未来の見えていた少女の大切なもの   作:かぶり猫

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僕に、あのときの選択は間違いじゃなかったと言える日は一生来ないのだと思う。
結果的にはたくさんの子たちをあの女から助けることが出来たけど、間違いなくあの時は自分のことだけを考えていたし、三人のことを考えるのなら、僕の選択は間違っていたと、そう思ってしまうから。



7.変わり始める認識

 

 未来が視える。

 

不気味さを感じる無機質な部屋の中、四人の異形が話し合っている。

 

 

『……ではベアトリーチェ、最後に――――の進―聞かせていただきましょうか』

 

 

 影のように黒く染まった体に亀裂が入った、スーツ姿の異形がそう口にする。

すると、地に着くほどに長い黒髪に赤い肌、純白のドレスを着込み、血のように赤い瞳のついた翼が顔を覆う異形が答えた。

距離があるからだろうか、声がよく聞こえない。

 

 

『ええ、いいでしょう。先日、私の領――預――の一人を捕まえることに成―――ました。どうやらまだ天―――と至って――――ったようですが、そちらの方が私たちにとっては都合が、――!』

 

 

 言葉が途切れた瞬間、無数の瞳がこちらを射抜く。

そして何かに掴まれるような感覚に陥り、体が奴らの方向へ引っ張られるように感じる。

 

 

「っ――!?」

 

 

これは未来視の映像のはず!

未来の相手が私を認識している!?

 

 

『どうした、ベアトリーチェ』

 

『……いえ、ネズミが紛れ込んでいたようですが、所詮はネズミ、それももう罠にかかった後のネズミでした、このまま放っておいても大丈夫でしょう』

 

 

 唐突に体の自由が戻るのを感じる、同時に、意識がこの場所を離れていく。

 

 

『では続きを話しましょうか、まず預言者についてですが――――――』

 

 

 

 意識が浮上する。

 

 

 

 

「っはぁ!はぁ……今のは……」

 

 

 未来視の中の相手に気づかれた?なぜ?

 それにあのスーツ、もしかしてあの集まりがあの大人の言ってた……

 

 

「あ、起きた」

 

「す、すごい汗ですね……寝てる時もすごい苦しそうでしたし……やっぱり私たちに逃げ場はないんですね……」

 

 

 この二人は誰だ!?それにここは……?

慌てて立ち上がり周囲を確認する。

家の中だ、老朽化の影響かあちこちに穴が開いているが、そのどれもが板を張り付けるなどして補強されていて、この自治区に来てから見た建物の中で最もその役割を果たしていると言えるかもしれない。

二人を警戒しながら辺りを見回し、同時に自身の持ち物も探していると、ドアが開き人が入ってきた。

 

 

「あ、起きたんだ、大丈夫?」

 

「え、ああ……うん」

 

「そっか、良かった。でもまだ万全じゃないんだろうから、しっかり休んでて。ヒヨリ、ミサキ、追手とかは来てなさそうだったよ」

 

 

 この子はさっきの……、そうだ、思い出してきた。

ガスマスクの二人組と戦闘した後、この子に休める場所を要求して、その後気を失ったんだっけ…………守ってくれたんだ、約束。

現状を整理していると、ふと自身の視界が普段より広いことに気づき、顔に触れてみる。

 

 

「仮面が無い……!」

 

 

 いつ落とした?気を失うまでは確かにあったはず、いやそれよりこの子たちに顔を見られた!

 

 

「ん?ああ、お面なら倒れた時に壊れちゃったみたいで、そのままにしておくのは危なそうだったから外したんだけど……ダメだった?」

 

「……いや、大丈夫。……それと、ありがとう」

 

 

 そうだ、この子たちが私のことを知ってるならその時点で私を避けてわざわざ面倒事に関わろうとしないだろう。

この子たちは私が行方不明扱いで追われていることを知らない、今私がここにいることが何よりの証拠だ。

先程の二人をミサキ、ヒヨリと呼んだ少女はぼろぼろな棚へマガジンを抜いたハンドガンを置くと、こちらへと振り返る。

 

 

「そういえば、まだあなたの名前聞いてなかったよね、私は錠前サオリ。あなたは?」

 

「……侍留ホムラ」

 

「ほら、二人も」

 

「戒野ミサキ」

 

 

 ミサキと名乗った少女は、一言だけ発すると静かにこちらを見張る体勢へと戻る。

 

 

「槌永ヒヨリです、よろしくお願いします……でいいんですかね……?」

 

 

 ヒヨリと名乗った少女は、言い終えるとこちらの様子を伺う様なしぐさを見せた。

……この子たちが、あのときサオリが心配していたものなのだろうか。

とりあえず、返事を返さなければ。

 

 

「わかった、よろし」

 

 

 グゥ~、と私のお腹から音が鳴り、辺りが静まり返る。

 

 

「………………!!」

 

 

 顔が火照る、恥ずかしいとは知ってたけど、まさかこんなに恥ずかしいだなんて思いもしなかった……!

