望郷漂流客船イナバマル 祝福された後継   作:qlo

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※Lostbelt No.6『妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ』の核心的なネタバレのほか、Lostbelt No.7『黄金樹海紀行ナウイ・ミクトラン』〜2部奏章『オーディール・コール』の一部内容に触れています。

※本作は後日、作者本人のpixivアカウントにおいても投稿予定の内容となります。

以上の事柄をどうぞあらかじめご了承ください。





借屍還魂(壱)【七】

 

 

◆◇

 

 

 津波が如き光のなかに、『彼ら』の記憶を垣間見る。

 

『ははは。日に日に判ってきたぞ。どうやらこの状況は、遭難どころの話じゃないらしい!』

『すごいな。世界そのものが違うのか。歩けども歩けども、見慣れぬ光景ばかりのはずだ!』

 

 惑いがあったのは確かだろう。驚きがあったのも確かだろう。ただ、『彼ら』の内には、それらに呑まれることのない──

 

『この世界は面白いな。此方の常識など通用しない、見知らぬ出来事で溢れているぞ!』

『未知の環境であればこそ、予想を越えた出来事もあろう。得難い経験が積めそうだ!』

 

 ──異郷に迷い込みながら、魂までは迷わせなかった……己が在処を照らし出す、灯台のような(しるべ)があった。

 

『ははは! ああ、楽しみだ! 私はいったい、この世界で──』

 

 それを有した存在が、『漂流物』の中でもひと握りであった事は云うまでもない。しかし、そんな『異端分子』であればこそ。魂に迷いがなく、己が在処が明白ならば。その地が如何なる異郷であろうと、その身が如何なる余所者であろうと──

 

『──どんな自分に、出逢えるのだろう!』

 

 ──居場所はいつだって、すぐ足元に在ったのだ。

 

「(──ああ。よかったね、モルガン陛下)」

 

『彼』のすべてに替えられた、存在の波を受け止める。

 

「(ほら、見てごらん。知っていたかい? こんなに熱を浮かせるほどに──)」

 

 全霊を湛えた、光の奔流。過ぎ去ることを待たずして、

 

「(──陛下の国に親しんだ、お客さんが居たんだよ)」

 

 知る者のいない『遣い手』は、その姿を失った。

 

 

◆◆

 

 

 砂埃が立ち込める。

 

「──ふう……」

 

 構えを崩して、ため息をつく。

 

「──悪いね。このとおり、凌ぎ切らせてもらったよ」

 

 すでに姿を失った、仕合いの相手に語りかける。

 

「お生憎さま。この仕合いは僕の勝ち。だけど──」

 

 踵を返し、背後を振り向く。そこには、

 

「──おめでとう。『彼ら』との戦いは……『君』の勝ちだ」

 

 空間中央に聳え立つ、巨大な『樹木』の──()()()()()()姿()があった。

 

「……って。うわあ、驚いたな。すごい裂けっぷり。いや、咲きっぷりというべきかな? あれは。まるで──」

 

 石畳に根を張り、天蓋に枝を張り、空間全域の魔力を吸い上げていた、『彼ら』にかかる存在強度の『生成機構』とでも呼ぶべきモノ。それが、

 

「──まるで。眩い光に咲かされた、大輪の花のようじゃないか」

 

 真ん中から上の造形が、内側から()ぜたかのようにぱっくりと。内部の(うろ)を露わにするほどに、ものの見事に破壊されていた。

 

「(……これで、此処はもう──)」

 

 抉れた『樹木』の周囲に降り注ぐ、『彼』の残滓たる光の粒子。それらの霧散と呼応するかのように、この空間──『石造りの蔵』たる形もまた、倒壊の兆しを見せ始めていた。

 

「……さて、と」

 

 ──区切りを迎えた状況に対応すべく、戦闘態勢から索敵態勢へと移行する。新たな敵性存在の気配などはなく、空間内にも危険性は認められない。

 

「(……体内魔力、補完開始)」

 

 ……最後の一閃を相殺したことで、此方も貯蔵魔力の大部分を費やした。外傷は無いに等しいものの、魔力の回復にはそれなりの時間を要するだろう。『ようやく此処から開放される!』という思いから、脱出に気が急いているのは確かだけれど──外で待つマスターに、息の上がった姿は見せたくない。今はただじっくりと、この虚飾の全壊を見守るとしよう。

