現在は倉庫として使われている棟の地下、ベアトリーチェによる統治が行われていた時代にアリウスの教育に反する者が送り込まれていた『矯正室』がある場所の最奥にて清掃活動を行っていたアリウス生が発見した。
その内容はベアトリーチェ統治時代の5年間のものであり、期間が飛ぶ箇所、破れている箇所や汚れていて読めない箇所も多々あるが、数少ないベアトリーチェの動向の一部が記されたものである。
内容としては本人だけが分かるようになっている部分や、読むに堪えないようなそのままの感情がぶつけられている部分も多く、それ故その内容に価値があるというよりは、ベアトリーチェの行い、統治が行われていた時代の悲惨さを記録するものとしての側面が強い。
現在、アリウスの歴史資料の一部として保管されているが、内容に一般生徒には開示できないものも含まれているため、現物の閲覧資格があるのは当代の生徒会長のみとなっている。
なお、本人の許可を得ずに保管されているため、本人にその存在が発覚した際には廃棄されることは確実だろう。
下記は手記の内の一部を抜き出したものである。
9月21日
どれだけの間ここにいることになるかわからないので、時間感覚を失わないために日記をつけることにした。アリウス脱出に失敗しマダムに連れていかれた後、私はアリウス分校の地下にある、おそらく倉庫か牢屋のようなものだったであろう場所に閉じ込められた。倉庫と言ってもほとんど空のようなもので、あるものと言ったら今私が使っている古びたノートと筆記用具、何本かのナイフや銃の部品、脱出時に私が持っていたP90や包帯ぐらいしかない。
外の景色は天井付近にある鉄格子の小さな窓からしか見えず、部屋の中はかなり暗い。これからマダムがどんな実験をするのかわからないけど、私がそれに耐えることで皆が安全ならそれでいい、未来視での覗き見も前気づかれていたから試すようなことをしてマダムの怒りを買う訳にもいかないし、あの大人を信用するしかないというのは不安だけど仕方がない。最近はいつも家族が一緒にいたから一人で過ごす時間がとても静かに、寂しいものに感じる。
9月22日
今日は実験があった、耐久テストだとか言って銃だったり刃物だったりいろんな方法でどの位の怪我をするのかを測ってるみたいだった。間違えて殺さないためだとか言ってたけど、これからどんなことをされるのか正直怖い。あと、私の部屋は常に看守が見張っているらしい、アリウス生の教官だったっけ、幹部だったっけ、どっちだったか忘れたけど。大人が普通に学園内にいるところとか、やっぱりアリウスはかなりマダムの影響を受けてるみたいだ。この二日で怪我をしすぎて全然痛みが引かない、今も鉛筆を握る手が震えている。
9月23日
昨日書き忘れてたことがあった、マダムやスーツの大人、ゲマトリアは神秘というものを研究してるらしい、ただマダムがというよりは他の三人の方が私に興味があるみたいだ、崇高だとか恐怖だとか単語だけではよくわからなかったけど、頭が二つある大人が言っていた、私たちヘイローがある人間は大きな神秘を持っているのだと、あまり理解できてないけど、記録しておく。
9月24日
頭が痛い、いたい。未来なんて、みたくない。
9月25日
若干痛みも引いてきたから昨日のことを記録しておく。あいつらの実験で未来視をどれくらい連続して使えるかを試された、10時間以上も連続で使わされたのは初めての経験だった。あと、あいつらはやっぱり未来に興味があるというよりは私たちヘイローを持つ人間そのものに興味があるような印象が強い、生徒のサンプルは貴重だとかなんとか。皆に会いたい、会って何でもない話で笑い合いたい。やっと、心から笑えるようになったのに。
9月27日
神秘の抽出実験だとかで変な装置に入れられた、呼吸出来ないような息苦しさと力が抜けるような感覚がずっと続いて今までで一番苦しかった気がする。あのときの感じ、あれが神秘が出ていく感覚なんだろうか、とにかく疲れた、今日はもう書くのはやめておく。
(その後も神秘に関係する実験の内容や感想が続いている)
4 11
つかれた、いたい、やめたいでもわたしが わたしががんばらないと マダムも私ががんばればみんなにはなにもしないって いってたからわたしが たえないと
4月15日
今日も壁の向こうから泣き声と怒鳴り声が聞こえてくる、耳をふさいでも聞こえてくる。ちがう、vanitasはそれだけの言葉じゃない、何も、ききたくない。
4月24日
今日はサンプルの採取だって 肌を切られた 痛い 熱い
これからはこういうのばっかりらしい 嫌だ 嫌だ
5がつ12にち
いたい あつい やめたい もういやだ
5月31日
今週は久しぶりに実験が無かった、書く余裕があるうちに分かったことを書いておく、マダムたちはどうやら儀式や契約といった概念的なものを重視しているらしい、それがキヴォトスにおいて重要な役割をもたらすのだとか、覚えておいて損は無いと思う。それに少しではあるが自分の神秘について理解できた気がする、体の内側に押し込められている温かくも感じるがひどく冷たくも感じる不思議なもの、これが神秘なのだろう。覚えている限りだと私たちは無意識的に神秘を用いて体を守ったり、怪我を直したり、弾丸に神秘を込めて放っているらしい、私たちの体の頑丈さ、強さはこの神秘に基づいたものであるのだとか。スーツの大人は私にはかなりの神秘があると言ってたが、それならなぜ私の体はこうも脆いのだろう。
