未来の見えていた少女の大切なもの   作:かぶり猫

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9.積み重なる淀み

 

 サオリ達と一緒に行動するようになってから数日、やはり外から来た自分とミサキ、ヒヨリの二人との間には、何とも言えない溝のようなものがあった。

本来なら一番新参者の私がその溝を埋めるために行動するべきなのだろう、だが、いったい何を話せばいいのか、人との関わりを始めて半年ほどの私には地下通路を走り抜けることよりも難しいものがあった。

 

 

「あ、あのぉ……。ホムラさん、ちょっといいですか……?」

 

「ん、なに?」

 

 

 うんうんと悩んでいると、さっきまで雑誌を読んでいたはずのヒヨリが目の前に居た、どうしたのだろうか。

 

 

「ここの読みが思い出せなくてぇ……ホムラさんならわかりますかね……?」

 

 

 ヒヨリが雑誌を指さす、これは……旅行雑誌だろうか。

 

 

「それは……たぶん礼拝堂だけど……これ、トリニティの雑誌?」

 

 

 それにしては載ってる写真が古い、それほど前から他自治区との交流がないということだろうか。

 

 

「だとおもいます、すごいきれいですよねぇ……。こんなに苦しいことばかりの世界にも、きれいな場所がたくさんあるんですもんね……」

 

「そう……だね」

 

 

 私が皆に未来視を伝えていたらもしかしたら今頃には、いや考えるな、考えても私が苦しいだけだ、それに未来視のことを伝えていたら今みたいに扱ってくれてたとは限らないだろう。

でも、代わりにはならないけどせめて……。

 

 

「……ここに来る前はトリニティに居たんだ、私に答えられることなら何でも聞いて。この前言ってたでしょ、外の話をしてくれって」

 

「い、いいんですか!?じゃあこの雑誌に載ってることと、あとこの雑誌と、これとこれと……」

 

 

 ヒヨリは部屋の隅の雑誌ゾーンから数……数十冊の雑誌を引っ張り出すと床に並べていく。

 

 

「い、いっぱいあるね……うん、言ったからには全部答えるよ」

 

「わぁ……!ありがとうございます!え、ええと……どれから教えてもらいましょうか……じゃ、じゃあこの『月刊おでかけトリニティ』の………………」

 

 

 

 

 

 

 

 質問はヒヨリが疲れて眠るまで続いた、途中からはサオリも混ざってきたし、ミサキも質問はしてこなかったけど話は聞いてた……んじゃないかな。

ともかくこれで少しでも溝を埋めることができていたらいいのだけれど、そうすれば、サオリの言ってた家族っていうものに近づける気がするから。

でも、それはそれとして。

 

 

「眠たい……」

 

 

 全部答えるとはいったものの、さすがに深夜までかかるとは思ってもみなかったため、本当に、本当に、眠たい。

私がそうなっているのにヒヨリはいつもと変わらない様子だったのには正直疑問しかない……あれ、ここに置いてた弾丸は……。

サオリとヒヨリ、私とミサキの2人組に分かれて廃墟を探索しながら眠気と格闘し、使えそうなもの探していると隣から話しかけられた。

 

 

「ねえ、ちょっといい?」

 

 

ミサキは机の下を覗き込みながら、私は瓦礫の隙間を探りながら、会話を続ける。

 

 

「何?」

 

「何か、隠してることあるでしょ」

 

 

 手が止まる、どくりと心臓が跳ねる、その後も静まるどころか段々と加速していく。

嘘をつく?無いと言い切る?そのほうがいいのだろう、でも、私は……。

 

 

「私は……。私は、うん、皆に隠し事をしてる。内容は……ごめんなさい、話したくない」

 

 

 嘘はつけなかった、これ以上皆を騙したくないと、そう思ってしまった。

 

 

「そう、ならいいよ、別に内容まで知りたかったわけじゃないし」

 

 

 特に気にした様子もなく、ミサキは淡々と探索を続ける。

 

「え……?」

 

 

 私を、私が隠してることを問い詰めるつもりじゃなかったの……?

 

 

「ホムラが私たちに危害を加えるつもりはないってのはわかってるし、それで言ったら隠し事をしてるのは私も同じだしね」

 

 

 ミサキが何気なく呟いた一言に私は大きな衝撃を受ける。

三人の間には隠し事なんてないと思ってた、仲がいいから、家族だから。

 

 

「家族でも…隠し事ってするの?」

 

「するでしょ。家族だからって何でも知ってないといけない訳でもないし」

 

 

 ミサキは作業の手を止め、こちらを見つめる。

 

 

「そうなんだ……」

 

「それに、家族とかの話だったら、ホムラももう家族なんじゃないの?……私にはよくわかんないけど」

 

 

 その一言だけ残して、ミサキは再び作業に戻った。

 

「え?え?」

 

 

 わからない、家族ってそんなに簡単になれるものなの?ずっと一緒にいたから家族だったんじゃないの?

それに、私の隠し事はみんなにとって不利益でしかない、だから……。

 

 

「……わからない」

 

 

 答えの出ない問題に頭を悩ませ続けながら、瓦礫に埋まっているものを探し続ける、あっ、さっきの弾丸……。

 

 

「だね。……あ、これ使えるんじゃない……ケホッ、埃が……」

 

 

 ミサキはあちこち傷だらけでボロボロな長身の銃を取り出してきた。

 

 

「それ……、スナイパーライフル?」

 

「みたい、たしか前拾ってきたものの中に大きめの弾があったはずだから、それでいけるかも」

 

「家にはハンドガン2つと私のP90しかなかったし、これが使えたらだいぶ楽になるね」

 

 

 さらに言えば私のP90はPDWという珍しい種類のためアリウスでは扱われておらず、残弾は私の持ち込んだ予備の4マガジンしかないという、なんとも心もとない状態なので使える銃が増えるのはとても貴重なのだ。

 

 

「そろそろ集合場所に戻る?」

 

 

 収穫もあったし、そろそろ戻らないと。

日が暮れてからだと、辺りが暗すぎて何も見えなくなってしまうのだ。

 

 

「……そうだね、私もいい加減、外に出たい……」

 

「……大丈夫?」

 

「大丈夫、慣れてるし……ケホッ」

 

「……私がライフル持とうか……?」

 

「大丈夫だって」

 

「そっか……」

 

 

 隠し事という単語から、私の体の弱さについて教えてないことを思い出した。

ただ、わざわざ伝えるものでもないか、そんなことを伝えたところで、何になるのかという話だろう。

 

このまま進めていくと原作に到達するまでかなりの時間がかかるのですが、過去編が1章終わるごとに原作も1章進めるなど同時進行で進めたほうがよろしいでしょうか?(過去編で原作との相違点がかなり発生する予定なので作者の文章力では状況がわからなくなる可能性があります)

  • 時系列に沿って進めよう
  • 原作も進めよう(0章終了後アビドス開始)
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