主人公になりたくて!   作:無名魔剣士

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七陰離反(?)の時期を激しく間違えていました。
現在は修正しましたが、他にも僕が気づいて居ない時系列のミス等がございましたら是非教えていただけると幸いです。


アイディア料、コンサル料、後なんか諸々で……

 

 

 

 

 

 

 

俺は当て馬系主人公、ヒロ・ムノー。この国の王女アレクシア・ミドガルとお付き合いしているという体で、彼女の本当に好きな相手(予想)シド・カゲノーとの関係を復活させるお手伝いをしている。

 

……いや当て馬系主人公ってなんだよ!!ある訳ねぇだろそんなモンがよォ!!

 

「いやぁ、僕たち四人の中で、女の子の奪い合いが発生するなんて思いませんでしたよ」

「シドから王女を寝取った訳だ。ヒロ先生って呼んで良いか?」

「殴るぞこの野郎」

「そもそも僕、アレクシア王女と寝るどころかキスもしてないよ」

 

いつもの四人だけでの会話。なんだか久しぶりだ。

事件以前はシドが、ここ最近は俺がアレクシアと一緒に行動したからな。

なお今アレクシアは姉と一緒にスペシャルなゲストを出迎えているらしい。本当は紅の騎士団所属の者として俺も立ち会うべきなんだろうけど、今日は騎士団稼業は有休使ってお休みだから関係なし。

 

いやぁ、無理矢理作った騎士団って話だったから、てっきり年中無休で四六時中働かされるんだろうなぁと思ってたけど、案外そんな事無くって安心したよ。

それに給料も結構出る。流石はアイリス王女だ。彼女のファンクラブを作るのもやぶさかでは―――え、もうある?嘘でしょ?

 

「……それに、付き合うったってシドと同じだよ。俺も偽装恋人だから」

「そっから始まるんだろうがよラブロマンスがよぉ!」

「え、僕何も始まらなかったんだけど」

「シド君は元々王女様と良い関係になろうとか考えていませんでしたけど、ヒロ君は罰ゲームであんな熱烈な告白をしたんです。きっと胸の内には、アレクシア王女への熱い思いが今もなお燃え滾って―――」

 

いません。もうとっくに燃え尽きました。

 

いいんだよーだ。ここは王都。人なんて山ほど居る。ネームドキャラ感溢れるヒロインなんて、探せばいくらでも居るはずだ。

それこそ、シドでは無く俺に恋愛感情の矢印を向けてくれるような素敵なヒロインが。

 

「ま、元気出せよシド。お前に最高のプレゼントがあるんだ」

「え、何?」

「ブシン祭の選抜大会ですよ!」

「客席とっておいたって事?でも別に席料金かからないんじゃ……」

「違う違う。お前をエントリーさせてやぶごぅっ!!?」

 

シドの超高速の正拳突きがヒョロのレバーを抉るように放たれる。俺じゃ無きゃ見逃しちゃう速度だ。

 

崩れ落ちるヒョロを、シドは相変わらずの無表情で―――しかしその瞳の奥に「要らん事しやがって」という微かな怒りを湛え、見下ろした。

 

「どうしたヒョロ、まるで肝臓を殴られたような悶絶具合だけど」

「ぐ、ぐぉおおおお………い、痛ェ。具体的にどこが痛いのかわからないくらいに痛ェ……!!」

「大変だー。ジャガ、保健室まで連れて行ってあげてくれー」

「は、はい!ってうわぁっ、ヒョロ君泡吹き始めた!」

 

走り去っていくジャガと、雑な持ち方のせいで頭を地面に擦られながら連れて行かれるヒョロを見送った所で、シドが尋ねてくる。

 

「キャンセルって出来たっけ」

「とっくの昔に締め切ってるはずだぞ」

「はぁ、仮病でもするかな」

「いやいや、これはシド・カゲノーのモブポイントを上げるチャンスじゃねぇか?」

「―――その話、詳しく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪かったって。代わりにほら、良い店紹介してやるからよっ。機嫌直せって」

