未来の見えていた少女の大切なもの   作:かぶり猫

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5.死の道を抜けた先には

 

「はぁ……はぁっ……!」

 

 

 かすかな光しかない闇の中へ、壁を支えに駆け下りていく。

こうやって触っているだけでも破片がぽろぽろと崩れていくほど風化しており、手入れがまるでされていなかったことが伺える。

ここまでなるのにはとても長い年月が必要だろうに、いったいいつ作られたものであるのか、まるで見当がつかない。

そんな不要なことを考えていたためにつまづきそうになりつつも、階段の下へとたどり着くことが出来た。

 

 

「うわっ!とと、ふぅ……。思ったより広いな」

 

 

 地下空間にはどんよりとした空気が漂っており、どこまで続いているのか、まるで先が見えない通路が1本のみ。

ここからどうするか、もし彼女らが階段に気づき、ここが行き止まりなら私に逃げ道はない。

この場所がばれることなくやり過ごせたのならそれが1番なのだが……

ただ、もしこの場を凌ぐことが出来たとしても、トリニティに戻ることはできないだろう。

きっとそこら中に親の手が回ってる。

つまり私には彼女達がここに気づく前に奥に進み、何処か別の出口に繋がっていることを願うしか道は無いということだ。

 

 

「先のこと考えてても仕方がないよね、とりあえず進まなくちゃ」

 

 

 そう意識を切り替えたのち、手提げから夜の散策用に買っていた小型ライトを取り出し明かりを確保する。

あ、でも『また今度』の約束を諦めるのは少し寂しいなぁ。

などと後ろ髪を引かれつつ一歩を踏み出す。

 

 何かがはまる音と同時に頭上から風切り音が聞こえた。 

 

 

「…え?」 

 

 

 風切り音が鳴った方向を見ると、壁に矢が突き刺さっていた。

罠……?もし私の身長がもう少し高ければ死んでいた?

そのことに気づいた瞬間、汗が噴き出す、喉が渇く、この瞬間に思考をしている自分がいなかったかもしれないという事実が、私の足を棒のように固まらせる。

今まで私は自らの自由を求めて逃げてきた、その結果がここでの死になるかもしれないという可能性が思考を鈍らせる。

 

 

「…っ!」

 

 

 呼吸が荒くなる、目が霞む。

だが、いつ彼女たちがここに気づくかわからない。

前に進まなければ、立ち止まってる暇はないのだ、大きく息を吸い込み、吐き出す。

こう考えればいいのだ、あの家に連れ戻され生きるよりは、この先に進む方がまだマシだ、と。

 

……うん、大丈夫、ここまで来たんだ、行くしかない。

 

 

「……よし」 

 

 

 未来を視る。

〘10歩先で上からの矢に撃ち殺される。〙

10歩目で踏み抜いた場所を避ける、成功。

分かれ道があればその先での未来を見ればどうにかなる。

うん、これでいこう。

 

 未来を視る。避ける。 

 

 未来を視る。右へ向かう。

 

 一面の砂に立つ水色の少女と白銀の蛇が見える。

 

 未来を視る。左へ向かう、避ける。

 

 雨に濡れ膝をつく天使と冷め切った手が見える。

 

 未来を視る。避ける、避ける、避ける。 

 

 磔にされる少女、それを眺める赤い女が見える。

 

 

「いっ……づぅ……!」 

 

 

 久しぶりの未来視の酷使によって頭が割れるかと錯覚する程の痛みに襲われ、足が止まる。

だがここで未来視を切る訳にはいかない。

まだあるとも分からない出口に着いてもいないのだから。

再び、走り出す。

 

 未来を視る。左へ、真っすぐ、左へ。 

 

 崩壊する聖堂、倒れ伏す少女、一人立つ薄桜色の少女が見える。

 

 未来を視る。右へ、避ける、避ける、避ける。 

 

 横たわる少女と髑髏に薔薇のマークを付けた大人が見える。

 

 未来を視る。未来を視る。未来を視る。未来を……

 

 

 

 ……どれくらい経っただろうか、自分でも分からなくなるほどの時間走り続けている。

すると、肌を刺すような冷たい、けども清々しい風に意識を引き戻された。

……風?こんな地下に風なんて吹かないはず。

もしかして出口が近い?

痛みに思考を邪魔されながらも、その考えへと至る。

いつの間にか俯いていた頭を上げる、かすかながらも光が差し込んでいる様子が見えた。 

 

 

「出口だ……!」

 

 

 疲労により震える足で前へと進む。

段々と歩くスピードが上がる。

最後には小走りになりながら、こけそうになりながらも階段を上っていく。

地上へとたどり着いたと同時に、先程までとはまるで違う光量に思わず手で顔を隠した。

すこしづつ、光にやられた目を開く。

 

 

「なに、ここ…」

 

 

 道を抜けた先にあったのは、雲がかかった朝空の下、建物のほとんどが崩れ廃墟と化した誰もいない街だった。

……もう朝になってたのか、いや、それはいい、そんなことよりも大事なことがある。

この街はいったいなんだ?あのトリニティにこんな場所があるなんてことは聞いたことが無い、私が通ってきた地下通路の長さを考えると違う学区につながっていたと考える方がまだ自然だ。

だが、そうだとしてもここまで荒廃した街なんて知らない、一体ここは――――

 

 

「いっ……」

 

 

 未来視の反動で頭痛が止まない、一旦この街について考えるのはやめよう。

ここについては後から考えても遅くは無いはずだ。

今は……そうだな、どこか休める場所を探そう、風の入らない……いや、屋根さえ残ってればそれでいい。

 

 

 

そう考え、私はこの生きるものが何一つ見当たらない灰色の街を目指し歩きだした。

 

 

 

 




・預言者の瞳について
彼女の未来視はその時彼女自身が想像している行動をした場合、起こる可能性が最も高い未来を視ている、遠い未来程負荷が大きくなる様子だった。

このまま進めていくと原作に到達するまでかなりの時間がかかるのですが、過去編が1章終わるごとに原作も1章進めるなど同時進行で進めたほうがよろしいでしょうか?(過去編で原作との相違点がかなり発生する予定なので作者の文章力では状況がわからなくなる可能性があります)

  • 時系列に沿って進めよう
  • 原作も進めよう(0章終了後アビドス開始)
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