未来の見えていた少女の大切なもの   作:かぶり猫

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あけましておめでとうございます!
お気に入り、感想、評価、ありがとうございます!
今回から新章となりますがこれからもよろしくお願いします!

追記、
詳しくは活動報告に載せておりますが、一時的に投稿を停止させていただきます…申し訳ありません…。
長くても2.3ヶ月程度では戻ってこようと思います…すみません


第1章:見えない未来と家族と友人
1.業務と任務と外の世界


 ここはアリウス分校校舎本館一階 生徒会室、1ヶ月前から僕の仕事場となっている場所であり、アリウス分校の経営方針のすべてが決まる最重要エリアだ。

……とは言えど、あちこちが割れ落ちたステンドグラスを背に長机とパイプ椅子が置かれているだけの殺風景極まりない部屋であるが。

だが、その殺風景な生徒会室は今、かつて無い程の人口密度を秘めた超過密地域となっている。

 

 

「代理、食堂の改築についてなんですが」

「会長、主要道路の整備なんですけど……」

「生徒会長、自治区内の孤児たちの勧誘ですが……」

「会長!授業内容の改善案確認お願いします!」

「代理、第三工場から生産ラインの改善案についての申請が来てます」

「ホムラちゃ……あっいや会長代理、出発準備できました!」

 

「あっ、はい!すぐ行きます!まず改築についてはですね……」

 

 

 そう、アリウスでの活動の報告の全てをここで処理しているのだ。

他の役員も皆現場へ出ずっぱりであるし、そもそも役員に立候補するような子はほぼいないし……!

今こうやって報告に来てくれている元気な子達だってとても貴重な人材なのだ。

1ヶ月程度でベアトリーチェの教育による無気力、虚脱感が無くなるわけなどないのだから。

 

 絶え間なく続く質問の嵐をさばき続けること数十分、生徒会室への人口流入も鳴りを潜め、各々が自らの持ち場へと戻り始めた。

 

 

「ふぅ……」

 

 

 あまり座り心地が良いとは言えないパイプ椅子に身を預け大きく息を吸い、吐きだす。

僕は今、生徒会長代理を務めている、なぜか?それは僕が知りたい。

僕がベアトリーチェと大人共を追い出すように促した、それは事実だ。

でも僕はそれによって生徒の中でも先輩の人たちを中心に、生徒会長などのリーダーを務めるような存在が出てくると考えていたのだ。

だが実際はどうだろう、僕がリーダーを務めているではないか。

 

 話によると今までアリウスでは分隊戦なるものが行われていたようで、そこでの成績が少なからず生活水準に影響していたらしい。

……ベアトリーチェ達がいる時点でその差は微々たるものではあっただろうが。

その経験からか力に対する信頼と恐れが異様に強く、加えて先輩の方がアリウスで暮らす時期が長いためあの女の教育に染まりきっている人が多い。

 

 それらのことからアリウス転覆の実行犯である僕に白羽の矢が立ったのは分かる、分かるのだが……。

正直僕がトップに立つとは思っていなかった、もっと、こう……トップを横で支える補佐のような立ち位置に収まれると考えていたのだ。

これについては考えが甘かったとしか言い様がないだろう。

 

 椅子に沈んだまま、机上に手を伸ばし席札を手に取る。

生徒会長()() 侍留 ホムラ。

この代理とは、僕が正式な生徒会長ではないことを意味している。

何でもアリウスの生徒会長は代々世襲制らしく、ロイヤルブラッドがその血筋らしい、なので本来の生徒会長はアツコとなるのだ。

 

 ……そう考えると僕が会長代理に選ばれてよかったと思う、アツコにいきなりこの仕事を任せるようなことはさせなくてよかったと、そう思う。

本当に、そのくらいこの三週間はあまりにも忙しすぎた、これからは少し落ち着くとは思っているのだが……。

 

 

「……?」

 

 

