未来の見えていた少女の大切なもの   作:かぶり猫

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この度は、約半年もの間失踪まがいの行動を起こしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。
改稿を行うという話につきましては、全話文章表現の変更を行いました。
また、新たに0章13話、14話、17話を追加しましたが、改稿、新規挿入投稿した話につきましては、読まずともストーリーを追えるようになっております。
さらに、私自身のこの作品への向き合い方の変化や、安易にクロスオーバーを行った上、それがストーリーには大きく関わってこないというのは、クロス先への失礼にあたるという考えから、ホムラの持っている銃を「プラウラー」→「P90」と変更しました。
また、それにつきましてクロスオーバータグを削除いたしました。
もしこのクロスオーバーを楽しみにこの作品をお読みしていただいていた方がおられましたら、弁明のしようもございませんが、そういうものとして捉えていただけると幸いです。

重ね重ね心より謝罪申し上げます。

そして、改めて投稿再開となりますので、どうかこれからもよろしくお願いいたします。


2. 森を抜けて

「……何回見ても不思議だね」

 

 

 ぱち、ぱちと燃える焚火の光に当てられながら、アツコが呟く。

 

 

「何が?」

 

「えっとね、ホムラちゃんが火を付けれるの」

 

「あぁ……」

 

「……確かにな、それに、いつもは火起こしから始めなければいけないからな。こうやって簡単に焚火が出来るのも、不思議な感覚だ」

 

 

 サオリもその言葉にうなずき、薪の弾ける音や虫の鳴き声に耳を傾ける。

あれから日が落ちるまでの間に森を抜けることは叶わず、こうやって野営を行っているのだ。

作戦開始時間が遅かったこともありこうなることは十分に予想できていたため、予め道中で薪になりそうな枝を集めていたのが功を奏した。

3人交代で寝ずの番を行い、私たちは深夜から朝までを担当している。

こうやってアツコやサオリとゆっくり話せるのも、いつぶりだろうか。

最初の夜以来かもしれない。

 

 

「まあ、あいつらの実験で手に入れた、ちょっとした超能力みたいなものだよ」

 

 

 指先程度の炎を生み出し、手を振り払い消す。

 

 

「……その目とは、関係してるのか?」

 

「……まあ、そうだね」

 

 

 沈黙、困ったな、まだぎこちなさが抜けない。

そうだ、あのことについて確認をしてみよう。

 

 

「そうだ、2人は、『神秘』ってものの話、聞いたことがある?」

 

「……神、秘?」

 

「いや、無いな」

 

 

 二人とも無いということは、やはりあいつらが特別この不思議な力について詳しかっただけなのだろう。

 

 

「神秘っていうのはね、キヴォトスに住んでる人なら大なり小なり持ってるものなんだって。その中でも、僕たちは大側らしい」

 

「ってことは……私も?」

 

「うん、アツコも、もちろんサオリも」

 

「それで、僕たちの体が頑丈なのもそのおかげなんだってさ。それで、銃を撃ったりするときにも無意識に神秘を流し込んだりしてるらしい。神秘が強いほどその力も強くなる」

 

 

 だから、人一倍強い皆は、それ相応の神秘を秘めているのだろう。

僕が、あの男に契約の大天使と呼ばれたように。

少しの間考え込んでいたサオリが、分からないといった様子で口を開く。

 

 

「なるほど…………だが、そうなるとなぜホムラは体が弱かったんだ?その理論で行くと、未来を視たり火を生み出したり、ホムラの方が皆より神秘が強いように思えるんだが」

 

「ああ、それはね、この目が関係してるんだ」

 

 

 右眼を覆う眼帯に触れる。

 

 

「僕たちの体には、血液みたいに神秘が巡っている。だから無意識でも衝撃に対して防御できるし、足も速かったり腕も強かったりする。でも、僕の場合神秘自体は多くても全身を巡る神秘は微々たるもので、そのほとんどが目を離れずにいたんだ」 

 

 

 未来視という能力を維持するためにそうなっていたのだろうが、おかげで何度も死にかけた。

 

 

「そうか……だから……」

 

 

 言葉では肯定を示しているものの、サオリの唇は堅く結ばれている。

 

 

「……色々、聞きたいこととか沢山あるけれど、でも、今はとにかくホムラちゃんと再会できてよかった。それでいいんじゃない……?」

 

  柔らかな、花が咲くような微笑み。

昔に比べ多少の陰りはあるものの、その暖かな微笑みは暗い雰囲気になっていた僕たちに笑顔を戻すには、十分すぎるものだった。

 

 

「……そうだな」

 

「そうだ、ホムラ。その神秘とやらを自らの意思で扱うことでそれだけの力を扱えるのなら、私たちにもそれは可能なのだろうか?」

 

