負けた者は、何故負けたのかを思い返していた…。
こちらの作品は、アナザーエデンの二次創作小説です。
極力原作ゲームの世界観や設定に沿うようにしているつもりですが、作者小麦の誤解・曲解が存在する可能性があります。
また創作の都合上、個人の解釈で各キャラクターの過去や背景、未来を描写する箇所があります。
※少しでも世界観を崩したくない方、キャラクターの設定を忠実に守りたい方は読まれるのをご遠慮ください。※
※暴力やグロテスク、性的な表現は含まれておりません。※
※ネタバレについて※
※今回はネタバレはありません。
キャラ名、固有名詞をほとんど避けています。
とあるキャラクエの一幕の、とあるキャラ視点で、戦闘描写と心理描写を書いてみました。
キャラクエを完了している方には、どこの話かは分かるようになっています。
キャラクエが未完了の場合、キャラクエを観た後に、該当の話だったと分かるようになっています。
キャラクエの登場キャラは推測できますが、ストーリーの展開そのものは省略しています。
今回の内容について
ゲームのテキスト形式(台詞のみ)ではなく、通常の小説形式と戦闘描写に挑戦してみたかったので、書いてみました。
戦闘と言えば、で思い出したのがこのシーンでした。本編ではそこまでシリアスなシーンではなかったかと思います。
しかし、真剣での斬り合いである以上、覚悟のある戦いととして書いてみました。
以上、苦手でない方のみご覧くださいませ。
…何故、負けたのだろうか。
時の運?いや違う。あやつの覚悟が私のそれより上だった。
私にも覚悟はあった。今日だけの覚悟ではない。ずっと前から、修羅の道に落ちると決めた時からのもの。故に負けるつもりはなかった。
しかし、負けた。
仕掛けたのは私だったが…真意を確かめ、止めるつもりだった。
しかし、今宵はあやつの冴えた剣に負けた。
人数の不利もあった。ただ、もう一人は友人であり、彼は戦いの最後まで私を友人として向き合っていた。本気ではなかった。
覚悟の上では負けていなかったはず。
何故負けたのか、振り返る。
夜半、外に出るあやつを呼び止めた。何かとんでもないことをやろうとしていることは分かる。恐らく、命を賭けている。
私が止めねばならぬ。幼馴染を修羅の道に踏み入らせる訳にはいかない。何をしでかそうというのか…。明かしてはくれなかった。
致し方ない…。
鯉口を切る。刀身を抜く。
「ならば、腕づくで聞き出すまで!」
あやつも応え、刀を抜く。
「…いざ!尋常に勝負!」
勝負を仕掛けた私の方から、始まりを告げる。
相対する。いつもへらへらと笑うばかりの顔も、今は真剣そのもの。
こうして戦うのはいつ以来だろうか。
同じ流派の、同じ構え。
お互いの刀に、月明かりが映る。
刀を抜いた以上、どちらかが一方を斬るまで、戻れない。
あやつの言葉からも、既に後戻りはできない覚悟は感じていた。しかし、悲壮感のない朗らかな覚悟、とでも言うべきか。
もう一人も、私と相対する。大切な友人だ。できれば相手にしたくなかった。
構える剣はこちらを斬るつもりではない…最初から守りに入っている、迷いのある剣だ。
しかし、目的の為には斬り合うのもやむ無し。こちらの覚悟はできている。
今は1人、幼馴染、いや1人の敵…と向き合う。やり合うならあやつが先だろう。
間合いはまだ互いの外。動くか、待つか。
隙を窺う。しかし、隙は無い。
幼少からの数え切れないほどの手合わせの中で、手の内は互いに知り尽くしている。あやつの剣は、動きを水のように柔らかく変える。
私の剣とは相性が良く、同時に悪い。しかし、それは2人とも同じ。そして流派も同じなら、基本の手も同じ。
仕掛けてみるか。間合いぎりぎりに入りながら、良い位置を探る。街道で足場は固く、動き易さを確かめる。
