現在進行形で良くない空気が蔓延しているこの地、迷宮都市オラリオ。アルフィアはそのオラリオに居た。追放された【
教会に向かう道中も誰にも見つからず、一段落がついた。中に入ったアルフィアは妹と主神と共にいた懐かしさを思い返し、その過去に浸っていた。──ふと、違和感に気づいた。教会の端の方にある階段から微かではあるが何者かがいる気配があった。愛しき妹が愛した教会に何かをしようとする不届き者を成敗しなくては、と彼女は思い慎重に──、否、堂々と階段を下った。
「あれ、アルフィアじゃん。どうした?やっぱりこっち側に来た……って、冗談、冗談。だから腕を上げるのは辞めてくれ、本当に。今、天に帰るのだけは嫌なんだ」
「……何者かと思えばお前か、エレボス」
地下に居たのは数日前にベルたちが住んでいる村から帰って貰った神『エレボス』であった。
「で、何か要件でも?用があるからここに来たのだろう?」
「それは偶然だ。妹の住んでいた場所だからな。明けてからお前を探そうとした。ついでに」
「そうか、すまないことをした。……ついで、か。本来の目的は俺ではないっていうことかな」
「そうだ。お前はついでだ」
「はは、それは悲しいなぁ」
棒読みのように呟くエレボスは手渡された手紙を開封し目を通した。
「説明は」
「不要だ。……」
黙りこんで真剣に文字を見ているエレボスにしびれを切らしたアルフィアは辛辣な言葉を放った。
「何か言え」
「『攻撃をやめろ』これはどういうことだい?」
読み終わったエレボスがそう疑問を投じた。
先日、加担できない、帰ってくれと追い返され、今は攻撃を中止しろと言われた。この意図が読み取れなかった。
「書いてある通りだ、画策をやめろ」
「それは分かっているさ。理由を聞きたいんだ」
「簡単なことだ。お前の求めているものが現れた、ただそれだけのこと」
「──ほう。それは、一体」
「
「!……く、ハハハハハ!そうか、そうか!……ああ、わかったさ。俺は退くさ、この計画から。この目で確かめたくなった。それまでは送還されたくない、そう思った」
「そうか」
「ああ、神エレボスの名に誓って約束しよう。しばらくはこの地を貶めるようなことはしないと。あの子が成長するまでは、な。……だが、それをお前だけが聞いたところでこの
「何が言いたい」
「すまないが、アルフィア「自分でやれ」……おっと」
「今の私は気分がすこぶる悪い。理由はわかるな」
「──おお、怖え。……わかったさ、直接会ってくるよ。じゃ、邪魔したね」
そう言ってエレボスは姿を消した。目的の一つは終わった。次の目的を果たすため、アルフィアは明けた空を確認して、教会から出て冒険者が最も集まるバベルの下に向かったのだった。
上を見上げても頂上が見えないほど高く聳え立つ
その塔の正面に少女がいた。金髪、金眼の少女が。背丈はベルと同じくらいか少し上。腰には1本の剣を携えていた。
アルフィアはその少女に目をつけた。ベルとおおよそ同年代、Lv.も
閑話休題。
この少女は様々な理由で都合が良かった。
異性への耐性がない
言っては悪いがベルは見た目からして弱弱しい。【ファミリア】に入団できない可能性もある。その時の
それが先日、ゼウスやザルドとの会話で決まったこと。エレボスへの画策中止は、アルフィアからのほんの少しの気遣いである。アルフィアたちがベルと出会わなかったら、エレボスの画策に加担していただろうから。
「……」
「……何か用」
黙って少女を見つめているアルフィア。金髪の少女は嫌な顔をしていた。
「おい小娘、着いてこい」
「嫌」
アルフィアの言葉に即答した少女。
「というか、なんで?」
「お前がちょうど良い、それだけ」
「……意味が分からない」
ただただ困惑する少女。いきなり現れた人物についてこいと言われ、理由も理解できない。ちょうどいい?何が?状態である。当たり前だが、ついていけるわけがなかった。
「行かない。私は強くならないといけない、このダンジョンで。だからあなたについていかない」
「ならば、私がつけてやろう」
「──え?」
「それが条件でどうだ」
「……」
少女は黙り込んだ。修行を付けてくれる。そう彼女は言ったのだ。彼女が何者なのか、どれほど強いのかは少女には分からない。しかし、Lv.3の少女でもわかることがあった。彼女──アルフィアは己よりはるかに強いのだと。少女はアルフィアが自身の前に立つまで全く気づけなかった。少しの間見つめられていたことも気づけなかった。
