キュップぃ、ボクわるい魔獣じゃないよ   作:しやぶ

23 / 23
 
 シュタフェルの書きたいシーンを書くまでは終われないので、ひっそり復活です……。
 


『英雄』(追憶編2)

 

「……さて。クヴァール討伐(過去の清算)も終わったことだし……あとはシュタルクを拾えば、中央諸国でやり残した用事は全部かな」

 

「──っ! シュタルク様、()()()()()()()んですか!? なら合流してから戦っても良かったじゃないですか!」

 

「あー……」

 

 『そういえば、フェルンには〝そういうこと〟にして伝えてたんだっけ……』と、フリーレンは少し遠い目をした。

 

「…………ごめん、アレ嘘」

 

「は?」

 

「いや完全な嘘ってワケじゃなかったんだよ? 状況としてはフェルンのとほぼ同じだったからそれで、ね?」

 

「……修行がイヤになって逃げ出して、その先で紅鏡竜と遭遇し……膠着状態になって今に至る……といったところですか?」

 

「うん。ほぼ正解」

 

「…………まったくあの人は……」

 

 

 

 *

 

 

 

 私には、幼馴染みがいた。

 

 その子は私と同じく、幼くして天涯孤独の身となった少年だ。

 そして同じく『勇者一行』の一人に拾われ、弟子となった者。

 

 私の場合、拾ってくれた恩人と師匠は別人だが……話がややこしくなるので、細かい部分は置いておこう。

 

 師匠の繋がりで、私達は引き合わされた。

 戦士と魔法使い。旅をするなら、お互い必然的に『欲しい』と思う組み合わせ。

 だから私達は、ずっと一緒に居た。互いの強さも、弱さも、癖も、知っている。食事一つ取っても、好きな料理から食べる量、速度だって、事細かに把握している。もうほとんど姉弟(きょうだい)と言ってもいいだろう。間違いなく、彼を一番知っているのは()だ。

 

 ────なのに。

 

 

『シュタルク様ですか? 勿論知ってますよ! 彼はこの村の〝英雄〟ですから!』

 

 

「……何が英雄ですか」

 

 

『顔は少し怖いかもしれないけど、いい子だよ!』

『会うならウチのパンを持ってお行き! あの子は美味しそうに食事をするからねぇ。食べてるところを見れば、印象も変わるだろうさ!』

 

 

「とっくに知ってるんですよ、そんなこと……」

 

 

 全部全部、知っている。

 彼の実力も、臆病さも、優しさも、イヤなところも含めて全部。私が一番、知っているのに。

 

 

「──シュタルク様」

 

「────フェルン?」

 

「……どうして、帰ってこなかったんですか?」

 

 

 ()()()()()()()のある、大きな谷底に……彼はいた。幼い少年二人と共に。

 

「……二人共、今日はもう帰れ」

 

「え……」

「…………なぁ。()()()()()()()()()()は、()()()()()()()?」

 

「……あぁ、安心しろ。()()()()よ」

 

「「…………」」

 

「大丈夫だって。このねーちゃん達は、ただの昔馴染みだ。怖い人達じゃない」

 

 それから少し逡巡して、二人は去って行った。

 

 

「随分と好かれていらっしゃるみたいですね。この三年間で、どれだけたらしこんだんですか?」

「たらしこむって、流石に人聞き悪くない……?」

 

「パン屋さんの一家から、軽食を預かっています」

 

「────」

 

 ピシリと固まった彼の手に、私は紙袋を直接手渡し握らせた。

 

「……パン屋の娘さん、可愛かったですね」

 

「あ、ぇっと……」

 

「…………どこまでいったんですか?」

 

「いや何もねぇよ!?」

 

「……本当に?」

 

「本当だって! ……『英雄』を騙ってそんな関係になっちまったら、戦士どころか人間失格だろ」

 

「…………ならよかったです」

 

「信用なさすぎない? 俺」

 

「別に、シュタルク様の人間性を信用してないワケじゃないですけど……」

 

 むしろ、信用しているから怖かったのだが……。

 

「……けど、なんだよ」

 

「…………ならどうして、三年もこの村に留まっていたんですか?」

 

「……? フリーレンから聞いてないのか?」

 

「聞いた話では、『修行がイヤになって逃げ出して』『その先で紅鏡竜と遭遇し』『膠着状態になって今に至る』とのことですが……」

 

「……あぁ。合ってるよ」

 

()()()()

 その谷は、修行の跡でしょう? シュタルク様は、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「「…………」」

 

「……話したくないなら、そこの理由は詮索しません。

 アイゼン様の元を離れたシュタルク様は、この場所で紅鏡竜と睨み合いになって……それから、フリーレン様に助けを求めた。でも、フリーレン様は現れなかった。

 ──だからシュタルク様は、今日までの三年間で……もう察している筈なんです」

 

「……察する? 何を」

 

()()()()()()()()()()()。シュタルク様なら、紅鏡竜に勝てます」

 