 何かを忘れてる気がする、そう…。そう……。……出かかってはいるのだ、あと少しで……。

自身の脳と格闘を続けていると外からタッタッタッタッと軽快な足取りでこちらに近づいてくる音が耳に入る。

ここは足音がよく響くから誰かが来たら分かりやすいのは良いことかもしれないなぁ、疲労により回らない頭で考える。

 

 

「会長代理ー、あとどれくらいで出発しますか?もうすぐ目的地に着くと連絡がきたのですが……」

「すぐいきまぁす!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリウス郊外、用が無ければ誰も立ち寄らない様な端の端を駆け抜ける。

目的地はアリウスと外とを繋いでいるであろう物資運搬道だ。

車両で向かうという選択肢も十分ありはしたのだが、車の運転をできる人材は今のアリウスでは引っ張りだこな状況であるのと、何か罠などが仕掛けられていた場合に車両を失いかねないという理由から徒歩で向かうことになった。

……まあ、会長業務よりもこちらの方が圧倒的に楽なので全然いいのだが。

 

 そうやって景色を置き去りにしながら走ること数十分、遠くに見覚えのある五人組の影を見つける。

徐々にペースを落としていき、大遅刻ながらも皆との合流を果たす。 

 

「本当にごめん!!遅刻したぁ!!」

 

 

 まさか開始時間をすっぽかすことになるとは思いもしなかった、恐る恐る皆の様子を伺う。

 

 

「ホムラ、会長の仕事が忙しいなら任務は私たちに任せてもいいんだぞ?」

「うん、ちゃんと達成してみせる」

 

 

 サオリ達の優し気な視線が刺さる、うう、分かってる、分かっているのだが……。

 

 

「いや、今回ばかりは外に詳しい人がいた方が良いと思ってね……」

 

 

 まず前提としてアリウスには戦闘以外の場で問題を把握して解決するという経験をしてきた生徒がほとんどいないのだ。

そのためすべての意思決定をトップである僕がこなすという状況に陥っていたのだが、それも段々と解消されてきている。

皆ある程度生徒会業務に慣れ、僕まで報告を上げなくてもその場や他メンバーの判断で動くことが出来るようになってきているのだ。

…今日はいつにも増して忙しかっただけで。

だから、ホントはこんなに遅れることも無かったはずだったのだ。

失望は、されてない……と思うけど。

 

 

「……ただでさえ遅れてるんだし、そろそろ始めないとまずいんじゃない?」

 

 

 ミサキからもっともな言葉が飛び出す。

 

 

「そうだね、……って遅れてきた僕が言うのもあれだけど。何が起こるかわからないし、警戒していこう」

 

「わかった。ホムラとの初めての共同任務、必ず達成してみせる」

 

「つ、ついにアリウスの外を見ることが出来るんですね。雑誌に載ってないこともたくさんある……のは知ってますけど、きれいな服とか、新しい雑誌とか、おいしい食べ物とかたくさんあるんでしょうか……?」

 

「あるんじゃない……のかな?」

 

「……こちらスクワッド、作戦を開始する。各自罠の類には細心の注意を払う様に」

 

「「「「「了解(です)」」」」」

 

 

 隊長の作戦開始の合図により、スクワッドの意識は切り替わった。

見た目上は変化が見えずとも、確かに空気が変わったことを肌でヒリヒリと感じ取る。

……正直な所、スクワッドの部隊としての練度は僕が居ない状態の方が明確に高い。

それに加えて隊員としても戦術知識も訓練経験も何もない僕の方が遥かに劣っている。

僕はそれをこの目と炎、神秘の扱いでカバーしているだけに過ぎないのだ。

……今度サオリに頼んで訓練をつけてもらうべきだろうか……。

 

 5つと1つの足音が、最低限の明るさだけを維持されたトンネル内に響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………着いた。一応、目は使い続けておくよ」

