主人公になりたくて!   作:無名魔剣士

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HIGHEST

 

「随分と飛ばされたな」

「おかげさまでな。―――けど、これで人目は無くなったな」

「長々と場外で戦っていれば、失格退場になりそうだが……」

「じゃあ短期決戦と行こうじゃねぇか」

 

ジミナが会場から飛んできたので、瓦礫から這い出て会話する。

誰の目も無いが、ロールプレイは忘れない。

 

切っ先をジミナへ向け、獰猛に笑う。

 

「悪いが、こっからは全力全開だ。ついてこれるか?」

「ふっ。愚問だな。寧ろ心配すべきはそちらの方だと思うが」

 

軽く煽りあって、一拍間を置く。

そして、合図も無く同時に動く。

 

ジミナが振り下ろす刃を、俺は静かに受け流す。

そして半歩踏み出し、剣を手放してジミナのすぐ目の前で手を叩く。

 

相手がジミナで無ければ気絶させているはずの猫騙しは、ほんの一瞬体を硬直させる程度にとどまる。

本来の効果に比べれば、あまりにも短い硬直。武器を持ち直す間に、硬直が解けたジミナから反撃を喰らうだろう。

 

―――ただ、ここは人目が無い。

 

「ッ、背後に隠していたか!」

「御明察ッ!!」

 

背後に隠しておいた血液の刃が、一瞬の隙を突いてジミナの左腕に刺さる。

ただ腕を串刺しにしたわけでは無い。腕の腱を切ったのだ。

刃の形を操作する事で、周りの筋肉も巻き込んで破壊する。

腕を斬り落とすよりも手っ取り早く、修復の手間も多いので、これが最適解だ。

 

体勢を立て直す為か後方へ跳躍しようとしたジミナへ、懐から大量の寸鉄を取り出し、投擲。

ピストル並の速度と威力を誇る寸鉄は、回復の片手間に防げるような物ではない。

ジミナは苦々しげな表情を見せると、間合いを意識した後退を止め、全力で俺から距離を取り始めた。

 

「逃がすか!!」

 

寸鉄の投擲と血液で作った針の高速射出を行いながら、ジミナを追う。

あまり派手な攻撃をすると一般人の視線を集めかねないので、弾幕の密度は薄い。

 

「単純に質量と貫通力の高い寸鉄と、小規模ながらに爆発を起こす血液の針―――厄介だな」

「冷静に評価してる場合かよッ、ジミナ・セーネン!!」

「さてな。だが互いにこの行動が最善である以上、やはり優位はこちらにあるとだけ教えておこうか、ヒロ・ムノー!!」

 

余裕な態度に、俺は攻撃の速度を上げる。

血液針の爆発や俺とジミナの着地&跳躍で建物が次々と破壊されていくが、止まるわけにはいかない。

 

ジミナの言う通り、俺にとっては後先考えずにひたすら追いかける事が最善手だ。

ここで下手に間を置けば、ジミナの傷は癒え、再びただの斬り合いになる。

無論、ジミナがこの先もスタイリッシュな剣のまま戦うのならば、俺に軍配が上がる。

人目のない今、俺の剣技は本気そのもの。ジミナ、いや、シャドウが本気を出したところで単純な剣術勝負なら俺の方がまだ上なのだ。まして魅せプ用のスタイリッシュな剣技では、向こうに勝ち目なんぞ無い。

 

だが人目云々については向こうも同じ事。今はまだロールプレイに徹しているが、アイツは『陰の実力者』。敗北が目前に迫れば、正体を明かす、という体でシャドウとしての戦闘へシフトするだろう。

そうなれば泥仕合だ。いや、俺の敗色が濃厚と言ってよい。

 

なぜならシャドウは魔力も含め全ての実力を発揮できるのに対し、俺は魔力を解放できないからである。

 

俺の魔力の色は独特だ。体外に放出するだけでも結構目立つ。

だからコメットという技を編み出したのだが………アレは既にシャドウに対する優位性とは言えない。

かといってシャドウを消耗させ得るスーパーノヴァやクエーサーを撃てば、まず間違いなく目立つ。

つーか、こんな街中であんな大技を使えるわけが無い。

その分、向こうのアトミックを警戒せずにいられるわけだけど………いや、アイツの魔力操作技術なら俺だけ狙ってアトミックするのも可能か。まぁ、距離を適度に詰めてれば問題ないはず……だよな?

