未来の見えていた少女の大切なもの   作:かぶり猫

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第0章:見える未来と幼女と世界
1.小さな世界から抜け出して


未来が視える。砂に埋もれた手が、人一人いない街が。

 

未来が視える。機械仕掛けの軍隊が、それを従える一人の少女が。

 

未来が視える。瓦礫の山が、そこに倒れ伏す少女たちが。 

 

未来が視える。血のように赤く染まった空が、世界(キヴォトス)の終わりが。 

 

未来が視える。未来が視える。未来が視える。未来が視える。未来が────

 

 

 

 

 

「────っはぁ!はぁ!はぁ……はぁ……やっと寝れたのに、なんで……」

 

 

 意識が覚醒する、体を起こし、辺りを見渡す。

……ずっと、何一つ変わらない私の部屋(世界)

大人が使うには小さなシャワー室にトイレ、洗面所、机には埃がかぶっており、もうどれだけの間使っていないのか覚えていない。

部屋の隅に作り付けられた本棚には、おおよそ普通の6歳の子供が読むものではないであろう初等部高学年から中等部向けの参考書が並んでいる。

また、その隙間を埋めるように会社経営(難しくてよくわからない)本が詰め込まれており、絵本の類などは一切ない。

……いや、前はあったはず、だが、無いということはどこかのタイミングで捨てられたのだろう。

他にあるものといえば、今私が座っている薄型のベッドに唯一の小物である筆記用具位のものだ。

……その筆記用具も芯がすり減ってしまいもう使いようがないが。

 

 寝起きで回らない頭でそんなことを考えていると、ふとこんなことを想像する。

この家の大人じゃない他の人がこの部屋を見たのなら、どう思うのだろうか、と。

普通じゃないと、よくないと思ったりするのだろうか。

その考えが正しいかどうかなんてこと、私には分かるはずはないのに。

 

 ただ、私がこの部屋のことを普通じゃないと思う理由はこんな些細なことではない。

この部屋で最も異常な点を挙げるとするならばやはりそれは──────

 

 

「……やっぱり、開かない」 

 

 

──────内側から扉を開けることが出来ないという点だろう。

 

そう、私は監禁されている。

誰に?親であるという大人にだ。

なぜ?大人達は私のもつ能力を有用と考え、最大限利用したかったのだろう、そのためには、他の人間に私のことを知られてはいけないとでも思ったのだ。

いつから?2年ほど前からだったはずだ、詳細な日付は覚えていないし、どうだっていい。

 

 この環境に何も思うことが無いと言えば噓になるが、とても耐えられないものなのかと問われれば、別に、そうでも無いと私は答える。

それは、この環境しか経験したことが無いというのが大きな要因なのだろう。

外のことも、普通の家族のことも、知識として知ってはいる、視たこともある。

ただ私自身が経験したことの無いため、どのような感覚なのかが分からないのだ。

 

 

「やるしか…ないかぁ」

 

 

 もう一度ドアノブを捻る、相も変わらず扉はびくともしない。

もしかしたらこの扉を開けてくれるかも、なんて一抹の望みが叶わないことは散々理解した。

 

 私は今日、この家から逃げる。

もうこの小さな部屋で過ごしたくない。

もうあの大人たちにいいように使われたくない。自由になりたい。

外の世界が私が生きるのにどんなに厳しい所だとしても、構いはしない。

どうせここに居ても苦しくなるだけなのだから、そっちの方が何倍もいい。

 

 大人達がこの時間にどう行動するかはもう視た、彼らはこの時間には家にいない。

扉を開けるための道具は部屋にあるものと、親じゃない大人が食事を運んでくる時に盗み出したものからなんとか作ったから大丈夫。

外に出たら必要となるのだろうお金は家にある分を拝借すればいい。 

 

 

「うん…いける」

 

 

 ああ、でも、最後にここでの思い出を振り返ろう。

そうすることで、この選択は間違いではないと、確かにそう思えるはずだから。

 

 三年ほど前、自分にとって当然のことを言ったことが、この生活の始まりだった。

私は世間一般で言われる天才というものらしい、彼らもそう言ってたから、多分そうなんだろう。

だから昔から年齢にしては難しいことも理解できたし、どうしたからいいのかも分かった。

でも、私には未来が視える、なんてことを伝えるとどうなるかなんてわからなかった。

それ(未来)が視えることは、自分にとって当たり前のことだったから。

そこで大人達は私の有用性に気づき、利用しようと考えたのだろう。

その思考に行きつくあたり、元より私に対する愛情などというものはさして無かったのだろうが。

 

 その瞬間から私の生活は一変した。

大人たちが、自らの経営する会社の事業の未来を見させようとしてきたからだ。

最初こそ口先では私を褒め、欲しいものを言えば買ってくれるなどのこともあった。

だが段々と扱いも雑になり、ついにはこの部屋に閉じ込め、未来を視ることを拒めば暴力を振るう様になった。

 

 私は、未来を視すぎると頭痛がするのだ。その痛みと比べれば殴られた時の痛みなどたいしたことではない。

それに加えて最近は未来を思うように視ることができなくなっている。

元々短時間に遠い未来を見すぎると頭痛がする体質ではあったのだが、それでもちゃんと未来を視ることはできていた。

だが今では見ようとした未来が視れないときもあれば、そこにノイズのように赤い空や瓦礫の山などの何も関係が無い、不気味な景色も混じってくるようになったのだ。

 

 これまでは寝ていればあのような未来を視させられることなどなかったのだが、今日はちゃんと眠っていたはずなのにあんな景色を視させられた。

どれだけ先のことなのか分からないがあれはずっと遠い未来の景色なのだろう、頭がズキズキと痛む。

ぶたれて一日経ったはずの頬が熱をもつ。

あの大人達はこんなことで変わりはしない、分かっていたはずだろうに。

頬に手を添え、目を閉じる。

 

 

「うん、大丈夫。私は間違ってない」

 

 

目を開く。

確認も済んだ、もう思い残すことは無い、さあ、早くここから出よう。

 

私は、この小さな世界の鍵を開けた。

 

このまま進めていくと原作に到達するまでかなりの時間がかかるのですが、過去編が1章終わるごとに原作も1章進めるなど同時進行で進めたほうがよろしいでしょうか?(過去編で原作との相違点がかなり発生する予定なので作者の文章力では状況がわからなくなる可能性があります)

  • 時系列に沿って進めよう
  • 原作も進めよう(0章終了後アビドス開始)
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