未来の見えていた少女の大切なもの   作:かぶり猫

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8.差し伸べられた手

 

「よし、昨日のとこまで来たね。それじゃ、行こうか。ホムラ、案内お願いしてもいい?」

 

「……分かった」

 

 

 結局、昨日は彼女達の家に泊めてもらった。

昨日初めて出会った相手と一緒だったというのに、家を出てから1番眠れた気がする、そのおかげだろうか、昨日あれだけ目も体も酷使したというのにやけに体の調子がいい。

理由は……まだ分からない。

あの時胸に感じた気持ちは、晴れることなく私の中に残り続けており、消えるどころか、段々と膨らみ続けているような気さえもする。

 

 

「アリウスの外……。どうなってるのでしょうかぁ……、えへへ……」

 

「……まだほんとにあるとは決まってないけどね」

 

「こら、ミサキ」

 

 

 きっとそれが普通の反応だろう、自分の知らない場所から来た誰とも知れない人間が言うことなんて怪しいに決まってる。

むしろサオリが純粋すぎるのだろう、私が伝えた無理のある経緯を信じるほどに、それを私は……いや考えるのはやめよう。

昨日歩いた場所を辿っていく、次第に家屋の数も減り、草木が増えていく。

道路も郊外に向かうにつれ風化がひどくなっていき、改めてこの自治区の環境の悪さを実感する。

 

 

「こんなとこまで来たのは久々かも……」

 

「確かに、このあたりには何もないし来る用事もなかったもんね」

 

 

 後ろの話し声を聞きながらしばらく進むと地下通路の付近、遺跡のような場所にたどり着く。

 

 

「この先に地下通路が…待って」

 

 

 前方に何か気配を感じ立ち止まる。

 

 

「お、おぅわぁ!」

 

「どうしたの?立ち止まって」

 

 

 あれは、人影か?目を凝らしてよく見る、そうすると、つい先日相手にしたガスマスクの姿が確認できた。

 

 

「……ちょっとこっちきて」

 

「は、はいぃ!」

 

「どうしたの……、嘘だったとかそういう話じゃないよね」

 

 

 とっさに三人を連れてかろうじて残る壁の裏へ隠れる、あの通路、ここの生徒が管理してたのか?

だとしたらなぜここの住民にまでその存在を隠すのだろう、まるでこの自治区から人を出すつもりがないかのような……。

 

 

「三人とも、あっちの方見て。あの先に通路があるんだ、でも……」

 

「え?……アリウス生!?本当に隠してたの!?」

 

「そ、そんなぁ……目の前に外に続いてる道があるに行くことが出来ないなんて……あんまりです……」

 

「あの警備……通路なんてあったんだ……」

 

 

 三者三様の反応を見せる中、私はガスマスク達を観察する。

一人が見張っていて、もう一人は休憩してるのか、昼夜で二人で回しているといったところだろうか。

あの様子だと交代の時間をつけば忍び込めるかもしれない、でもその隙を突くには相手の動きがあらかじめ分かっておかないといけない。

……そう、未来視などで、それしか手段がない状況で私は

 

 

「……今は警備があって行けないけど、私がここに来たときはいなかったから、別の日ならいけるかもしれない」

 

 

 嘘をついた、今日でも、私の力を使えば通路に入り込むことはおろかアリウスから出ることすら可能だろう、だが、その言葉が私の口から出ることは無い。

 

 

「そうだね、もし今日は通路に入れたとしてもホムラの言う通りなら準備が必要だし、そうしよっか。ホムラ、場所教えてくれてありがとう!」

 

 

 サオリはその澄んだ瞳で私の目を真っすぐ見つめ、感謝の言葉を返す。

つい目を逸らした、私にはその瞳を見つめ返すことが出来なかった。

 

 

「……とりあえずここを離れよう、いつ見つかるかもわからないし」

 

「……そうだね、私もその方が良いと思う、姉さん」

 

「そうだね、来た道をもどろっか」

 

 

