誤字報告ありがとうございます。
最初の一撃は輝夜から始まった。
「広がれ」
満月に照らされてできた輝夜の影。それが何倍にも濃くなり、墨汁のような色となる。
さらにその影の大きさが何倍にも広がった。
黒い沼の様相となった影が蠢き出す。さらに影が形を作り出した。
「『化』」
手、眼、そして口。多様なものが影に生み出される。
「あそぼ?あそぼ?」「イイコトしない?」「怖い怖い怖い怖い」「一緒に楽しもうか」「あはは」「えへへ、えへ」「パフェ食いたい」「あはっ♡」「ダメだよぉ?」「喰う」「◼️◼️」「真っ黒」「でも真っ白」「道化」「いいね」「うふふ」「夜のお時間」「タァべえるううぅゥ」「ヒャッハー!」「行こうかな?」「〜♪」
生み出された口がそれぞれ違うことを言う。全てが同じ声音のため、異様な雰囲気を醸し出す。
「悠仁。」
「…うおっ、なに五条センセー?」
先程から一転して雰囲気が変わった輝夜に、少し気が抜けていた虎杖は五条が自身の名前を呼んだことで正気に戻る。
五条は術式を発動させながら虎杖に話しかける。
「気絶しないでね?」
「え?…うわっ!?」
術式を使って五条は空中へと浮かび上がる。
その瞬間五条がいた場所に黒い泥が広がった。五条はその泥を眼で観るが
(まただ。さっきと同じようによくわからない。術式だとは思うんだけど…。)
五条の持つ六眼。それは呪力を分子レベルで知覚することで、相手の術式を知り、呪力の最大効率化などが可能な特異体質。
しかしそれでも、五条の視界には、彼女の術式は黒く塗り潰されたかのように見えなかった。
「「「「「「「「「疫病 必衰 下弦の月」」」」」」」」」
さらに続けて輝夜は呪詞を説く。冠するは負のイメージに相応しき疫病。
それを術式で生み出した口によって演唱する。
召喚されるのは厄病の象徴たる鼠。
「「「「「「「「「『淵獣 黎鼠』」」」」」」」」」
影から生み出されたのは黒い鼠。それが数十、数百、数千と出てくる。
黒き大群が上空にいる五条たちへと襲いかかる。
「「「「「ぢゅいいいいいぃぃぃぃ!!」」」」」
(無限があるから問題な…、いや!無限の術式対象を変化!)
五条はすぐさま無限の術式対象を病原菌へと変化させる。
するとすぐに無限に何か、を弾いた感触が来た。
鼠自体は無限を突破できていない。しかし病原菌のようなものなら別。術式によって作り出された病原菌が、済んでのところで無限に塞がれた。
五条悟は反転術式が使えるが、病原菌への反転はしたことがなかった。
充分に五条の命を狙えている。
さらに。
「こんちわっ♡」
鼠の大群の中から輝夜が現れた。五条の無限によって、直前で止められていた鼠。そこから出てきたため、当然五条の面前に現れる。
鼠が持つ呪力によって輝夜の居場所がよく分からなかった中、五条は冷静に無限で輝夜の拳を止まらせる。
それで輝夜は終わらない。拳を掌底の形に変え、打ち出す。
「『怨』ッッッ!」
五条に対してのみ術式が発動された。
身体中に鳥肌が立つ。頭の中に恐怖心が芽生える。目の前にいる得体の知れない奴に足がすくむ。心臓の鼓動が一段と上がる。歯がガタガタと鳴る。逃げ出したい。怖い。いやだ。いやだ逃げたい。
ーーーこの僕が?
