主人公になりたくて!   作:無名魔剣士

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なんか前話でシドもヒロも学生服を着ているみたいな描写をしてしまったのですが、普通にミスです。私服ですよね、普通。


まぁ、アニメのキャラって休日でも制服着てる事あるし、ヒロがそれに倣ったのをシドも真似したとかそんな感じでお願いします。

こじつけとかではなく、ヒロが制服を気に入っているのは事実なので(学生系主人公が一番好き)


だから、宝物庫を探す必要があったんですね

 

「………何か、隠していることがあるんじゃないの?」

 

時折現れる吸血鬼を始末しながら、塔の最上階を目指す道中。

地下書庫でベータと会話をして以来、様子がおかしいメアリーへとクレアが問いかける。

 

「ここに来る途中で聞いた話もそうだし、さっきのベータとかいう女との話もそう。あなたの目的は血の女王の討伐だと思っていたけれど、今はまるで───」

「そういうあなたも。……悪魔憑きが治るか、なんてバカなことを言っていたでしょう。それはなぜ?」

 

突然の反撃に、思わず口を噤む。

そんなクレアを見て、メアリーは硬い声音のまま続けた。

 

「………あなたの隠し事は詮索しない。私の隠し事を明かすつもりもない。心配しなくても、協力関係を破綻させるようなものじゃない。あなたの弟を贄にするようなことはしないし、させない。それで十分でしょう」

「………そうね」

 

沈黙が満ちる。

気まずい雰囲気の中歩き続けていた二人だが、突然塔が揺れた。同時に、前方から激しい破壊音が轟いてくる。

 

どちらともなく走り出し、音の発生源へ向かうと、そこには巨大な鉈を振るう男と、彼によって紙切れのように引き千切られている吸血鬼の姿があった。

 

「ちっ、どいつもこいつも弱ぇな。前にクリムゾンの野郎と一緒にいた気がしたが……幹部、じゃなかったのか?」

 

ぐしゃっ、と吸血鬼の上半身を踏み潰し、つまらなそうな顔を見せる。

 

物陰から覗き見れば、そこには大量の死体が……吸血鬼の物と思しき死体が、軒並み潰されて転がっていた。

 

「……誰、アイツ」

「『暴君』ジャガノート。圧倒的な暴力だけで、支配者の一角にまで上り詰めた男……戦ってる暇はないし、勝てる保証もない。タイムロスにはなるけど、迂回しましょう」

「ええ、同感―――」

「つれねぇ事言うなよ、出歯亀野郎共!」

「「ッ!!」」

 

その場を離れようとしたが、いつの間にか背後に回り込んでいたジャガノートに襲われる。

既に振りかぶっていた拳を、避けることも防ぐこともできず。クレアは床に叩きつけられた。

その剛力はただ彼女を地に叩きつけるのみならず、床を砕いて階下へと突き落とす。

 

「クレアッ!!」

「余所見たぁ余裕だな!!」

「なっ───ぐぁッ!!」

 

彼女の身を案じ、声を荒げたメアリーだったが、続く鉈の一撃に腕と脇腹をえぐられ、吹き飛ばされる。

柱に激突し動きが止まるが、普通の人間ならば即死していてもおかしくない重症だ。

 

ジャガノートはそのまま動かなくなったメアリーに首を傾げ、顎下を掻く。

 

「っかしいな、あの蝙蝠野郎は他のよりか骨があると思ったんだが……勘が鈍ったか?」

 

それならそれでトドメを刺すだけだが、と歩き出そうとしたジャガノートは、一歩目を踏み出す直前に床と足が縫い合わせられる。

 

階下から這い上がってきたクレアの刃が、突き立てられたのだ。

 

「おいおいタフだな!」

「るっさいわね……!レディーの顔、殴ってんじゃないわよ!!」

「ハハハッ!!何発でもぶん殴ってやるよ!!」

 

ブォンッ!!拳が空を切る。

後ろに飛びのいて回避したクレアは、そのまま柱にもたれかかったメアリーの様子を確認して───青ざめる。

 

腕が欠損し、上半身と下半身が今にもちぎれそうなほど抉られている致命傷。

あと数秒もすれば死ぬ。ともすれば死んでいてもおかしくない。そんなメアリーに、彼女は慌てて応急処置をしようとする。

 

─――が。

 

「ご、めん、クレ、ア……」

「謝らなくていい!喋らないで!せめて、せめて血くらい止めないと……!!」

「あなたの、血を………」

「だから喋らないでって───んむッ!!?」

 

身を乗り出してきたメアリーを、倒れそうだと勘違いしたクレアは優しく抱きとめようとする。だが、そのために近づいたクレアの唇に、メアリーは自身の唇を触れさせた。

 

キス、したのだ。

 