 

とにかく、下手に間を置くのは不味い。ジミナを回復させ、万全な状態でシャドウになられてはヒロ・ムノーとしては勝てない………とまでは言わないが、圧倒的に不利になる。

だから愚直に追うのだ。回復の間を、呼吸を整える間を、与えない為に。

 

 

 

「川、か―――ふっ。魔女の秘術をお見せしよう」

 

建物を破壊し地面を抉り、行きかう荷馬車を踏みつぶして移動してきた俺達は、王都を流れるそこそこ大きな川を通過した。

 

ジミナはソレを見るとニヤリと笑い、急速に落下した。

 

同時に、まるで蛇のように水柱が噴出し、俺へ襲い掛かる。

 

攻撃は難なく回避できるが、水柱はそのまま方向を変え、俺を追尾してくる。

その上には、ジミナが立っていた。

 

「そろそろ攻守交替と行こうか」

 

ジミナが乗る水柱から、細く速度に特化した水柱がいくつも飛び出し、俺を襲う。

水はそこまで魔力伝導率が良いわけでも無いのに、良くもまぁあんな速度の攻撃が出来るモノだ。

 

微かに感心すると同時、俺は切り札その2を切る。

 

「いいや。交代にはまだ早いぜ。そっちが『魔女の秘術』なら―――俺は『魔法』だ」

 

川の水に手を触れる。

その瞬間、川を流れる水も、ジミナの乗った水柱も、そこから飛び出す細い水柱も―――全てが()()()()()

 

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

 

「何!?」

 

予想もできなかった現象に、ジミナはたまらずシドの声(素の声)を漏らす。

突然水柱が動きを止めたせいで、慣性に従って彼の体が落下する。

 

(水が全部、凍った!?まさか本当の『魔法』!?この世界には魔力はあっても魔法は存在しないはずなのに―――)

 

「驚愕と落下。()()()()()()

「ッ、しまっ!?」

 

意識が逸れた瞬間を狙って、ヒロはジミナの両腕に剣を刺す。

無傷だった右腕と治したばかりの左腕が同時に腱を切られ、周囲の筋線維を滅茶苦茶に破壊される。

 

刺突の瞬間はただの剣。腕に侵入した時点で、切っ先が丸鋸の形に変形し回転―――殺意の高い攻撃に、ジミナはつい苦笑いしてしまう。

 

ただ痛みで冷静になったのか、ヒロが追撃するよりも速く蹴りを放ち、距離を取った。

 

「流石に、そう簡単には戦闘不能にならねぇか」

「甘く見てもらっては困る。―――それで?この凍結に関する解説は無いのか?」

「するかバカ。種明かしたらコメットみたくパクられるだろうがよ」

「『能力解説は異能力バトルのお約束』、では無かったか?」

「……………次回のお楽しみだ!!」

 

過去のヒロの発言を使って煽るも、頑なに解説は無い。

ジミナは再びヒロから逃げるように()()()()への移動を開始し、止血と同時に先程の凍結の解析を始めた。

 

(「コメットみたくパクられる」って事は、ヒロだけが扱えるオンリーワンな技って訳ではないという事。当然、武術の応用で水を一瞬で凍らせるなんて不可能だろうし、魔力を使った現象なのは確実だろう。―――で、問題は魔力をどう使えばあんな現象が起こせるのかという点)

 

嫌な位置に投擲される寸鉄に顔を顰めながら、フェイントを多用して逃げ続ける。

腕は垂れ下がったままだ。

 

(仮説一。魔力には属性を付与できた。多分これは無い。この世界の誰もそんな事をしていないし、仮に失われた技術とだとしても、ヒロだけが発見できて僕が気づけないというのがおかしい。仮説二。パクられる云々は僕を悩ませるための嘘で、実はアーティファクトを使っていた。絶対に無い。ヒロは僕と同じで、アーティファクトみたいな借物の力を嫌う。それにアーティファクトだとしても川の水を僕が操っているモノまで含めて、全てを一瞬で凍らせるなんて不可能なはずだ)

 

人の多い区画に入る。

投擲のままでは無関係の人々を巻き込みかねないと判断したヒロは、コメットを利用して急接近し、剣での攻撃にシフトした。

 

ジミナはある程度のダメージは許容しつつ、逃げ続ける。

 

(仮説三。魔力による操作で凍らせた。可能性は高い。っていうか多分これが正答。ただ、魔力で何をすれば凍るのか………凍った後の川からは魔力を感じなかったから、()()()()()()に魔力の操作が必要なんだろうけど…………)

