幻影旅団はヒーロー(夢)を見ない。   作:規律式足

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 すいません、今回は完全にギャグ回です。



第十五話 進撃の○○

 

 A組の緑谷と轟の試合が轟の勝利で終わり、会場修復後に試合は続く。

 A組飯田とB組塩崎さんの試合は、塩崎さんがツルを展開する間もなくレシプロバーストという飯田の加速技にて場外敗北。

 障害物がなく対面し合うフィールドでは塩崎さんはあまりにも不利だった。

 続いてA組の芦戸とA組の常闇の試合。

 優れた身体能力と殺傷力の高い酸の個性を持つ芦戸は一年女子トップクラスの存在だが、酸という危険な個性を人に向ける躊躇いがあるようで、イマイチ攻撃に鋭さが欠ける。また黒影に弱めな酸では効かなかったようで、波状攻撃に押し切られて芦戸の敗北。

 強力な個性だが常闇自体は個性制御に集中しているなというのが印象に残った。

 そして二回戦最終組。

 A組の麗日と僕の試合だ。

 相対する麗日の表情は固く、取り繕ってはいるが恐怖すら見てとれる。

 それはA組、いや一年最強クラスの実力者である爆豪勝己を指を圧し折り、顔面をコンクリートに叩きつけるという容赦無い攻撃で撃退したからだろう。

 不快だったとはいえやり過ぎだったと思わなくないが、威力的には念で強化してぶん殴るよりはかなりマシなんだが、念は感情で増大してしまう性質があるので加減が難しいし。

 爆豪勝己のような戦いを麗日にする気はない。何より女性に暴力を振るうのは幻影旅団の務めでない限りはやりたくない。差別というわけではないが、女子にやり過ぎは評判に関わると物間から助言もされている、場外狙いでぶん投げるか、掌底で突き飛ばそう。

 彼女の個性が発動していれば体重差なんて無くなるだろうから。

 

 

 

 唐突に場面は切り替わる。

 少しばかり未来のこと。

 この試合。

 後にこの年度で最も有名となる戦いについて、オールマイトの元サイドキックにして、現在は自身で事務所を起ち上げているヒーロー、サー・ナイトアイはこう語る。

 

「彼ら彼女らは、この場に居る全員は本気だった。本気で向き合い試合に臨んでいた。意図的にこうなってしまうように狙ったわけでない」

 

 彼は椅子に腰掛け、眼鏡をクイと上げるとさらに言葉を続ける。

 

「だからこそ降りてきたのだろう、笑いの神は」

 

 元気とユーモア溢れる社会を目指すヒーロー、サー・ナイトアイ。お笑い評論家としても有名な彼は記者に対してそうコメントするのであった。

 

 

 

 

 時間は戻って雄英高校体育祭最終種目第二試合。A組麗日お茶子とB組リンク・アクセスの対決。

 

『スタート!!』

 

 開始の合図と共に自分自身に個性『無重力』を発動して身軽となった麗日お茶子がリンクへと飛びかかる。狙いは速攻、肉球のついたその掌で触れてリンクを軽くし場外まで吹き飛ばそうとする気である。

 第一種目で見せたゼロポイント仮想ヴィランを殴り壊せるパワー、雄英高校に入学してから知り合った気になる男子生徒と同じことができるリンクと殴り合いして勝てるとは彼女は思えなかった。

 それに対してリンク・アクセスがとったのはカウンター。勢いよく跳んでくる麗日を力を込めた張り手で迎撃する。

 握りしめた拳よりは広げた掌の方が広がっている分だけ威力は拡散する。気持ち七割程度の凝(念を肉体の一部に集中する技法)で力を高めた右掌を麗日お茶子と距離があるうちに突き出す。

 緑谷出久の指を犠牲にした衝撃砲、それを軽く凌駕する風圧が麗日お茶子に襲いかかり彼女を場外まで吹き飛ばす、筈だった。

 それは不幸な行き違い。

 もしくはリンク・アクセスによる見積もりの甘さ。幻影旅団員ではあるが、過保護な仲間達により守られてきたリンクは他者の見極めが仲間達より数段劣る。ゆえに麗日お茶子の実力を見誤り、当たらない筈の掌底は予測より早く接近した麗日の腹部へと直撃した。

