未来の見えていた少女の大切なもの   作:かぶり猫

19 / 34
19.翌日

 シズカの話があった翌日、日中はアリウス生の活動が活発で探索に行くこともできないために空いた時間で、皆に一週間後のことを……穏健派の作戦を説明した。

 

「……だから最近このあたりにアリウス生が増えてたんだね」

  

「一週間後にはアリウスを出ないといけないってこと……?」

 

 ミサキは最近のアリウス生の動向に納得を見せ、サオリが驚きと不安の混じった目で問いかけてくる。

当然だ、長らく暮らしてきた故郷であるアリウスをいきなり、一週間後にはシズカを置いて逃げるように去るなんてこと、突然言われたら混乱するに決まってる。

 

「外に出るのは賛成なんですけど……シズカさんも一緒に来ていただくことは出来ないのでしょうか……シズカさんだけ、置いていくというのはその……」

 

「……私も、置いて行きたくはない。今までずっと守ってもらってたのに、それに、わたしの役割ものことも……」

 

 ヒヨリとアツコも、半年ほど関わりがあっただけにシズカのことが気がかりらしい。二人の気持ちも分かる、だって私もそう思ってるのだから。

初めてできた、信じてもいいと思える年上を、私に大切な言葉を、生きる目的をくれた人をこの場所に見捨てていくようなものなのだ。

 

「アツコ、そのことは気にしなくていいってさ。それに……これはシズカが、決めたことだから」

 

 でも、私にそれを無理やり曲げさせる資格はない、シズカはシズカの大切なもののためにその決断をしたのだ、それを私たちのわがままで邪魔をするわけにはいかない。

それに、もう二度と会えなくなるようなことではないと……そう信じてる。

昨日初めてその話を聞いたときは、なにもそれらしい返答をすることができなかったが、せめて私は私にできることをしよう。

未来を見て、シズカに伝える、作戦が成功するのであればそれで良し、失敗するのなら原因を探ってそれを教える。

今までずっとシズカに未来視を秘密にしていたのは、未来を伝えて、私にその能力があることをシズカが受け入れてくれても、周りの人間がどんなことをしてくるかわからなかったからだ。

サオリ達が大丈夫だったからといって、他の人間に対する不信感が無くなるわけではない、信じれないものは、やはり信じれないのだ。

……その感情は今でもあるが、それでも未来を伝えれば、そうすれば、もしかしたら足止めでアリウスに残る必要もなくなり皆で逃げることだってできるかもしれない。

資格はないだとかなんだとか言っているが、やっぱり、できることならシズカにも一緒に来てほしいのだ、私は。

 

「とりあえず、この作戦がどうなるか視てみるね」

 

 シズカは今日明日には……作戦が始まる前にもう一度はここに来るはずだ、その時に未来視の結果を伝える、そうすれば上手くいくだろう。

そう意気込んで私は未来視を──────

 〘アリウス分校の校舎らしきものが見える。その校舎はガスマスクの集団の襲撃を受け崩壊しかけており、もう後が無いのだろう。ガスマスク側──過激派の戦力は圧倒的で、穏健派は一人、また一人と倒れていき地に伏した生徒達の惨状が形成されている〙

 

「──────え?」

 

「ホムラ、何かあったの?」

 

 今のは、一週間後とかじゃない、……《今》だ、数分先の未来だ。

 

「……アリウス分校が、襲撃────!」

 

「ホムラちゃん!皆!いる!?」

 

 ドアが砕けるかのような勢いで開くと、その先から先日聞いたばかりの、けれども、私の知らない切羽詰まった様子の声が聞こえた。

 

「シズカ!?」

 

 驚きと、無事だったのかという少しの喜びと共に声の方向を向くと、見慣れた桃色の髪と、光を反射して輝く深い青の瞳が目に映る。

だが、その姿は普段とは別物で、初めて出会った時のような、あちこち傷だらけの満身創痍という言葉がふさわしい姿だった。

シズカはドアの枠にもたれかかりながら私たちを見回し、私たちが居ることを確認すると口元に付いた血を雑に拭う。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「よし、皆いるね、時間がないから簡潔に言うよ。過激派の襲撃を受け穏健派は壊滅、私みたいな子供たちと関わりがあり、信頼を得ている人間だけ逃がしてもらった、皆には申し訳ないけど今すぐ地下通路に向かってもらう」