「ひょっ、ヒョロ君!良い店って、イケナイ感じのお店ですか!?」

「バカ今回はそっちじゃねぇ!ミツゴシ商会って言う、最近人気のデカい店があんだよ!」

「ミツゴシ?」

 

 

ヒョロが保健室から復帰し、そんな会話を経て数十分後。

俺達は最近金持ち達を筆頭にかなりの人気を誇るという巨大な商業施設―――ミツゴシ商会に来ていた。

 

物凄い行列。最後尾まで誘導されるが、その時点でもう帰りたかった。

俺はあまり人の多い所が好きではない。まして人との距離が近い所は猶更だ。

 

というかこんな百貨店みたいな見た目しておいて入場制限かかるってどんだけだよ。

建物内コミケみたいになってんのか?

 

「ギリギリ門限には間に合うが……」

「最近は人斬りも出るって話ですし、大丈夫なんですかね……?」

「バカ!俺達は魔剣士だぜ?四人の魔剣士が居りゃ人斬りだろうが何だろうが裸足で逃げだすっての。それに、ここにはアレクシア王女誘拐事件を解決し、アレクシア王女のハートまで射止めちまった稀代の色男魔剣士、ヒロ様が居るんだ。もしもの時は全力で盾に―――守ってもらえば良いさ」

「お前だけは守んねぇわ」

「なんでだよッ!?」

 

媚びを売るように俺が嫌がるような誉め言葉を並べ連ねたヒョロに、俺は冷たく言い放つ。

何がハートを射止めた色男だ。それは自称モブに言ってくれ。

 

「……因みに、お前らは誰にプレゼントする予定なんだ?」

「俺ぁ先輩だ。中々美人な人でな、すれ違う時に良い匂いもした」

「僕は前々からずぅっとリサーチ済みの同級生!きっとこのチョコプレゼント大作戦でカップル成立間違い無しですよ!!」

「僕はまぁ適当にすれ違った人にでも渡そうかな」

()()()()()?」

()()()()()

 

チョコレート。俺達がここに来た理由はそれだった。

前世だと正直どこでも売っていた物だが、こっちの世界ではここでしか売っていない。というか、チョコレートという名前を聞く事すら今までは無かった。

 

この世界の人間でチョコレートを知っていると言ったら、それこそ俺とシドから話を聞いたガンマくらいか。

シドの「苦い豆と砂糖を混ぜてガーってやったら出来る」とかいう雑極まりない説明に色々補足してやったのがなんだか懐かしい。

 

ついでに、昔一回()()()()()()事もあるな。

ガンマに話した流れで、久しぶりに作ってみようと思ってどっか適当な豆から俺が作ったトリュフチョコ。

あらゆる料理人系主人公を超越すべく実際に世界各地を回った経験のある俺のチョコレートは、自分で言うのもなんだが極上の一品だった。

七陰全員が涙を流すレベルの品だった、と言えばその凄さが伝わるだろうか。

 

 

さて、俺達以外の転生者の関与が背後に見えるこのミツゴシ商会のチョコレート。

俺のチョコレートとどっちが上か試してやろうじゃないか!

―――っていうのが俺がここに来た本当の動機。別にチョコレートを自分で食おうだとか誰かにプレゼントしようだとか、そんなつもりはさらさらない。

 

ってか今夏だし。バレンタインとかいう独り身男性を殺す為だけのイベントはまだまだ先だろう。感覚的に。

 

まぁ、この世界の人達は特に気にする様子も無くチョコレートを渡し合ってはイチャイチャしてるんだけど。

 

「お客様方、アンケートにご協力していただいてもよろしいでしょうか?」

「ぼ、ぼぼっ、僕達ですかぁ!?」

「ハーッハッハ!どうやらチョコを買う前に俺達の勝負は完全勝利で終わるらしいなぁジャガ!」

「こんな美人なお姉さんにお声がけなんて、もう完全勝利以外の何物でも―――」

「そちらのお二人に、是非アンケートにご協力していただきたいんです」

「「え?」」

 

同時に俺とシドが互いを指さす。舞い上がっていたヒョロとジャガが石のように硬直し、二オクターブ程下がった声音でプラカード(80分待ちと書いてある)を持ったお姉さんへ尋ねた。

 