 

 予想外の質問に、口に手を当て考え込む。

確かにそうだ、この今も燃えているこの炎を生み出すのは僕の神秘だけの能力だろうが、それ以外の身体強化などは神秘を意識的に扱えれば十二分に可能だろう。

 

 

「……いけるとは思う、うん。炎は無理だろうけど、身体強化なら……これ自体は感覚的なものだから、僕に上手く教えれるかは分からないけど、不可能じゃないはずだ」

 

「よし、そういうことなら今から少し練習してみるか。もちろん周囲の警戒は欠かさずに、な」

 

「うん……!もしかしたら、私にもすごい力があったりして」

 

「確かにね、僕にもあるんだし、みんなにもそういう力があっても不思議じゃないや」

 

 

 三人して銃を装備し立ち上がると、すぐさま検証にとりかかる。

 

 

「じゃあまず、神秘っていうのはどんな感じなんだ?」

 

「えっとね、暖かいようで冷たくて、懐かしいけども、恐ろしいような……?」

 

「 ?????」

 

「………………なる、ほ、ど」

 

 

 伝わってない……!

でも、こうとしか言い表せないし……。

 

 

「ああでも!銃を撃つ時とかは無意識に銃弾に神秘を込めたりしてるから、その時の感覚を掴めれば……!」

 

「やってみるか……!」

 

「あっ、弾は抜いておかないと……」

 

「む、確かにそうだな……」

 

「……ふふっ」

  

「……アツコ?」

 

「いや、なんでも」

 

「ちょっと待って、僕も同じようにしてみるね」

 

「ああ、頼む」

 

 

 神秘はどうやったら扱えるようになるのか、これ自体はかなり重要な事のはずなのに。

焚き火を囲んで検証する僕たちの様子はまるで新しいおもちゃを貰った子供かのようで、夜が明けるのも忘れて夢中になっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ……ん」

 

 

 野営設備の撤収を進めながら、連日の疲れから出たあくびをかみ殺す。

 

 

「……三人とも、どうしてそんなに疲れてる訳?」

 

 

 ミサキから放たれた理解できないという視線が突き刺さる。

 

 

「あ、あはは……」

「……結局、使えなかったね」

「ああ……そうだな……」

 

「……なんだ、いつものか」

 

 

 あの後夢中になって色々と試したものの、結局二人が神秘を意識的に扱えるようにはならなかった。

僕が扱えるようになったのもあいつらの実験で無理やり自身の中にある神秘を自覚させれらたからであり。

それまでは自分の中にそのようなものがあるとは気づきもしなかったのだから、一朝一夕で会得しようという方が無理があるというのは言い逃れようもない。

僕の教え方が悪いというのは、間違いなくあるだろうが……。

 

 だがそうなると、僕には自身と同じ方法でしかそれを可能にする手段が思いつかない、それは、絶対にダメだ。

あいつらのようにしっかりとした設備を作れるわけでもなく、もしそれがあったとしても皆にとって苦痛になることは間違いない、そんなこと、させるわけにはいかない。

戦力が必要だというのなら、素直に訓練を重ねればいい。

そうでなくても、僕がそれ以上に強くなればいいのだ。

 

 

「痕跡の隠蔽はできたぞ」

 

 

 焚火の後処理など、僕たちがここに居たという証拠の抹消を行っていたアズサとヒヨリが戻ってくる。

 

 

「ああ、こっちも撤収が終わった」

 

「それとな、焚火を片付けてたら、ちいさな豚に出会ったんだ」

 

「ちいさな、豚……?」

 

「ああ、毛がふわふわで、目がきらきらとしててとてもかわいかった……!」

 

 

 アズサは目を輝かせて、翼をぱたぱたとはためかせながら感想を口にしてくれる。

それに対してヒヨリは疲れきった様子だ。

小さな、豚、野生の、豚、それって…………。

 

 

「危なかったです……うりぼうの近くには母親のいのししが居るって、もし雑誌で見てなかったら……」

 

「ううっ……それについては、警戒を怠った私のミスだ。ありがとう、ヒヨリ」

 

 

 野生動物……やっぱり警戒しておかないとだな。

少しの休憩を兼ねた雑談をしたのち、サオリに目配せを行う。

 

 

「……サオリ」

 

「……ああ。よし、そろそろ出発するぞ、今日中に街へ出たい」

 

 

 その一言を合図に、各々出発する準備を整える。

 

 

「道中、作戦で気を付けないといけないこととか、改めて説明するね」

 

「ああ、頼む」

 

 

 

 

再び、整備の行き届かず木の葉などが積もりかけている道路を歩き出す。

 

 

 

「まず……そうだね、今回の任務に皆を選んだ理由から話そうか」

 