 

「──そういえば……」

 

 傍観している只中で、当初から脳裏を掠めていた、とある事柄を認め返す。……言わずもがな、僕を閉じ込めているこの『水瓶』について──空間内部にかかる意匠と共に、あの『樹木』を仮想構築するためのモデルとなったものが、いったい『何』であったのかという問題だ。

 

「(……これほどまでに特化的な、概念の『抽出機構』を目指した空間だ。何か由来があったはず──)」

 

 曰く。この空間の意匠には『彼』と『僕』、両者の『好み』が反映されているという話だったけれど──とはいえそれは、『リクエストに忠実なおもてなしが受けられる空間』なんて意味に止まる話じゃあないだろう。

 

「(僕が先刻気に入った、バーゲストとやり合った空間の意匠に近いもの、とは言っていたけど……)」

 

 ……実際、僕は此処に来て意匠のリクエストなんて出していないし、『あの時みたいな良さげな場所はないかなー、今度こそマスターを連れて観光したいなー』なんてコトを敵地に望むほど寝ぼけてもいなかった。ホントだよ?

 

「(……なら、僕の認識は関係ない。ってことは、『好み』の意向の有無も問題じゃない──?)」

 

 だとすれば。肝要なポイントは、此処が『そんなコトを抜きにしても、何らかの要素が()()()()()反映されてしまう環境』だった──という事実自体にあるのだろう。それは裏を返せば、この場に反映される対象は必然、嘘偽りの介在しない、厳然たる事柄に限定されるという事でもある。

 

「(……つまり、此処に反映されていた光景は……『好み』よりも決定的な、僕の根幹に由来する『何か』──ん?)」

 

 そうしている時。石畳の消滅によるものか、足裏に覚える感触に変化があった。

 

「(──(ゆる)い。これは……『()』……?)」

 

 その質感を認めたことで、事の次第にも理解が及んだ。……ああ。そんな条件に当てはまる場所ならば当然──思い浮かべるまでもなかったはずだ。

 

「(……なるほどね。この様相の大元は、幽閉対象たる個体に根差した『心象』──)」

 

 それは、『現在の僕』という存在、その発生起源において刻まれた根源的な記憶──『原風景』の形にほかならない。

 

「(──『湖水地方』の情景か)」

 

 ゆえに、あの『()()』の由来も自ずと判る。

 

「(……『空想樹・セイファート』──)」

 

 その呼称は、妖精歴の舞台たる『異聞帯ブリテン』の仮想運営を担っていた、銀河を抱く大樹の名。かつての救世主はこれを枯らし、養分のすべてを剥奪することで──己が治めし女王歴の舞台、『異聞世界・妖精國ブリテン』の成立を叶えたのである。

 

 大樹はその後も在り続けたが、それはもはや残骸にすぎないモノとなっていた。……そして、今。それをモデルに定めた因果が招いた結末とでも云うべきか──僕の眼の前に聳えるアレもまた、()しくもその似姿を成していた。

 

「(……律儀なものだね。あの場所にとって象徴的なオブジェには違いないけど、わざわざ意匠に組み込むなんて)」

 

 ……少なくとも、かろうじて再現を試みたものらしい事は窺える。しかし、『それ自体』に迫ろうとしたのなら無駄なことだ。本物の存在強度には遠く及ばないし、それを仮に再現・利用するにしても、もとの世界に返り咲くという『彼ら』の望みを叶えるならば、生半な仮想運営に舵を切ることは悪手に等しいのだから。何より──

 

「(──さすがにそれは、無理な相談だったね)」

 

 ──そう。()()()()()()()()()()()()()。それは、『彼ら』が妖精國において培った『縁起』を手繰り、仮に空想樹の完全再現に至るほどの能力を有していたとしても、何ら変わることのない事実である。

 

 前提として、『取り替え(チェンジリング)』が生じ始めたのは()()()()()の話。つまり、最初の『漂流物』が訪れた時点の妖精國ではすでに、シミュレーターとしての空想樹は枯死していたのだ。『彼ら』はひとつの例外もなく、世界の仮想運営を為していた頃の空想樹を知り得ぬばかりか、それとの縁も刻み得ない。

 