「あ、あの。僕達二人だったり……」

()()()()、お二人で、結構です」

 

美人って凄むと怖いな。俺は前世で何度か学んだはずの事を、異世界にまで来て再び確認させられるのだった。

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

「ねぇ、アンケートは?」

「流石に階段でやる事は無いと思うぞ」

 

明らかに従業員用の階段を昇る。俺たちの前を歩くお姉さんは、ずっとアルカイックなスマイルを浮かべたままだ。

一見、完璧に仕事慣れした女性に見えるけど……なんだろう、俺にはどこか緊張しているからこそこうなっている、という風に見えている。

 

何を話しかけても仕方ないので、適当にシドとしりとりでもしながらついて行くと、屋上に案内された。

なんだろ、突き落とされんのかな?いやいやここの店のオーナーが転生者なのが確定しているとは言え、向こうが俺達の正体にすぐに勘づけるはずもない。まだバイオレンス方面は期待―――じゃなくて、警戒しなくても良いだろう。

 

「うわー」

 

屋上にある謎の建物の入り口をお姉さんが開くと、そこにはレッドカーペットの敷かれた厳かな雰囲気漂う部屋が。

最奥には玉座らしきものがあり、そこに続く道の両脇に大量の美人さんが並び、恭しくこちらへ頭を下げていた。

 

「ご来店を、永らくお待ちしておりました。主様、ヴォイド様」

「ガンマ。なるほど、君の店だったのか」

 

藍色の髪をした美しいエルフ。【シャドウガーデン】の第三席、ガンマだ。

凄まじく頭が良く、確か総合的にもアルファ以上だったはず。まぁアルファ程オールラウンダーだと比較するのもどうなのかって話だけど。

 

見た目にも理知的で、今こうして玉座へと続く小さな階段をゆったりと降りて来る姿にもそこはかとない「頭良さげ~」感が―――って、アイツ………。

 

「ぎゃっ!?――――ひゃぁっ!?」

「お前、階段上り下りするならヒールやめとけって言ったろ。コケるんだから」

「も、ももも、申し訳ございません……!」

 

どうやったら出来るんだってくらい派手にスッ転びそうになったガンマの下へ縮地と言うべき接近術を使い近づき、優しく抱きとめる。

 

 

そう。このガンマ、すこぶる運動神経が悪い。

え?運動神経の話なのかって?まぁ、厳密には違うのかもしれないが……彼女は『最弱』の二つ名を与えられる程酷い。戦闘面だけではない。日常生活面でも中々すってんころりんとなっている。

俺が近くに居る時は必ず俺が抱きとめていたが、それ以外の時は鼻血を流して埃まみれになっていたものだ。

 

 

ガンマをゆっくりと降ろし、半歩引いて改めてご挨拶。

 

「久しぶりだな、ガンマ。最近会って無かったから、懐かしいよ」

「はい。ヴォイド様も、お元気そうで何よりです。―――さ、お二人とも。まずはあちらへどうぞ!」

 

あちら?と俺とシドが彼女の示す方を見ると、玉座が一つ。

……なるほど、そういう事か。

 

「シド、今回は()()()()()だ」

「ふっふっふっ……ああ、最高のモノを仕立てよう」

 

俺のポジションからポージングまで全てを任せる事を告げると、シドは意気揚々と玉座を見つめ、ああでもないこうでもないと微かに呟きながら数秒程考え込んだ。

そしてすぐに俺に耳打ちし、自分は堂々と玉座に足を組んで座った。

 

俺も後に続き、シャドウの右隣に、微かに体を捻った状態で立った。

いわゆるジョジョ立ちに似た角度だ。お洒落が過ぎる気もするが、悪くないだろう。

 

「主様、ヴォイド様……ああ、なんて素敵な……!!」

 

(どうだよシド)

(良いじゃんコレ、中々気に入ったよ。跪いてるガンマ達も良いスパイスだ)

(……せっかくだ。俺がもう一手間加えてやるよ)

(おっ、もしかしてかねてから言っていた()()かな?)

(御明察!)

