暗い夜道の中、黒色の車が二人の男を乗せて走っている。
一人は補助監督の伊地知潔高。
五条悟と上層部の間に挟まれながら、日々胃を痛め胃薬が離せずにいる。しかしながらその実は有能。最強が信頼する補助監督である。
もう一人は現代最強の特級呪術師、五条悟。
傲岸不遜。自己中心。天上天下唯我独尊。そして最強。彼は最強だからこそ五条悟なのか、五条悟だから最強なのか。
五条悟は先程の虎杖の復活に対して、考え事をしていた。
(あの呪いの王と呼ばれる宿儺がノーコストで悠仁を復活させる?いや、ありえない。あの宿儺がそんなことをする理由がない。何せまだ指は18本もある。悠仁に固執する理由がない。なぜだ?何か縛りを結んだのか?何の?)
考えても考えても案は出てこない。五条は若干イラついて呪力を漏らす。そんな様子を見て伊地知は戦々恐々としていた。
頑張れ伊地知。
(ま、何とかなるでしょ。僕最強だし。)
結局いつも通りに思考を終わらすのであった。
落ち着いた五条を見て伊地知は会話を切り出す。
「学長との約束までまだ少しありますけど、どこか寄ります?」
「いいよ、たまには先に着いててあげよう」
伊地知は機嫌が戻った五条に、ほっと安心した。
しかし、それは束の間の休息であった。
「…止めて」
「えっ…、ここでですか?」
予想外の答えに何があったのかわからない。しかし言うとおりにして車を止めると、五条はドアをあけて路上に出る。
「先行ってて。」
「えぇ!?これ何か試されています?本当に先に行ったら殴る的な。」
「僕を何だと思ってるの?」
戸惑いながらも、エンジンをかける。大丈夫か、とは思うが注意はできない。それにさっきから嫌な、嫌な予感がしてきた。
伊地知は少し冷や汗をかきながら、車を発進させて去っていった。
「さて」
月を背面に立つ五条の上に、影がかかる。
そのまま降ってくるのは火山頭の特級呪霊。
それを分かっていたかのように五条はかわし、道に大きなクレーターが完成した。
呪霊は笑みを浮かべながら、特級呪術師五条悟を見据える。
そんな呪霊に五条は一言
「君何者?」
そんな様子の五条に返事をすることなく、呪霊は五条の隣に火山を作り出した。
「ヒャアッ!!」
そのまま五条は炎に巻かれ、消えてしまった。コンクリートはドロドロになり、音を立てている。普通の人間ならばこれで死んでいるだろう。普通ならば。
「大したことない、といいたいところだが…」
「誰が大したことないって?」
「ふん、小童め。」
呪霊は耳のコルクを締め、一段ギアを上げる。対して五条はあの高熱を食らったのに無傷である。
「特級はさ特別だから特級なわけ。こうもホイホイ出てこられると調子狂っちゃうよ。」
「矜持が傷ついたか?」
「いいや、楽しくなってきた。」
そんな呪霊に対して五条は不遜な態度。呪霊は構えながらも、五条を挑発する。しかしさすがは現代最強。尊大な態度で腕を鳴らした。さーて!この勝負、一体どうなるのか!いやー、我々も楽しくなってきましたね!解説役さん!」
「ええ、私も楽しみです。」
「…月を背面に立つ〜のところから解説していたけどさ、君誰?」
「ああっと、失礼ながら紹介が遅れました。私実況役の輝夜Aと」
「解説役のA’です。」
「火山頭、君の仲間?」
「…あぁ、勝手に着いてきた。」
「…なんか大変そうだね、君。まあ祓うけど」
いつ頃からいたのだろうか。輝夜が道路の崖側となる場所に座っていた。
テーブルを出して。ついでにテーブルの上には『実況役A』と『解説役A’』と書かれたパネルまで置かれていた。それと二人に増えている
どこから出したのか、全く見当もつかないが一応勝負中。
五条は気を取り直して眼前の火山頭に。
漏瑚はそもそも輝夜の相手にする気がなく。
ーーーこの場は奇しくもツッコミ不在となった。
「ぬん!火礫蟲!」
漏瑚の頭からポポポンと警戒なリズムと共に何十体もの虫が現れた。
「へえ、面白い。これどうなってるの?」
〈これより輝夜Aが実況としていかせていただきます!さて、呪霊が繰り出した火礫蟲!しかしながら五条は全く気にせず!〉
《こちら解説役はA’が努めさせていただきます。さて、攻撃が当たらないとなると、呪霊は少し不利ですね。頑張っていただきたいところです。》
「…気が散、ちょっと待って。そのマイクどっから出したの?」
彼女らが持っていたのはスタンドタイプのマイク。テーブルに置くタイプではあるが十分にでかい。
どこから取り出したのか、気になっている五条に
「余所見!」
「「「「「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぁぁぁぁぁ!」」」」」
〈おおーっと、火礫蟲が大声と共に爆発!これは直撃かー?!〉