「…………『無理だ』『逃げたい』って……そう言ったら、フェルンはどう思う?」

 

「『()()()()()()()()()()()()』と」

 

「本当に逃げちまったら、どうする?」

 

「首根っこを掴んで連れ戻します」

 

 ──もっとも、本当に肝心な場面なら……その必要はないだろうが。

 

「……失望は、してくれないんだな」

 

「当たり前でしょう?」

 

「…………一日、時間をくれ。二人が俺に、何をさせたいのかは知らないけど……フリーレンのことだから、急ぎではないんだろ? 村の連中に、挨拶をする時間がほしい」

 

「それくらいなら、構わないよ」

「えぇ」

 

 そうして彼は、斧を手に取り……少年達のいる村へ、帰っていった。

 

 

 

 *

 

 

 

「……あいつらには、謝らないとな」

 

 俺の帰る場所は、ここじゃない。

 

 食事は美味いし、人は優しいし、あの村はいい場所だ。この三年で、愛着も沸いた。

 

 ……でも、俺は『英雄』なんかじゃない。師匠やフリーレン、ハイターさんのような、『本物の英雄』には程遠い。『村の英雄』とは名ばかりの、臆病者。

 

 だから俺は、俺が一番『自然体』でいられる場所は……ここじゃないのだ。

 

「──とはいえ、ケジメはつけねぇと」

 

 最後くらいは、『本物の英雄』らしく。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

【完結】峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!(作者:そとみち)(原作:僕のヒーローアカデミア)

何だこのタイトル(真顔)▼峰田と同じ中学出身のオリ主がヒロアカの世界で下ネタをぶちかますお話。▼なおオリ主はプリケツドスケベ美少女スタイルの男子とする。▼【挿絵表示】▼【挿絵表示】▼※峰田が強化されています▼※峰田の性癖が捻じ曲げられています▼※峰田がまともなこと言うようになってます▼※砂藤がA組不在です▼※ギャグ寄りです▼※たまにシリアスもあります▼※勢い…


総合評価:38082/評価:9.12/完結:177話/更新日時:2023年12月14日(木) 21:00 小説情報

ヒンメルはもういないじゃない【完結】(作者:HAJI)(原作:葬送のフリーレン)

▼勇者ヒンメルの死から二十八年後。北側諸国に人間と魔族が共存する国があった。▼その名は魔族国家フリージア。人間と魔族が平等に生きることができる楽園。▼それを統治するのはかつての七崩賢であり大魔族である断頭台のアウラだった。▼これは勇者との再会によって『断頭台』から『天秤』に至ったアウラが勇者を葬送するまでの物語。▼葬送のフリーレンのIF、再構成ものになります…


総合評価:27288/評価:9.16/完結:254話/更新日時:2026年05月21日(木) 16:25 小説情報

大魔族の彼は人生を謳歌する(作者:HIIRAGISHIYU)(原作:葬送のフリーレン)

現代の日本を生きていた男が通り魔に刺されて死んでしまう。そして気がつくとそこは見知らぬ場所だったのだが────空を見れば見覚えのある流星群。▼「もしかしてここ、葬送のフリーレンの世界?」▼現代を生きた男が魔族として転生し、魔法を学び、魔法をつくり、古の偉人や激つよエルフと出会う物語。▼「あれ、フリーレン?」「まさかフランメ?!」「なんでここにゼーリエがいるん…


総合評価:13163/評価:8.12/連載:44話/更新日時:2026年01月18日(日) 22:39 小説情報

ユメ?「何で分かるのかな」 パカ(作者:パカパカメロンパンナちゃん)(原作:ブルーアーカイブ)

???「やっ、ホシノちゃん、久しぶり」▼???「危機感の欠如」▼???「戦いを楽しんでいます」▼???「今はただ君に感謝を」▼???「ぶぅー、ぶふぅー」▼???「全力でお姉ちゃんを遂行する!!」▼なんかユメ先輩は頭が開いて何かに乗っ取られてるっていうのが流行ってるらしい。笑っちゃうよね。▼内容は大体羂索っぽいオリ主inユメ先輩と渋谷事変組っぽい生徒たちが色々…


総合評価:3893/評価:8.33/短編:4話/更新日時:2026年02月14日(土) 07:26 小説情報

Re:TS白黒ストライプバニー老害によるナツキ・スバルの悲喜劇観賞会(作者:F・M・T (フランチェスカ、マジ年増))(原作:Re:ゼロから始める異世界生活)

「アハハハハッ!始まり、始まりぃー♪パンフレット買った?ポップコーン持った?早くしないと世紀の戦いを見逃しちゃうよ?」▼ Fakeのあのキャラに転生したオリ主が、スバル君の奮闘を眺めてケラケラ笑いながら観賞をする話。▼「……あれれー?もしかして、このスバル君。放っておいたら正史から簡単に外れちゃうぅ?」


総合評価:4963/評価:8.8/連載:3話/更新日時:2026年05月07日(木) 18:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>