他サイトにも掲載。
掌編ゆえ、みじかい。
――血のつながりなんてなくたって、
いいや、変わるんだよ。なにもかも。
脳裏を繰り返し過ぎる声を、オレは、繰り返し否定する。
なにも変わらない、なんて、そんなはずがない。オレはよく知っている。オレこそが、なによりも、よく知っている。
そういうものが何者も左右しないと信じたいやつはどこにだっている。施設にいたガキどもの中にだって、そんなのが、よく、いた。あそこは場所柄、そういう奴らが多かった。
所詮は夢物語だ。綺麗事だ。幻想でしかない。
〝あんたは他所の子〟
母さんは言う。母は言う。エマの母親は言う。オレをどうでも良さそうに眺めている。
煩雑な機械の音。鳴り響く電子音。鮮やかな色彩はチカチカと目を灼いた。
〝血がつながってないんだよ〟
血のつながりなんてなくたって――そんなはずがない。そんなわけがない。
オレを捨てた母さんだって、オレは最初は、オレの本当の母親だと思っていたんだ。そういうふうに振る舞っていたから。オレとエマは血がつながった兄妹だと思っていたんだ。そんな素振り見せなかったから。
それでも母さんはオレを捨てた。血がつながってないから。
関係ないわけないだろ。関係あるんだよ。
関係あるから、最後には、捨てられたんだよ。
そうじゃなきゃ。
……おかしいだろ。
オレだけ捨てられたんだ。血がつながってなかったから捨てられたんだ。
母はエマを連れて行った。他の家族の元へ。血がつながっている、家族の、元へ。
もしも――もしも、
オレが、
オレも、
血がつながっていた、
ら、
?
……不確かなものは必要ない。いずれ裏切ると知っている。
気遣うように頬を撫でた指の腹と、同じ指が、火のついた煙草を挟んでいる。涙を浮かべて微笑んだ顔と、無関心な目つきだって、どちらも、同じ人のもの。
いずれはそうなる。そうだと知っている。だったら、どうせそうなるなら、オレから先に手放した方が、痛みは少ない。
オレのものが欲しかった。オレだけのものが欲しかった。
手を伸ばせば、握り返してくれる。まるで当然のように。その温度が欲しかった。
あるわけもないと嘲笑うオレがいた。
高いところに行けば行くほど、落ちたときの怪我が、痛い。じくじくと熱を持つ。
頭痛がする。肉を抉られるような痛みだ。胸が痛い。抉り出されるような痛みだ。呼吸が引き攣るような苦しさ。蹲って、ただ、耐える、待ち続ける。
じきに慣れるまで。じきに、痛みに慣れるまで。
そこには穴が空いている。
なにかが欠けている。
海辺の近い港町では、よく、潮風が吹きすさぶ。埠頭ならば尚更に。肌に貼り付いて指先がべたつく。
なにもかもを凍てつかせ、なにもかもを錆びつかせ、反響して、音が鳴り続ける。
「イザナ」
手を伸ばせば、握り返してくれる。
まるで当然のように。
その温度が欲しかった。
ずっと、
(副題:走馬燈)