 どうにか言葉を絞り出し、遺跡から離れるように移動を始める。

空は朱に染まり、雲の隙間からこぼれだした光が私たちを照らす。

もうこんなに時間が経っていたのかと驚くと同時に、その眩しさに思わず顔を伏せた。

そうしてしばらくしたころ、ふと、前を歩いていたサオリが振り返る。

 

 

「そういえばさ、ホムラってこれからどうするの?あの通路が使えないんだったら帰れないでしょ?」

 

「あ……」

 

 

 そうだ、私はいつもみたいに逃げてきただけで、ここで何をするか、これからどうするかなんて考えてなかった、でも……。

 

 

「いや……。もとから帰る場所なんてないし、アリウスで何とか生活していこうと思う」

 

 

 彼女達の様子を見る限り、それは簡単なことじゃないだろう、だが、アリウスの外に出ないのならそれしかないのも事実だった。

少しの沈黙、一瞬の様で長い時間の後、彼女は再び口を開く。

 

 

「じゃあさ!私たちと一緒に来ない?」

 

 

 その提案は、この場にいる全員にとって予想だにしないものだった。

 

 

「え……?」

 

「姉さん!?」

 

「わ、私はいいと思います……。みんなでいた方がつらいことも分け合えますし……」

 

 

 サオリの発言にミサキが目を見開き、ヒヨリが頷く、私も彼女の言葉に驚きを隠せなかった。

なぜ?なぜそんな風に他人に手を差し伸べることが出来る?

確かに四人の方が何かを探すにしても効率がいいだろう、でもそれは私がちゃんと使える存在だったらの話、そんなのたった一日では分かりっこない。

それにその分一日で消費する食料も多くなるし、彼女たちにとってそれは死活問題だろう、こんな簡単に決めていいことでは無いはずだ。

でも、それでも本当に一緒に行っていいのなら……。

 

 

「本当に……。ついて行ってもいいの?」

 

「うん。昨日と今日で、ホムラが悪い子じゃなさそうってことはなんとなくわかったから、だったら、みんな一緒の方が良いでしょ?」

 

 

 手が、差し出される。

夕日を背負っていたからなのだろうか、顔を上げて見えた彼女はとても輝いていて、今まで見てきたどんなものよりもきれいだった。

知りたい、彼女達が言う家族がどんなものなのか、家族がいるからそこまで優しくなれるのか、家族がいるからこんな苦しそうな生活の中でも笑っていられるのか、私の胸に突き刺さったままのこの感情はどうすれば晴れるのか。

知りたい、ただ、それだけだった。

 

 おずおずとサオリの手を取る、そうすると、彼女はさらに笑みを深めた。

 

 

「ねっ、二人とも、いいよね?」

 

「はぁ……。まぁ、姉さんがそう決めたならそれに従うよ」

 

「こ、これからよろしくお願いします……、それにもしよければ外のこともいっぱい教えていただけたら……なんて、えへへ……」

 

「じゃあ、今日はもう帰ろうか。ね、ホムラ!」

 

「わぁっ!」

 

 

 そう言ってサオリは私の手を引く、その手のぬくもりを、その笑顔を、私は忘れることは無いだろう。

思えばこの瞬間が、あてもなくあちこちをさまよい生きる意味すらなく、ただ死んでないだけだった私が、生きていくということを知った最初の日だったのかもしれない。

 

 

 





「私が一番年上だから、ホムラも私のことはお姉ちゃんって呼んでもいいよ、2ヶ月くらい前に6歳になったんだー」

「6歳?……私先月で7歳なんだけど……」

「え」

「えぇぇぇ!?サオリ姉さんよりも年上だったんですかぁぁ!?」

「……ヒヨリよりも小さいのに……、そうだったんだ……」

「で、でも私のが身長高いし……」

「……サオリお姉ちゃん」

「!!」

「姉さん……それでいいんだ……」

このまま進めていくと原作に到達するまでかなりの時間がかかるのですが、過去編が1章終わるごとに原作も1章進めるなど同時進行で進めたほうがよろしいでしょうか?(過去編で原作との相違点がかなり発生する予定なので作者の文章力では状況がわからなくなる可能性があります)

  • 時系列に沿って進めよう
  • 原作も進めよう(0章終了後アビドス開始)
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