 必然、『縁起』を基にした概念構築を武器とする『彼ら』であればこそ、その本質に迫るほどの再現は不可能であるというワケだ。ゆえにアレは、この場における独自の魔術礼装──『空間内の魔力を吸い上げ、存在強度を得るための装置』として出力する事が限度だったんだろう。

 

「(……まあ。逆に言えば、『本物未満の再現程度はできるうえ、独自の機能なら実現できる』──って事なんだけど)」

 

 そこに関しては、今さら驚く話でもない。なにしろこの艦、『イナバマル』の存在自体がそうなんだ。ノリッジの港に在ったという、建造途中のオリジナルとは別物の『何か』──妖精國・汎人類史双方の概念を積み込んだ、絶海を征く魔境が此処である。

 

 ……ただ──

 

「(……この空間形成も、聖杯による『存在証明』の範疇なのか?)」

 

 ──それにしても、此処には異質な印象があった。

 

「(……何だろう。『金庫城の宝物』で造られたゴーレムや、『漂流物の寄せ集め』に比べて──此処で生じた再現は、明らかに()()()が高かった)」

 

『彼ら』が自身に施した、聖杯による存在証明。その効果はあくまで、自身に紐づく『縁起』を基に、己が構成要素を強化、ないしは増幅する事に止まるもの。縁もゆかりもない物事を、空想のままに具現化する事はできないはずだ。

 

『(……『彼』を構成していた因子自体は、敵方が自前で有するものだった。けど……その姿形の実現は、敵方の縁とは由来が別のもの。この場に居る僕の『記憶』から引き出した、特定個人の造形イメージを利用したものだった──)』

 

 にも拘らず。現にこの空間は、僕の心象風景たる場所を擬似再現したばかりか、己が因子を寄せ集め、『空想樹』のガワを(なら)って被せ、独自の機能を持たせた『樹木』なんてモノすらも出力してみせた。それも、バーヴァン・シーの霊基から抽出した『蘇りの厄災』の流用とは違い──此方の霊基の一部を奪うことすらしないままに、である。

 

「(──なにそれ。それじゃあこの場所が、『訪れた者の含有因子』を奪うまでもなく反映し、『彼ら』の武器にできる環境だとでも云うつもり……)」

 

 ──そこまで思考が及んだ時。僕はふと、それと()()()()()()()が在った事に思い至る。

 

「(……まさか)」

 

 ──巨大な『樹木』が崩れゆく。

 

「(いや……待て。()()()()())」

 

 ──『石造りの蔵』が剥がれゆく。

 

「(この空間を、『()()』と見做してしまえば……)」

 

 その先に現れた光景は、マスター達の居る大広間ではなく──

 

「(()()()()()()()()()()()()()()()……!)」

 

 ──依然として展開されていた、『水瓶』たるドームの内側だった。

 

「(……やられた。どうりで出力の自由度も高まるはずだ。これが敵方の寄越した、先の空間を成し得た仕掛け──その正体というワケか)」

 

 五つの『水瓶』が現れたとき、誰かが発した声を思い出す。

 

『──しまっ……この()は……!』

 

 ──あれはつまり、こういうコトだったのか。

 

「(……聖杯による偽装処理が施されていたのか? 僕は気付けなかった。それを看破できた奴が居るとしたら──あのとき気付いたのはクー・フーリン、かな)」

 

 流石はとでも云うべきか、『そういえば曲がりなりにもキャスタークラスだったね!』とでも云うべきか。彼は概念レベルの偽装処理をものともせず、一瞥しただけで看破していたらしい。

 

 ……だとしたら。おそらくアルトリアも、この『水瓶』の正体は見抜いているはず。陛下から引き継いだ遮蔽魔術が展開しているから大丈夫だろうけど、外側に居るマスターに万が一影響が及んだとしても、彼女がどうにかしてくれるだろう。

 

「(……でも──なぜだ?)」

 

 必要最低限の安心材料を確認し、現状理解に思考を回す……『彼ら』はいったい何をした? いや、そもそも……『漂流物』と『それ』の間に、どんな接点があったと──。

 

「────、ッ……!」

 

 その瞬間。『石造りの蔵』の消滅を目前に──唐突な眩暈に見舞われた。

 

「(……まあ当然、そう来るよね──)」

 