 

「考え事は結構だが、そろそろダメ押し行くぞ!!」

 

再び人の少ない区画に出ると、ヒロはスライムを使って懐から小瓶を取り出し、ソレを力強く砕いた。

中から出てきたのは、白っぽい粉。

 

手放された粉が、瞬時に()()()()()

煌々と燃える炎の塊は、降りしきる雨に一切勢いを弱めることなく、寧ろ熱量を高めていく。

 

「今度は炎!?」

「多属性使用は主人公の特権だろ?」

 

小型の太陽と言うべき炎の球から、矢の形をした炎が大量に放出される。

当然回避するものの、紙一重で躱した矢から感じた熱に冷や汗が流れる。

 

今よりも距離を取らないと不味い。

そう判断したジミナが、速度を上げようとするも―――

 

 

「……ははっ、やられた」

 

炎の矢を回避するために動いた結果、近付いた建物。

何の変哲もない建造物だが、ジミナの体は建物と縫い合わせられたかのように止まっていた。

 

ジミナの体と建物を繋ぐように、凄まじい冷気を放つ氷が発生していた。

 

「終わりだ!!」

 

手は動かない。足も体も、スライムの刃が伸ばせないように凍らされている。

 

ジミナは乾いた笑みを浮かべ、振り下ろされる刃を受け入れる。

 

 

 

 

……なんて、そんな事はするはずも無く。

 

「“アイ・アム・アトミック”」

「マジか!?」

 

本来の威力と比べればかなり小規模ながら、ジミナはアトミックを放った。

建物を巻き込み、拘束を解き、ヒロにも気持ち程度のダメージを与える。

 

最悪のタイミングでの核爆発に、ヒロは咄嗟に魔力で体を守りつつ舌打ちをした。

 

「氷と炎。冷気と熱。相反する二つの力を、良くぞ掌握した」

「それも核の炎に掻き消されちまったけどな」

「人類の編み出した最強の攻撃手段だ、そう易々と超えられると思わぬ事だ」

 

再び、超高速の鬼ごっこが始まる。

 

街は既に混乱の嵐だ。

強い風が吹き荒れたかと思えば建物は崩れ道路は抉れ、川は凍てつき灼熱が空を駆ける。

正体不明の災害に、王都は前例のない大混乱を迎えていた。

 

だがヒロもジミナもお構いなしに戦いを続ける。

 

 

恐ろしいことに、まだ一分も経っていない。

会場の人々は居るべき二人の不在に困惑するよりも、客席の崩壊に気を取られていた。

 

 

 

「それともう一つ。直接凍らされたことで、お前の能力の正体は掴めたぞ」

「……だろーな。そうだろうから、アレで終わりにしたかった」

 

苦々し気な顔をしつつ、攻撃を続けるヒロ。

だがジミナには当たらない。仮に被弾しても、彼の動きを鈍らせるに足らない程度のモノだけだ。

 

「一応聞くが、お前の解答は?」

()()()()()()()()()()、だろう?」

 

確信しきった態度に、ヒロは何も言わない。

 

「昔、教育番組で話されていた事を思い出したよ。熱は分子の動きによって生じると。分子の動きが活発であればあるほど高温で、逆に分子が停滞していれば低温。その果てにあるのが絶対零度だと」

「………いつぞやの信用創造の話と言い、お前なんでそんな要らねぇ知識ばっかり覚えてんだよ」

「さてな。頭の片隅に残っていた、というヤツだ」

「はぁ………大正解だよッ!!」

 

投擲を止め、距離を詰める。

コメットの()()()()により更なる強化を行ったヒロの刃が、ジミナの肩を斬り裂いた。

 

微かに表情が歪むが、足は止めない。

ただひたすら、ある場所へ走り続ける。

 

「氷は物質の三態そのままで、炎は強制的に温度を高めて『発火点』に達させた!作った炎は空気の流れとかを操ってやればそのまま自由に扱える!これが俺の切り札その2だ!パクるんならパクりやがれ畜生!!」

「………純粋な魔力制御だけでは勝負にならないと思って生み出した……と言ったところかな?」

 

自棄になって怒鳴るヒロに、シドは冷静に言葉をかける。

 

目的の場所は近い。

 

「凄いよ、ヒロ。魔力制御の極限を目指した僕が、見落としていたアイディアだ。発想も、それを実現させるに至った研鑽も、本当に素晴らしいと思う」

 

