未来の見えていた少女の大切なもの   作:かぶり猫

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10.変な人

 

 あれから2ヶ月程経っただろうか、灰色だった町は白に染まり、アリウスの冬は寒さが痛みを引き起こすということを身に染みて理解させてくれた。

吐く息は白く、指先は赤く、段々と慣れてきているとはいえ、寒いものはどうしても寒いのだ。

 

 まだ、皆に未来視のことは言えていない、皆がこのことを話しても受け入れてくれるだろうということは薄々分かってはいる。

だって、皆は本当に私を家族のように扱ってくれるし、私のことを家族だと思えていないのは自分だけということも分かってきた。

ミサキから聞いた家族だからって隠し事が無いわけじゃないっていう言葉の意味も理解できた。

 

 だからこそ、この秘密は言わなきゃいけない事だってことも気づいた。

それでも言い出すことが出来ないのは、ひとえに打ち明けることへの恐怖によるもの、言いだそうと決心しても、私の口は縫い付けられたかのように開くことは無い。

怖いんだ、もし皆が私を拒絶したらと思うと、実際はそうはならないだろうとしても、その恐怖が私に決断を先送りにさせる。

そしてそんな行動をする自分自身に失望する、そんなことをもう1ヶ月は続けている。

 

 

「何やってるんだろうな……私……」

 

 

 夜の闇に包まれたこの街は、元からアリウス生の活動も控えめな地域であったことも合わさり、世界に私1人しか存在しないのでは無いかと思うほどの静けさに包まれている。

後ろを振り返ると私一人の足跡だけが永遠と続いてることも、街灯の明かりも消え微かに輝く星すらよく見えることも、その考えを加速させる。

ようやく自覚したこの胸に積もっていく罪悪感という淀みに耐えきれなくなったときは、こうやって寝静まった家を抜け出し一人で散歩をするのだ。

……こんなことなどせず、早く口に出せたらいいのだが…………。

 

 

「そろそろ帰らないと……」

 

 

 今日はもう十分だろう。

そう思い帰路に着こうとすると、どこからか息遣いのようなものが聞こえてくる。

先程までこの街には私以外の音はなかった、こんな息遣いのようなものも、つまり、近くに私以外の誰かがいる。

 

 

「誰だ……?」

 

 

 アリウスで暮らす子供がサオリ達だけでないことはわかっているが、今までに会ったことが無いため居るという実感がわかなかった。

そのため、サオリ達の他に子供がいたのならそれはどんな子だろうかと興味があったのだ、だから、一人にも関わらず音の方へ足を進めたのだろう。

もしかしたら、他の子達もサオリのような子なのだろうか、と。

 

 

「誰……過激派の奴か……!」

 

 

 音の先にいたのは、壁にもたれかかる桃色の髪を持つ少女だった。

ガスマスクやボディアーマーは装備してないが、間違いなくアリウスの生徒だ、だが、どこか満身創痍のような……。

 

 

「っ!アリウス……!」

 

 

 咄嗟に護身用に持ってきていたP90を構える、相手がボロボロだろうが関係ない、アリウス生というだけで十分警戒するべき相手だ。

 

 

「え!?待って待って!今争う気はないから!その印にほら、これ!この銃渡すから、だからその危ないものを下げてほしいかな~なんて……。ね?」

 

 

 アリウス生は表情をコロコロと変えながら、大仰な身振り手振りを交えて語りかけてくる。

 

 信用できない。

 

 

「……銃をこっちによこして」

 

 

 アリウス生から銃を受け取る、もちろんP90は構えたままだ。

 

 

「ありゃりゃ、ずいぶんと警戒されてるね……。まあ、君たちからしたらアリウスの制服着てたら全部同じようなものかぁ……」

 

 

 アリウス生はあっけらかんにそう言い放つ。……銃を向けられてるのに緊張感がまるでない、まだ何かあるのだろうか。

 

 

「もう武器は持ってないよね」

 

「そりゃあもう!ここにたどり着くまでに使い切っちゃってそれ以外は何にもないよ!だからもうへとへとで動けないんだー。……なのでそろそろそれ下げてくれません?」

 

 

 ……他に装備を隠し持ってるようなふくらみはない、それにあちこち傷だらけでもう動けないというのも本当だろう。

相手に私を害する力が無いことを確認し、銃を下す。

 

 

「ほっ……。やっと下げてくれた」

 