《五条の術式は不明ですが、これは痛いのではないのでしょうか。》
「ヒャアッ!」
火礫蟲によって煙に包まれた五条、そこに向かって顔面に一撃、すぐさま腹部に掌底を添え爆炎の追撃を行った。
〈さらに攻撃を加える!容赦、容赦がないー!〉
《火礫蟲の爆発に加え、頭部、腹部に攻撃。さすが、ですね》
「…さっきから五月蝿いぞ!輝夜共!そもそもなんだ、輝夜、貴様の術式は分身の術式じゃない、…もういい。ともかく最強といえども実態はこれだ。万事醜悪、反吐が出る。…これからは死を持って本物を見せるとしよう。…輝夜、さっさと帰るぞ!」
〈さすがっす!先輩!そこに痺れる憧れる!〉
《第二ラウンドも是非!その調子で頑張って!》
一仕事終えたと言わんばかりに炎を払いながら、輝夜の方へと向かっていく。しかしながら、輝夜たちは撤収の準備をしていなかった。
「おい、第二ラウンドとはどうゆう」
「へえ、そっちの双子は気づいてたんだ。」
「…何?」
〈第二ラウンドォォォ!ファイッ!〉
ゴォーン、とどこからか出した銅鑼が鳴った。いつのまにか出された銅鑼に突っ込むものは誰もいない。
「……気が散る。いや、貴様。儂は貴様に触れ、攻撃を当てたはずだ。なのになぜ、傷ひとつ付いておらぬのだ?」
「うーん、君は触れていないよ?ただ僕の間にある無限に触れただけ。」
「無限だと?」
「ほれ、教えてあげるから手出して。」
五条は手をパーにして漏瑚に触れるように誘った。
漏瑚は呪力に変化がないことから、何かするわけではないと感じ、そのまま五条の手に触れようと自身の手を伸ばす。
が、
「は?」
「ね。これ、止まっているていうか、僕に近づくほど遅くなってんの。で、どうする?
僕はこのまま握手してもいいんだけど。」
「…断る」
〈せ、先輩?!あ、あの五条さんの誘いを断るっていうんですか?!今からでも遅くないです!玉砕レッツゴーです!〉
《玉砕で壊れるの恋じゃなく、そのまま死にそうですけどね》
ギリィ!!
〈ヒィ!〉《ヒェッ!》
漏瑚は大きな歯軋りをし、イラつきを見せる。さほど影響はなさそうだが。
「ふふっ、あの双子も言っているし、照れんなよ。こっちまで恥ずかしくなる。」
「貴様ぁ!!」
ボギュ、とぬぶい音が鳴る。五条による攻撃だった。
「まだまだ」
さらに3連撃。漏瑚は重い傷を一瞬の間に負い、対する五条はまだ飄々としている。
一瞬にして劣勢。そして五条は追撃を加える。
「無限はね、本来至る所にあるんだよ。僕の呪術はそれを現実に持ってくるだけ。『収束』『発散』この虚空に触れたらどうなると思う?」
『術式反転 赫』
赫色の閃光が漏瑚を襲う。それを食らった漏瑚は瞬く間に森の木々を薙ぎ倒し、飛んでゆく。
それを追い越すほどの速さで五条も走っていると、
〈先輩、吹き飛んだー!これは、これはホームラン、最低でも三塁か?!〉
《いや、案外、先輩が頑張って、ファール、に、なるかもしれません!》
それと並走するように先程の二人が走っていた。
解説役と呼ばれた方が、銅鑼、テーブル、パイプ椅子に座った実況役ごと全て持ち上げながら。
全速力で。
「ブフォ、何じゃあれ、ふふっ」
「かぁ!」
「おっと」
気を取られた五条に向け、漏瑚は火炎を放つ。
それも最強には届かず、背面に周られ、バキャという音と共に蹴りを喰らわされた。
〈おおっと、池ぽちゃでしたかぁ。いやあ惜しいです!〉
《ちょ、ちょっと疲れ、ゴフゥ!?》
「君たちもあっちだ。」
漏瑚を蹴り飛ばした勢いのまま、テーブルなどを背負っていた解説役の方を池に向かって殴り飛ばす。
疲れで察知できなかったのか何なのか、テーブルごと解説役はそのまま飛んでいったが実況役の方はそのままヒラリ、と着地した。
〈ふふ、いいのか?このまま殴りかかると死んでしまうぞ?〉
「…へえ。それはそれは。」
そのまま蹴り飛ばそうと思ったが、解説役の雰囲気が変わった。凪いでいた呪力が震え始め、それに応じて空気も震える。
尊大な態度に五条は笑みを浮かべながら答える。
「それで?どっちが死ぬんだい?」
「そりゃあ決まっているだろう。
私だ!!!!」
「…。」
「あべぶっ!」
少し気が抜けながらも、そのまま蹴り飛ばす。
そしていいことを思いついたと、術式を行使して瞬間移動を行なった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
一方漏瑚は池の真ん中で、思考を巡らせていた。
(やはり夏油の言っておったことは眉唾ではなかったか。しかし当たらんなら領域に引きずり込めばいいだけの事。)
「実況役A、あなた、私のことを庇って…?!あなたそんなに傷だらけに!」
「ふふ、A’、君のためになれる、のなら。ゴフッ、私は本望だよ」
(あやつ、どこに行きおった…?)