ここでの毎日で皆に会わないことにも慣れてしまったが、何もしていないとふと家族に会いたくなる時がある、マダムは契約と言っていたし、大人がそういうものを重視するなら皆に危害は及んでないと考えれるのが唯一の救いだ。ああ、でも、いつか みんなに会えたらいいな あれだけたいせつにおもってたはずのみんなのかおが もう よくわからない
ごがつ
(書いては消してを繰り返したのか、そもそも文字の体を成していないのか、筆跡が重なりすぎて解読が出来ない)
5
月 3 ■ 口
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
(血痕により解読不可、ここから1年ほどの記録が同様の状態となっている)
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■
5 ○6 7 ○8 ○9 ○10 11 12○ 13○ 14 ○15 16○ 17 18○ 19 20○ 21 22 23○ 《red》24○ 25○ 26 27 28○ 29○ 30○
⑩ 1○ 2○ 3 4○ 5 ○6 7 8 9 ○10 11 12○ 13 14○ 15○ 16○ 17○ 18○ 19 20 21 22 23○ 24○ 25 26 27 28 29○ 30○ 31
⑪ 1 2○ 3 4○ 5 ○6 7 8○ 9 ○10 11 12○ 13○ 14○ 15○ 16○ 17○ 18○ 19 20○ 21 22 23○ 24○ 25 26 27 28 29 30○
⑫ 1 2○ 3 4○ 5 ○6 7 8○ 9 ○10 11 12○ 13○ 14○ 15○ 16○ 17○ 18○ 19 20○ 21 22 23○ 24○ 25 26 27 28 29 30○ 31○
① 1 2 3 4○ 5○ ○6 7 8 9 ○10 11 12○ 13○ 14○ 15○ 16○ 17○ 18○ 19 20 21 22 23○ 24○ 25 26○ 27○ 28○ 29 30○ 31○
(同様の内容が1年間ほど続き、その後2年間は破損やそものもの記述がなかったりなど、支離滅裂で理解のできない記述ばかりが続いている)
夏
改めて日記をつけてみることにした、この日記を見る限り僕は家族をとても大切にしていたらしい、今の僕に家族との思い出は無いがそれが僕が前に大切にしていたものなのなら僕も同様に大事にするべきだろう。この日記を見ても、家族のことは思い出せなかったが実験の記憶は思い出せたし、それならそのうち思い出せるだろうから。
今日も実験があった、日記を見る限り最初の頃よりは頻度は減ってるみたいだが実感が湧かない。ベアトリーチェたちもずいぶんと僕で研究が出来たみたいで新しい研究法を模索中だとか、それはそれで僕は自由時間が増えてありがたいけど、正直どうでもいい。
最近は何もない時間はずっと自分の神秘について調べている、日記から神秘に関する基礎知識は手に入れたし神秘の感覚は体が覚えているから、そうやって調べていると分かったことがある。僕の神秘は目に集中していて、目にある神秘は自分の意思で操れないということだ、そのあたりは未来視という力が関わっているのだろうが、神秘の絶対量は普通の方法では変わらないらしいから、この目がある限り僕の使える神秘量は変わらないということなのだろう。目を使えなくすれば神秘の固定は解けるだろうか?まあ、それもどうでもいいことだ。
そういえばここの看守が変わったらしい、日記に書いてある容姿と異なるから、多分そういうことなのだろう。前の看守はこっちに興味はなかった様子だけど今回の看守は僕のことが気になるらしい。何か親近感を感じるがあの看守と前の僕は関わりがあったのだろうか、いや、やっぱり気のせいだろう、こちらに向けてくる視線が、ちょっと不快な気がするし。
秋
また日記をつけるのを忘れていた、鉄格子の隙間から見える外は赤く色づいてきていたので秋が来たのだろう。あれから神秘の調査に進展はない、実験も同様だ、今までの経験からして僕を殺すまで実験を続けてその結果を得ることは簡単だが、僕というヘイローを持つ人間のサンプルが次いつ手に入るか分からないためなかなか踏み出せずにいるのだろう。あ、一つ進展はあったか、どうやら僕の神秘は預言者としての力だけしか持ってない訳ではないらしい、大天使へと至ることは預言者としての死と同義だとか、再現をし預言者の研究を捨ててまで手にする力をではないとか言い争っていたけど、その意味について考えてみるのもありだろう。
