望郷漂流客船イナバマル 祝福された後継   作:qlo

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※Lostbelt No.6『妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ』の核心的なネタバレのほか、Lostbelt No.7『黄金樹海紀行ナウイ・ミクトラン』〜2部奏章『オーディール・コール』の一部内容に触れています。

※本作は後日、作者本人のpixivアカウントにおいても投稿予定の内容となります。

以上の事柄をどうぞあらかじめご了承ください。





第九節
死灰復然【一】


 

 

「──敵、仮称・『金庫城のゴーレム』および『スプリガン』……敵性反応、消失しました!」

 

 マシュは声を張り上げ、計器上の観測結果を手元で確認しつつ、皆に向けて状況を共有した。それと同時に──

 

「結界の外殻を形成する構造物が霧散! 本来の姿と思しき『灰』の形状へと変化し、倒壊を始めました! 幸い、船体への影響は見受けられませんが──頭上と足元にご注意を!」

 

 ──『金庫城』の幽閉結界が隠蔽していた、本来の景色が露わになった。

 

「(……これが、『イナバマル』──)」

 

 現地に到着した我々が身を置いたのは、すでに『金庫城』の幽閉結界に覆われた後の環境だった。ゆえに、特異点本来の姿を目の当たりにするのは、私にとってはこれが最初になる。

 

 ……内部に位置するらしいこの地点からは外観が窺えないものの、内装や構造を見る限り、このフロアは大広間にあたる空間であることが視認できた。やはりと言うべきか、『準・亜種特異点』なる脅威判定を受けた船体全域はよほどの存在強度を有しているらしく──聖杯の所有者を失ってもなお、その存在を堅持し続けていた。

 

 あれほど強引な形で戦況を覆したことから、聖杯を制御する存在を喪失した船体もまた、即座に崩壊の兆しを見せる可能性があった。そうなってしまえば、特異点の解消は叶えられたとしても──危うくもうひとつの目的である『バーヴァン・シーの奪還』が、根本的に不可能な状況となっていたところである。

 

「大広間に残されていた、仮称・『漂流物のゴーレム』を視認できました! 先ほどのオベロンさんと村正さんによる制圧戦を受け、『金庫城のゴーレム』の無力化とともに機能を停止しているようです!」

「ふう〜! 敵からも味方からも終始驚かされっぱなしだったけど、何とかなったんだわ! 第二陣が居てくれてホント助かった〜!」

 

 マシュによる一旦の状況確認を合図に、両腕をぐいっと伸ばしながら安堵の言葉を口にするハベトロット。仰るとおり、敵陣はともかく、我々第二陣の動きも想定外の連続ではありました。まあしかし、情報漏洩を最大限に警戒し、ギリギリまで内容を伏せておく必要があったことに加えて──トリスメギストスⅡの演算を全面的には当てにできない本作戦においては、現地の状況もまた我々にとって不明点だらけだったのです。()()()()の数々については、どうかご勘弁願いますね。

 

「警戒を解いてはなりませんよ! 船全体が特異点である以上、この空間は依然として敵地の只中。木偶人形が案山子と成り果てようとも──破れた結界の外には、単独行動を可能とする漂流物の使い魔がまだ、大勢……」

 

 と、本特異点における敵性存在が『金庫城』のみではないことを念押しするように、バーゲストが鶴の一声を放った。さすがは妖精騎士随一の勇将。先の戦いで自身を窮地に追いやった怨敵とも言うべき存在が排除されたにも関わらず、安堵に乗じて気を緩めることはなく、戦況を俯瞰的に見据える姿勢を微塵も崩してはいない。

 

 かつて『獣の厄災』と成り果てたバーゲストが焼き滅ぼした、鍛冶場街・ノリッジ。『スプリガン』を名乗ったあの者は、彼女と自らの間に刻まれたその因果を引き金とすることで、本特異点における彼女に対する身体的・精神的な抑圧を執拗なまでに強いていた。しかし、その実現を叶えていた『金庫城』が無力化された現状の彼女は、先ほどまでの様子と比べて随分と顔色が良くなっている。