すぐさま脳を呪力でガードする。
すると思考が元に戻った。
幸いにも無限は解かれておらず、鼠どもは動きが停止しているまま。輝夜は五条が対策を打ったのがわかったのか、すでに鼠の大群の中へと離脱している。
「鼠!鼠だ!可愛くなっ!」
「ふふっ、さて課外授業だ。」
最強が隣にいるという実感があるからだろうか、目の前に強大な呪霊がいるというのに、気負った様子はない。
それを見て五条もまた気が紛れる。
「さっきあいつがやっていたのは呪詞、って呼ばれるやつだ。」
「のりと?」
「うん、呪詞。呪術を極めるっていうのは引き算を極めるっていうこと。呪術っていうのは掌印、呪詞とかを軸に行う。それらを行わずとも充分な威力を出すのが第一段階。それの利点はーーー」
「「「「「「「「「兵戈 盛者 上弦の月」」」」」」」」」
さらに輝夜は唱える。冠するは戦争の意。黎鼠と相反する式神。夜に出でくる空の狩人。
「「「「「「「「『淵獣 逢魔鵩』」」」」」」」」」」
輝夜の影が形をとって、生まれ出る。
出てきたのは真っ黒で巨大なミミズクが3羽。
その巨大なミミズクたちは出てきた瞬間、夜の闇に溶けるかのように消えていった。
しかし、五条の六眼には見えている。
「発動時間の短縮、相手への情報流出の回避。そしてーーー」
五条が話すうちに、背後に三体のうち二体のミミズクが出現した。その二体の爪撃は無限を乗り越えることなく、途中で止まる。
しかしミミズクの背中には輝夜がいる。
「ヒャッハー!『お
その前に五条が動く。早口で呪詞を説く。
「位相 波羅蜜 光の柱。」
「ヤベッ!!逢魔鵩!黎鼠!」
輝夜は五条との間に、まだ出現していなかったミミズクが一体、それに周りにいたネズミたちが輝夜を守るために移動していく。
さらに輝夜は身に闇を纏い防御態勢を取る。
五条が生み出すのは発散と収束。赤い光線が放たれる。
「『術式反転 赫』」
「ホオオォォ、ォ」「「「ギュイイィィ!」」」
二人の間にいたミミズクとネズミが吹きどばされる。
「あぁー、どっこいしょお!」
その赫に輝夜は、全身に回していた闇の防御を右拳に全て回す。
繰り出したのはただの右ストレート。それでもって赫を吹き飛ばした。
「こんな感じに祝詞を唱えた方が威力が増すんだ。技の名前を言うだけでもいい。それで情報開示の意味合いも持つからね。」
「あのー、先生!」
「何?悠仁。質問なら後でーーー」
「俺元々のアカ?の威力知らないから、見ても意味ない気がするんだけど。それと情報開示って何?」
「あ。」
悠仁との問答の中で、少し焦った五条は気にしない気にしない、と言いながら輝夜の方を見る。
ネズミは召喚時の半数以下、ミミズクは一体が消失してしまったが未だに輝夜は無傷。しかしながら呪力は十分に減っている。
五条はそんな輝夜へと問いかける。
「そのまま行ったら祓えちゃうけど、やっぱりさっきのはでまかせだったのかな?」
「いいや?ここからでしょ。何より」
輝夜の胸元にある鏡が光る。それと共に輝夜は術式を使い、本来の姿を顕にした。
山羊が持つような黒い捻り曲がったツノ。コウモリが持つような黒く大きな翼。悪魔のような尻尾。そして鮮血が浸ったような眼光と、満月のような瞳孔。
本来の姿を表す、という縛りと共に総呪力量が跳ね上がる。
「祓われちゃちゃらさ。つまんない。」
「うん、そうだね。楽しくなってきた。悠仁、こっからは喋る余裕があまり無さそうだ。舌噛まないでね?」
双方笑みと共に構える。この数順は数十秒の間に行われていた。すでに虎杖は、ほとんど戦闘に眼がついて行けていない
「広がる。拡張せよ『侵』」
輝夜の足元の闇に呪力が満ちる。その闇はどこかおどろおどろしく、得体の知れぬものへと変化した。
その闇は辺りを侵食し、周りのコンクリートを溶かし始めた。溶かしたコンクリートは闇のように変化していく。
その闇が、ネズミ、ミミズクと一緒に五条へと向かう。
木を、コンクリートを、土を侵食し闇は五条へと向かう。
「位相 黄昏 智慧の瞳『術式順転 蒼』」
五条の目の前に青い球体が生まれた。その球体が周りの黒い闇を巻き取る。
巻き取った瞬間目の前には輝夜がいた。
「shall we dance?」
それには答えず、五条は足を使った蹴りを放つ。
それがわかっていたかのように輝夜も蹴りを放つ。
