主人公になりたくて!   作:無名魔剣士

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乱痴気騒ぎ

 

「あの後、調べたよ。目出し帽のバーサーカー、アレもお前だったんだな」

「盗賊狩りと同じさ。実力は実戦経験の中でこそ磨かれる」

 

神技と神技の激突。

()()()()を振るう二人は、まるで茶を飲み交わしながら雑談するかのように会話をしつつ、超越した攻防を繰り広げていた。

 

「お前もそうだろう、アルティメット・ガイ。アメリカ、メキシコ、中国、イタリア………他多数。随分と活動範囲が広かったな」

「『家族みんなで世界一周』が両親の目標だったんでね。長期休暇には必ず海外に飛んでた」

「羨ましい限りだ。暴走族を相手にするよりも、余程得る物があっただろう」

「大半銃の知識だけどな」

 

バールの角とスコップの側面がぶつかり、鈍い音が響く。

 

「―――会場が近づいてきたな」

「だな。着くまでに終わらせてやるッ!!」

 

ヒロの体に緻密な紋様が浮かぶ。

圧縮と解放を刹那の内に行った魔力が、彼の体内を駆け巡る。

 

この一撃で終わらせる。

そんな意志を込めた刺突を、ジミナは狂気の笑みで迎え撃つ。

 

青紫の魔力が、ヒロよりも緻密な紋様が、ジミナの体を覆った。

 

「“アイ・アム―――”」

「させるかッ!!」

 

『その言葉』を聞いた時、ヒロは微かな戦慄を覚えた。

ジミナ―――シドにとって、『その言葉』は特別な物であるとわかっていたからだ。

 

陰の実力者という野望の為に突き進むシドにとって最大の障壁である核。

それを超えるべく編み出し、名付けた技こそが『アイ・アム・アトミック』。

 

遊び(フェイント)では言わない。冗談(ブラフ)では言わない。

勝利の為ならばダーティーな戦法もありだ、と豪語するシドであっても、『その言葉』を一瞬の隙を作るための嘘として使う事は無い。

 

つまり、確実に核爆発は起こる。

 

「“This is Comet”!!」

 

食い止めるべく、決死の覚悟で圧縮と解放を繰り返す。

本来ならば一回行うだけで十分なその工程を連続して行う事で、彼の身体能力は文字通り()()()()強化された。

 

 

核爆発はピンチであるが、同時にチャンスでもあった。

 

 

シドにはコメットの技術は知られている。どころか、既にオリジナル以上に使いこなせるようになっている。

仮にシドがコメットに対し爆発では無く身体能力強化で対抗してきた場合、押し負ける―――事は無くとも、止めを刺すには至らなかった。

 

だが爆発前の身体能力なら。

高密度の魔力に体を覆われてはいるものの、その魔力の使い道は強化では無く攻撃にある。

多重発動のコメットであれば、ヒロの超越した技術と組み合わされば、屠れる。

 

恐らくは、最後のチャンス。

制したのは―――

 

()ったッ!!アトミック用の魔力運用じゃ、この一撃は防げな――――)

 

「“()()()()()()()()()”」

 

―――シドだった。

 

ヒロの頭蓋を、バールの角が容赦なく叩く。

勝利を確信した彼にソレを防ぐ術も躱す術も無く、体は会場へと吹っ飛んでいった。

 

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

 

「―――ッ、ヒロ!?」

 

舞い上がる粉塵の奥に小型のクレーターと、ピクリとも動かないヒロの姿を確認したアレクシアは、たまらず声を上げた。

遅れて貴賓席の面々が、観客席の(シャドウガーデン構成員を除く)全員が驚愕と困惑の声を上げる。

 

「嘘……!?まさか、アイツが負けたって言うの!?」

 

信じられない、と目を見開くクレア。

放心しかけた彼女だったが、上空に凄まじい魔力を感知し、咄嗟に顔を上げた。

 

「何?あの黒いの……」

「途轍もない魔力の塊……?」

 

そこには、黒い塊があった。

綺麗な球を形作っているソレは、注視すれば渦を巻くように蠢いている事がわかる。

 

「流石だ」

 

低く、威圧的な声が轟く。

発生源は件の球体。聞き覚えのある声に、アレクシアは息を呑んだ。

 

「ヒロ・ムノー。お前の刃は、我が喉元を掠めた……」

 

青紫が迸る。

膨大な魔力に影響されて、空の暗雲がゆっくりと渦を巻き始めた。

 

「だが所詮は戯れ」

 

一瞬、静寂が訪れる。

魔力が動きを止め、人々は呼吸を忘れ、自然でさえ静止した。

 