 

「モタモタしてると全部貰っちゃうよ! はあっ!」

「逐一断りを入れるたァ殊勝なこった! そらよ!」

「獲り合ったところで仕方ねえんだが! おらぁ!」

 

 と、あちらもあちらで調子を取り戻してみせたらしい。暫しの間おあずけを食らっていたメリュジーヌの『伸び』に競り合うように殿方コンビが加わり、我こそ先にと『漂流物の使い魔』達を薙ぎ払い始めてしまった。とはいえ、使役者としての役割を担っていたゴーレムが機能を停止した影響か、使い魔達は辛うじて現界を維持するのがやっとのようだ。動きは鈍く、抵抗する様子は見られない。

 

「……残りそうもありませんね……」

「息合ってるな〜あいつら……」

 

 眼前の様子を呆れ半分、感心半分といった面持ちで眺めるバーゲストとハベトロット。そのリアクションになるのも無理はないでしょう。メリュジーヌのあの張り切りよう……第一陣として先んじて作戦に身を投じていたうえ、バーゲスト共々に大立ち回りを演じた後の動きとは思えません。

 

「(──幽閉結界の崩壊とともに、魔力吸収現象の効果も途絶えたようですね。……とはいえ、あまり無茶はしないでほしいところですが)」

 

 ──モルガンが用意したこの『決戦術式』は、あくまで『対象の魔力行使と同量の偽装魔力を()()供給する』というもの。魔力譲渡の格好でありながら、その実情は『まるっきり魔力消費を肩代わりする』ものではありません。つまり、彼女達は自身の魔力が温存できるわけではなく、平生どおり真っ当に疲労を蓄積していることに変わりはないのです。

 

 先の現地通信の際、第一陣は束の間の休息を取ることが叶いましたが、それは見せかけだけのもの。通信が可能な環境に身を置くことはできても、魔力吸収現象は絶え間なく発動していたのです。精神的な休息になったことは確かでしょうが、各自の霊基、および貯蔵魔力の回復については、マスターが持参した『おやつ』がもたらした、ささやかな補充量にとどまっている──

 

「…………」

 

 ──などと、我々第二陣が到着するまでの状況を整理していた最中。戦況に大きな区切りがついたにも関わらず……マシュのアナウンスを耳にしてもなお、その場を動かず、ひと言も発さない御仁が居ることに気がついた。

 

「……さすがに疲れが溜まっているようですね、マスター。聖杯の確保を済ませ、このフロアが片付き次第、バーヴァン・シー捜索のためのフィールドワークが再開します。彼女達が安全を確保してくれるまでの間、貴女も少し休んでおいてください」

 

 バーゲストの戦況把握に向ける柔剛併せ持った姿勢とは違い、彼女のそれは緊張による硬直そのもの。……無理もありません。船体全域が敵地である以上、その只中に身を置くとあっては、いつ何時に状況が転ずるかわからない──と、ここに至るまでずっと気を張り続けていたのでしょう。少なくとも、彼女のそんな様子を見かねたオベロンが、私と共にこちらへ到着した直後……彼女の緊張状態を緩和させるべく、軽微な幻術を施す必要に迫られた程度には疲弊しているはずなのです。

 

「──あ、うん……ありがとう、アルトリア」

 

 ……返ってきたのは、どこかおぼつかない声色による応答。やはり限界が近いのでしょうか。いつになくその声は沈んでおり、そればかりか、微かに震えてすらいるようだった。

 

「……少し、休まなきゃだよね」

「────」

 

 彼女が作戦時特有の緊張状態にあり続けていることは確かではあるものの……それにしてはどこか、環境的な要因から影響を受けている様子とは、些か異なった印象を覚える。

 

「(……異常はないようですが──)」

 

 念のためにと感知魔術を走らせ、マスターの状態を精査してみたものの、呪詛の類が施された形跡はない。精神干渉による妨害でもなければ、彼女が着用している礼装では耐えきれないほどの魔力濃度が空間を占めているわけでもない……つまり、裏を返せば。

 

「マスター……大丈夫ですか?」

 