 

 

「ふふっ、じゃあごはんにしようか、そういう約束だったもんね」

 

 

 サオリが棚の奥から缶詰などの食料品を取り出して私たちの目の前に置いた。

 

 

「わぁぁ……!たくさんごはんがあります……!こんなのいつぶりでしょうか……!?」

 

「ちょっと、あんまりたくさん食べないでよ?明日からの分もあるんだし、ただでさえ一人多いんだから」

 

 

 そんな話をしながら、ビスケットと魚の類だろうか、種類まではわからないが缶詰がひとつづつ配られる。

……こういうものを食べるのは久しぶりだ、家にいるときは飽きるほどずっと食べてきたっけ、だから味になんて大して期待してない、空腹が紛らわせればそれで十分。

 

 

「……いただきます」

 

 

 そう思い無感情に缶詰を口に含む。

 

 

「……?」

 

「えへへ……おいしかったですぅ」

 

「え?もう一缶全部食べたの?早くない?」

 

「今日は一缶だけだよ」

 

「そんなぁ!?」

 

「うぐっ……そんな顔してもだめ!今日ばっかりはホントにダメ!」

 

「うぅ……そうですよね……せっかくたくさん手に入ったんですし…………」

 

「……もう、はい、私の一口あげるから。これで我慢してね?」

 

「…………私の、もういらないからあげる」

 

「えっ……?あっその……ありがとうございます!えへへ……」

 

「……ふふっ」

 

「……」

 

 

 缶詰ってこんなにおいしいものだったか?いや、そんなことは無いはず。

この味、前も食べたことがある、ツナだろう、前食べたときは別に何も思わなかったはずだ。

前と何が違う?周りの騒がしさだろうか?

……人と一緒に食事をすると普段よりおいしくなるという話を聞いたことがある。

そんなことでここまで味が変わるのか?本当に?

とめどなく疑問があふれてくる、その中でも、ふと気になったことを口にしてみた。

 

 

「……三人は、どんな関係なの?」

 

「私たち?私たちは家族だよ」

 

「家族……?血もつながってないのに?」

 

「確かに血はつながってないけど、ずっと一緒にいるから、だから家族」

 

 

 サオリはそう、至極当然のことを言うように私の疑問に答える、私が本で知った家族はそんなあいまいなものじゃなかった。

でも、こんな環境でも、彼女たちは缶詰とビスケットを食べながら本当に、本当に楽しそうな雰囲気で話している。

本の中の家族みたいに、だ。

なぜなのだろうか、彼女達といればわかるのだろうか?

……分からない、だったら、他のことも聞いてみようか。

 

 

「……そういえば、まだ聞いてなかった。ここはどこなの?」

 

「アリウスでしょ、それ以外にある?」

 

「アリウス……?」

 

 

 聞いたことが無い、トリニティ周辺の学園の名前はある程度覚えていたはずなのだが。

すると先程から私のことをどこかきらきらした目で見ていたヒヨリが口を開いた。

 

 

「そ、それにしても……ホムラさんの服ってすごいきれいですよね、私とは比べ物にもならないくらい……。今までアリウスにいたのに会わなかったなんてびっくりします」

 

「?いや、私はこのアリウス?って自治区の外から来たんだけど……」

 

「「「え?」」」

 

 

 一瞬にして三人の視線が私に集中する。

なんだろう、そこまで変なことを言ったつもりはないのだけれど。

 

 

「それ本当な」

 

「えぇぇぇぇぇ!アリウスの外からぁぁ!?外に出れるとこがあるんですかぁぁぁ!?」

 

「うるさっ」

 

「ひ、ヒヨリもうちょっと声抑えて!でも本当に外から来たの!?」

 

 

 三人が一斉に顔が触れ合う程の距離まで近づいて来る、その圧に思わず仰け反った。

み、耳が……頭がぐわんぐわんする……。

 

 

「う、うん。街のはずれの方にある地下通路を通ってトリニティから……」

 

「そ、外から来たから服もきれいだったんですねぇぇ……」

 

「そんなはずなくない?外に出れる道があったんっだったらもっと話題になっててもおかしくないでしょ」

 

「……アリウス分校の人たちが隠してた……?」

 

「それは……まあ、あり得るか」

 

「そ、外ってどんなとこなんですかぁ…?わ、私たちも出れたりとか……」

 

「いけるとは思うけど……。罠と分かれ道がたくさんあって迷路みたいになってるから、対策してかないと無理かも」

 

 

 言えなかった、私が未来を見てここまで来たことは、私と同じくらいの子たち相手でも、いや、私と同じくらいの子たちだからこそ言えなかった。

大人に利用価値のある存在として見られるのは慣れてたけど、同年代の子たちにさえそんな風に見られるのは耐えれる気がしなかった。

 

 

「へぇ……。そんなとこを通ってまでわざわざアリウスに来たんだ……」

 

 

 ミサキの目つきが鋭くなる。

 

 

「もう日も落ちるし……明日でいいから、そこに連れてってくれないかな?」

 

「……うん、わかった」

 

「アリウスの外ですかぁ……。雑誌にはないこともいっぱいあるんですかねぇ…えへへ……」

 

「……」

 

「今出れなくても……いつかはみんなと一緒に……」

 

 

 言わなかった、おそらくこんな生活をずっと続けてた子たちに、私にはない大切なものを持っているであろう子たちに、私が手を貸したらここから出れるだろうに。

私は間違ってない、自分のことを一番に考えることの何が悪い?まだ会って一日も経ってないだろう。

そう考えてるはずなのに、それが私の考えのはずなのに、何度言い聞かせても胸の奥に残り続けるこの言いようのない気持ちが晴れることは無かった。

 

 

 

 






「こちら第3分隊、カタコンベから続く足跡を発見した」

 

このまま進めていくと原作に到達するまでかなりの時間がかかるのですが、過去編が1章終わるごとに原作も1章進めるなど同時進行で進めたほうがよろしいでしょうか?(過去編で原作との相違点がかなり発生する予定なので作者の文章力では状況がわからなくなる可能性があります)

  • 時系列に沿って進めよう
  • 原作も進めよう(0章終了後アビドス開始)
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