 

「ちょっと────」

 

「そんな急に、待ってください!今行っても見張りはどうするんですか?それにその怪我は……!」

 

 サオリが立ち上がり、シズカに詰め寄る。

私たちには地下通路を見張っている部隊を押しのけるだけの力はない、鉢合わせしたら終わりだ。

それよりも、一目でわかるほどボロボロになっているシズカは大丈夫なのだろうか?

 

「それに関しては大丈夫、心配しないで。それに相手は装備の質と量は増やせても、頭数までは増やせない、穏健派の本拠地に襲撃を仕掛けるなんて大規模の作戦をしたんだから、残ってる戦力はほぼ無いと言っていいと思う。地下通路に向かってる他の仲間と協力できればなんとかなるはずだ。あと、もう1つ理由があるんだけど、それは移動しながら話すよ」

 

 疑問や心配はあるものの、シズカの判断を信頼した私たちは、各々ほとんどない荷物をまとめ始めた。

……一人だけすごい量の荷物、雑誌を持っていこうとしてるみたいだけど。

 

「……それ、一人で持っていける……?」

 

「えっと……た、多分、いけるとおもいます」

 

 ヒヨリが自分の背丈を超える程の量の雑誌を紐で縛りあげている。

ヒヨリがみんなよりも少しちからもちなことは知ってるけど、さすがにそれは……

 

「……いけるなら、いいんだけど……」

 

 あっ、雑誌の山が崩れた。

 

「お、おわぁ!?」

 

「……数、減らしたら?」

 

「う、うぅ……そうします……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………なんか、アツコと一緒に逃げた時を思い出すね」

 

「そうだね……でも、今回は何も盗んでないよ」

 

「まあ、ね…………」

 

 私がここに来た時のように静まり返った街に六人分の足音が響く。

ただあの時のように何もないが故の静けさではなく、常に体に纏わりつくような、不快な静けさだ。

 

「……さっき言ってなかったもう1つの理由は、あいつらの狙いはロイヤルブラッドと預言者っていうやつみたいってことだ」

 

「……!」

 

 預言者……おそらく私のことだろうが、なぜそのことをあいつらは知ってるんだ……?

気がかりではあるが、今はそれについて考える余裕はない、こうやっている間も、いつどこから攻撃を受けるか分かったものではないのだから。

未来視を起動する、ここはもう私たちの知る街じゃない、過激派の領域だ。

 

「ロイヤルブラッド、ですか……?」

 

「……たぶん、私のことだと思う」

 

 アツコは顔を伏せ、段々と声がしぼんでいく。

 

「私が……みんなに迷惑をかけてるのかも……」

 

「アツコちゃん、別に気にしなくていいよ、確かに君は生徒会長の後継者ではあるけど、それに縛られる必要はないんだ。嫌なことは拒絶してもいい」

 

「そう……なの、かな」

 

「それに、私たちのだれもアツコのことを迷惑だなんて思ってないよ」

 

 そういう自分だけの特別なものはどんなところでも絶対について回るものだけど、それに縛られて、それだけのために生きることを強要される筋合いはないのだ、絶対に。

……私も、預言者のことをシズカに伝えなければ。

 

「シズカ。……預言者は、多分私のことだ」

 

 シズカは前を走る足を緩め、振り返ると目を丸くした。

 

「……驚いた、まさかあいつらが狙ってるものが両方とも私のとこにあるなんてね。……まあ、なんで隠してたかは大体わかるし、気にする必要はないよ。目が赤くなってるのもそのせいだったり?」

 

 シズカは本当になんでもお見通しらしい、敵わないな。

なんだか、ずっと言うのを躊躇っていた自分がおかしく思えてくる。

 