 現在の彼女の彩は──この場における『()()()()()()()()』から発せられたものである、ということを意味している。

 

「うん……ちょっと、疲れたのかも」

 

 ()について問われたのか、マスターは気づいてくれたのでしょう。そう答える彼女は言外の意を補完するかのように、『ごめん、今はこれが精一杯』と、自身の表情でもって訴えかけている。

 

 もっとも、今の彼女の発言そのものに嘘はありません。しかしそれは、妖精眼を持つ私に嘘は通じないという事実への諦観を意味する態度ではなく──己自身でも整理しきれない何らかの問題が彼女の内に生じており、それが半端な状態のうちに、周囲に曝け出すことを躊躇っているがゆえの姿勢……といった具合だ。その証拠として、具体的な思考内容までは、この眼を以ってしても判然としない。

 

「──そうですか。ではなおさら、今はご安静に。いいですね?」

「──ありがとう、アルトリア」

 

 いずれにせよ、今の彼女には時間が必要と判断し、僅かにでもと気持ちを落ち着かせるよう、ここは労いの言葉をかけるにとどめることにする。

 

 ──特異点という未知の世界に身を置く以上、敵性存在や環境自体が潜在的に有する脅威を警戒するために、その場へ足を踏み入れた者には例外なく『当事者の自覚』を持つことが求められる。それは、生存競争を制するための戦いであればもちろん、最終的に和平を目的とする作戦行動であっても同じことである。

 

 常に現状理解に意識を巡らせ、自身が置かれた立場を見失わぬように努めていなければ、世界と対峙する当事者として在るうえでの最低限の資格すらも損ないかねない。そして、マスターがそれを蔑ろにしたり、そんな自身を許すような人物ではないことを──私達は知っている。

 

「……先輩……?」

 

 それらの様子を察したらしい。遠巻きにこちらを窺ったマシュが、誰に届かせるでもない声量で呟く。マスターほどではないものの、彼女の表情にも同種の『翳り』に類する、燻んだ彩が滲み出ていた。

 

「(……二人の、あの表情──)」

 

 ……見覚えがある。それは遠い記憶がもたらす懐古などではなく、極めて最近の出来事に由来する既視感。現在の彼女達が見せている表情は、先の通信における状況整理の折──シオンによる本特異点の解析結果を耳にしたときの様子と、まったく同じなのだ。

 

「(……やはり、どうにも今回の二人……特に、マスターの様子には違和感がある──)」

 

 平生の彼女達には見られない類の違和感が、今回の作戦に限って顕著に表れている……それはつまり、この特異点、あるいは作戦の方向性それ自体が、二人の彩を翳らせていることを意味するのですが──

 

「(……マスター。貴女は──)」

 

 ──汎人類史最後のマスター、『藤丸立香』。

 

 彼女は作戦環境に身を置く際、特異点の大小・強弱を問わず、自分自身も『当事者』として在ろうという、彼女なりの誠意と責任を損なわんと己に課し──そう在ろうとする姿勢自体を精神の拠り所として、世界を相手取る自身を奮い立たせてきた。

 

 対峙する世界の在りかたが、本質的には無意味であったとしても。

 

 すでに滅びが確定し、いずれ消え去る運命にある世界であっても。

 

 それらを決して『他人事』と切り捨てず、己の内に引き受けながらも、囚われる程には引き摺らない──そのような精神で在ろうとする彼女だからこそ、幾多の試練を潜り抜け、私達のような異聞世界の存在までもを含め、数々の縁を結ぶことを叶えてきたのだ。

 

 その彼女が、今──

 

「(──いったい……()()()()()()()()()()?)」

 

 ──己の内から湧き出でる、行き場のない『焦燥感』に囚われていた。

 

「…………」

 

 いつから、だろうか。……少なくとも、我々が『金庫城』との戦闘を繰り広げていた先刻までは、マスターの意識もまた前線に総動員されており、戦意の彩が優位に表れていた。あるいは、それが隠れ蓑となっていただけで、彼女の無意識下では常にこのような精神状態にあったのかもしれない。

 

