黒い暗い喰らう呪霊   作:産地直送の焼き鳥

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ヒャッハー!


闇の呪霊「輝夜」
闇満つる時


 「we wish you a Merry Xmas♪we wish you a Merry Xmas♪we wish you a Merry Xmas and a happy new year〜♪」

 

 草木も眠る丑三つ時、しかしながら街の光で昼のように照らされている新宿のビルの屋上で。

 一人の女性が歌っていた。

いや、女性、というのは間違っているのかもしれない。

 

 「good tidings we bring to you and your kin ♪we wish a Merry Xmas and a happy new year〜♪」

 

「それ」には黒き翼が生えていた。眼が赫く染まっていた。山羊のようなツノが額に生えていた。

 所詮怪物、と言われるだろう。まあハロウィンにでもいけば人気ものであるだろうが。

 

 「oh,bring us some figgy pudding、oh,bring us some figgy pudding、oh,bring us some figgy pudding♪and bring it right here♪」

 

 「それ」は、ここ新宿の屋上で、蠱惑的な、享楽的な、退廃的な、そして美しい歌をその唇で歌っていた。

 今歌っているのはかの有名なクリスマスソング。これが街に響いていれば大勢の目を浴びることになるだろうが、誰も見向きはしない。

 そればかりか、居ないものであるかのようなーーー

 

 「good tidings we bring to you and your kin♪」

 

 「それ」の性質のせいでもあるだろう。「それ」の能力のせいでもあるだろう。「それ」が今いる場所の高度も関係しているだろう。

 まあ最もーーー

 

 「we wish you a merry Xmas and a happy new year♪」

 「いや、今は真夏じゃあないかな?」

 

 今がクリスマス、最低でも師走であったのなら歌がとても映えたのだが。

 

 「おぉ、夏油じゃあないか。久しぶりだな。しかしそのセリフは無粋とも言えるんじゃないかな?」

 「あぁ、うん。言わなくてもいいよ。なんとなく予感できる。」

 

 頭に縫い目がある、五条袈裟を着た男がいつの間にか屋上に立っていた。

 夏油、そう呼ばれた男に対して「それ」はとても嬉しそうな表情をして、話しかける。

 対して夏油はとてもうんざりした様子で返事をする。

 

 「私がハロウィン、そう宣言すれば今日はハロウィンッ!今日が正月と宣言すれば今日は正月ッ!そうッ、今日はクリスマス!Merry Xmas!!」

「だから夏だってば…。君本当に闇なの?」

 

 「それ」の返答にうんざりしながらも夏油は疑問を投げかける。

 その質問に対して当たり前かのように「それ」は答えた。

 

 「ああ、私の根幹は『闇』そのものだ。闇、という概念といってもいい。闇というのは怖いものだ。生物が本来恐れ、人間たちが光を持ってして夜を克服した今でも恐怖は残っている。…しかし!しかしだ!夏油くん!これを忘れては闇を語れまい!」

 「…」

 

 夏油は額に手を当て、頭を抱え始めた。脳内には「コイツらと組んで良かったのか?」と思い浮かぶ。

 

 「厨二病!それは黒歴史の象徴!闇、とかそこらに憧れる青少年の闇!それが私に反映されないのはおかしいはずだろう、夏油くん。

 だからこそ、だからこそ私はこういう存在だ!understand?」

 「ああ、理解できないということがよく理解できた。いや脳みそが理解を拒んでいる、といった感じだ。初めて会うタイプだよ君は。」

 

 しかし夏油は彼らと組むのを止めることはできない。

 漏瑚は強靭だ。夏油と戦った場合漏瑚は負けるがそれでも十分に強い、この世界の上澄だ。

 花御は頑強だ。漏瑚を超えるタフネスさ、術式の汎用性、呪力量。それをもってして花御の頑強さは漏瑚をも凌ぐ。

 陀艮は優良だ。今は呪胎だが、津波・鮫や鯱・時化などといった海に関する感情は彼に注がれる。最近サメの映画が出たばかりだ。未来はどうなるかわからない。

 真人は醜悪だ。人から生まれた呪霊だからか、純粋、そして悪辣。今後の計画からしても彼の術式は重要だ。組まずにいてしまえば取り込むタイミングも失ってしまうかもしれない。