純粋な賞賛の言葉に、ヒロは嬉しいような悔しいような、複雑な表情を浮かべる。

結局、見抜かれては意味が無いのだ。シドでさえ真似できないオンリーワンが無ければ、この勝負も、この先の勝負も五分五分の戦いは終わらない。

仮に終わったとして、シド側に軍配が上がるだろう。

 

それではダメなのだ。

陰の実力者であっても妥協する、物語において最強の力。それが無ければ、最強系も努力系も、叶わぬ夢なのだ。

 

そんなヒロに、シドはジミナの顔のまま彼自身の声で続ける。

 

「だから」

 

トンッ、と。

 

軽く建物を蹴って、跳躍する。

ヒロは迷いなくソレを追って―――そこでようやく理解した。

 

 

「遊びは終わりだ」

 

 

シドの目的地。ヒロに勝利する……とまではいかずとも、大きなアドバンテージを稼ぐ為に必要な一手。それを打つために、最適な場所。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「“アイ”」

 

シドを中心に徹底的に制御されつくした魔力が広がり、王都全域を―――否、王都さえも超えて、巨大な青紫のドームを作る。

 

ヒロは誘い込まれた事に歯噛みしつつも、血液の剣を無数に生成し(絶滅形態へ変化し)、シドの奥義を防ぐべく突撃する。

 

「“アム”」

 

全ての刃を、スライムが防ぐ。

しかしヒロは咄嗟に新たな刃を生成し、防御を掻い潜って刺突を放った。

 

「“ジ・オールレンジ”」

 

刺突はシドの体を容赦なく貫く。

心臓があるべき位置を、的確に。

 

 

 

 

―――けれど、それは。

 

 

「“アトミック”」

 

核の前には、あまりに無力な抵抗だった。

 

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

 

「ッ、あの光は!!」

 

膨大な魔力が王都を包んだ直後、突如立ち昇った光の柱。

余りに眩すぎるソレを見て、アレクシアはたまらずに立ち上がった。

 

「そんな、まさか……でも、だとしたら……!!」

「今の魔力と光に、何か心当たりが?」

 

騒がしくなった貴賓席の中、アイリスは混乱を無理矢理飲み込んで、崩れ落ちたアレクシアに優しく声をかけた。

その声は微かに震えていたが、アレクシアはそれに気づくことなく答える。

 

「さっきの、あの空に浮かんだ模様も、あの光も、見たことがあります。でも、もし本当なら……」

「落ち着いて。大丈夫です。ゆっくりで良いですから」

「はい。………あの光は、あの日、私が誘拐された時に見た………シャドウの光でした」

 

シャドウ。現在世界規模で指名手配されている、極悪人だ。

アイリス自身、シャドウが率いているという組織【シャドウガーデン】の人間と接触した事がある。

 

自然と拳を握る力が強くなるも、人の目がある以上、感情を露にするような真似はしなかった。

 

「アレは、アーティファクトの暴走だと」

「さっきの魔力を見て、まだそうだと言えるんですか!?アーティファクトの暴走だと言うなら、あんな風に魔力が空を覆うはずが無い!仮に覆えたとして、あんな綺麗な模様が生まれるはずが無い!!」

「………では仮に、あの光がシャドウの物だったとして……なぜあなたはそんなに怯えているのですか」

「わからないんですか、姉様。あんな一撃を放ったのは、誰かと戦っているから。今まさに戦っていて、あんな一撃を放てる強者………ついさっきまで、見ていたではありませんか」

「っ、まさか」

 

その言葉で、ようやく理解したアイリス。

彼女は顔を青白くすると、ガラスの外を呆然と眺めた。

 

「………ジミナ・セーネン……?」

 

 

 

 

 

「きゃああああっ、主様ぁああああ!!曇天を照らす極光、素敵ですー!!」

「あぁっ、シャドウ様の輝きも素敵だけど……ヴォイド様ぁ~!負けないで~!」

 

いつになく元気な二人に、アルファとゼータが苦笑いする。

当然、二人とてシャドウの放った輝きに心が躍っていないわけでは無い。

 

ただアルファは七陰を率いる者として、ゼータは今の一撃で追いつめられただろう少年の方に想いを寄せているが故、感情を露にするわけにはいかなかった。

 

「………今回の、凄い。これまでの一撃よりも、威力が跳ね上がっている」

「えっと、その……計測器?」

「ヴォイド様に頼まれて作った。威力、内包された魔力量、攻撃範囲、等々が具体的な数値として出てくるアーティファクト。自分の技を客観視したい、というオーダーに合わせて作った」