そして、塊が弾ける。

蝶が羽化するかのように、漆黒の繭を突き破って、()は姿を現した。

 

 

 

 

 

「さぁ―――遊びは終わりだ」

 

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

 

(…………アイツ、マジかよ)

 

クレーターの中、ヒロは視線だけを頭上へ向け、ため息を吐いた。

 

仕留められる最後のチャンスを逃したばかりか、手痛いカウンターを喰らってしまった。

その上、何故か本気の姿を見せたジミナ───もといシャドウ。

会場に着くだけで消えるはずだった勝ちの目は、彼が本気を見せる意思表示をした時点で、完全に潰された。

 

(負け、か………やべぇ、体動かねぇ)

 

指先一つ満足に動かせない状況。

実力が露見しない程度の魔力で回復を試みているが、なかなか上手く行かない。

バールに脳組織を破壊された為だ。本来の実力を見せても構わないのであればすぐさま再生可能だが、あまりにも人の目が多すぎた。

 

(アトミック・コメット、ねぇ………完璧想定外だわ)

 

ゆっくりと地に降り立つシャドウを視界に収めつつ、ため息を吐く。

 

「どうした……まだ終わりではないだろう………?」

 

(終わりだろ、脳味噌出てんだよこっちは)

 

動かない口の代わりに、頭の中で悪態をつく。

そんな彼の反応に気づいているのか居ないのか、シャドウはゆっくりと右手をヒロへ向けた。

 

そして、ヒロから青紫の魔力が溢れ出す。

 

「………敵の回復とは余裕だな、シャドウ」

「遊びのまま終わらせるには惜しいと判断したまでだ。―――さぁ、()()()()()()()()()

「っ、お前」

 

(シナリオ談義で俺が出したセリフ案………ちょっと無いかなとか言っといてここで使うかよ)

 

してやったり、という表情がフードの下から一瞬覗く。

ヒロはそれに対し、俺も何か上手い事を、と思考を巡らせ、口角を上げた。

 

「―――見せてやるぜ、俺の究極(アルティメット)

「ふっ……屠ってやろう―――スタイリッシュにな」

 

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

 

再び戦闘を始めたシャドウとヒロ。

シャドウの登場に動揺していた貴賓席の人々は、人智を越えた戦いに言葉を失い、動きを止めていた。

目の前で繰り広げられる戦いが、神話や伝承に遺されるようなモノであると、直感的に理解していたからだ。

 

 

「………シャドウが、ヒロの傷を治した?」

「それだけじゃない……ヒロから感じる魔力の量が、増えた……?」

 

アイリスとアレクシアが呟く。

見ているだけで吐き気を催すほど脳を疲弊させる攻防だが、彼女達はなんとなくながら二人の状態をわかる事が出来ていた。

言葉こそ発していないが、クレアとベアトリクスもまた、数少ない二人の戦いを(程度に差はあれど)理解できていた。

 

 

そして、()()も。

 

 

「シャドウに魔力を譲渡されたのでしょう。彼は他者に魔力で干渉する力がある。私もまた、その身で彼の魔力を感じました。と言っても、私の場合は譲渡ではなく治癒、でしたが」

 

シャドウとヒロの戦いに魅入っていた彼女達は、聞き覚えのあるその声にギョッと目を見開いて、声のする方を見た。

 

蜂蜜色の髪の少女。なにかを決意したような、そんな目をした少女。

ローズ・オリアナが、そこに居た。

 

「なっ―――ろ、ローズ会長!?どうして」

「………やらねばならない事が、あるのです」

 

昏い笑みを浮かべ、彼女は友に背を向ける。

視線の向かう先には―――ドエムと、父。

 

「やはり現れたか………ククッ。お待ちしておりました、我が婚約者ローズ王女。陛下もお待ちかねでしたよ」

「ロー……ズ……よく、もどった……」

 

わざとらしく恭しい態度を取りつつ、ドエムは隠そうともせずいやらしい笑みを浮かべる。

虚ろな目をしたオリアナ国王が、フラフラと立ち上がった。

 

「さぁ、こっちへ……」

「…………お父様、私は謝罪に参りました。今までの事を。そしてこれからの事を」

 

その場で跪くローズ。

その言葉は静まり返った貴賓席によく響く。

 

「私がこれまで、多くを間違えました。そしてこれからも、間違いを重ねるでしょう。しかし、私は王女として、貴方の娘として、私は。―――私の信じる道を進みます」

 

届くはずも無いと思いながら。

明らかに正気ではない父親へ、それでも彼女は告げた。

 

