これから忙しくなるので投稿頻度落ちます。
あと、キング・クリムゾンの漢字は「深紅の王」でした。申し訳ございません。
全て修正しました。
「あれ?死んじゃった?せっかく面白くなってきたのに残念。…ま、いっか。」
無数の弾痕がつき、瓦礫が散乱し、荒れ果てた海岸。そこには二人の人物が居た。一人は地面に倒れ伏した少年、もう一人は今の声の主の少女。
(もう少し楽しめるかと思ったんだけどな〜。所詮は人間か。けど、初めてだよ。艦船でもないただの人間が私に挑んできたのは。それに加えて一撃をもらうとは…)
そう思いながら私…ピュリファイアーは地面に倒れ伏したまま動かない少年を見下ろしていた。
少年は体中に傷を負っており、服もボロボロになって汚れている。地面には血がじわじわと滲んできており、吹き付ける潮風に髪が無造作に揺れていた。この少年は先程まで息も絶え絶えになりながら私と戦っていたが、私の放った弾幕をくらってついに倒れた。
仮に生きていたとしても私の砲撃を食らい、あげくあの出血量だ。しばらくはまともに動けないだろう。放っておいても何もできまい。
そう判断した私はとどめを刺し損ねた艦船に引導を渡すため、今も海上で倒れている艦船の所に向かうのだった。
「チックタック♪チックタック♪永遠の眠りにつく時間だよ〜」
さっきの砲撃がよほど堪えたのだろう、量産型と戦っていた艦船の少女はまだ気絶していた。瞼を閉ざしたまま目覚める気配はない。
ふと冷静に考えてみると、少年と戦っているのに夢中になっていて量産型を動かすのを忘れてたことに気づく。量産型の方を見ると砲を少女に向けたまま固まっていた。喫水線に波がぶつかって砕け、その度に漆黒の船体が揺れている。その様子は、途中でほったらかしにされて戸惑っているようにも見える。しかし、今から自分で始末するし、特に気にする必要もないかと思い直し、少女の方へと向き直った。
そんじゃ、さっさと終わらせて帰ろ〜。そう思いながら照準を少女に合わせ、引き金を引き…
何も起こらない。
「…あれ?」
おかしい。私は確かに引き金を引いた。少女に狙いを定めて確かに…
いや待て、それよりももっとおかしいことが…
「どこ行った??」
そう。少女がいないのだ。あたりを見回してもどこにも見当たらない。
どうやって、いつ逃げたのか。疑問が頭の中を駆け巡った。
いや、逃げたのなら私が見逃すはずがない。だって目の前に居たのだから。しかし現状、どこにも居ないのだ。
ふと砲身の先を見てみると、白い煙を吐き出していた。そして少女が横たわっていた場所を見てみると、水飛沫があがった跡があり、その跡も海の中に飲み込まれているところだった。つまり、気づかぬうちに自分は撃っていたのだ。
「…!?」
ますます何が起こったかわからない。撃ったのなら音一つしないのはおかしい。あれほど大きい音だ。聞き逃すはずがない。それに、忽然と姿を消したあの少女はどこへ行ったのだ。この至近距離で見失うとは…
「何か…何か、おかしい…」
考え込みながら周囲を見渡していると、海岸に動いている影が見えた。よく見てみると、その影は瓦礫に隠れようとしているようだった。
それを認めた瞬間に撃った。轟音が響き、弾丸が瓦礫に向かって一直線に飛んでいき、瓦礫ごと周囲をふっ飛ばした。周囲に砂埃が舞い上がる。今度はさっきのような現象が起きなかったことに安堵しながらも、仕留めたかどうか、今しがた自分が撃ったのは何かを確認するために着弾地点に飛んでいく。
あたりを警戒しながら着弾地点を見てみると、瓦礫は粉々に砕け、地面は抉れてクレーターが出来ていた。だがその中にはこれと言って何かあるわけではなかった。これでは影の正体を知ることもできないし、仕留められたかどうかもわからない。