「……結局、警戒してたようなことは無かったね」

「………うん」

「ここが、アリウスの外……、あんまり、アリウスと変わらないような……。……どこに行こうと意味なんかないってことなんですかね……」

「まだトンネルを出たばっかりだから、進んでいけば変わってくるんじゃないかな……。あ、きれいなお花……このお花、アリウスには無かった……」

「こちらスクワッド トンネルを抜けた。……やはり、外からの通信は繋がらなそうだな」

 

 

 各々が各々の考えを持って初めてのアリウスの外を観察する。

トンネルを抜け見えたものは、視界の7割を占める自然の緑に、地面を埋める人工の灰色。

空は木々に阻まれ見ることは出来ず、葉の隙間からかすかに光が射し込む程度だ。

 

 ……ここは、森、いや、山の中か?トリニティは広大な自治区を持っており、その中にはもちろん人の手の行き届いていない自然も当然存在する。

いや、そもそもトリニティ自治区のどこかと考えること自体が早計か?

 

 

「……ッ」

 

 

 目の使用による反動に顔を顰めることとなる。

やはり索敵のような長期的に行う状況で使うには1秒という限界も反動も、どちらもリスクの方が大きいな。

痛みはごまかすことが出来ても、めまいなどはごまかせない。

周囲の安全も確認が終わったため、作戦会議へと移り変わる。

 

 

「リーダー、どうする?」

 

「……任務は続行する、校舎との連絡が可能だろうと不可能だろうと、元々そう簡単に達成出来る内容ではなかっただろう。それに、何日かかろうと、この任務は必ず達成しないといけないことだからな」

 

「任務……アリウスの収入源になる事業を起こすこと」

 

「うん、難しいことだけど、これからアリウスが外と関わって生きていくには何か1つはそういうのが必要だ。その辺りは僕に任せてよ、そのためについてきた面もあるんだから、詳しい説明は、道中話そう」

 

 

 アズサの言葉に付け加えるように答える。

そう、僕は外の世界の案内役としてここまで来たんだ、そういう所でがんばっていかなければ本当にただ隊の練度を下げに来ただけになってしまう。

 

 

「ああ、その事については私達がホムラの指示に従う形にしよう」

 

「……今はとにかく、私達がどこに居るのかを把握しないと」

 

 

 アツコが現在の最優先事項を共有してくれる。

そうだ、任務を達成するためにはまずこの現状を打破しなければならない。

 

 

「……もし今日中に街にたどり着けなかったから野営ですよね……。道具は持ってきてますけど……、雑誌で読みました。山の中はクマが出るって……もし野営中にクマに出会ってしまったらその爪と牙で……!きっと苦しいですよね……痛いですよね……」

 

 

 ヒヨリのネガティブが爆発しているが、そうだな、確かに野生動物の危険も考えないといけないのか。

一番良いのは遭遇する前に街に出ることだが……。

 

 

「クマ避け……いやそんな道具持ってないな。とりあえず道沿いに行くしかないか……?」

 

「クマ……」

 

 

 ミサキはクマに何か思うところがある様子だった。

その姿を見てとある昔のことを思い出す。

 

 

「ミサキ、サオリに作って貰うくらい好きだもんね。クマ」

 

 

 そうだった、ミサキ、あの頃は暇さえあればあの木彫りを見つめてたっけ。

今も持ってるのかな、あの彫刻。

ミサキのかわいいところを思い出して口元が緩む。

 

 

「なっ、す、好きっていうか……そもそも、本物のクマとあれは別物でしょ……!」

 

「あっえっ、その、ごめん……」

 

 

 もしかして間違えた…………!?

嘘、好きじゃなかったのか……どうしよう……どう挽回すれば……。

 

 

「…………過剰反応しすぎた、別に怒ってる訳じゃないから」

 

「…………よかったぁ……」

 

 

 本当よかった……間違えてなかった……。

 

 

「サッちゃん……」

 

「……そうだな。皆、野営にならないためにも早く移動するぞ」

 

「あっうん」「うん」「「了解」」「了解です」

 

 

 誰も野生のクマなんかには出くわしたくない。

皆心なしか早歩きで道沿いを進み始めた。

 

 

 

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