「………ローズ」

 

国王はただ、力無い声で。

 

「―――お前の罪を赦そう」

 

『自分の言葉』で、答えた。

 

「おい待て!そんな言葉は指示して―――」

「……ありがとうございます、お父様」

 

涙を流し、跳躍。

弓を引くように剣を構え、全力の刺突を繰り出す。

 

その切っ先は、迷いなく彼女の父を貫いた。

 

「何っ、貴様、父親を!?」

「これで、終わりです。………私も」

「っ、待て!!やめろっ―――クソッ、止めさせろ!!」

 

父を殺した刃を首にあてがう。

やりきった、という表情で、目元を赤く腫らしながら。

 

ドエムは慌てて部下に指示を出すが、誰も動かない。

何をしている、と部下がいるはずの場所を見るも、そこには斬り裂かれた死体が転がっているばかり。

 

「はぁッ!?い、一体いつ、誰が!?」

「残念だけど、既にこの場は我らが占拠している。―――手を打つには、遅すぎたわね」

「何者だ!?」

「―――我らは、【シャドウガーデン】」

 

いつの間にかローズのすぐそばに立っていた、黒いスーツの女。

洒落た仮面で顔を隠したアルファは、ドエムの言葉に答えるように微笑んだ。

 

「なっ、【シャドウガーデン】……だと……!?バカなッ、何故今ここに!?」

「全ては彼らの計算通りというだけ―――」

 

チラ、とローズを見る。

突然のアルファの登場に驚き、自刎の手が止まっている。

 

「―――全てが、ね」

 

(「大会中、多分ローズ会長が来ると思うんだけど……もし会ったら『自殺はダメよ』とか言ってあげて欲しいんだよね。俺の知り合いって明かしてくれて全然オッケーだから。ま、出来たらで良いけど」)

 

つい先日、ヴォイドが出した、七陰を始め、試合を見に来る【シャドウガーデン】の構成員達全員に対し出された「ローズ王女を死なすな」という命令。

自殺とは一体……という疑問が目の前で解消され、アルファは自分の至らなさに自嘲的な笑みを漏らした。

 

なおヴォイドがローズ王女が自殺を選ぶとまで予想したのは、ほぼ勘である。

と言っても勘で決める前にそこそこの(ヴォイド基準)情報収集は行ったのだが。

 

「ローズ・オリアナ。貴女にはまだ、為すべき事が残っているのではないの?」

「……私は……」

「その力は、ただこの為だけに与えられたと思う?」

「それはっ……」

 

自然と、剣を持つ腕が下がっていく。

ローズは上手く言葉がまとまらない様子のまま俯いた。

 

───同時に、アイリスがアルファへと襲い掛かる。

溢れる殺意に身を任せた乱暴な突撃。しかしその一撃は漆黒の剣に阻まれ、弾かれる。

 

「シャドウ、ガーデン……!!」

「哀れね。客席を立たなければ、何も傷つく事は無かったというのに」

「黙れ!!」

 

再び攻撃を仕掛けようとしたアイリス。

しかしソレは未遂に終わった。

 

彼女だけでなく、全員が動きを止めた。

 

窓ガラスの割れる音。同時に聞こえる、派手な金属音。

飛び込んでくる、二人の影。

 

本来の戦場からまたも飛び出し、衝突する究極(主人公)最強(陰の実力者)

 

「どうした、動きが鈍っているぞ」

「お前が言えたことかァ!?」

 

床を踏み砕き、椅子を叩き割り、魔力と剣戟で竜巻でも発生したかのような破壊をまき散らす二人。

彼らは阿鼻叫喚を生み出しながら、それを気にも留めずに戦いを続ける。

 

「なんなんだこの状況はぁあああああッ!!」

 

わなわなと震えながら、ドエムは叫ぶ。

しかしすぐに我に返り、避難する人々の流れに乗じてこの場を離れようとした。

 

だが、踵を返したと同時に彼の前に黒装束の少女達が現れ、退路を断った。

 

 

 

パァァンッ!!

 

銃声のような破裂音が響く。

剣を放り投げたヒロが、シャドウの眼前で手を打ち鳴らしたのだ。

 

唐突な猫騙しに意表を突かれたシャドウは、気絶こそしないものの動きが止まる。

その隙に宙に浮く剣を回収しつつ後退したヒロは、備え付けのバーカウンターへと潜り込んだ。

 

 

自ら千載一遇のチャンスを放棄した?とギリギリ被害を受けない場所で二人を眺めていたアレクシアとクレアが困惑する。

しかしすぐに考えを改めた。

 

ヒロは隠れ続けるのではなく、すぐにバーカウンターから飛び出した。

 

その手に、大量のワインボトルを握りながら。

 

指と指の間で挟み込むようにして、概算十数本を掴んでいる。

意図がわからず目を丸くしたシャドウへ、そのうち一本を投擲した。

 

(ワインによる目眩まし?僕にそんなのが通用するとは思ってないはずだけど───ッ!?あぁ、()()()()()か!)