 爆裂四散しなかったのは運が良かったから、また肉体をぶち抜くのではなく吹き飛ばすように意識していたことも功を成した。

 大型トラックに真正面から轢かれたような衝撃を受けた麗日お茶子は勢いのまま吹き飛ぶ。

 さて、

 問題はここからだった。

 お互いに真剣だった戦い。

 吹き飛ぶ麗日お茶子にとって不幸だったのはリンク・アクセスが小さかったこと。

 小さいがゆえに放たれた掌底は下から突き上げるような角度であり、ステージの平行ではなく斜め上に飛んでいってしまった。

 この時点の彼女は何が起きたかわかっておらず、飛びそうな意識と消えそうな個性をなんとか繋ぎとめていた。その事がこれから起きることの要因の一つとなる。

 吹き飛ぶ麗日は観客席を飛び越える、いくら無重力状態であれ、それだけ飛距離がでるのは純然たるリンクの加減ミスである。

 麗日が吹き飛んだ段階で解説室のイレイザーヘッドが危険だと判断して動いていた。

 それは個性と戦闘スタイルから彼の観察力がすば抜けているからだ。

 このままだと麗日お茶子が壁に激突するか場外まで吹き飛び落下してしまうと判断したイレイザーヘッドは、把握してある今回雇われた警備員、プロヒーローの配置を思い出して指示を飛ばす。

 

「マウントレディ!!今すぐ個性で巨大化しろ!!」

 

 会場外にて警備しているプロヒーロー・マウントレディ。彼女の今の位置ならば麗日お茶子を受け止めることができると判断した。

 

「えっ?なんですか急に、いやまあ周りには先輩しかいないからできますけど」

 

「いいから早くしろっ!!」

 

 わけもわからず聞き返すマウントレディ。休憩時間外であり、モニターもない場所だったため会場の様子がわからなかったのだ。

 けれど雇い主からの指示である。

 彼女は会場へ顔を向けてから個性を大慌てで発動した。この時に口を閉じていればと彼女は生涯後悔することになる。

 ついに会場を飛び越えてしまった麗日に、観客達が悲鳴を上げる。このままでは麗日お茶子がお星様になるのではないかというその時、マウントレディが巨大化して進行方向先に現れた。

 なおこの場面がきっかけでこれからの野球ゲームの背景にマウントレディが登場することが定番となる。

 これで麗日が助かると誰もがホッとした時、笑いの神は降り給うた。

 状況分からず口を半開きにしたままのマウントレディ。そこに麗日お茶子が吸い込まれるように突っ込んでしまった。

 

「!?!?」

 

 口を閉じなかったのはマウントレディの英断。喉奥まで到達せず上半身で麗日お茶子は静止できたからだ。

 

(なんか生暖かくてたこ焼きの匂いがして、実家みたいやわ)

 

 当事者でありながら状況が一切把握できない麗日がそんな感想を抱いていた。実家はヌメヌメしているのかと突っ込んではいけない。

 マウントレディが歯を閉じたら両断死体が出来ていたところだが、幸いなことにそうはならなかった。

 未だによく分からないマウントレディが状況を把握しようと、口からアタリメ(干しイカのおつまみ)のように麗日お茶子の下半身を垂れ下げさせたまま会場を覗きこんでしまった。

 

「巨人だ」

 

 そんなマウントレディを見て、誰がそう言ったか。口に人間の下半身を加えた巨大な人型。

 その様に会場の人々は、アニメ化した大人気漫画を想起してしまった。

 

「巨人がでたぞーー!!」

 

 その叫びは会場に叫びと爆笑を巻き起こした。

 

「???」

 

 お互いが真剣に臨んだ、麗日とリンクの試合。それはマウントレディの巨人認定で幕を閉じた。

 この衝撃映像は雄英高校体育祭の面白い場面として大きく取り上げられることになったそうな。

 

 

 なお某巨人漫画のゲームにて、有料ダウンロードでマウントレディが登場するイベントが配信されることになる。

 

 

 





 面白いかなあコレ?
 書いてる瞬間は楽しかったがどうなのか。
 お茶子との戦いをシリアルに書きたかったのでこんな形に。
 吹き飛んだ麗日がマウントレディに口キャッチされて、人気漫画の巨人みたく見えちゃう話です。
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