未来の見えていた少女の大切なもの   作:かぶり猫

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15.油断

 

「危なっ……!」

 

 

 一撃で私の命を奪うことすら可能な鉛の塊がこめかみすれすれを通り過ぎていく。

発砲音に爆発音、怒声に慌ただしい靴音と、静かなことにおいてこれ以上の場所はないであろう街がひと時の喧騒に支配される。

飛来する銃弾、飛び散る壁片、私を害するそれらすべてから逃げ切るために足を動かす。

未来視を使うのも難しく避けるのがやっとであり、とてもじゃないが撃ち返すような余力はない。

 

 

「ホムラッ!!」

 

 

 ここにいるはずのない人、初めて聞くようなサオリの声に思わず振り向く。

 

 

「サオリ……!?なんでここに……!」

 

「ホムラがあんなこと言うからに決まってるでしょ!?」

 

 

 サオリはペースを上げると、あっという間に私の横につく。

 

 

「でも……!」

 

「でもも何も無い!まったく……、これが終わったら覚悟してよ……!!」

 

「うぇ!?」

 

 

 サオリのお説教……!?いや、いつもと雰囲気が違う、いつもはこんな息が詰まるような威圧感はない……!

サオリ怒ってる……!すっごい怒ってる…………!!

 

 

「そ、それよりも、最後の一個、使うよ!」

 

 

 最後のグレネードを取り出し、ピンを抜いたのち投げ捨てる。

これで2、3人は持っていけたら後が楽になるのだけど……。

 

 

「グレネードだ!」

 

「いや!避けれる!走り抜けろ!」 

 

「しまっ────」

 

 

 今日一日でもう何度聞いたかもわからない炸裂音、光と熱、破壊を生み出すそれが轟いた後に煙の中から現れたのは、数を1つ減らし5人となったアリウス生の集団だった。

 

 

「チッ……!」

 

 

 失敗した……!

 

 

「絶対に逃がすな!ロイヤルブラッドの居場所も吐かせる必要がある!」

 

 

 あいつらがミサキたちのことを見失ってくれているのは助かるが、こちらが失敗すれば話にもならない。

だが多少のダメージは与えれているはずだと希望的観測をしてみるものの、やはりこのグレネードで頭数を減らせられなかったのは痛手だ、もう私たちには相手を纏めて撃破する手段がないということなのだから。

 

 

「サオリ……!」

 

「うん!もう合流地点が近い……!」

 

 

 ここまでの逃走劇で多少は時間を稼げたと思いたいものの、合流地点での戦いで負ければ全て終わりだ、気を引き締めなければ。

そうこうしているうちに私たちは住宅街を抜け、開けた空間へと躍り出ることになる、合流地点にしていた広場だ。

この広場には中心に大きな噴水がある程度で他の遮蔽物は存在しない、このような開けた場所で最も脅威となるのは────

 

 

「─ッ!」

 

 

 ───パァン!という重く乾いた発砲音が広場中に響き渡る、ヒヨリの援護だ。

 

 

「さっきの狙撃手だ!罠だぞ!」

 

 

 混乱に乗じて噴水の裏へと滑り込み、すかさず顔を出し射撃を行う。

相手は追いやる側が変化したことに対応できていない、この流れに乗じて押し切る!

 

 

「痛ぅ!この……!」

 

 

 アリウス生が銃を構えると同時に噴水の影に入る、私たちと入れ替わりでヒヨリの狙撃が決まりまた一人地に伏す。

これでグレネードランチャー持ちは全員倒れた、相手にもうこの遮蔽を破壊する手段はない。

 

 

「噴水の影まで走れ!そこが死角だ!───ぐぁっ!」

 

 

 とはいえどアリウス生、リーダーが居なくとも立ち直るのが早い、即座にヒヨリの死角となる場所を探し出し接近して来る。

サオリの銃弾が一番前を走るアリウス生の眉間に撃ち込まれる、そこに後方からの射撃が一発、ミサキの援護だ!

 

 

「ナイス!」

 

「……まだ!」

 

 

 噴水の反対側に取りつかれた、もうここからはヒヨリの援護は望めない。なら……!