 

シャドウがワインボトルを叩き壊した瞬間、彼の体を真紅の槍が貫いた。

飛び散るワインに紛れた、()()()()()だ。

 

「ぐぅッ!?」

「嘘、シャドウが苦しんでる!?」

「ヒロは一体何を……?」

 

彼女達は知る由もないが、体内に侵入したヒロの血液が、シャドウの肉体を内側から破壊しているのだ。

 

侵入させた血液の制御権はすぐに奪われるが、猫騙しよりも生じた隙は大きく、長い。

 

接近したヒロは、バールのお返しとばかりに頭部をワインボトルで殴りつけ、心臓に剣を突き立てた。

 

「殺した!?」

「この程度で終わると思うか?」

「思ってねぇよ!!」

 

アレクシアが驚愕し、それを否定するようにシャドウが笑う。

ヒロは怒号と共に鋭い蹴撃を放ち、シャドウもカウンターの蹴りを放った。

 

互いに鳩尾。微かに表情を歪め、壁へ吹き飛ぶ。

 

「心臓を刺されても、死なない……?」

「シャドウは一体、なんなの……?」

 

 

 

(ま、不味い……!どうする!?傀儡を失い、部下は死に、眼の前にシャドウガーデンだと!?もうすぐでラウンズの座が手に入ったというのに、これはなんの冗談だ!?)

 

「ドエム・ケツハット。あなたにはいくつか聞きたいことがある。………まだ殺しはしない、一緒に来てもらいましょう」

「ふざけるな、私は!」

 

ドエムの言葉を遮るように、鈍い音が響く。

彼らが視線を向けると、剣の鞘を床へ落とし、ミスリルの剣を構えたアイリスがそこに居た。

 

こっちを見ろと、わざと音を立てたのだ。

 

「あなた達の相手は私がします」

「ミスリルの剣、古代文字………アーティファクトね」

「………卑怯と、笑いますか?」

「いいえ?」

 

一拍おいて、一言。

 

「しかしアーティファクト頼りとはね」

「ッ!!───ァアアアア!!!」

 

一時は取り戻せていた冷静さを再びかなぐり捨て、感情のままにアーティファクトを振るう。

噴き出した炎が部屋を焼き、壁を貫通しながらアルファを襲う。

 

アルファは優雅に炎を交わし、構成員へ指示を出す。

 

「アイリス・ミドガルの相手は私がする。その間にドエム・ケツハットを確保しなさい。───邪魔はさせないわ」

「ふざけるな!お前たちに、これ以上の勝手を許すわけにはいかない!!」

 

炎を撒き散らし、ドエムの拿捕を妨害するアイリス。

今の彼女にとっては、シャドウガーデンに何もさせないことだけが全てだった。

 

癇癪を起こした子どものような姿に、アルファはため息を吐いて、魔力を開放する。

 

「客席には、静かに座っているものよ」

「気取るな、犯罪者が!」

 

剣の炎と魔力の奔流が衝突し、シャドウとヒロの戦いに劣らぬ破壊をまき散らす。

 

ただ悲しいかな、こちらの戦いは、互いの練度に差がありすぎた。

アイリスの猛攻は全ていなされ、アルファはただ弄ぶように防ぐばかり。

アイリスの怒りが具現化したかのような炎さえ、蒼い魔力に防がれ、届かない。

 

………だが、その炎が生んだ隙を、彼女は逃さなかった。

 

 

「……!今のを防ぐのか」

「アナタは───エルフの、剣聖」

 

仮面の奥の瞳が揺れる。

アーティファクトの炎から突如姿を現したベアトリクスは、警戒心を隠すこと無くアルファを見つつ、口を開いた。

 

「そういうお前も、エルフか。………名は?」

「……………アルファ」

「そうか」

 

一言、何かを言おうかどうか逡巡して、口を噤む。

再び剣を構え、刃を交えようとしたその瞬間。

青紫の緻密な紋様が、部屋全体を包んだ。

 

 

 

 

 

「そろそろ幕を閉じようか!我が最強を以て終わらせよう!」

 