少女はとても迷って、考えて、考えて──、
「わかっ「勝手に了承するのは良くないことだと教え込めたはずだが、アイズ」っ!?」
少女──アイズの耳に聞きなれた声が響いた。
しかし、違かったのはアイズが見知らぬ者と話をしていたのだ。リヴェリアは警戒心を高めた。もし、アイズに危害を加えようものならすぐさま対処できるようにして。第一級冒険者の耳なら多少の距離からでもはっきりと聞こえる。リヴェリアは彼女らの会話に耳を傾け──、
「ならば、私がつけてやろう」
「────」
その発言に対するアイズの表情を見てリヴェリアはすぐさま行動に移した。あの表情、沈黙から考察するに、アイズは承諾するだろう。
今のオラリオは暗黒期である。アイズと会話している者は闇派閥(イヴィルス)の可能性も無くはない。連れ出すと言いつつアイズを誘拐、あるいは始末することもある。そうなってしまえばもう手遅れ。ならば、そうなる前に止めなくては。
だから──、
「勝手に了承するのは良くないことだと教え込めたはずだが、アイズ」
「……」
無言のアルフィア。あと少しで連れていけるところであったが、邪魔が入った。
「貴様、アイズをどうする気だ」
「なに、修行相手にさせるだけだ
また不機嫌になったアルフィアはお返しと言わんばかりの罵倒をみせた。
「なっ……!?」
「!?」
騒がしかった周りが凍ったように静かになった。王族妖精であるリヴェリアを侮辱する言葉を放ったことに周りの様子は──様々であった。怯える者、驚きのあまり動けない者などとバベルの周りは異例な空気であった。
幸運なことに辺りには妖精はいなかった。先程の発言がたった一名の耳に入った場合、音速並みの速さで伝わり、『オラリオ内外の妖精』VS『
「ひっ……」
リヴェリアの側にいるアイズは
「────っ!?」
当人は怒りの蓋が飛び出しそうな勢いでかっとなったが、今自身がいる場所を思い返し押さえ込んで、葛藤していた。葛藤して、葛藤して——ふと、リヴェリアは思った。顔は見えないが、この姿を何処かで見たことがあった、そんな予感がした。
「……」
灰色の髪、黒のドレス、何処かで——、
「お前、『静寂』か!?」
またもや周りの空気が凍った。数年前まで、このオラリオに君臨していた最強派閥の1つ、【ヘラ・ファミリア】の眷属である。知っているものは驚き、戦闘態勢(警戒)状態に。知らない者は周りの様子に驚き、少女は未だに怯えていた。
「ほう、多少は成長したようだな。だが、今はお前と戯れている時間はない。連れていかせてもらうぞ、この小娘を」
「アイズをどこへ連れてく気だ。オラリオの外と言うならば、行かせないぞ」
「何を言っている。今の私はこの地を追放されてる身だ。外に決まっているだろう」
「このオラリオの状況を見てでもか」
「知っている。だが、この現状になったのはお前たちも関わってるのは忘れたとは言わせまい。それに、この現状を打破するためにもこの娘が必要であると判断した」
「そうだ、私たちが
「ほう、認めたうえでそれか。
「なっ……!それを言うなら──」
「そうか、だが——」
互いに譲らない言い合いは続く。月夜が顔を見せるまで。アイズが怯えから立ち直り、そして呆れた。……何してるの、と。少女には難しかった。会話内容がもはや変な方向に行こうとしていた。そんな口論が続いている二人から離れ、
Й Й Й
「リヴェリアー!見物させてもらうでー……って、なんで
口喧嘩が一種の見世物かのように見物人が密集してる中を搔い潜るようにして来た、【ロキ・ファミリア】の主神である、ロキはリヴェリアと真正面から口答えができる人物がいて、口論しているという旨をアイズから聞き、面白いもんが見れる!と言いバベルの前に来た。
だが、リヴェリアの相手が『
「ロキ、見物とはどういう……」
ロキの発言内容に疑問を抱いたリヴェリアはアルフィアとの口論を切り上げ周りを見渡すと、数多くの
「……【静寂】、私たちのファミリアに来い。ホームで話し合おう」
「逃げか」
「なっ、違う!!」
「ほーい、そこで一旦ストップや。見物人も多くなって来よったし、話の内容も大事なんやろ?なおさらや」
「……いいだろう、五月蝿いのは嫌いだ」
再発仕掛けたものを止めたロキは騒ぎをおさめ、二人を連れホームに戻るのであった。
誤字、脱字あったらすみません。