「さっき過激派だとか言ってたけど……どういうこと?」

 

「ん?あ~……。アリウスが今内戦をしてるってのは知ってるよね?」

 

「……聞いたことは、ある」

 

 

 確かサオリを襲ってたガスマスクがそんなことを言ってた……ような……。

 

 

「簡単に言うと、まず自治区の環境を何とかしようっていう私たち穏健派と、外に出て自分たちをここに追いやったトリニティに復讐しようっていう過激派がしてる戦いなんだ」

 

 

 全然知らなかった、それに……。

 

 

「トリニティがアリウスをここに閉じ込めたの?」

 

「うん、そうだよ?ただまあ、トリニティが成立するときだからだいぶ昔のらしいけどねー。んで、私は過激派の方に入り込んで情報を手に入れてたんだ、俗にいうスパイってやつかな?ただそれがばれちゃってね、なんとか追手を撒いてここまで逃げてきたんだ」

 

 

 私の知らないだけで、この自治区はそんなことが起きていたとは、このことをサオリ達は知っていたのだろうか。

 

 

「それに過激派の主張も妙なんだよねぇ。いや前々から危ない奴らではあったんだけど、外に出ようって言ったってまず外に出る道なんてどこにあるのっていう感じでしょ?」

 

「それは……」

 

 

 もしかして穏健派っていうのは、あの地下通路のことを知らないのか?

ならつまり、遺跡を警備してたあのアリウス生は過激派のアリウス生ということになるのだろうか……。

 

 

「ん?どしたの?」

 

「……いや、何でもない」

 

 

 教える必要はないだろう、彼女の言ってることが真実とは限らない、教える義理もない。

 

 

「……そっか。んじゃ!少しは休憩できたし、そろそろ帰ろっかな」

 

「えっ」

 

 

 彼女は軽やかに立ち上がる、は先程まで満身創痍だったというのに、その身のこなし全身を怪我しているとは感じさせないもので、あまりの変化に対応が遅れる。

 

 

「あぁ大丈夫大丈夫!別に何もしないから、あとその銃はもらっといてよ。お近づきの印的な、ね?」

 

 

 敵意はない……のだろう、取り上げた銃に視線をやる。

もらえるのならもらうべきなのだろうが、これは……。

 

 

「ん?別に大丈夫だよー、元からあいつら君たちみたいな子に対しても敵対してるのかって思う様なことばっかりしてるし、変わんない変わんない。むしろ自衛力増えていんじゃない?」

 

 

 彼女は笑顔を浮かべながら、なんでもないことかのように私の疑問へと回答を返してくる。

 

 

「なっ……!?」

 

 

 顔にでも出ていたのだろうか、心を覗いているのかのように言い当ててくる。

なんなんだこの人は……。

理解できない……。

 

 

「あっそうだ、私、シズカっていうんだ、よかったら覚えてね。じゃあほんとにもう帰らないと死んだとか思われちゃうかもだからもう行くねー!」

 

「え、う、うん」

 

 

 言うが早いかさっきまでへとへとだなどと言っていた人間と同一人物だとは思えない程のスピードで走り去ってしまった。

今まで見てきたここの生徒と同じ学園の人間だとは思えないほどに明るくて変な人だった……、そういうことなら、銃はありがたくもらっておくけど。

アリウスの学園はどうなっているのだろうとは思っていたが、穏健派に過激派……、私の知らないことがたくさんあるみたいだ。

みんなに関わってこなければ、それでいいのだが。

  

 そんなこんなでこっそりと家に帰って再び寝に入ったのだが、せっかく持ち帰った銃を隠す訳にもいかなかったので、サオリ達からは起きたらなぜか増えていた銃について質問攻めに遭った。

そのおかげで昨晩アリウス生と会ったことや夜散歩をしてることまで話すこととなり、これからはそういうことをするときは事前に言う様にと、外出するのならちゃんと伝えなければ許可しないとまで言われてしまった。

散歩の理由まではどうにか言わずに済んだが、これもそれも全部あのアリウス生のせいだ。

 

 

 

このまま進めていくと原作に到達するまでかなりの時間がかかるのですが、過去編が1章終わるごとに原作も1章進めるなど同時進行で進めたほうがよろしいでしょうか?(過去編で原作との相違点がかなり発生する予定なので作者の文章力では状況がわからなくなる可能性があります)

  • 時系列に沿って進めよう
  • 原作も進めよう(0章終了後アビドス開始)
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