「寒くなってきたなぁ」
そう思いながら月が大きく輝く空を見上げる。
家を出てから3ケ月ほど経っただろうか、肌寒く感じるような風と共に街並みに黄色や赤色が増えてきた、こうして実際に見る紅葉は夏の緑とは違う美しさを感じる。
この前までは連日報道されていた私の捜索願いももう報道されなくなり、最近は未来を見る必要もないため体の調子もいい。
そのためここ二ヶ月は運動も兼ねてトリニティ内の観光地や建築物を見て回っていた。
そのおかげか、最初のころとは比べ物にならないくらい体力がついたし身体能力も上がった気がする、ただ体の強さだけは変わらないため、何か別の要因があるのだろう。
「また、会えるのかな」
あれからミカという女の子には会えていない。
もっともあの日出会ったのもただの偶然であり、このトリニティという広大な自治区でその偶然をもう一度期待するのはなかなかに厳しいものがある。
それでも、また会えたらいいなと思うくらいには、あの数時間で絆されてしまったようだ。
このP90も、あの子に言われたから買ったようなものだし……。
「また……」
なぜか最近視線を感じることが多くなった。
一瞬だけであったり、視線を感じるだけで特に他におかしなことが起こったりはしてないため深く考えることはしてないのだが。
じっと私を見つめてくる視線と、もっとこう、興味を持たれているような、未知の存在を前にして目を輝かせているような、そんな視線を感じる。
トリニティも結構見て回ったし、そろそろ別のとこに行ってもいいかもしれない。
でもそうするとあの子には多分会えないよなぁ。
なんてことを考えながら視線を前方へ戻す。
人が、いる。
道の真ん中に…スーツの大人?いやそれだけなら問題はない、ただ道の真ん中に突っ立ってるだけのちょっと迷惑な大人で済む。
ただあいつは明らかに
それにあの視線、間違いない。
最近私を見ていたのはあいつだ、あの好奇心を隠せてない、背筋が凍りつくかのような視線。
こういうのは関わらない方がいい、そう考え刺激しないように静かに来た道を戻ろうとする。
「おや、どこに行くのですか?侍留ホムラさん」
「っ!」
唐突に名前を呼ばれた動揺で足が止まる。
いつ私が侍留ホムラだとばれた?あの大人とは会ったことは無いはず。
いやそれよりもここで反応を見せたら―――――
「クックックッ……やはりそうでしたか。言ってみるものですね」
―――――――やられた!
「そう構えないでください。私にはあなたをどうこうしようというつもりはありません。少し、確認をしに来ただけですから」
「自己紹介がまだでしたね。私は…いえ我々のことは‟ゲマトリア”とだけ、以後お見知りおきを」
黒い体に走る亀裂から青白い光が漏れている不気味な容貌にスーツ姿の大人は、至極丁寧に語りかけてきた。
「ゲマトリア……?それで……何か用ですか」
私をどうこうするつもりはない?いや、私の名前でかまをかけてきたくせにそれは無いだろう。確認するためにこの大人の前で未来視を使うのはまずいと、それだけは直感で理解できた。
ただ、無視してこの場から去るにはこの大人は怪しすぎる。
せめて親とつながってるかだけでも確かめなければ。
「いえ、今回はただご挨拶をしに来ただけです。あなたに宿るその膨大な神秘……そしてその目、すごく興味をそそられますが……今はまだ、その段階ではありませんから」
「神秘?段階?一体何を…」
スーツ姿の大人は、青白い光をゆらめかせながら一方的に語り続ける。
「クク…失礼、こちらの話です。……もう十分ですかね、ではまた、機会があればお会いしましょう」
「は?いや、ちょっと!」
行ってしまった 、言いたいことだけ言って、本当に私には何もせず。
「何だったんだ…一体」
伸ばしかけた手から力が抜け、その場に立ちつくす。
神秘?そんなものがこの体にあるなんて聞いたことも無い……。
待て、あの大人、その後になんて言った?