「A、あなたがいなくなったら私はどうやって生きていけばいいの?!」「A'、私が、いなくても、幸せに、いて欲し、い」
「まった?…何やってんの?あれ?」
「知らん」
「Aェェェェェェェェェ!!」
「おや、す、みA’。」
「頭富士山!頭富士、え?何あの人たち。呪霊?マジ?」
五条への虎杖の質問。そして五条による漏瑚への煽り。それを経て、漏瑚は極致を繰り出した。
「領域展開」
結ばれるは怨敵の調伏、商売繁盛、除災招福などを掌る大黒天印。
「蓋棺鉄囲山!!!!」
〈さてと、いったんふざけ終わったところで!〉
《ええ、第三ラウンドです!テーブル、銅鑼は壊されてありませんがご容赦ください!》
初めて見る現象に虎杖は驚きを隠せず、思わず声を上げる。それに対して五条が説明を行った。
「な、何だよこれ!」
「これが『領域て」
しかしそれを輝夜が遮る。
《せーつめいしよう!領域展開とは!!術式を付与した生得領域を呪力で周囲に構築する!》
《領域を広げるのは大量の呪力を消費してしまう!!しかぁし!メリットは二つ!!一つは環境要因による能力上昇!そしてもう一つはーーー》
五条に隕石ほどのサイズである赤い巨岩が襲いかかる。しかしそれも術式によって塞がれた
「領域内で発動した付与された術式は絶対当たる。絶対に」
「マジ!?」
〈いや、領域展開の利点はマシュマロが焼けること!ついでに焼き芋も!〉
《わかってないですね、一番はサウナです!この中で整うことが大事なのです!あ、先輩。ちょっと温度下げてください。暑いです。》
領域内にサツマイモの甘い香りと、マシュマロの少し焦げた香りが漂う。
A’と呼ばれる方はいつのまにか水着に着替え、サウナを行っている。
虎杖は「え、マジック?!というかなんでマグマでサツマイモ?!」と驚いている。
虎杖への領域への対策を説明し終えた五条に向かって、漏瑚は質問する。
「より濃い領域を持ってすれば貴様の『無限』とやらも破れるのだろう?」
「うん。そうだね。」
「それと、輝夜。貴様はさっさと黙っとれ!というか領域展開の時に対象から外したはずだ!なぜ居るのだ!」
〈気合い。〉
《愛。愛をもってすれば何だってできる!愛キャンドゥー、アッツ、マジ熱い!》
若干腑抜けた空間に五条の説明は続く。六眼を隠すためのアイマスクを取り、その蒼色の眼を顕にする。
「領域に対抗する最も有効な手段は、こちらも領域を展開すること。」
〈ヤッベ、五条本気やん!領域だそうとしてるよ。それとサツマイモ美味あ!〉
《現代最強。ならば領域も強いだろうから避難した方がいいかもね。》
そんな五条を見て輝夜も言葉だけはあたふたした感じを出していた。サツマイモ食べながらだが。緊張感がまったくない。
「五条先生、あっちの二人はほっといていいの?なんかコントしてるけど…。」
「ほっといてもだいじょーぶ。続きだけど相性や呪力量にもよるけど、同時に領域が展開された時、より洗練された術がその場を制するんだ。」
〈でもさ、私たちはやっぱり実況者だ。これを実況せずにどうする!〉
《そうだな相棒!カメラスタンバイ!》
逃げることすらせずに、またもやどこかから取り出したテーブルとパイプ椅子、さらにポップコーンとコーラを用意し始めた。
さらにカメラの準備もされている。
「五条先生、本当に大丈夫?あれ。」
「…まあいいでしょ。僕から離れないでね」
「灰すら残らんぞ!!五条悟!!」
虎杖の質問に答えながら五条悟が悠長に説明している間、十分に練り上げた呪力を使い最大の攻撃を繰り出さんとする漏瑚。
その目には大義、矜持が浮かんでいる。
「領域展開」
対する五条が結ぶは武神であり、四天王を統べる帝釈天の印。
〈カメラオンです!マイクOK!オールスタンバイ!さあどんな領域がくるのでしょうか!〉
《見ものですね!興奮してきます!さあ、来ま》
「無量空処」
瞬間、漏瑚の領域が塗り潰された。創り出された領域は宇宙のような青い領域。五条、虎杖以外の行動が停止した。
「ねえ五条先生。あれ…ブフォオォッ!」
「ん?…ブハッ、ハハハッ!」
目を向けた先には、無量空所で動けぬ中、美しい顔で思いっきり変顔をする輝夜がいた。
みーかんのはーながー、咲いてーいるー。
どうも、最近まで「花」を「皮」だと思っていた作者です。
いやー、皮って咲かんやろ!と思いながら歌ってましたが、ミスりましたね。
もう少し書きたかったのですが、ちょっと区切る。
明日も投稿できたらいいかな?
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一話ごとの文字数ってどんくらいがいい?
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半分くらいで(2000字前後)
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ちょいと少なめ(3000字前後)
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これでいいんじゃね?(4000字前後)
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ぶふぅー(ぶふぅー)