 

感激するガンマを視界に映しながら、腹話術の応用で誰にも聞こえないように会話をする俺達二人。

俺はシドの賛成を得たので、この「玉座にて堂々と構える陰の実力者とその相棒」の絵にトッピングを添える事にした。

 

まぁ、やる事は簡単だ。

ちょっとした操作で魔力を感知できないレベルの存在感にして、この部屋全体を覆う。

俺の魔力の色はまさしくベンタブラック(世界一黒いというアレ)なので、これで部屋を覆うだけで、朝でも昼でも夜のような暗さにすることが出来るのだ。

 

そして俺もシドも常々言っている美学。

それは、黒いスーツは薄暗い所でのみ着るべしという物。白昼堂々黒マントなんてダサいだけだ。そうだろう?

だからさっきまで、シドも俺も学生服のままだった。

 

 

だが、部屋が夜さながらになった今、俺達はいつものスライムスーツを身に纏い、真に陰の実力者&相棒を演じる事が出来るのだ。

 

「まぁ……!!」

 

シドが―――いや、シャドウが手の中に青紫色の魔力を灯し、炎のように揺らめかせる。

黒一色の部屋の中で、唯一輝くシャドウ。その背後に微かに見える俺。実に良い。

 

(鏡欲しいね)

(だな)

 

「褒美だ、受け取れ」

「ついでだ。俺からもくれてやろう」

 

ある程度堪能した所で、俺とシャドウの魔力を天井付近に飛ばし、シャワーのようにガンマ達へと降り注がせる。

 

俺達の魔力を浴びれば、それはもう春の七草ばりに健康的な効果が沢山得られる。

シャドウ……もう今はシドか。アイツの方はそれなりの量だったが、俺は部屋全体を覆っていた分全部だから結構な効能があるはず。冷え性までは治るぞ、多分。

 

「……今日という日を、永遠に忘れません」

 

ガンマを始め、お姉さん達が感激したように震える。中には涙を流す人までいる始末だ。

まぁ、体が一気に健康になっていくからね。女性は美容とか健康とかに強い関心を抱くものだと言うし、きっとそれくらい嬉しいのだろう。

 

「ところで、この店の商品って僕らの話したヤツ?」

「はい。主様やヴォイド様からお聞きした『陰の叡智』……ほんの一部にはなりますが、微力ながら再現させていただきました」

「…………結構、稼いじゃってる感じ?」

 

制服姿ながらシャドウボイスで尋ねるシド。

ガンマは小さく頷くと、すぐ近くに控えていたお姉さんAに何かを持ってくるように指示した。

 

そしてすぐに運ばれてくる、金貨の山。

 

「はい。経営は順調―――活動資金も、十億ゼニー程であればすぐにでも動かせます」

「「じゅッ!!?」」

 

なるほど、そりゃ俺達のごっこ遊びになんて付き合ってられないとか言い出すわけだ。

だって十億だぞ?一ゼニーの価値が一円と同じなんだから、十億円なんだぞ?

 

十億、十億かぁ……あの金貨の山、十億なのかぁ……。

 

(僕達の知識で、僕達を除け者にして稼いだってか……)

(ま、まぁそう言ってやるなよ。多分これはアルファたちだって知らない……知らない……よな?)

 

「………因みに、アルファ達はこれを知っているのか?」

「はい。勿論でございます」

 

(これ僕達二人だけ除け者扱いされてるパターンだ。僕らの知識で稼いでおきながら)

(俺ら二人だけ除け者なら話は別だ。アイディア料、コンサル料、後なんか諸々で3割―――いや、4割は貰って良いだろ)

(知的財産権ってこういう時に使うんじゃ無かったっけ)

 

「―――本日、お二人が来られた理由はわかっています」

 

俺ら二人の相談(傍から見れば突っ立っているだけにしか見えなかっただろう)をぶった切るようにガンマが口を開く。

真剣な眼差しで見つめられるが、どうしたんだろう。俺らはこの世界のチョコレートを見に来ただけなのに。

 

「近頃王都を騒がしている『人斬り』……我ら【シャドウガーデン】の名を騙る愚者共について。―――と言いましても、未だに掴めている情報はそう多くなく……」

 