しかも唇同士が触れ合うだけのキスではない。

クレアの唇を舌でこじ開け、ジャガノートの拳で口の中が切れた彼女から、血を吸いとった。

目的は血だが、舌をねじ込まれる形になったクレアはますます驚く。

 

数秒間流れる血を吸っていたメアリーは、そっと突き飛ばすようにクレアを押して、立ち上がる。

 

「な、なななっ、何するのよ!!!?……って、嘘」

 

顔を魔化にしていたクレアは、メアリーの傷が瞬時に癒えていくのを見て言葉を失う。

 

奥で退屈そうにしていたジャガノートも、その姿に獰猛な笑みを浮かべた。

 

「はっ、やっぱ俺の勘は当たるな。てめぇは他の雑魚とは違ぇ。いいぜ、こっからが本番だ!!」

「悪いが付き合ってやる暇は───ないッ!!」

 

周囲に浮かせた血液を発射する。

血の弾丸は一発一発が脅威のハズだが、豪雨のように迫るソレをジャガノートは鉈を振り回して無力化し、魔力を込めた一撃で全てを吹き飛ばす。

 

あまりの衝撃に浮かんでいた血液が制御を外れる。

その上、砕けた床や壁が粉塵となって、視界を塞ぐ。

 

「くっ、やっぱり安定しない……!」

「んだよもう終わりかァ!?」

「あっ───」

 

またしても背後に回り込んできたジャガノートに、先ほどと同様反応が間に合わない。

唯一違うのは、振るわれているのが拳ではなく、鉈という部分だ。

 

死を目前にし、引き伸ばされた時間の中で、クレアは自分の体が真っ二つになった未来を幻視し───

 

(ごめんなさい、シド。………。助けて───ヒロ

 

 

─――ギィンッッ!!

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

たまに現れる吸血鬼を殺しながら宝物庫探しをしていた俺達は、塔の揺れと轟音につられて野次馬―――もとい、原因を確かめに向かった。

 

そしたら、入口で良い感じの反応をくれた『暴君』ジャガノートが、クレアと見知らぬ女性を襲っている場面に出くわしたのだ。

 

「あれ、姉さん?いつの間に来てたんだろ。隣に『最古のヴァンパイアハンター』さんもいるし」

「最古のヴァンパイアハンター………あぁ、お前をbotにした人!」

「別にbotになったつもりは無いんだけど。……あ、姉さん落っこちた」

 

思いっきり顔面パンチを喰らって床ごと落とされたクレアに、なんとも薄情な態度である。

 

……さて、ここはどうするべきか。

一応、シャドウと行動しているのを見られても問題はない。既にジャガノートにもユキメにも見せているし。

 

ただクレアと会う、というのがいけない。

 

そもそも俺は(シドもだが)クレアを置いて勝手に行動している身。本当なら俺はクレアと一緒に魔剣士協会に行っていたはずだし、シドも宿で待機しているはずだった。

これは、さぞ怒っているに違いない。

 

大方ここに来たのは魔剣士として、この騒動を止めるためだろうが……ここで俺らが登場し、怒りを再燃させたら面倒くさい事になる。絶対。

 

「お、キスした」

「姉さんってそっちの人だったんだ……」

「いや、今のはどっちかっていうとヴァンパイアハンターさんの方から行ってなかった?」

「姉さんって受けだったんだ……」

「お前受け攻めの概念知ってんの??」

「まぁ、自然と」

 

後方彼氏面とかも知ってたし、いまいちコイツの知識の引き出しが謎である。

 

瀕死の重傷を負っている癖に突然ディープなキスをし始めた二人に「うわぁ…」な顔をしつつも、二人とジャガノートの間に結構な力量差があることを悟った俺達は、顔を見合わせる。

 

「うーん、死ぬね。少なくとも姉さんは」

「……助けないのか?」

「自己責任自己責任……と、言いたいところだけど。カッコ良くキメるチャンスっぽいし、乱入してくるかな」

「そっか。……じゃあ、一旦別行動にするか。俺はクレアの前に出たくないし」

「ふっ───手を組んだ主人公と陰の実力者だったが、束の間の共闘は幕を閉じる。己の目的とするものを見つけた陰の実力者は、意味深な言葉を残し去っていく───」

「残された主人公は、その言葉の意味を、陰の実力者の真意を理解できないまま、しかし今すべきことの為に再び走り出す。―――シャドウ、あの男は一体。未だ底知れぬ彼を、脳裏に浮かべながら……」

 

小さくハイタッチして、そのまま解散。

背後から攻撃を防いだ音が聞こえてきたし、いい感じにカッコよく決めたんだろう。

 

んじゃ、俺は俺で宝物庫探しの続きと洒落込みますかね。

こうなったら先に見つけたモンだろうし、欲しいモンも、マリーさんにあげて無くなった金も、全部貰っちまおう。

 