 だが、

 

 「大丈夫。分かっているよ、夏油くん。君と私はそれほど相入れないということはわかっている。おそらくだ。私の推測なのだが…」

 「それで、今回君に会いに来た理由なんだけどね?今後のーーー」

 「やはり女のタイプの違いだろう。」

 「…。今後は五条に対しての対策もしなければならない。そのため漏瑚、花御、陀」

 「昔戦った呪術師が言っていた。『女のタイプが違うだけで、会話が成立しないこともある』と。いや、そんなはずがないだろう、とその時は思ったのだが…、やはり、特級、か。一筋縄じゃあないな。」

 「漏瑚、花御、陀艮にも声はかけてある。陀艮の生得領域の場所はなんとなくわかるだろう?だから先にそこに」

 「ちなみに私の好みはボンキュボン、だ。まな板も控えめなサイズも捨てがたいが。」

 「…」

 

 こんな、こんなやつではあるが。あるのだが。

 「それ」は強靭であり、頑強であり、優良であり。そして暴虐的だ。「それ」は闇という恐怖そのもの。だからこそ凄まじいほどに強い。宿儺の指15本分くらいはあるんじゃあないだろうか。

 ちなみに性格面はよく分からない。こんなものをどう理解しろと。

 

 「…君の話は一旦置いといて後で聞かせてもらおうか。ひとまず君には陀艮の生得領域に行ってそこで待機してもらいたい。その後集合の日程を伝え」

 「だけど、とても、とても残念なんだ。夏油。」

 「急にどうしたんだい?そんなに萎れて」

 「女の子に私の姿が見えていない!」

 

 正直に言おう、少し心配して損をした、と夏油は思った。

 

 「ああ、あんなに可愛い子たちが私の姿を見ていない!意気揚々とキャバクラに入っていたのに見向きもされない者の気持ちが君にはわかるか?!色気か、色気が足りないのか?!くう、これ以上ないほどの美女である私はどうすればいいんだ!」

 「…」

 

 先程から全くもって話が通じない。長いこと生きているがこんなにヤバいのは数回しか会ったことがない。

 夏油はそう感じながらも、屋上についている柵によしかかる。

 

 「いや、この私の美貌に眼がいかない…その時点で疑いかかるべきだった!まさか、まさか、」

 

 めんどくさい、と思いながらも一応耳を傾ける。どんなことを思いついたのか若干だが気になる。若干だが。

 

 「この私の美貌に眼が眩んで直視すらできないとは!」

 「君、自分が呪霊っていうこと知ってる?」

 

 少し薄暗い屋上の上でそれが叫び、夏油が突っ込む。夏油は既に頭を抱えるばかりか、片手間にスマホを使って情報収集をしている。

 そんな夏油の姿を関係ない、と言わんばかりに。

 

 「ようし、そうと決まれば、だ。何度も通って女の子たちに慣れてもらうしかないだろう!それしかない!ビバ、Merry Xmas!」

「ああ、今日がクリスマスっていう設定まだ続いていたんだね。それと君、耳はちゃんとついてる?」

 「ああ大丈夫分だ、夏油くん。しっかりと耳はついている。かわい子ちゃんたちの声を聞くための、ね。」

 「…」

 

 流石にコイツら呪霊と組んでいいのか不安になってきた。いや、今の時代はベストタイミングだ。天元と星漿体の融合も失敗し天元は呪霊操術の対象となっている今、やらない手はない。不本意だが。とてもやりたくないが。特にコイツと話すのはとても疲れる。いや、主な要因はコイツだった。

 夏油はため息をつきながら思考する。そんな様子を見てなのだろうか。それは言った。

 

 「心配しなくていい。夏油傑」

 「ん?」

 

 初めて呼ばれたフルネーム。それに少しだけ夏油は反応する。数多くある名を持っているが、それと会って初めて名を呼ばれたのだから。

 先程の会話もあってか、その内容がまともだとは1ミリも思ってはいないが。

 

 「私は契約はしっかりと守るし、完璧に遂行する主義だ。できるだけ、君の夢を叶えるために頑張るよ。」

 