「彼が求めた通りの物とは言え、随分と使用する機会が限られているわね」

「その分、作りは単純。完成も早かった」

 

ぶい。とピースサインを見せるイータ。

 

視線を反対側に向ければ、立ち上がって大声で盛り上がるベータ、デルタ、イプシロン。

その奥に居たガンマも、三人の熱気にあてられたのか、立ち上がっての応援に参加した。

 

「………なんというか、変わらないね」

「ふふっ………そうね。変わらないわ」

 

かつて、【シャドウガーデン】がシャドウとヴォイド、そして七陰達しかいなかった時。二人が戦う姿を、皆で鑑賞した時の光景。

ソレを思い出しつつ、二人は微笑み、そして心の中で改めて決意を固めた。

 

(―――今日みたいに、あの頃みたいに、皆が集まって、こんな風に笑顔で居られる日々に帰る。そのためにも、私は……)

 

(―――皆がこうして笑える日々を手に入れるには、もうあんな悲しみを生まない為には、やっぱり『作戦』を遂行するしかない。その先に死が待つとしても、私は………)

 

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

 

「凌いだか。殺すつもりで使ったのだが」

「まったくだよ、死ぬかと思ったわ」

 

さらに深く地面が抉られた爆心地で、ジミナとヒロが言葉を交わす。

ヒロはかなりボロボロで、少し体の重心がズレていた。

ジミナの方も、体の傷は治した物の、受けたダメージまで回復したわけでは無いようで、微かに姿勢が悪くなっていた。

 

「……んじゃ、第二ラウンドだな。会場に戻ってくルートで良いだろ?」

「場外で両者失格では、笑い話にもならんしな。―――良いだろう」

 

互いに、鞘に仕舞われていた鉄の剣を引き抜く。

構えは一瞬。呼吸を読み合う時間も一瞬。

 

両者同時に動き、再び街中を駆ける。

 

先程と違うのは、攻撃手段が完全に接近戦のみになった点だろう。

走りながら間合いを測り、互いに嫌なタイミングを狙って攻撃を仕掛ける。

時に防ぎ時に躱し、時にわずかなダメージを許容しながら走り続けた。

 

 

息もできぬような激しい攻防の中、二人はふと、ある一点に視線を向けた。

ジミナは建物の改築現場を。ヒロは道路工事の現場を。

 

刹那の内に互いに目当ての品を見つけ、そして同時に跳躍し、ソレを手に取った。

 

 

「やっぱり」

「コイツには」

 

「「ポテンシャルがあるッ!!」」

 

 

甲高い金属音が響く。

L字の角で殴るように、鋭い先端で刺し穿つように、二人は持ち替えた武器で攻撃した。

 

 

そして相手の使った武器を見て、これまでの人生で一番の衝撃を覚えた。

 

 

「……ふっ―――フハハハハハッ!!ハハハハハ!!」

「ぷっ、アハハハハハッ、アハハッ!!」

 

 

向かい合う建物の屋上に立ち、狂ったように笑う。

どこまでも愉快だと、こんな偶然があるのかと、堰を切ったように笑う。

 

聞えて来る笑い声に何事かと道行く人々の視線を集めるが、今の二人の間に、外野はもはや関係なかった。

 

 

二人はひとしきり笑うと、各々の武器を構え、最高の笑みと共に叫んだ。

 

 

「前世からの因縁に決着をつけようか、主人公太郎(あるじひとこうたろう)―――いや、アルティメット・ガイ!!」

「勝つのは俺だぜ、影野実(かげのみのる)―――いいや、スタイリッシュ暴漢スレイヤー!!」

 

 

バールとスコップが交差する。

 

 

決着の時は、近い。










ジミナが腕を再生しなかったのはヒロの妨害があったからでは無く、傷を治さない事でヒロが追いかける理由を作り、目的の場所まで誘導したかったからです。


あと、凍結と火炎についてですが、アウロラが光の屈折を云々と言っていたのを聞いて「それありなら魔力で分子を操るとかできても良くない?」と考えたのがきっかけです。
分子の動きが云々については以前の『鉱脈の生成』同様自信が無いので、間違ってたら優しく指摘してください。僕、科学は苦手です。

因みに凍結に関しては他の陰実二次創作とネタが被っちゃって省くか悩みましたが、熱と冷気を操るヒロが書きたかったのでそのまま書きました。

でも今後冷気も熱も出番無いと思う……(小声)
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