蹴り、殴り。五条は術式に呪力弾を。輝夜はさらに尻尾や翼も活用して。
さらに早く、さらにさらにと続けて攻撃を加えていく。
それはさながら演舞のよう。輝夜もまた隣の虎杖を攻撃すると言う真似はしない。なぜならつまらない。
五条も束の間の戦闘を楽しみながら、戦っていく。
その演舞は少し経った後に終わる。
「ちぃ!」
五条の蒼を応用した一撃が飛ぶ。それを対応するために輝夜は着弾地点に闇を張るが、逆に五条は蹴りを放つ。
「ぐへぇ!」
だが、この一撃も当たりはしたが、ダメージとしてはそれほど。
そして今度は膠着、となってしまった。
双方離れて相手の様子を伺う。五条もゴキゴキと骨を鳴らす。輝夜もふくろはぎを伸ばす。
準備は万端。
静かな夜の道路の上、特級呪霊と特級呪術師は構えた。
何か音がしたらすぐ動くだろう。二人は勝負の開始の瞬間を待っている。
さて、その音はすぐそこで。
『ピリリリリリ、ピリリリリリ。』
「「…」」
三人の間になんとも言えない空気が流れる。五条のポッケのケータイからなってるようだ。
「あ、どうぞ。はい。」
「あ、うん。」
輝夜も気が抜けたのか、電話に出ることを勧める。五条もまた味わったことのない空気を感じて、いつもは電話を切るが、電話を切らずにとった。
電話をとると電話から夜蛾学長の声が聞こえてきた。
『五条!遅い!何をやっているんだ!会合はすでに始まって』
「ごめん、学長。今んところ無理そう。」
『…わかった。後で聞く。』
五条の真面目そうな口調に夜蛾も何かあったのか、怒りをおさめる。まあ後で虎杖のことで再度怒ることになるのだが。
電話を切り、輝夜の方を向くと闇の中にいるカエルと蛇を足して二で割ったような呪霊が持ってきた手紙を読んでいる。
「うえぇ。え、いまぁ?まじか。」
輝夜はすぐさま手紙を呪力で焼き切る。
五条の方へと振り向き、申し訳なさそうに話し出す。
「申し訳ないんだけどさ。これでお開きにしない?」
「は?」
予想外の呪霊からの発言に五条は驚く。虎杖は先程の乱闘の影響で頭痛がしていた中のことだった。
「いや、私も続けたいんだけどね?『早く帰ってこい』っって言う手紙が来てさあ。帰んねえと行けないのよ。
だからお開きっつうことで…。」
「逃すと思ってるの?」
ノリに乗っている五条。そこにきた解散、と言う文言。
当然許せるわけもなかった。
「いや、私も特級だ。逃げさせてもらうよ?」
道化が行うのはまたもや式神。いくつもの口を作り出し演唱する。
「「「「「「「「「不祥 大禍時 六道の肆」」」」」」」」」
冠するは不吉の象徴。不吉そのもの。魔女の使い魔とされる存在。
「「「「「「「「「死似暗」」」」」」」」」
大幅に強化された式神が召喚された。
さらに残っていたネズミ、さらにミミズクが現れる。
「こいつら足止めね。そんじゃ名残惜しいけどバイバーイ。」
「術式反転ーーー」
赫を打とうとするがネズミが虎杖へと向かう。片手間で祓いはしたが、輝夜にとってそれで十分であった。
「それじゃまたね〜、んーチュ♡」
投げキッスを放ち、全速力で逃走する。
ミミズクと大猫、ネズミを全て祓った時には輝夜はすでにいなかった。
「ふう、逃げられたか。上手いな。それにしてもまたね、か。楽しくなってきたよ。」
後ろの方でまたもや虎杖が土下座をしているが、五条は全くもって気にしていない。
それに安心したのか虎杖は五条へと質問を投げかける。
「ねえねえ先生。これ、…これ?何かわかる?」
「キスマーク」
「うん、それは知ってるけど浮いてるじゃん」
輝夜が先ほど打ったキスマークはフヨフヨと宙を漂いながら進んでいた。
かなり遅いが、少しずつ進んでいた。
「これなんで浮いてんの?これも術式なのか?」
呪術に触れてまだ数日。虎杖もまた興味津々であった
「あ、それ触れない方がいいよ。呪力の塊だし。」
「え」
驚く虎杖が五条に振り返った瞬間、不意打ちで虎杖へとキスマークが飛んでいった。
その後、近隣住民によると道路には悲鳴が聞こえたとかなんだとか。
部活、部活、部活。死にそうだぜえ。ポテチなきゃやってらんねえ!
学校の用事でまた更新遅くなりそう。次は明日か明後日。
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