 

 

「サオリ!」

 

「何!」

 

「私たちの体格だからしゃがむだけでここに隠れられてるけど相手はそうじゃないはず!多分とっさには動けない体勢になってると思う!だからこっちから攻めれば……」

 

「反応できないってことね!」

 

「そう!123で行くよ!1……2……」

 

「「3!」」

 

 

 合図とともに噴水の影から飛び出し反対側に張り付いているアリウス生に奇襲を仕掛ける、相手もまさかこちらが攻めてくるとは考えてもいなかったのだろう、対応が遅い!

 

 

「なっ!この……!」

 

 

 私たちの方が速い!四人目!

五人目は……!もう一人の姿を探し視線を彷徨わせていると私の体が影に覆われ、見上げるとガスマスク越しにも伝わる怒りの視線を一身に浴びることとなる。

 

 

「……死ね」

 

 

 顔面を銃床で殴りつけられ視界が揺らぐ、額への冷たい感触により銃口を突きつけられていることを理解する。

まずい、間に合わな──────

 

 

「ホムラ!」

 

「───グッ!!」

 

 

 二発の弾丸でアリウス生の体がぶれ、そこに炸裂する大口径の銃弾、私へ向けられていた銃口が明後日の方を向く。

 

 

「はぁぁ!」

 

 

 自由を得た体で銃を構え引き金を引く、そのままマガジンが空になるまで撃ち尽くす。

一歩、二歩と後ずさったアリウス生は、そのまま力なく倒れた。

それを確認してようやく、銃を構えたままだった腕から力が抜ける。

 

 

「……はぁ、はぁ…………ありがとう、みんな、それとごめん、迷惑かけた」

 

 

 援護がなかったら危なかった、皆には感謝しかない。

 

 

「大丈夫だよ、ホムラ。それはそれとして、後でちゃーんと話はさせてもらうけどね?」

 

「うっ…………はい…………」

 

 

 家に帰るのが憂鬱なものに変わったのを感じつつ、こちらに近づく足音を意識する。

 

 

「……何とかなったね、こっちもお姫様連れてきたよ、今はヒヨリと一緒にいる。そろそろヒヨリもここに来るんじゃないかな」

 

 

 ミサキだ、お姫様も無事らしいことを知り、私たちの戦いが無駄じゃなかったことに安心を得る。

念のために未来視で辺りを警戒する?いや、皆もいる、使ってしまったら……

 

 

「……でもホムラ、今回のことは私も言いたいことがあるから。……言ってたら来たね」

 

 

 遠くからヒヨリが駆け寄ってくるのが見える、隣にいるのがお姫様だろうか。

すると、何かに気が付いたかのようにヒヨリの表情が焦ったものに変わる。

 

 

「―――――――!」

 

「ヒヨリが何か言ってる……?」

 

「……遠すぎて聞こえない」

 

 なんだろう、かなり必死に喋ってるみたいだけど……。

 

 

「ホムラさん!後ろに――――!」

 

 

 後ろ?疑問に思いながら振り向くと、這いつくばりながらも銃を構えこちらに向けるアリウス生が視界に入る。

なぜ?最初に気絶させた奴がもう目覚めたのか?

銃口は私の頭を捉えて離さず、避けようにもここに噴水以外の遮蔽はない、それに隠れる時間はないだろう。

時間が引き延ばされているかのように長く感じる、ああ、死なないといいな、でも、死んでも仕方ないか、今まで散々みんなのことを騙してたんだもの。

じきに来るであろう痛みに固く目を閉じる…………だが、銃声が鳴っても衝撃が体を襲うことはない。

なぜだ?恐る恐る目を開けると

 

そこにはサオリの背中があった

 

このまま進めていくと原作に到達するまでかなりの時間がかかるのですが、過去編が1章終わるごとに原作も1章進めるなど同時進行で進めたほうがよろしいでしょうか?(過去編で原作との相違点がかなり発生する予定なので作者の文章力では状況がわからなくなる可能性があります)

  • 時系列に沿って進めよう
  • 原作も進めよう(0章終了後アビドス開始)
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