 

………もし吸血姫が本当にいて、シドが俺の主人公ムーブを最後まで見届けてくれていたとしたら、クレアは今頃ジャガノートに殺されてた、ってことだよな。

 

宝物庫探しに来てて良かったな、なーんて。

 

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

「どうやら、俺の勝ちみたいだな」

 

宝物庫を見つけるのは、俺の方が早かったらしい。

蹴破った扉の向こうに、推定手つかずの金銀財宝が並んでいるのを見て、自然と口角が上がる。

 

にしても凄いな。金貨は勿論、宝石も美術品も至る所に並んでいる。

これ全部を売りさばけば、億はくだらないだろう。

 

「んじゃ、ありがたく全部いただくとしますか!」

 

今日はヒロとして行動する予定なので、シャドウガーデン衣装用のスライムは不要。

故に、俺は隠し持っていたスライムを全て出して、人型に成型。でっぷりと太った中年男性になったスライムは、その体を部屋全体に広げて、全ての高価そうな物を呑み込んでいく。

 

「……集荷に特化させたけど、残ってる吸血鬼なんかに襲われたら困るか」

 

腹が二回りほど大きくなったスライム君は、あまりに動作が遅い。なんなら横幅デカすぎて部屋から出れ無さそうだ。

 

うーん、仕方ない。疲れるけど、もっと数増やすか。

 

一度人間状態を解除させ、四人ほどに分割する。外側だけ作って、ついでに武器も持たせて、後は中の空洞にありったけを詰め込む。

もちろん、壊れないようにスライムでの梱包を忘れずに。

 

金貨や宝石のせいでやっぱり動きは鈍重だが、それでも魔剣士や吸血鬼を相手にしても問題ない程度だ。

これで安全に、かつバレずに持ち出すことが───あれっ、そんなことするくらいなら、スライムで包んでこっから落とす方が早かったんじゃないか?

 

落としてから人型にして、宿まで歩かせれば………あー、その方が良いな。うん。作戦変更!

 

「あちゃー、先越されちゃった?」

「お、シド。遅かったな。全部俺が貰っちまったぜ」

 

つっても、クレア達を助けてた分のタイムロスがあったし、俺有利の条件だったけどな。

 

スライム袋を塔から落としたと同時に、シャドウ姿のシドが宝物庫に入ってくる。

悔しそうに苦笑するシドにサムズアップして見せつつ、塔の下でちゃんと人型になれていることを確認。

 

あとは分割思考に全部任せて、宿まで(実質)オートで持っていってもらおう。

 

「で、キマったか?」

「もちろん。派手に攻撃を防いで、そのまま一撃でKnockout(ノックアウツ)―――去り際に決め台詞も添えて、そのまま素早く去る。これは良いシーンが出来たね」

「敢えて音を出すのが良いんだよなー!そこで緊張感のあるBGMが一旦途切れんの」

「そうそう!スロー演出があっても良いよね!防いだ瞬間、一人一人をアップで映して───」

 

盛り上がってきた所で、突然塔が揺れる。

ジャガノートの時、よりも激しい揺れだ。

音の発生源的に、上層階―――いや、最上階か?

 

「もしかしてここのボスが復活した?」

「あの男?綺麗さっぱり蒸発してたし、吸血鬼でも死んでると思うけど」

「うーん、乱入するのは良いけど、さっきので陰の実力者と主人公は別行動になったって体になってるわけだし……」

「主人公が先に駆けつけて追い詰められて、そこを陰の実力者に救われるってのが王道ではあるか」

「一度別れた陰の実力者と主人公が再会するシーン……『まだ青いな、強き剣士よ』」

「共闘の際には自分も陰の実力者に並びつつあると思っていたものの、いざ実際強敵を前にした時には隔絶した差がある事を理解してしまう───『シャドウ………!まだ届かないのか、俺の剣は──―!』」

「―――それだ!いつも通り、いい感じに追い詰められたら合図出してよ」

「オッケー」

 

揺れと音がどんどん激しくなっていく中、俺一人だけで最上階へと歩き出す。

入り方はどうするべきか……攻撃を受ける寸前の誰かを庇いつつ、はさっきのシャドウと被って面白味が減る。

かと言って、ギャグチックな参戦をするのもなんか違う。

 

自由とは不自由である、みたいな言葉をどっかで聞いた気がするが、まさにそれだ。

やれることが無限にあると、人は逆に何もできなくなる。

 

どんな主人公も好きな弊害か………!!真の敵は己ってヤツみたいで、ちょっとワクワクすんぜ……!!







別にクレアはヒロのことを好きでもなんでもないのに、妙に湿度が出てしまう問題。
出てくる女キャラ全員主人公が好き~みたいな作品ばっか書いてた弊害かもしれません。
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