 ──誤算だった。僕はてっきり、この『石造りの蔵』は『水瓶』を変形させたもの、イコールの関係だと思い込んでいた。けれど、実際は違ったらしい。単一構造なんかじゃなく、マトリョーシカのような入れ子構造だったんだ。『()()()()()()()()()()()()()()()なんて見積もりは、都合の良い希望的観測にすぎなかった。

 

「(それは……ちょっと、マズい、かな)」

 

 致命的だったのは。僕が今、『妖精騎士』として培った『技』の記憶……言い換えるなら、『着名(ギフト)に紐づく証明因子』──『堰』の一部を損なったままの状態だという事実。外へ出るか、『蔵』の倒壊と同時に、この身に還るものと期待したけれど……それも叶う事はなさそうだ。

 

 ……つまり。

 

「(……このままじゃ──()()()()……!)」

 

 僕が置かれた現状は、『敵』が求めてやまない、膨大な魔力の抽出源たる『竜の炉心』……それをフルに稼働する姿、竜形態換装の強制を助長してしまう、決定的な窮地にほかならな──

 

『いいや。そんな事にはならないさ』

 

 ──え?

 

『ほら、こっちこっち。遣い手が居なくなったからって、忘れられるのは寂しいなぁ』

「(──こっち、って……)」

 

 理解が追いつかないまま、『声』らしきものが呼ぶほうへ視線を投げる。そこには──

 

「(────もしかして、『アレ』?)」

 

 ──僅かに残る石畳の上に。天を突くかのように打ち立てられた、ひと振りの『()』の姿があった。

 

『ははは。驚いてくれたかい? それはよかった。誰もが見飽きた手品だって、こうしてハマれば魔法の如し。魔術さえ無用な世界に在ってなお、奇術を磨いた甲斐がある!』

 

 ……あれ。なにこれデジャヴ? さっきまで仕合っていた『彼』にもたしか、出会い頭に聞かされた台詞のような。というか、何で『矛』が喋って──

 

『……と。時間が無いのは本当なんだった。ここは手早く、やり残しを済ませてしまおう!』

 

 ──なんて疑問を口にする暇もなく、『声』の主はお構いなしに畳みかける。

 

()()()()だ。さあ、早く取りに来たまえよ!』

「────!」

 

 その言葉を耳にして、ようやく至った理解とともに走り出す。

 

「(……そうか。この『蔵』の情景は、『()()』じゃなく──)」

 

 急げ。眩暈に構っている暇はない。

 

「(──『(きみ)』に刻まれた記憶だったのか!)」

 

 空間内に僅かに残る、『石造りの蔵』。かの国において死蔵され、忘れ去られた『漂流物』の在処──()()()のカタチが消える前に。

 

「──ふ、ッ!」

 

 失速もしないまま、『得物』を目掛けて手を伸ばす。

 

「(────掴んだ!)」

 

 ……間に合った。あの『声』がなければ、おそらく──。

 

「(…………これは────)」

 

 握り締めた手のなかに、仄かな熱が駆け巡る。……間違いない。当然のように馴染むそれは、此処において唯一、この身から奪い取られてしまったはずの──

 

「(────僕の、『技』だ)」

 

 ──この身を『妖精騎士』たらしめる、『縁起』の質感そのものだった。

 

『そうだとも。これで貴方は元どおり、完全無欠な騎士の身だ。怖いものなど在りはすまい──いやあ、上手くいってよかったよ! 彼らが最後まで秘めていた、貴方を封じる大仕掛け……渾身の()()()は御破算というわけだ!』

 

 そうしている傍らに、したり顔が浮かんでくるような『声』が響く。……こっちもこっちで間違いない。というかまだ、忘れるほどの時間は経っていない。この声の主は、先刻の仕合い相手のものだった。

 

「……なぜ(ながら)えて……いや。どうして『君』が、こんな──」

 

 徐々に和らぐ眩暈の最中、たまらず問いを口にする。何が起きているかは明白だけれど、『こう』なっているのはどうしてなのか。

 

『簡単な話さ。()()()()()()()()()()。この身を独立させた際、貴方の技も一緒にね。とはいえ、先の仕合いで私はお仕舞い。今喋っているように聞こえているのは、魔術による自動音声が如きもの。貴方に技が還るまでの、ほんの短いイリュージョンだ。……じつは、私の構成因子には魔術師の個体なんかも居てね。白兵戦一辺倒だった先刻は出る幕が無かったから、こうして爪痕を残してやろうと──……』

