変装、もといコスプレは私なりの処世術の一つだ。
自分で言うのも何だが、私ことユリス・アレクシア・フォン・リースフェルトの存在は知名度が高い。小国とはいえ、正真正銘の王女で星導館学園の序列五位。ただでさえ注目の的だというのに、私は《
私が未だパートナーを決めてないことも知られているので、自分を推薦してくる阿呆もいる。アポも取らずに私にインタビューしようとしてくる奴もいる。私自身の姿で学園の外に出ると、少し面倒な事になるのだ。
(まぁ、加えて言えば)
単に、着飾って出掛けるのが嫌いじゃない。昔は隣に同じように変装させた奴を隣に歩かせた事もあったっけ。
「ユリス?」
「………ん、何でもない。それより、ここがアスタリスクで最大規模を誇るメインステージ。《
アスタリスク中央区にある、《星武祭》総合メインステージ。世界的にも有名な、ローマのコロッセオをモチーフにしたと聞くが………まるで別物。一体全体、何人を収容するつもりで建てたか知らんが巨大過ぎる。
「小規模の野外ステージを含めると、とてもじゃないけど数え切れないわね………もう少しこの辺を見て回る?」
「いや………もういいかな」
………違和感があるのは分かるけど、もう少し表情に見せない努力をして欲しい。
「なら、治療院を見に行きましょう。《星武祭》で大怪我をした時は、きっと世話になるだろうから………それに、一回は再開発エリアを見るのも悪くないかもしれないわね。スラム化している場所もあるけど、何も知らないまま迷う方が危ないもの」
そういえば、沙々宮紗夜が何を間違ったのか再開発エリアに入っていたことがあったな。筋金入りの方向音痴だが、限度というものがある。
「じゃあ、次だけど………」
「ねぇ、ユリス。案内は有り難いんだけど、そろそろ昼ご飯にしない?」
天霧綾斗に言われて時計を確認する。確かにそんな感じの時間ではある。
「そうね。そうしましょうか」
祖国であれば相応のランクにある店を選ぶが、普通にハンバーガーチェーン店を選んだ。互いに適当なセットを注文し、テラス席に向かい合って腰を掛ける。
「ユリスって本当にお嬢様?」
急に失礼な質問をしてくる奴だな。実は天霧綾斗の頭の螺子は、いくつか外れているような気がしてきた。
「ナイフとフォークはどこですか、とか言いそうに見えた?まぁ、探せばどこかにいるかもね………私には当てはまらない訳だけど」
「そりゃそうだけどさ」
どこか納得いかない様子の彼に対し、ジュースで喉を潤してから口を開く。
「故郷で、仲の良かった人達が教えてくれてね」
「故郷の?」
「昨日の手紙も故郷から」
マズイ。そういえば返事をまだ書けていなかった………早めに手を付けて返事を出さないと。
「へぇ。大事なとも………人達なんだね」
「?まぁね」
ハンバーガーを頬張りながらジュースを飲み、ポテトも少しずつ口の中に放り込んでいく。うん、美味。ジャンクフードはかくあるべきかな。
「ところで、少し真面目な話をいいかな」
どこか神妙な面持ちでそう言う彼に、無言で続きを促した。