 案外まともな答えだった。だがしかし会話は成立できる、ということが分かっただけでも上々だ。後はふざけないでくれると有難いのだが。

 

 「ああ、君の夢を手伝おう。そのために私は全力で頑張る!身を粉にしてな。何せあの六眼の無下限呪術師への恋、そんなもの応援しないわけがないだろう!」

 「…あれ?」

 「どうした。夏油傑。…ああ同性愛がスルッと流されたのが気になったのか? いや、気にしなくていい、大丈夫だ。私は君をしっかりと理解している。」

 「いや、そういう話じゃ」

 「何せ私も女性、男性両方いける口だから、な!!そういう点では私たちは同志と言えるだろう。さあ、いざゆかん!新たな世界へ!」

 「こんなに会話が通じないのは久しぶりの感覚だ。」

 「どういたしまして」

 「褒めてない」

 

 一度感心したからか落差が激しい。なんというか、うん、考えるのをやめよう。コイツに関しては。

 

 「すまないが陀艮の生得領域に行くのは後になりそうだ。」

 「ああ、うん、そうか。」

 「何せ、今そこの路地裏で女の子が悲鳴をあげている!誰か助けて、と声をあげている!今すぐ行かねば!let’s go!」

 

 ちなみに夏油の耳には、悲鳴らしきものは聞こえていない。夜の繁華街ということもあり、他の音で騒がしい中どうやって聞こえたのか若干気になる。

 

 「なあ、私には全く持って悲鳴が聞こえてきてないんだが。気のせいじゃあないのかな?」

 「ふう、まだまだ未熟、だな。夏油傑。知っておいた方がいい。恋する乙女はいつだってハリケーン!!恋する乙女には何だってできる。先程レディの涙が落ちる音がした!!さあ今助けに行くぞ、まだ見ぬ乙女!!」

 

 「それ」がよっこいしょ、といいながら柵を飛び越えようとした時、夏油は伝えていなかったことを言い渡した。

 

 「ちなみに真人は人間で遊びたいから話し合いには不参加だそうだ。それと明日までには戻ってね。」

 「ああ、問題ない!何せ私はこれまで約束を破ったことはほとんどない!!」

 「そこはせめて『無い』、と言い切ったほうがいいと思うよ。」

 「thanks you Mr.夏油!好きな相手の口説き方なんて教わったのは初めてだ!君の経験則かい?ありがとう、感謝だ!」

 

 何か言い返そうと思ったが、すでに柵を超えてビルを飛び降りていた。

 

 「流石に疲れたな。あれは本当に呪霊として異質だよ。本当に意味がわからない。が、まあいい。」

  

 夏油は先程とは違い、醜悪な笑みを浮かべた。その脳裏に浮かぶは何かわからない。わからないが少なくとも。

 

 「漏瑚、花御、陀艮、真人、そして輝夜。なかなか楽しくなりそうだ。」

 

 その願いが人々にいいもので無いことは確かであろう。

 

 「さてと。あれはどうなったかな。宿儺の指を使って順平の母を殺害。そのまま順平の手なづけが成功している頃だとは思うけど。真人が成功し宿儺が完全顕現すれば御の字、かな。

 うん?電話か。…やあ真人、どうしたんだい?ああ、手伝いの要請か。うんわかった、すぐ向かうよ。」

 

 一瞬の間に夏油はその場から消えた。

 屋上に残ったのは少しの埃と、周りのビルの光で照らされてできた影だけ。

 ここに少し狂った物語が始まる。異分子は入っている。輝夜もいる。この物語がどうなるかは誰も知らない。

 呪い呪いあう呪いの世界が始まった。

 

 「きゃぁー!化け物!」

 「失礼だね。命の恩人に。この後お茶でもしないかい?」

 「だ、誰か!助けてください!」

 「あ、ちょっと待って。せめて連絡先を!」

 

 …少し締まらないがこれにて始まり始まり。




 勢い9割直感1割と少しの寝不足を加えた闇鍋。
 明日テストなのに何やってんだか。
 計画性?おーい呼ばれてるぞー。…計画性くんは留守中のようですね。多分明日には帰ってくるんじゃあ無いんでしょうか。


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