キュップぃ、ボクわるい魔獣じゃないよ   作:しやぶ

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 シュタフェルの書きたいシーンを書くまでは終われないので、ひっそり復活です……。
 


『英雄』(追憶編2)

 

「……さて。クヴァール討伐(過去の清算)も終わったことだし……あとはシュタルクを拾えば、中央諸国でやり残した用事は全部かな」

 

「──っ! シュタルク様、()()()()()()()んですか!? なら合流してから戦っても良かったじゃないですか!」

 

「あー……」

 

 『そういえば、フェルンには〝そういうこと〟にして伝えてたんだっけ……』と、フリーレンは少し遠い目をした。

 

「…………ごめん、アレ嘘」

 

「は?」

 

「いや完全な嘘ってワケじゃなかったんだよ? 状況としてはフェルンのとほぼ同じだったからそれで、ね?」

 

「……修行がイヤになって逃げ出して、その先で紅鏡竜と遭遇し……膠着状態になって今に至る……といったところですか?」

 

「うん。ほぼ正解」

 

「…………まったくあの人は……」

 

 

 

 *

 

 

 

 私には、幼馴染みがいた。

 

 その子は私と同じく、幼くして天涯孤独の身となった少年だ。

 そして同じく『勇者一行』の一人に拾われ、弟子となった者。

 

 私の場合、拾ってくれた恩人と師匠は別人だが……話がややこしくなるので、細かい部分は置いておこう。

 

 師匠の繋がりで、私達は引き合わされた。

 戦士と魔法使い。旅をするなら、お互い必然的に『欲しい』と思う組み合わせ。

 だから私達は、ずっと一緒に居た。互いの強さも、弱さも、癖も、知っている。食事一つ取っても、好きな料理から食べる量、速度だって、事細かに把握している。もうほとんど姉弟(きょうだい)と言ってもいいだろう。間違いなく、彼を一番知っているのは()だ。

 

 ────なのに。

 

 

『シュタルク様ですか? 勿論知ってますよ! 彼はこの村の〝英雄〟ですから!』

 

 

「……何が英雄ですか」

 

 

『顔は少し怖いかもしれないけど、いい子だよ!』

『会うならウチのパンを持ってお行き! あの子は美味しそうに食事をするからねぇ。食べてるところを見れば、印象も変わるだろうさ!』

 

 

「とっくに知ってるんですよ、そんなこと……」

 

 

 全部全部、知っている。

 彼の実力も、臆病さも、優しさも、イヤなところも含めて全部。私が一番、知っているのに。

 

 

「──シュタルク様」

 

「────フェルン?」

 

「……どうして、帰ってこなかったんですか?」

 

 

 ()()()()()()()のある、大きな谷底に……彼はいた。幼い少年二人と共に。

 

「……二人共、今日はもう帰れ」

 

「え……」

「…………なぁ。()()()()()()()()()()は、()()()()()()()?」

 

「……あぁ、安心しろ。()()()()よ」

 

「「…………」」

 

「大丈夫だって。このねーちゃん達は、ただの昔馴染みだ。怖い人達じゃない」

 

 それから少し逡巡して、二人は去って行った。

 

 

「随分と好かれていらっしゃるみたいですね。この三年間で、どれだけたらしこんだんですか?」

「たらしこむって、流石に人聞き悪くない……?」

 

「パン屋さんの一家から、軽食を預かっています」

 

「────」

 

 ピシリと固まった彼の手に、私は紙袋を直接手渡し握らせた。

 

「……パン屋の娘さん、可愛かったですね」

 

「あ、ぇっと……」

 

「…………どこまでいったんですか?」

 

「いや何もねぇよ!?」

 

「……本当に?」

 

「本当だって! ……『英雄』を騙ってそんな関係になっちまったら、戦士どころか人間失格だろ」

 

「…………ならよかったです」

 

「信用なさすぎない? 俺」

 

「別に、シュタルク様の人間性を信用してないワケじゃないですけど……」

 

 むしろ、信用しているから怖かったのだが……。

 

「……けど、なんだよ」

 

「…………ならどうして、三年もこの村に留まっていたんですか?」

 

「……? フリーレンから聞いてないのか?」

 

「聞いた話では、『修行がイヤになって逃げ出して』『その先で紅鏡竜と遭遇し』『膠着状態になって今に至る』とのことですが……」

 

「……あぁ。合ってるよ」

 

()()()()

 その谷は、修行の跡でしょう? シュタルク様は、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「「…………」」

 

「……話したくないなら、そこの理由は詮索しません。

 アイゼン様の元を離れたシュタルク様は、この場所で紅鏡竜と睨み合いになって……それから、フリーレン様に助けを求めた。でも、フリーレン様は現れなかった。

 ──だからシュタルク様は、今日までの三年間で……もう察している筈なんです」

 

「……察する? 何を」

 

()()()()()()()()()()()。シュタルク様なら、紅鏡竜に勝てます」

 

「…………『無理だ』『逃げたい』って……そう言ったら、フェルンはどう思う?」

 

「『()()()()()()()()()()()()』と」

 

「本当に逃げちまったら、どうする?」

 

「首根っこを掴んで連れ戻します」

 

 ──もっとも、本当に肝心な場面なら……その必要はないだろうが。

 

「……失望は、してくれないんだな」

 

「当たり前でしょう?」

 

「…………一日、時間をくれ。二人が俺に、何をさせたいのかは知らないけど……フリーレンのことだから、急ぎではないんだろ? 村の連中に、挨拶をする時間がほしい」

 

「それくらいなら、構わないよ」

「えぇ」

 

 そうして彼は、斧を手に取り……少年達のいる村へ、帰っていった。

 

 

 

 *

 

 

 

「……あいつらには、謝らないとな」

 

 俺の帰る場所は、ここじゃない。

 

 食事は美味いし、人は優しいし、あの村はいい場所だ。この三年で、愛着も沸いた。

 

 ……でも、俺は『英雄』なんかじゃない。師匠やフリーレン、ハイターさんのような、『本物の英雄』には程遠い。『村の英雄』とは名ばかりの、臆病者。

 

 だから俺は、俺が一番『自然体』でいられる場所は……ここじゃないのだ。

 

「──とはいえ、ケジメはつけねぇと」

 

 最後くらいは、『本物の英雄』らしく。

 

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