シュタフェルの書きたいシーンを書くまでは終われないので、ひっそり復活です……。
「……さて。
「──っ! シュタルク様、
「あー……」
『そういえば、フェルンには〝そういうこと〟にして伝えてたんだっけ……』と、フリーレンは少し遠い目をした。
「…………ごめん、アレ嘘」
「は?」
「いや完全な嘘ってワケじゃなかったんだよ? 状況としてはフェルンのとほぼ同じだったからそれで、ね?」
「……修行がイヤになって逃げ出して、その先で紅鏡竜と遭遇し……膠着状態になって今に至る……といったところですか?」
「うん。ほぼ正解」
「…………まったくあの人は……」
*
私には、幼馴染みがいた。
その子は私と同じく、幼くして天涯孤独の身となった少年だ。
そして同じく『勇者一行』の一人に拾われ、弟子となった者。
私の場合、拾ってくれた恩人と師匠は別人だが……話がややこしくなるので、細かい部分は置いておこう。
師匠の繋がりで、私達は引き合わされた。
戦士と魔法使い。旅をするなら、お互い必然的に『欲しい』と思う組み合わせ。
だから私達は、ずっと一緒に居た。互いの強さも、弱さも、癖も、知っている。食事一つ取っても、好きな料理から食べる量、速度だって、事細かに把握している。もうほとんど
────なのに。
『シュタルク様ですか? 勿論知ってますよ! 彼はこの村の〝英雄〟ですから!』
「……何が英雄ですか」
『顔は少し怖いかもしれないけど、いい子だよ!』
『会うならウチのパンを持ってお行き! あの子は美味しそうに食事をするからねぇ。食べてるところを見れば、印象も変わるだろうさ!』
「とっくに知ってるんですよ、そんなこと……」
全部全部、知っている。
彼の実力も、臆病さも、優しさも、イヤなところも含めて全部。私が一番、知っているのに。
「──シュタルク様」
「────フェルン?」
「……どうして、帰ってこなかったんですか?」
「……二人共、今日はもう帰れ」
「え……」
「…………なぁ。
「……あぁ、安心しろ。
「「…………」」
「大丈夫だって。このねーちゃん達は、ただの昔馴染みだ。怖い人達じゃない」
それから少し逡巡して、二人は去って行った。
「随分と好かれていらっしゃるみたいですね。この三年間で、どれだけたらしこんだんですか?」
「たらしこむって、流石に人聞き悪くない……?」
「パン屋さんの一家から、軽食を預かっています」
「────」
ピシリと固まった彼の手に、私は紙袋を直接手渡し握らせた。
「……パン屋の娘さん、可愛かったですね」
「あ、ぇっと……」
「…………どこまでいったんですか?」
「いや何もねぇよ!?」
「……本当に?」
「本当だって! ……『英雄』を騙ってそんな関係になっちまったら、戦士どころか人間失格だろ」
「…………ならよかったです」
「信用なさすぎない? 俺」
「別に、シュタルク様の人間性を信用してないワケじゃないですけど……」
むしろ、信用しているから怖かったのだが……。
「……けど、なんだよ」
「…………ならどうして、三年もこの村に留まっていたんですか?」
「……? フリーレンから聞いてないのか?」
「聞いた話では、『修行がイヤになって逃げ出して』『その先で紅鏡竜と遭遇し』『膠着状態になって今に至る』とのことですが……」
「……あぁ。合ってるよ」
「
その谷は、修行の跡でしょう? シュタルク様は、
「「…………」」
「……話したくないなら、そこの理由は詮索しません。
アイゼン様の元を離れたシュタルク様は、この場所で紅鏡竜と睨み合いになって……それから、フリーレン様に助けを求めた。でも、フリーレン様は現れなかった。
──だからシュタルク様は、今日までの三年間で……もう察している筈なんです」
「……察する? 何を」
「
「…………『無理だ』『逃げたい』って……そう言ったら、フェルンはどう思う?」
「『
「本当に逃げちまったら、どうする?」
「首根っこを掴んで連れ戻します」
──もっとも、本当に肝心な場面なら……その必要はないだろうが。
「……失望は、してくれないんだな」
「当たり前でしょう?」
「…………一日、時間をくれ。二人が俺に、何をさせたいのかは知らないけど……フリーレンのことだから、急ぎではないんだろ? 村の連中に、挨拶をする時間がほしい」
「それくらいなら、構わないよ」
「えぇ」
そうして彼は、斧を手に取り……少年達のいる村へ、帰っていった。
*
「……あいつらには、謝らないとな」
俺の帰る場所は、ここじゃない。
食事は美味いし、人は優しいし、あの村はいい場所だ。この三年で、愛着も沸いた。
……でも、俺は『英雄』なんかじゃない。師匠やフリーレン、ハイターさんのような、『本物の英雄』には程遠い。『村の英雄』とは名ばかりの、臆病者。
だから俺は、俺が一番『自然体』でいられる場所は……ここじゃないのだ。
「──とはいえ、ケジメはつけねぇと」
最後くらいは、『本物の英雄』らしく。