「(……『金庫城』、および『スプリガン』──彼らはオベロンの策略で無力化し、もはや聖杯による存在証明の自由は効かない)」

 

 大広間の中央部。そこへ打ち捨てられたかのように堆積した、先刻まで『金庫城の宝物群』だった灰の山を見やる。オベロンの鱗粉が混ざり合っている影響で、灰のすべてが淡く黒い光を放っている。あの分であれば、たとえ聖杯を駆使しようとも再帰の可能性はないでしょう。

 

 戦況は大きく進展し、目下の脅威存在であった『彼ら』は沈黙を喫した。残るは特異点の全貌たるこの『船』と、魔力の流れが停止したことで佇むばかりの『漂流物のゴーレム』、その『使い魔』たちに限られる。……こと戦闘においてはもはや消化試合の格好となった状況で、なおもマスターの精神を苛む対象が在るとすれば──それは。

 

「ようし──仕上げだ! はぁっ!」

 

 ……と、膝上に眠る二人のお守りをしつつ思考を巡らせている内に、『使い魔』の掃討作戦もまた区切りを迎えたらしい。メリュジーヌの掛け声とともに轟音が鳴り響き、間もなくして静寂が訪れた。

 

「あーチクショウ。遅参の健康体で、先発の手負いに競り敗けちまった。やれやれ……往生際の爺の心に、無理し放題の体ってのが売り文句のひとつだったんだがなァ。あいつが相手じゃ体はおろか、年の功が冴えやる暇もありゃしねえ」

「なんだお前さん、本気で競り合うつもりだったのかよ。ま、気を落とすこたぁねえさ。(ジジイ)っつっても、そいつは人間サマの勝手な物差しの話だ。竜種の連中が何年生きると思ってやがる? 年の功ってんなら断然──って、ぐわー!」

 

 えぇ……。

 

「──おっと、仕留め損ねちゃった。青くて目立つ良い(マト)だったのに、目測が甘かったかな。……で、年の功が断然、何だって?」

「待て、儂はまだ何も言ってねえからな!」

「俺もまだ言い切っちゃいなかったがな!」

「『まだ』って言った。有罪(ギルティ)!」

 

 ほどほどでお願いしますよホント。

 

「ええと……仮称・『漂流物のゴーレム』、依然として機能を停止。『使い魔の群勢』もまた、再生成の兆しはありません。……聖杯の所有者であった『スプリガン』が排除された今なら──『漂流物』に移植されている、バーヴァン・シーさんの欠片を摘出できます! 急ぎましょう!」

 

 またしても妙な方向にヒートアップした殿方とメリュジーヌのじゃれ合いに面食らいつつ、マシュはこれから採るべき行動を打診する。仰るとおりです。脅威存在が沈黙したとはいえ、特異点内の時間が停止したわけではありません。『彼ら』が指向性を与えた聖杯の効果が減衰する前に、バーヴァン・シーの欠片を摘出しなくては。

 

「……そういやどうやって取り出すんだ? こう、果物を収穫するような感じで……ってワケにはいかないんだよな?」

「そうですね。ことバーヴァン・シーさんに関わる事象である以上、やはりここは、妖精騎士の皆さんを最初に調整した張本人でもある、モルガンさんにお任せすることが最良の選択になるかと……しかし──」

 

 根本的な問題を指摘するハベトロットに応答しつつ、マシュは次いで浮上した問題を口にする。ただ……彼女が言い淀んだとおり、モルガンは依然として昏睡状態から醒める様子はない。

 

「(……どうしたものか……)」

 

 私が代わりに摘出の役割を引き受けることもまた、辛うじて有効な選択肢ではあるものの……遮蔽魔術のドーム内というごく至近距離であるがゆえに適っている、精緻な回復術式の手を緩めるわけにもいかない。モルガン個人に向けられた特化的な妨害効果を上回るほどの精度となれば、なおさら今の彼女から距離を置くことは避けたいのだ。

 