解き放たれる魔力に、冷や汗を流すヒロ。

今度は迷いなく後退し、アレクシアとクレアを脇に抱えた。

 

「ちょっと、いきなり何すんのよ!?」

「黙ってろ、舌噛むぞ」

「あの一撃を、何度も使えるっていうの……?」

 

アトミックを知らぬクレアと知るアレクシアは、対象的な反応を見せる。

ヒロはどちらも無視して貴賓席を飛び降り、宙を蹴ってさらに距離を取って───

 

「追って来んのかよ!?」

「終の一撃をあのような狭き場所で放ったところで意味など無いだろう?───さぁ、仰ぎ見よ!我が最強の一撃を!」

 

ドクンッッ!!

 

魔力のドームが脈動する。

赤い瞳が爛々と輝き、濃密な魔力が噴き出す。

 

「〝アイ・アム〟」

 

当然、迎撃は不可能。

ヒロは最低限二人は守れるようにと剣を握り、魔力を断つ構えを取った。

 

「〝アトミック〟」

 

 

 

 

 

 

 

閃光が

 

 

 

 

 

天を、穿った。

 

 

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

 

「「───乾杯ッ!!」」

 

ガチャンッ!とジョッキをぶつけ、一気に中身を呷る。

 

激しい戦闘を終えた俺達は、つい先日も利用した焼肉屋を訪れ、打ち上げをしていた。

 

「かぁ〜〜っ、負けた!初披露の技、大判振る舞いしたのになぁ〜〜!」

「そっちは使える魔力の量に制限あったし、スーパーノヴァもクェーサーも禁止だったからねー」

「物語終盤主人公になるまで、公の場での勝利は厳しいんかねぇ……」

「常に主人公の一歩先を行くのが陰の実力者だからね?終盤でも負けないよ」

「なんだとぉ?」

 

肉を焼きながら会話する。

戦いの疲れはあるが、こうして話しているとそれも忘れられた。

 

「………しっかし、まさかお前があの影野だったとはなぁ」

「僕も驚いたよ、主人君。もしかして、アルティメット・ガイの活動中に死んだの?」

「まさか。普通に体が限界迎えて死んだわ。急に心臓止まってさー。そっちは?」

「僕も似たようなものかな。ようやく感じた魔力に向かって走ったら、急に。気づいたら転生してた」

「え、魔力感じたのかよ。前世で」

「うん。間違いないね。アレは魔力だった。生きていれば、向こうでもこの力が使えたと思うと………」

「ま、こっちの世界はこっちの世界で、色々楽しいだろ?」

「まぁね」

 

ちょっとしんみりした空気になる。

らしくないな、と鼻で笑い、話を変える。

 

「そういや、ローズ会長来てたな」

「あー、見た見た。それどころじゃなかったし無視しちゃったけど、何かあったのかな?」

「親父さんが洗脳されて、みたいな事はなんとなく調べたけど………でも刺してたよな、アレ」

「よくわからないけど、覇王にでもなるんじゃない?」

「覇王?」

「実の父を殺してまで王位を欲する………覇道ってヤツでしょ」

 

コイツ多分なんもわかってないな?

まぁ、わざわざ訂正することも無いし良いか。

 

「俺は自殺でもするんじゃねーかと思ってたけどな」

「なんでまた?」

「調べてる内にそんな気がしてきただけ」

「ふーん」

 

興味なさげなシド。

もしかして影野の時からこんなだったのか?コイツ。

 

「あ、そろそろ焼けてきたね」

「んじゃいただきまー」

「ちょっと待った。それは僕が育ててたやつ」

「良いだろ十割引きなんだから。また頼めよ」

「いいや、譲らないね。それは僕のだ」

「お前別に飯に拘るタイプでも───」

 

言い終わる前に、シドの顔を見て気が変わった。

 

なるほど。こいつはただ、アレがやりたいだけだ。

そういや最近やってなかったし、互いの正体を知って親密度も増したわけだし、ノッてやるのも悪くない。

 

 

「………しょうがねぇ、こうなりゃ実力行使だな」

「そうこなくっちゃ」

 

拳を握り、構える。

騒がしい店内の一画に、一瞬訪れる静寂。

 

そして、気合の雄叫び。

 

「「じゃん、けん────!!」」

 

 

 

こっちの勝敗は、敢えて言わないでおこう。

ただ、肉はやっぱり美味かった。








なんか全然上手くまとまらないわ、新生活に慣れず体調崩すわなんやらで、長いこと放置してしまいました。
多分また待たせることになると思いますが、気長にお待ち下さい。
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