出会ったカラスと少年のお話。

>ピクシブにも転載しています。

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『作品名「カラスを見つめる少年」』

僕の学校を正門から出ると横断歩道をはさんで目の前に横に長い倉庫がある。いつもシャッターが閉まっていてなにが入っているのかは知らない。

 

僕が学校から帰る時、倉庫の前を通りかかった。僕はたまたま倉庫の上を見た。

 

その倉庫の屋根にカラスが歩いていた。

歩く度、カッカッ、コッコッ、と音がなっていた。

 

カラスの斜め右後ろに沈みかかった夕日があったためカラスの色はわからなかった。

 

カラスはまるで僕を待っていたかのようだった。

 

僕はカラスを見つめていた。

 

横断歩道をはさんでずっと見ていた。

 

10分ほど倉庫の屋根を歩いた後カラスは、

 

――飛んだ。

 

僕の目から見えなくなるくらい遠くへ。

 

 

 

 

 

 

次の日、僕が学校から帰る時、倉庫の前を通りかかった。

 

僕は倉庫の上を見た。

 

その倉庫の屋根にカラスが歩いていた。

歩く度、カッカッ、コッコッ、と音がなっていた。

 

カラスの色は黒だった。

 

カラスは僕を待っていた。

 

僕はカラスを見つめていた。

 

横断歩道をはさんでずっと見ていた。

車やトラックが目の前を通りすぎていく。

 

10分ほど倉庫の屋根を歩いたカラスは、

 

――また飛んだ。

 

今度は僕の隣の電信柱の一番上に止まった。

 

僕はカラスを見つめていた。

 

僕は時間が気になって、腕時計を見た。

 

5時30分。カラスが移動してからまた10分経っていた。

 

またカラスを見つめることにした。

 

けど、カラスはもう居なかった。

 

電信柱のてっぺんにはなにもなかった。

 

仕方なく僕は帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

次の日、僕が学校から帰る時、倉庫の前を通った。

 

そして、倉庫の上を見た。

 

その倉庫の屋根にカラスが歩いていた。

歩く度、カッカッ、コッコッ、と音がなっていた。

 

カラスは僕を見つけると、電信柱の上に止まった。

 

僕はカラスを見つめていた。

 

下からカラスを見上げていた。

 

カラスは電信柱に止まってからまるで石になったかのように明後日の方向を見たまま固まっている。

 

少し疑問に思って、よくみてみると。

 

それはカラスではなく、カラスの形をした石だった。

 

間違いなく、石だった。

 

 

その日、帰る途中でこんな話を聞かせてもらった。

 

「ここの横断歩道でね、走っていたトラックにカラスが跳ねられて死んでしまった事件があってね、そのカラスはよく電信柱の上でいつもどこか遠いところを見つめていてね。かわいそうと感じた人が電信柱の上にカラスの石像を置くことにしたのよ。」

 

 

 

 

 

 

あの日以降、僕は毎日の様にカラスに会いに行った。

 

カラスの石像を10分ほど見つめる。

 

そして帰る。

 

ただ、それだけを繰り返していた。

 

 

そして今日も、10分ほど見つめていた。

 

いざ帰ろうと青信号を待つ。

 

その間にもカラスの石像を見つめてしまう。

 

赤信号が青信号に変わった。

 

足を踏み出した。帰るために。

 

けど、右から猛スピードで走って来るトラックに気がつかなかった。

 

 

 

 

 

 

僕は今でも、カラスを見つめ続けている。

 

 

 



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