未来の見えていた少女の大切なもの   作:かぶり猫

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エピローグ2.コンクリートを裂く花(オキザリス)

 

 

「サオリ、皆ってどこにいるの?」

 

 

 こつこつと二人の足音が廊下に響く。

赤と青、正反対のヘイローを持つ二人は再会の喜びを分かち合い、時々笑みを浮かべながらある場所を目指す。

 

 

「私達の部屋で待機しておくように伝えたから、何もなければこの先にいるはずだ」

 

 

 あれから服は無事見つかった、今私は白のカッターシャツに黒のスーツパンツという、どこかの会社員みたいな服装をしている。

こんなものもあるということは、大人どもはやっぱり外に出る機会があったのだろう。

 

 現在は皆がいるという寮の一室に向かっているのだが、かなりボロボロであり、修理もまるでなされていないように見える。

やはり校舎全体の修繕にも手を加えないといけないだろう。

 

 それはおいおい考えるとして、今から皆との5年ぶりの対面となる。

演説のときにもいたのかもしれないが見つけられなかったため、今皆がどんな風になってるのか楽しみだ。

……未来視では分からないことはたくさんあるのだ。

 

 

「へぇ〜、皆、僕の身長にびっくりするんじゃない?」

 

「かもな、前はアツコと同じくらいだっただろう。それが私と同じくらいまで伸びてるんだ、ヒヨリの驚く姿が想像できる」

 

 

 また少し、サオリの顔に笑みが戻ってくる。

 

 

「そうだホムラ、家族が増えたんだがその子が……と、着いたな。まあ、直接会ってもらった方が早いだろう」

 

「?、うん」

 

 

 新しい家族?まあおそらくサオリが拾ってきたのだろう。

そういうところは変わらないのだなと、また1つ記憶の中のサオリとの共通点を見つけ嬉しくなる。

 

 

「じゃあ、入るぞ」

 

「りょーかい」

 

 

 サオリがドアノブに手を掛け引くと、中からにぎやかな声が聞こえてくる。

楽しそうでよかった、……ところで何の話をしてるのだろう。

 

 

「みんな、ホムラを連れてきた、ぞ……」

 

「ねえ!もっと他の話も無いの?」

「えっ他の話ですか!?……えっと、そうですね……」

「あれはどう?ホムラちゃんがミサキに接近禁止令を出されてサッちゃんに泣きついたときの話」

「それはっ……!」

「なにそれ!?」

 

 白髪の子を中心にして3人がそれぞれ思い思いのことを話し盛り上がるそこは、ここがあのアリウスとは思えない程の笑いに満ちていた。

 

 

「……?」

 

 

 ……本当に何の話をしてるんだ!?

 

 

「あぁ……!サオリ姉さん〜!」

 

「ヒヨリ、これは───ぐぅ!?」

 

 

 ヒヨリが半泣きになりながらサオリに駆け寄る、あれはサオリに落ち着かせてもらおう。

あ、ぶつかった勢いで部屋の外に飛んでった。

 

 

「ホントにホムラちゃんだ……大丈夫、夢じゃない」

 

 

 アツコは未来視でしていた仮面を外して僕をじっと見つめている。

心底安心しているような、夢じゃないのかというような顔だ。

 

 

「ミサキ!さっきの話って一体どういうことなんだ?」

 

 

 この白髪の子が新しい家族なのだろう、ミサキに詰め寄っているが……この子、未来視で視たことある、雰囲気違いすぎじゃないか!?

 

 

「いや、それは……」

 

 

 ミサキは白髪の子に壁際まで追い詰められてたじたじになっている。

あのことは互いに黒歴史にしていたはずだから話したくない気持ちは分かる、まあ僕が悪いと言えばそれまでではあるのだが……。

いや、そうじゃない!