どうしたものか、と考えていた時、ふいに近くから物音がした。音がした方を振り返ると、瓦礫があった。どうやら音は自分の目の前にある瓦礫の後ろから聞こえてたようだ。
それがわかった瞬間にまた砲を発射し、瓦礫を砕いた。すると、砕けた瓦礫の後ろに何かがいる。それを見た瞬間にまた間髪入れずに砲を発射する。あたりには撃った衝撃と着弾した衝撃で土煙が舞い上がった。自分が撃ったなにかの状況はわからないが、少なくとも木っ端微塵か蜂の巣になっているだろう。
注意深く見ていると土煙が少しずつ晴れ、自分が撃った何かの輪郭が見え始める。大きさはおそらくは自分と同じくらいだろうか、背中には何かを背負っているようにも見える。まるでサメのような…
そこまで考えると、違和感を感じた。背中にサメ?まるで私と同じ…そう思っていると土煙が完全に晴れ、瓦礫に隠れていた何かがハッキリと見えた。だが、それは…
「…!?瓦礫の、影に隠れていたのは…」
私だ。
瓦礫に隠れていた私は驚愕しながらこちらを見ている。おそらくはこちらも同様の表情をしているのだろう。これは一体…と考えていたら、体に変化が起こった。
「ッ!?体が、透けていく!?」
手から腕、全身へと広がっていく。そして、気づいたときには立っていた位置も違う。さっきまでは瓦礫の前に立っていたのに、いつの間にか瓦礫の後ろに立っている。
「こ、これは…一体…」
「餞別代わりに見せてやったのだ。」
「!?」
低く、冷酷な声が響いた。
動けない。まるで蛇に睨まれた蛙のようだ。
心臓の鼓動が急速に早くなる。
振り向くか、距離を取らなければいけないのにそれが出来ない。
そんな動揺を見透かしてか、背後にいる者は言葉を続けた。
「最期だから教えてやろう。お前がたった今目撃し、そして攻撃したのは未来のお前自身だ。数秒過去のお前自身が未来のお前を見たのだ。」
未来の自分?数秒過去の自分?それがどういうことなのかを考える余裕すらない。
なぜなら、心臓にナイフを突きつけられているかのようなおぞましい殺気を受けているからである。
一体何者だ?この私が動けなくなるとは…
「これが…
その言葉とともに、鈍い音が響き渡り、背中に衝撃が加わった。だが、
「ッ!!くそっ…」
グシャリ、と音を立てて、背中の艤装が貫かれるのを感じた。
(ふぅ、危なかった…背中に艤装がなかったら今頃どうなっていたことやら…。)
しかしそうも言ってられない。今、自身の背後にいる何者かは頑丈な艤装を貫けるほどの力があるのだ。このままではこちらの身が危ない。
艤装によって直撃を免れたその一瞬のすきを逃さず、素早く距離を取って振り向いてみたら、そこには意外な人物が居た。
「ッ、お前は…」
「…」
それは、先程まで地面に倒れ伏していた少年だった。そして、その腕には抱えられている艦船の少女がいた。
「…驚いた。生きてたんだ。それにそいつはいつ拾ったの?あと今のって君がやったのかな?」
矢継ぎ早に質問してみるが、少年は答える気配はない。表情を見てみるがうつむき加減でよく見えない。だが体の方を見てみると肩が上下しており、耳をすますと荒い息遣いも聞こえてくる。腹や腕からは血が止まることなく滲み出しており、少女を抱えている腕も小刻みに震えていた。恐らくは傷が痛み、その上で少女を抱えているため立っているだけで精一杯で、こちらの声は聞こえていないのだろう。
「…まぁいいや。なんにせよ、君が生きているなら今度こそ仕留めるだけ。その腕に抱えているやつごとね。」
そう言いながら砲を少年に向ける。
「さぁ、ファイナルステージと行こうか!」
誘い込むように両手を広げ、高らかに宣言した。