 

 きっと、ここから話しておいた方が良いだろう。

最前列を行くサオリの隣を歩きながら、後ろを振り返る。

 

 

「今回は、僕自身も参加するってこともあって、コミュニケーションが円滑に取れる皆を選んだ……ということもあるけど、もちろんそれだけじゃない」

 

「スクワッドがアリウス分校で一番強い部隊で、有事への対応が優れてるっていう事ももちろんある」

 

「でも、一番大事なところはそこじゃなくて、みんながアリウスで一番、トリニティやゲヘナ……外の世界への偏見や憎しみを持たない部隊だっていうことだ」

 

「外の世界への、憎しみ……ですか?」

 

「うん、アリウスの子達は、多かれ少なかれ、ベアトリーチェの影響を受けている、それによる虚しさも、トリニティやゲヘナへの憎しみも。あの子達にとってはそれが外の世界の全てなんだ、でも、皆は違う、僕から見た主観でしかないけども本当の外の世界を知ってる。だから選んだんだけど…………合ってたかな?」

 

 

 外の世界へ悪感情を持つ子を連れてくるには、まだ早い。

ある程度の基盤が出来て、時間が経ってからでないと、あの子たちには受け入れられないだろう。

 

 

「ああ……私たちにはホムラやシズカに、アツコの件もあったからな、マダムの教育に疑問を持たざるを得なかった。ホムラの考えは合ってるだろう」

 

「だね、あれで心からの忠誠を誓えってほうが無理でしょ。……まあ、そんなことを考える余裕なんて無かっただけだけど」

 

 

 サオリとミサキ、2人がそれぞれの考えを述べる。

 

 

「よかった、理由はどうあれ、外の世界への偏見が無いことが重要だったから」

 

 

 これは、これからのアリウスの足掛かりとなる任務だ、そのようなことでの失敗は出来ない。

 

 

「じゃあ、次は今回の任務での注意点について話すね」

 

「まず一つ、外の世界でアリウスという名前を出すことはNGだ」

 

 

 皆が皆、目を丸くする。

 

 

「……それは、どうしてだ?」

 

 

 アズサが純粋な疑問を投げかけてくる。

突然自らの学園の名前を出してはいけないと言われれば、そうもなるだろう。

 

 

「…………トリニティとの関係?」

 

 

 その疑問にアツコが答える。

 

 

「うん、アリウスの名前が不必要ないざこざを呼び込む可能性があるからね。力を……押しも押されない力を手に入れるまでは出しちゃだめだと、僕は思う」

 

 

 アリウスという名前は、トリニティで生活していても一度も耳にすることが無かった程度にはもう過去のものとなっているようだが、それはのんびりと、何も知らない一般人として生活している時の話だ。

トリニティの上層部……ティーパーティーなどの政治を行う層がどう考えているかなど分かりはしない。

トリニティにとってアリウスとは、過去に自らが追いやった者たちの名前、そんな存在が今になって表舞台に現れてきたらどうなる?

何かしらの干渉は避けられないだろう、もしトリニティそのものが干渉して来なかった場合でも、クロノスなどの報道機関に目を付けられる場合もある。

この場合は……知名度を上げる手段としては有用かもしれないが、どんな尾ひれを付けられるかなど分かったものではない、その尾ひれでトリニティを刺激するなどという状況はもってのほかだ。

 

 

「だ、だからジャケットについてる校章を隠してくるようにって命令があったんですね……」

 

「なるほど、あの命令はそういう意味だったのか」

 

「そうだね、ごめん、最初から全部伝えられなくて」

 

 

 説明不足だったのは紛れもなく事実だ、任務を下すのにそこまでの時間を裂けず、あとから説明すればいいと考えたのだから弁明のしようがない。

 

 

 「いや、大丈夫だ。ホムラが生徒会長をやってるのはみんな知ってるからな」

 

 「……こうやって付いてくるまでに、先の仕事まで終わらしてきたんだろうことは少し考えればわかるしね」

 

「みんな……」

 

 

 やっぱり、足を引っ張らないようにしなければ。

そのようにして歩いていると、次第に鬱蒼とした森の様子はなくなっていき段々と木漏れ日が差し込むようになってくる。

 

 

「ん、暖かい……」

 

「……そろそろ森を抜けるね」

 

「そうだな、とりあえず今は何が起こってもいいように各自警戒を」

 

「うん、皆、次にすることは街についてから話すよ」

 

 

 これまではいい、ここからが問題だ。

まだ僕たちが居る場所が、どこの自治区なのかすらまだわかっていないのだから。

 

 

「は、はい!」

 

「了解、アリウスの外の人間……どんな相手だろうと警戒を怠るものか……!」

 

「あ、あははは…………」

 

 

 

 

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