『目』?まさか未来視のことか?もしそうだとするのなら。
「あっち側の大人……!」
それにあいつは確認と言っていた!
つまりそれは私が本当に侍留ホムラかどうかの確認であって、それが意味するところは――――――
足音が聞こえる。
「まずい!」
とっさに近くの路地裏へと飛び込む。
「なあ、この場所にいるっていうガキが侍留ホムラでいいんだよな?」
「うん、そうだと思うよ、さっき依頼人の人もそう言ってたし」
「行方不明の子供を親のとこに連れて行くだけでお金もらえるなんていい仕事見つけたよねー」
「しかも場所は教えてくれるから連れていくだけでいいってのもすごいよね~!楽な仕事じゃん!」
あの大人が去っていった方向から少女のものらしき声が聞こえてくる。
やられた、あいつにとっては私が名前に反応した時点で目的は達成してて、あとは時間稼ぎに過ぎなかったんだろう。
とりあえず未来を見て彼女たちがどう動くのかを把握しなければ―――――
『あれ?いないね』
『もしかしてだまされたか?』
『…いや、そうとも限らないよ?案外、こっちの方にいたりして――』
見つかってる!?…だったら、どうせすぐに見つかるならこっちから先に動き出す!
通りから離れるように、そっと路地の奥へと進む。
「あれ?いないね」
「もしかして――――おい!こっちから足音聞こえたぞ!」
「え!逃げるつもりかな!まずいよ~!」
バレた!走る、走る、とにかく全力で走る!
こっちには先に動き出したアドバンテージがあるけどきっとそれ以上に彼女達の走りの方が速い!だから追いつかれる前にどこかに身を隠さないと!
「はっ……はっ……はぁっ……!!」
路地を抜け、曲がり角を駆使しながら走り続ける、自分でも今どこに居るか分からなくなりながらも足を止めることは無い。
「何か、何か隠れれる場所は―――」
走りながら何処か隠れることが出来そうな場所を探していると、長い間放置されてきたのであろう聖堂を見つける。
ここなら……!
「っ!」
迷うことなく聖堂の中に転がり込む。
「こっちの方逃げてったぞ!」
「あれ~?いないよ?もうそろそろ追いつけそうだと思ったんだけどな~」
「この建物の中じゃない?」
「はぁ……はぁ……」
聖堂に入るとき、かすかに話し声が聞こえてきた、もうここに隠れてることがばれている。
「とにかく……奥に……かくれないと……」
息も絶え絶えになりながら聖堂の奥へ向かう。
この聖堂、想像以上に隠れることが出来そうな場所が無い。
このままだと……
探し続けてついに最奥まで辿り着き、もうダメなのかと諦めかけた所でとあるものを見つける。
「これは…?」
階段だ、おそらく地下に続いているのだろうが、なぜこんな隠すように作られているのだろう。
ここに入る?この先が行き止まりだったときはそれこそ終わりだ。
でも、ここ以外に隠れれるような場所は……
どこまで降りていくのかすら分からない暗闇を前にして二の足を踏んでいると、聖堂の広い空間に反響して声が聞こえてきた。
「この先じゃないか?」
「それにしてもすごい逃げるよねー、そんなに帰りたくないのかな?」
「さあ?」
さっきの奴らだ、もう躊躇っている時間はないらしい。
今動かなければここで捕まるだけだ!
私は息をつく間もなく暗闇の中へと足を進めることとなった。
「おや、聖堂の中に入りましたか、確かあの聖堂からアリウスへと向かう通路があったはず。あそこは確かベアトリーチェが……まあいいでしょう。また機会があればお会い出来るかも知れませんね、侍留ホムラさん」
このまま進めていくと原作に到達するまでかなりの時間がかかるのですが、過去編が1章終わるごとに原作も1章進めるなど同時進行で進めたほうがよろしいでしょうか?(過去編で原作との相違点がかなり発生する予定なので作者の文章力では状況がわからなくなる可能性があります)
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時系列に沿って進めよう
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原作も進めよう(0章終了後アビドス開始)