合わせてあやつも動く。互いに少しずつ、右から回るように動く。
片足を少しずつずらし、仕掛ける構えに移していく。
あやつは僅かに剣を横へ傾ける。守って、後の先を狙うつもりか。
もう1人が動いていないのを確かめる。先程と変わらず。
仕掛ける。
…しかし、私が仕掛けようとした矢先、右薙ぎに振るわれる。
半歩下がり、避ける。
構えと逆向きへの振りだった。虚を衝く剣。
本気で斬ろうとしている。
あやつが構えを戻す前に、右から左薙ぎに振る。まだ振り切った刀が戻っておらず、飛び下がり距離を取られた。
下がるしかないその隙へ、突きを入れる。
あやつも先読みしており、左へ
しかし体勢は崩れている。
もう一振り入れる前にもう一人が、斬り掛かってくる。
避ける為に大きく下がる。ここで動いたか。
なるほど。危なくなれば手を出すということか。彼らしい剣。
次は、あやつから掛かってくる。
踏み込む勢いのままの、こちらの右下へ袈裟斬り。
左へ避ける。
そのまま斬り上げ気味で左へ払う振りが来る。
下がり、避ける。
下がった私に、踏み込んで迫り、右へ振る。
また一歩下がり、避け…下がった右足は、後ろで踏ん張る。
左足を軸に、右足の力を乗せて左へ斬り上げる。
攻勢のままで、あやつは避ける体勢にできていない。
しかし身体を逸らし、避けた。
私の刀は、わずか手前を通り過ぎる。
反撃が来る前にすぐ下がり、間合いを取る。
息をつく。あやつも肩で息をする。
続けて斬り続ければ、体力を削り、隙を大きくする。
ここまでの応酬で、互いに覚悟のほどが伝わった。
斬るか、斬られるか。それしかない。
こちらから距離を詰め、振り下ろす。
避けられ、反動の勢いで左への横払いが来る。
避け、右へ斬り上げる。
避けられ、右へ振り下ろしが来る。
避け、左へ薙ぎ払う。
避けられ、左へ斬り上げが来る。
避け、右へ斬り下ろす。
避けられ、半身を踏み込んだ突きが来る。
左の前へ飛び転び、懐に入る。
胴が空いている。右へ薙ぎ払う。
甲高い音がして、刀が止まる。
あやつが逆手にした刀を地面に刺し、防いだと気付く。
そのまま左の逆手で抜いた脇差を左へ振って来る。
下がって避ける。
刀で防ぐのを厭わず、脇差を抜くとは。
咄嗟の判断。柔の剣の考え。
刺した刀は置き、脇差を両手で構え、距離を詰めてくる。
脇差と刀の間合い。長い方のこちらが有利。
しかし、この距離では短い方が速い。
距離を開け、こちらの間合いを保つ。
しかし、合わせて詰めてくる。
右へ斬り上げる。
避けられる。
詰めて来るところへ、遠ざける為に、左へ振り払う。
下がり、避けられる。
…と思いきや、刀の軌道上、斬られる位置まで詰めて来る。
捨て身か。いや、違う。
左手で私の刀を握る手の上から柄を押さえられ、刀を止められる。
間合いを取らせる為の振りに、力が入っていないのを見抜かれた。
あやつはそのまま右の片手で脇差しを振るう。
こちらの左胴は空いている。
刀も押さえられている…が、あやつの手から右手を外し、逆手で柄を持ち直して右回りに捻る。
あやつは、それ以上回らないところで手を放す。
捻られた痛みで、振るわれていた右手の脇差が一瞬止まる。
再び刀を持ち替え、左薙ぎに振るう。力押しの剛の剣。
あやつは脇差で受けるしかない。手を痺れさせるか、刀を放すだろう。
力に負けた脇差が吹き飛ぶ。…いや、手応えが無い。
回転し吹き飛んだ脇差と違う方向へ、あやつは大きく退いていた。
そして、地面の刀を抜き、構え直した。
…先に手を放したのか。
不利を有利に変え、有利を不利に変えられたと見るや、戦法を変える。水の剣。
これで最初と同じ。
変わったのは互いに体力を使い、あやつは脇差を手放したことくらいである。
もう一人の様子を視界の端で窺う。
今掛かってこないなら、2対1の意味は無い。しかし、友人は動かない。交互に掛かれば、簡単にこちらの体力を削られる…がそれはしないだろう。