 

 

「なんか5年ぶりなのに全然締まんないんだけど!……とにかく!皆、久しぶり、会えてすっごい嬉しい!」

 

 

 そう、僕もこうやって皆に会えたことに凄く感動している、いるのではあるが、あまりにも他のことが気になりすぎるというか、再会の感動を噛みしめる雰囲気では無いというか。

 

 

「うん、私も、ホムラちゃんとまた会えて良かった、それに……背もすごく伸びててびっくりした」

 

「だよね!前はアツコと同じくらいだったからね〜。びっくりしたでしょ!」

 

「うん……あっという間に越えられちゃったね」

 

 

 今僕と感動を共有できるのはアツコだけかもしれない。

 

 

「……でも、ホムラちゃん、その包帯は

 

「うわ〜ん!!ホムラさんー!無事で良かったですー!」 

 

「ごはっ!!」

 

「あっ……」

 

 

 死角からの質量爆弾、その圧倒的なスピードで威力を増した突進は、慣れない視界でバランスをとりづらくなった僕の体を地につけるには十分過ぎる威力を持っていた。

 

 

「むぎゅう」

 

「おぅわぁ!す、すみません……!私、ホムラさんに会えて嬉しくて……。今まで苦しいことばっかりだったので……ホムラさんももう死んじゃったのかと思ってて……」

 

 

 ……ハッ!久しぶりに意識が飛ぶところだった!

……この威力は家族の愛情の証、僕もそれに応えなければ!

 

 

「へ?」

 

「僕もヒヨリに会えて嬉しいよ。これはさっきのお返しだ!」

 

 

 体をずらし仰向けになると、僕に覆い被さるヒヨリの小さな体を力いっぱいに抱きしめる。

炎とはまた違った、ぽかぽかとした暖かさが伝わってくる。

 

 

「わっ……ホムラさん温かいですねぇ……えへへ……前を思い出します……」 

 

「……よかった」 

 

 

 そんなこんなでわちゃわちゃしていると、ミサキが白髪の子の追求を上手く躱しながらこっちに寄って来ているのが目に入った。

 

 

「ホムラならそっちにいるから本人に聞いて!」

 

 

 自分が話したくないからって僕に投げたな!

白髪の子と目が合う、今の体勢だとあまりにも格好がつかないので一度ヒヨリを抱きしめる手を離し立ち上がる。

 

 

「初めまして、君がサオリが連れてきたっていう女の子でしょ?僕はホムラ、えっと……君のお姉さんってところになるかな!」

 

 

 これで僕のことを姉として認めてくれるのなら良いのだが……、彼女からしたら僕はいきなり現れた姉を名乗る他人だ。

その上さっきは違ったけど未来視だといつも周りを警戒するような素振りをみせていた。

恐らくだがかなり警戒心の強い子なのだろう、固唾を呑み彼女の返答を待つ。

 

 

「私は白州アズサ、サオリに誘われてこの部隊に入った。さ……」

 

「?」

 

「さっき言ってた言葉……世界は虚しいが、そんな虚しい世界でも大切だと思えるものに全力を懸けるべきだ……って、本当にそう思ってるのか?」

 

 

 僕が演説で話していたvanitasの解釈だろう、この子はこの言葉に何かを感じてくれたのだろうか。

それとも、否定するために……?

 

 

「うん、そう信じてるよ。これは僕の先輩とも言える人から貰った言葉でね、僕の人生の指針と言ってもいい」

 

「……そうか、やっと会えた……!私と似た考えの人……!」

 

 

 彼女は目を輝かせながら喜びを伝えてくる、僕と似た考え……?

 

 

「私は今まで、すべては虚しいものだとしても、今日最善を尽くさない理由にはならない。そう思って生きてきた、でも、今までここにはそんなふうに考える人はいなかった」

 

 

 ……それは、ある意味当然なのだろう、そのような考えが生まれないように彼女は手を打っていたのだから。

 

 

「……けど、ホムラは違った、虚しいだけじゃないって他の皆に伝えたんだ!それが、すごいなぁって!」

 

 

 彼女は興奮した様子で僕に自らのことを打ち明けてくれた。

すべては虚しいものだとしても、今日最善を尽くさない理由にはならない。

それはシズカが僕に話してくれたことと同じだ。

この子は、自分でその結論にたどり着いたのか。

 その気高さ、この場所で一人その言葉を胸に戦う勇気、本当に、本当に尊敬するなぁ。(羨ましい)

 

 

「……?」

 

 

 なんだ、いまの、口を覆う。

僕は今、何を考えた?