 とはいえ、彼女の目覚めを待つには時間が惜しい。加えて、依然として特異点に身を置いている以上、妖精騎士の面々に施した『偽装魔術』もまた、保険として維持する必要もある……あと、モルガンに負けず劣らずの無防備を晒しているオベロンのお守りも。

 

「……モルガン。『なる早』で起きてくれます?」

 

 自分のマルチタスクっぷりを改めて認識し、ついそんな軽口を叩いてしまった。……しかし、この状態ではどうあっても八方塞がりのまま。有り体に言って、シンプルに人手が足りません。分業制を進言するのは当然の流れというもの──

 

「…………」

「(────)」

 

 ──いや。やはり、これはおかしい。

 

 我々第二陣が到着し、私がモルガンの『決戦術式』を引き継いでから、およそ一刻を迎えようとしているこの最中──前線指揮の傍における施術とはいえ、現在に至るまで、彼女に対し掛かりっきりで回復を試みていたのです。にも関わらず……

 

「(……まさか。こうして直に触れているのに、今まで気がつかなかったなんて……()()()()()()()()()()()()()()()()()──?)」

 

 モルガンは()()()()()──『魔力切れ』の状態にあったのだ。

 

「(……霊基修復自体は、順調に進行している──)」

 

 その一点による安堵が、無意識のうちに認識を逸らしてしまったのか。あるいは、先述のマルチタスクによって集中力が欠けていたのか……戦闘不能の昏睡状態にある彼女に対し、こちらから一方的に回復術式を施す以上、霊基状態・貯蔵魔力ともに──器に水が満ちるが如く、時間経過に比例して復調するものとばかり考えていた。

 

 ……認識が甘かったのだろうか。いや、それはない。方々に意識を割いていながらも、私は常に全霊をもって、モルガンの治療に当たっていた。これではまるで──水を注いで器を満たすはずが、知らず空いた穴から漏れ出ていたか、注いだ傍から汲み取られていたようなものだ。それも、直接施術を行う私が、()()()()()()()()()()()()()、である。

 

「(だとすれば──)」

 

 ──()()()()()()()()()()()()()()

 

「……最後の令呪を回復に使おう」

 

 動揺が顔に出ていたのだろうか。今度は私がマスターに気遣われる格好となり、彼女は状況を察したうえでそう進言する。

 

「──いいえ。お待ちを、マスター」

 

 ……この状況。モルガン個人に注がれていたはずの魔力が、彼女の貯蔵魔力に残されていないとすれば──

 

「それは、()()()のために残しておいてください」

「え……?」

 

 ──考えられる可能性は、おのずと限られる。

 

「! 全員、漂流物から離れろ!」

 

 クー・フーリンが唐突に叫んだ、その瞬間。

 

「チッ!」

「……──!」

「なに……?」

「これは……!」

「なんだ──?」

 

 大広間を……いや。『イナバマル』全体を揺り動かすほどの、絶え間ない時空震が駆け巡った。

 

「──これって、もしかして──」

 

 ……灰が舞う。

 

「──! 船内の魔力濃度、急激に上昇! 魔力の波形は……先刻までに観測された、あらゆるサンプルデータに該当しません! しかし、これは……この魔力パターンは──!」

 

 ()()を手離したはずのそれは、

 

「──そういうことでしたか」

 

 峻烈(しゅんれつ)極まる──()()()()を纏っていた。

 

 






お読みいただきありがとうございます。


マスターの様子がちょっと心配な回。

第九節に入りました。
既成のプロットを踏襲した進行、という意味においては順調に来ています。……ひとつ問題なのは、そのプロットが当初は漫画での表現を想定したものである、ということで……「この先のあの場面、文章でどうすんのさ?」と首を傾げるような箇所が、今章以降に輪をかけて多く控えているんですよね。なのでそのぶん、熟考の時間が増えてより鈍行気味になるかもです。

いずれにせよ今作は「自分が読みたいものを書いている」過程ですので、自分の中でゴーが出せる形になるまで粘っていきたいと思います。たのしい。
そんな手前勝手な姿勢でおりますことから、こうして根気強く追ってくださっている皆様には本当に感謝しています。

引き続き、お付き合いいただけますと幸いです。
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