だが調査の進展も実験も無いとなると僕は暇になって仕方がないので、最近は看守との会話を試みている。内容は他愛のないものでアリウスの様子だとか今日の食事は何なのかだとかその程度のものだ。どうやら最近、スクワッドなる部隊が編制されたらしい、何でもアリウス生の中で最も部隊としての実力が高いため特殊部隊として扱うことにしたんだとか。正直そこまでの興味はないがいつか未来視で様子を見てみるのもありだろう。
書き忘れていたがどうやら未来視は睡眠中の暴走状態以外ではベアトリーチェが気づくことは出来ないみたいだ、確か暴走中は一種の精神体の時間移動に近い状態で、普通に使う分には今最もあり得る可能性の未来という情報を現代にもってきているだけで時間移動は起きていないから察知することができないだとかなんとか。そういうことでベアトリーチェにバレる心配はなく未来視は使い放題状態みたいだ、そう考えると、私が昔色々と心配していたように見えるのがバカに思えてきた。ただ使いすぎると見たくもないものを見させられるからほどほどにしておかないと、誰が見たがるんだ、世界が崩壊する様子なんて。
冬
実験も再開されないし、看守の人と話すことくらいしかすることが無い。暇。暇なので前に話に上がっていたアリウススクワッドについてみてみることにする。
ふざけるなふざけるなふざけるななぜ皆がアリウスであの女の元で生活している
契約は嘘だったのかそのためにわたしはおまえの契約にしたがってこの生活をうけいれたんだぞふざけるなよクソ
(ページが破れており解読不可能)
取り乱した、結論から言うと家族の記憶は思い出した、まさかスクワッドがみんなのことだと誰が思うだろうか。だがこれで一つ確かなことがわかった、ベアトリーチェは契約を破ったということだ、ベアトリーチェは僕との、家族に手を出さない、危害を加えない代わりに身柄を拘束するという契約を破ったのだ。大人が重視する契約というものを彼女は平然と破り捨てたのだ。彼女は何一つとして信用できる存在ではない、彼女がいる限りサオリ達皆の、いや他のアリウス生たちにも心の平穏が来ることは無い。
アリウスの教育に関しては看守から聞いている、これは仮にも学校を名乗る場所がすることではないことも知っている。それに関してどうにかしようという気持ちが無かったのは今までこのアリウスという場所に何の思い出も思い入れもなかったからだ。僕自身にも、アリウスにも、何の興味も湧かなかったからだ。今はそんなわけがない、みんなも、みんなとの思い出が詰まったこのアリウスもかけがえのないものだろう。
これから僕がするべきことは、あの女を殺すことだ、キヴォトスでの殺人の重さも理解してるしそのことを考えるとどうしようもない嫌悪感が湧きあがってくる。だがしなければ、今までの僕は家族に何をしてあげれていた?迷惑をかけてばかりだっだだろう、最年長にも関わらず姉としての役目をサオリに任せきりにし、未来視についてはもう言うまでもない、その果てにはあの女の口車に乗せられこのザマだ、せめてこれくらいはしてしかるべきだろう。それが僕の年上としての役割だ。
だが今ではない、今の僕ではこの牢屋から出ることもままならない、今の僕がすべきことはこの数年間で弱り切った体力の回復、神秘の扱い方の向上、そしてここから出る方法の模索だ。僕は、
春
体力はずいぶんと回復した、今ならアリウス脱出の時の奴らを相手にしても大きな怪我もなく逃げ切れるだろう。神秘については、今の状態では何をしようと意味がないことが分かった。多くの神秘を扱えればこのドアを破ることだってできるのだろうが僕の扱える量では夢のまた夢だ、どうやってもここから出る方法が思いつかない。
ただ、秋の頃に聞いた預言者が大天使がどうこうといった話と、未来視でゲマトリアの会議をのぞき見したときに得た情報から考察するに僕の預言者としての力の元、つまりは目をどうにかすれば固定されていた神秘は自由に扱えるようになるのだろう、それがなぜ大天使と関わってくるのかは謎ではあるが。
ただこれは後戻りが出来ないことだ、するのは作戦を実行する直前、あの女を殺すのに最も邪魔が入らない瞬間を狙わって行わなければ、目のことがゲマトリアにばれたら終わり、看守に知られても終わり、するなら作戦の直前しかない。それにあの女、姿を変える術まで持ってるようだ、あれをされては僕では勝ち目がない、やるなら速攻で、変身させる暇を与えないようにする必要がある。今はまだできないなどというものならそれでいいが、情報が少なすぎる。殺人への嫌悪感はまだあるが、これを断ち切ることがこれからするべきことだろう。
覚悟は決めた、シズカのことも思い出せた、明日には僕の生死を厭わない実験が開始されるだろう。
今日、作戦を実行する。
このまま進めていくと原作に到達するまでかなりの時間がかかるのですが、過去編が1章終わるごとに原作も1章進めるなど同時進行で進めたほうがよろしいでしょうか?(過去編で原作との相違点がかなり発生する予定なので作者の文章力では状況がわからなくなる可能性があります)
-
時系列に沿って進めよう
-
原作も進めよう(0章終了後アビドス開始)