あの友人がそうはしないと勝手に信じている、私もおかしいが…。
とは言え、このままでは消耗するばかりで勝負はつかない。
あやつも、何か事を起こそうという以上、いつまでもここで戦っている場合ではないのだろう。
あやつから動く。
刀を後ろへ向け、刀身を見せないようにしたまま、詰めて来る。
軌道を読ませない剣。
左から振られた刀は、水平の横薙ぎ。
下がり、避ける。反撃はせず、構え直す。
また同じように詰めて来る。
先ほどより振りが遅い…わざとか。
こちらに後の先を取らせ、先に空振らせる算段。
合わせて振り始めを遅らせ、袈裟斬り。
もし刀が当たっても力で押す。
刀は当たらなかったが、刃先が交差する。
右へ振られた刀を返し、逆へ横薙ぎが来る。
今度は速い振りだ。
一手前の振りが遅い分、より速く見えるが、見損なわない。
避けず、右へ払う。
先ほどより深く、刃先ではなく刀身が交差する。
手応えは無いが、こちらの刀はあやつの胸先、羽織を僅かに斬る。
あやつの刀は、私の着物を僅かに斬る。
ここがお互いの間合い。
一歩分踏み込み、左へ薙ぎ払う。
下がり、避けられる。
軌道が致命傷かそうでないかは、見極めているようだ。
しかし、今度はお互いそれ以上間合いを取らず、近い位置を保持する。
…そろそろ息が切れてくる。向こうも同じなのだろう。
終わりにしよう。あやつの目がそう語る。…そうしよう。
刀を上へ向け、最も力の入る構えをとる。
剛の剣の、鍛えた力で押し切る構え。
例えこちらが斬られようとも、刀を止めない覚悟。
あやつも、後方へ刀を向け、斬り上げる構えをとる。
波しぶきの如く襲い掛かる、柔の剣の構え。
一瞬、いや、どのくらい時が経ったか。
同時に刀を振るう。
……手応えは…無い。
しかし、こちらは左手の小手先を斬られた。
「くっ」
左手から力が抜け、右手だけで刀を持つ。
もう全力では振るえない。勝負はついた。ついてしまった。
…そうか、この時のあやつの刀も、遅れて振られていた。
私が自身が斬られても斬るつもりで振るうのに対し、あやつは斬られるつもりも、致命傷を負わせるつもりもなかった。
私の動きを見てから、斬らせずに勝負をつける選択を狙っていたのだ。ただ捨て身だった私に、選択肢は無かった。
私とあやつが2人とも生き残り、
私がこの勝負を決着と覚悟していたのに対し、あやつは最初からその先を見ていた。
命を落とすのはここではない、その先。
あやつが言っていた『もっとも愛する友のため』、ここで立ち止まるわけにはいかなかった、ということか。
同じ身を捨てる覚悟でも、目指す場所が違う。
あやつの愛する友には悪いが、止めない訳にはいかなかった。
…しかし、負けてしまった私に…もはや止める資格は無し。
せめて出来ることとして、見守ることにしよう。
それにしても、あやつが怒っていた理由はよく分からない。朴念仁と言われるのはいつものことだ…きっと私はまた、何かに気付けていないのだろう。
低い位置になった月が、明るい。すすき野が風で揺れる。
夜明けももう少しか。手当てをして、あやつと、友人に追い付くとしよう。
〜〜
身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ(完)
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最後までまでお読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は、原作ゲームであるアナザーエデンの製作・運営に携わる全ての方々への敬意と感謝の上で書いております。
また、個人の趣味で楽しむ範囲の二次創作であり、商用での利用は一切考慮、予定しておりません。
小麦