人斬り、人斬りかぁ……そういや紅の騎士団の定例報告会みたいなのでも言われてたな。

【シャドウガーデン】を名乗る謎の人斬り集団の話。アイリス王女がやけに忌々し気に言っていたのが記憶に新しい。

 

ネームドキャラに陰の組織の存在を匂わせておくのは定石だから、アルファにわざと姿を見られるように指示しておいたけど……まさかこう悪用されてしまうとは。

このままじゃ【シャドウガーデン】がただの人斬りサークルになっちまう………そろそろこちらから動くタイミングだな。

 

「その件については、我らが直接探るとしよう」

「お、お二人が、直々に…………かしこまりました。―――ニュー、来なさい」

「はっ」

 

ダークブラウンの髪の女性がガンマの隣に立つ。

俺達をここに案内してくれたお姉さんだ。【シャドウガーデン】メンバーなんだろうが、それにしては珍しく人間だ。

 

「彼女はニュー。13番目のナンバーズです。まだ入って日は浅いですが、その実力はアルファ様も認めています。雑用や連絡員を始め、お好きなようにお使いください」

 

丁寧に一礼し、此方をじっと見つめるニュー。

かなりの緊張を感じるが、それでもしっかりしている子だ。

 

―――どれ、()()()

 

「ニューです。よろしくお願い―――ッ」

 

殺気も攻撃モーションも無しに、挨拶する彼女の首元に血液で作った刃を添える。

少しでも体が動けば斬れてしまうだろう。

 

突然の俺の行動に、ニューは目を見開く。ガンマとシドだけは表情を崩していないが、他のお姉さん達は動揺が激しかった。

辛うじて直立不動を維持できた者から、声を我慢できなかった者まで。

 

「………()()()()()か。そして()()()()もいた」

「―――彼女に、何か至らぬ点がございましたでしょうか」

「『ナンバーズ』なんだろう?お前が自信をもってシャドウに紹介する女が如何程なのか、少し知りたくなっただけだ」

 

【シャドウガーデン】周りの情報をあまりにも入れて無さ過ぎて『ナンバーズ』ってのが何か良くわかってないんだけど。なんかそれっぽい言葉で誤魔化す。

 

当然、これは彼女の演技力、アドリブ力を試す為の行動だ。

【シャドウガーデン】の実態が俺やシドの為のごっこ遊び演劇グループなのだから、相応の力という物を示してもらう必要がある。

 

ニューは最初こそ言葉を切り、目を見開いて驚いていた物の、俺の言葉を聞いてすぐに平静さを取り戻し、直立不動で俺を見つめ返してきた。

 

「この命は既にシャドウ様、ヴォイド様両名に捧げたモノ。もし疾く失うようにとご命令があれば、すぐにでも差し出す所存でございます」

「………『名無し』とは訳が違うぞ」

「覚悟の上です」

 

数秒間、黙って彼女を見つめる。

時が止まったかのような静寂を感じた後、俺はゆっくりと彼女から剣を下ろした。

 

「お前なら、我らと共に歩むに相応しいかもしれんな」

「っ、勿体なきお言葉」

 

(………なるほど、試したのか)

(こういう展開、好きだろ?『支配者の側近に試された新入りが、確固たる意志を見せつける。支配者はそれを認めるように、何も語らずに微笑む……』とか)

(うん、大好き)

 

場の緊張感が緩和した事で、息を漏らす人が数名。あの辺のネームドじゃないお姉さんは、まだまだ未熟だな。

まぁニューみたいな逸材を用意してくれたガンマだ。きっと彼女達もアカデミー級の俳優となって俺達に紹介されるはず。

 

「あ、そうだチョコ貰える?4人分欲しいんだけど、出来れば友達価格にして欲しいなーって」

「チョコレート、ですか……はい。最高級のモノをご用意いたします!10割引きで!」

「え、それタダって事じゃん!やったねヒロ!」

「だな。ありがとな、ガンマ」

「ふふふっ、いえいえ」

 

 

 

因みにシドが金貨1枚をこっそり盗もうとしていたが、流石に盗みはダメだろうという事で俺が阻止しておいた。

その一線は超えちゃいかんよ。

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