「うん、……ありがとう」

 

「どういたしまして。それに、これはつまりあいつらの欲してるものを纏めてアリウスから逃すことができるチャンスでもあるってことだしね!っとと」

 

 急にシズカが体勢を崩し、すぐさま持ち直すものの走りずらそうにしていることはすぐにわかった。

 

「大丈夫?」

 

 やっぱり怪我が影響してるのだろうか、先程から動きの一つ一つにキレがない。

 

「へーきへーき、まだまだいけるって!」

 

 シズカはそう言うが、少し心配だ。

 

「そう、ならいいけど……っ!皆!左右に回避して!攻撃が来る!」

 

 消耗を抑えるために10秒先に設定していた未来視に異変を感じ取った。

私の指示と共に皆一斉に回避行動を始める。

 

「は、はいぃ!」

 

「っ!」

 

 皆がその場を離れたその瞬間、辺りが爆炎に包まれ強風に煽られる。

グレネード、いや、ロケットランチャーか!?それよりもう過激派の追手が来てるのか!

 

「みんなは大丈夫!?」

 

 煙のせいで皆が見えない、右に飛んだのは私だけだろうか、いや、というよりかは最後尾にいたから前に居る皆が見えないだけだろうか。

舞い上がった土埃が晴れると、私の前に現れたのは爆発により倒壊した瓦礫の山だった、周りにみんなの姿は…………ない。

 

「けほっ……、うん!こっちは大丈夫!ホムラは!?」

 

「……危なかった」

 

「びっくりしました……」

 

「その束背負っててよく避けれたね……」

 

「これが預言者の力ってことか……すごいな……」

 

まさか、分断されたのか?これだと合流するにも時間がかかる、いつ追いつかれるか分からない、みんなを待たせるわけにはいかないだろう。

となると自然と選択は絞られる。

 

「私は大丈夫!でも、多分そっちには合流できない!」

 

「私はここから別の道を通って地下通路まで行くから!私は未来視れるから大丈夫!!そっちはそっちでそのまま地下通路まで行って!」

 

「えっ!?ホムラ!?」

 

 壁越しにサオリ達の驚く声が聞こえる、だがこれで追手の分散も兼ねれる上、私には未来を視れるというアドバンテージがある、私の方にうまくひきつければ、いけるはずだ。

 

「シズカ!皆をお願い!」

 

 怪我人に言うことではないかもしれないが、シズカはこういう逃げのプロだろう、でなければスパイをしてた時につかまってるはずだから。

彼女が先導してくれるなら安心してこっちも動ける。

 

「……オーケー、そっちも気を付けてね!絶対に無事で合流するよ!」

 

 頼もしい返事が返ってくる、未来視は地下通路を通ることも考えると何分も先を視るような使い方は出来ないが、追手の攻撃を避けるくらいなら何とかなるはずだ。

 

「なっ……!シズカさん!?ホムラは…………!」

 

「今はそれしか方法はないでしょ!」

 

「~~~っ!!ホムラ!!!!」

 

「……っ!?」

 

 顔は見れないが、サオリが怒ってることだけは分かった、いやでも、今回は仕方ないでしょ……!?

 

「全部うまくいったら、説教だから!!だから……絶対に、無事でいてよ」

 

「…………もちろん!!」

 

 私も、こんなところで失敗するつもりは毛頭ない、私がたどり着かなければあの通路を使うこともできないのだから。

 

 後ろを振り返ると、遠くにこの爆発の犯人の姿が見える。

 

「絶対に、捕まってやるもんか…………!」

 

 これから私は、過去の失敗を乗り越えるのだから……!

 

 

 

 





このまま進めていくと原作に到達するまでかなりの時間がかかるのですが、過去編が1章終わるごとに原作も1章進めるなど同時進行で進めたほうがよろしいでしょうか?(過去編で原作との相違点がかなり発生する予定なので作者の文章力では状況がわからなくなる可能性があります)

  • 時系列に沿って進めよう
  • 原作も進めよう(0章終了後アビドス開始)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。