何かを頼むとはつまり、相手の意志に沿うと認めたという事なのだから。

 

 

 

 

 

 

余談にはなるが、聖域のみならずリンドブルムそのものが約三割ほど消失したという情報を新聞で知らされた。

 

いやぁ、可能な限り威力押さえて、被害も出過ぎないようにしたんだけどな。

やっぱりシドみたいに上手くいかねぇや。









と、いう事でヒロの必殺技初披露の回です。
この作品を書き始めたのはこのシーンの為だったと言っても過言ではありません。

因みにシドのアトミックと違って名前負けレベルの威力しか出せません。
シド未満の魔力操作で超新星爆発なんて再現できるはずが無いんですね。



なおアウロラが最後に会いに来るシーンですが、ヒロよりも先にシドが彼女をヴァイオレットさん呼びし、さらにヒロがスーパーノヴァする代わりに原作通りオールレンジアトミックを使った場合、ヒロでは無くシドの前に現れました。

思い出をくれたという点においては二人ともほぼほぼ同じなのでね。
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