「……あ、ああ……うん?」

 

 よく喋る自動音声があったものだ。よほど気合いを入れた仕掛けらしい。言われてみれば、構成因子が魔術とは無縁の個体ばかりでは、あれほど自然な魔力行使はでき……じゃなくて。僕が今訊きたいのは、これを仕組むに至った理由で──。

 

『ああ、理由についてだね。それは当然──()()()()()()()()()()()、さ』

「────」

 

 はたして。もたらされた回答は、この上なく純粋なものだった。

 

『持ち主が健在ならば、盗品もまた返還されて然るべきだ。……まあ、彼らはそうは思わないだろうから、私が無理やり手を打った。収まるべきところに収まるというのは、やっぱり気分がいいものだろう?』

 

 ──僕の『技』が還るたび、『得物』がその身を削りゆく。

 

『此処は望郷の艦。還るべき世界を望みしものたちの漂流客船。それを命題とする空間である以上──船内における失せ物は、客人の手に戻さないとね』

 

 ──『石造りの蔵』もまた、その様相を無に帰す。

 

『そう。貴方という存在もまた、還るべき世界のひとつというわけだ。技にとってのそれとは(すなわ)ち、遣い手の元にほかならないのだから──』

 

 ──その裏に覆い隠された、『沼』の姿も立ち消えて。

 

『さあ、行くといい。貴方が此処に止まる必要も、貴方を阻み得る障壁も無くなった。先に還った私にとっても、物に魂が宿ったかのように喋るという、付喪神らしい振る舞いが演じられたのは満足だろう──ははは。それにしても、付喪神とは! 当初は単なる()()でしかなかったというのに、まさか真に至るだなんて。得難い経験を望みはしたが、さすがにこれはビックリだ!』

 

 ──巨大な『樹木』の消滅が、虚飾の全壊を合図した。

 

「……ああ。有難く受け取っていくよ──」

 

 偽りの層が剥がされて、顕になった『水瓶』を確認しつつ──今や欠片と成り果てた、手元に聞こえる『声』に応じる。……そういえば『彼』、思えば最初からおしゃべりな奴だったな。出会い頭の()()()といい、曲がりなりにも『漂流物』であった経緯といい、案外寂しがり屋だったのかもしれない。サプライズ好きっぽいところとか。

 

「──ところでさ。『付喪神』ってなに?」

 

 これは、ほんの気まぐれ。百秒後にはマッハで飛び立ち、鬱陶しい事この上ない『()()』をブチ破るための、渾身の一撃の『構え』に要する時間つぶし。その最中に──本当の意味ではすでに居ない、『矛担』の存在を感じながら。雑談みたいな気安さで、どうでもいい話題を振ってみる。

 

『うん? おや。別れの挨拶もできなくなるが、最後の話題がそれでいいのかい? いや……ああ、そうか──いいとも! 貴方はあまり詳しくはなかったみたいだね。それはすまない事をした。まあ、ひとことで言うと──』

 

 けれど……この時は知る由もなかった。ホント、クールにおさらばしようとしたのに、締まりが悪いにも程がある。まさかその質問が僕にとって、今作戦最大の──

 

『──()()()、かな?』

「────きゃあああああああ!」

 

 ──忘れたくても拭えない、笑い話になるなんて。

 

 






お読みいただきありがとうございます。


決着し申した(息切れ)。
本投稿で『借屍還魂(前)』は区切りとなります。

正直七分割までいくとは思いませんでした。
それほどこの『水瓶』が五つの中でもズバ抜けて、『敵方』がつよつよドラゴンへの対策に躍起だったがゆえの特別製でした、という事でご容赦ください。
それにしてもメリュジーヌ、仕合い中に訊かなくてよかったね!

残る四つの『水瓶』パートはそれぞれ、今パートほど長くならない予定(ここから2025/3/9追記)でしたがどっこいでした。すみません。


ところでクリア応援キャンペーン、いよいよ二部六章の番ですね!
そしてバーヴァン・シー強化貰ってるー!(感涙)
ちょっと早速強化して、リコレクションクエスト巡りに繰り出します!


引き続き、お付き合いいただけますと幸いです。

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