家族に、守るべき子にどんな感情を得たんだ?僕は……

 

 

「こんなアズサ見たことあるか?」

「いや……無いに決まってるじゃん」

「だよな……」 

 

「ホムラ?」

 

「っああ!何でもないよ、僕もそう考えてる子がいるって知れて良かった。これからよろしくね!アズサ、僕のことはホムラ姉さんとでも……」 

 

 

 どうやら僕のことは好意的に見てくれてるみたいだし、一度位は僕もサオリみたいに姉って呼ばれたい!

 

 

「うん!これからよろしく。ホムラ!」

 

 

 一点の曇りもない真っすぐな瞳に自らの下心を恥じずにはいられなかった。

 

 

「うん……よろしくね……」

 

 

 会ったばかりだし、流石にダメだよなぁ……。

いや……そもそもサオリが皆を連れてきたのだから僕が姉と呼ばれる方が無理があるのか……?

 

 

「ホムラが演説で言ったこと、シズカから教えてもらったことだったんだな、全然知らなかった」

 

 

 サオリが疑問を投げかけてくる、確かに僕は皆に伝えて無かったように思う。……なぜだ?

 

 

「確かに伝えて無かったね、……何でだろう、ごめん、もう覚えてないや」

 

 

 あのときの僕は一体何を考えてたんだ……?わからない。

過去の自分の行動には疑問なことばかりだ。

 

 

「そういえばさ、シズカはどうしたの?出来ることなら一回会っておきたいんだけど」

 

 

 彼女の名前を口にすると、アズサ以外の皆は一様に目を逸らす。

……やっぱりか、あの女が反対勢力の幹部という材料を自身の統治の為に利用しないはずがない。

わかっていた、わかっていたことだろう。

……でも、ちょっと残念だな。

 

 

「……そっか、教えてくれてありがとう」

 

 

 表情は変えない、無駄に皆に不安を与える訳にはいかない。

頼れる姉、先輩であるためには負の感情を表に出すべきではない。

それに、新しい家族もいる再会の場でこんな暗い雰囲気になる必要もないだろう。

アズサの肩に手を置き、くるりと皆の方へ向き直す。

 

 

「5年ぶりに会えたことだし、今までの皆のこととか色々、お話する時間にしようよ!そういえば、アズサも聞きたいことがあったよね?」

 

「! ああ!さっきの話、ホムラが教えてくれるのか?」

 

 

 アズサ(家族)の期待には応える。

でも、ミサキだけは連れて行く……!

 

 

「うん、でもさ……僕一人から聞くよりもミサキの話も一緒に聞いたほうが面白いと思わない?」

 

「なっ……!」

「ああ!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ふふっ、アズサちゃんにこんなキラキラした目で見られたらひとたまりもないだろう。

 

 

「……っていう訳だけど、もちろんミサキも話してくれるよね?」

 

 

 うわぁ……すっごい嫌そうな顔してる……でもそれを僕だけに話させようとしたミサキが悪いんだよ。

 

 

「……っ……!はぁ……断った方が面倒くさそう、分かった、話す。……そういうとこは変わんないんだね……」

 

 

 …………ちょっと悪いことしたかな、申し訳ない気持ちが湧いてくる。

いやでも、とりあえず話はしなきゃ。

 

 

「じゃあまずは僕がなんでミサキに接近禁止令を出されたかだね、あれは……」

 

 

 昔のように私やサオリが話して、それをミサキが聞きながら、ヒヨリが更に質問を重ねる、それに加えて今はアズサちゃんも。

それでやっぱり最後にはサオリに切り上げるように怒られて、やっぱりミサキは途中から寝ちゃってて、そういうところはみんな変わらなくって。

5年ぶりに出会ったはずなのに、まるでずっと一緒だったかのようだった。

右目のことは追及されなかったけど……なんとかなった……はずだ。

 

 

 

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