TS転生軍人少女、『太陽系』をもらう   作:ひのかぜ

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序章 交流準備編
はじまり


 健康的で楽しい日常生活を送ることができる。生まれてからその状況下にあると、これが実に素晴らしいことだと中々実感しにくい。

 

 私自身が、前世では一般的な男性会社員として日本に、今世では最高クラスの力を誇る星間国家【リーガル大帝国】……地球から見た宇宙人の少女として生を受けることが出来たから尚更だ。

 

 とは言ったものの、この国での生活が楽しいかと誰かから問われれば、心の中で首を傾げざるを得ない。

 いや、正しくはある程度の年齢まで成長し、前世の記憶とやらが戻るまでは、それなりにではあるが楽しかったと言えた。

 

 勿論、そう思ったのはいくつかの理由がある。

 

 1つは、前世の故郷だった日本だけと比べてみても、娯楽の量が絶対的に不足していることだ。

 ただ、全くないなんてことはないし、私から見ても面白いと思える映画や小説自体は存在している。

 

 しかし、その数自体は更に少ない上に肝心の質に関しても、日本の作品群と比較してみれば()()でしかない。アメコミや洋画、音楽まで括りに入れた場合は、もはやお察しだ。

 

 後は、この国が類い稀なる軍事力を元手に広大な領域を支配下へ置き、戦争に対するブレーキが緩めな国家だからである。

 元々、何千年も前は逆に虐げられる側の弱小国家だった歴史があるお陰か、国家方針として軍事力優先を掲げ、力を注いでいった賜物だろう。

 

 また、自身に迫るレベルであれば言わずもがな、最低でも宇宙に船を出して進出する程度の文明であればまだマシだけど、それ以下の母星で国家統一すら成し遂げていない文明人に対する態度が、基本的にはまあ酷い。

 

 流石に、正当な理由もなしにその命を奪ったり、倫理に反したり尊厳を破壊するようなことをする行為は、軍民問わずに懲罰の対象となり得る。変な思想教育みたいなのは、幸いなことにされた覚えは全くない。

 

 ただし、その扱いは例えるなら良くて原始的な部族の人たち、ないし犬猫に対する人間のそれで、悪ければそこら辺の野生動物よりは若干マシみたいな感じだ。

 

 どこかの大富豪だかが、資産として持っていた星系の惑星に文明を築いていた原住民に、ドン引きレベルの行動を取って逮捕された時も、さほど罪が重くならなかった点が、その最たる例だと私は思う。

 

 どう考えても、文明を持つ人類(知的生命体)に対する態度ではなく、元地球人として言いたくないが、地球人だって全体的に見れば、帝国政府およびそれなりに多くの人々から愛玩動物寄りの扱いを受けることになるだろう。

 

「面を上げよ、チェイス。此度は先の戦にてそなたの軍神が如き活躍に対し、褒美をやるために呼んだのだ。公の場でもなし、それほど改まる必要はないぞ」

 

 だけど、声を全く上げてこなかった今の私には、この国を責め立てる資格はないし、むしろ責められる側だとは思う。

 

 加えて、私の今の職業は軍人。それも、大気圏から宇宙空間まであらゆる場所を戦闘機で飛び回り、敵を打ち倒していく戦闘機パイロットなのだ。

 

 遥か昔から代々続いてきた軍の家系らしいが故に、今世の両親からも強く勧められた(半ば強制された)この職業。

 

 案の定あった才能と努力、この2つに裏打ちされた力を存分に使い、女帝陛下に呼び出されるくらいに成果を出す能力が私にもあったのだけど、正直複雑でしかない。

 

 かといって、これ以外の生き方を探すのは難しい。それこそ、地球でも見つかってくれれば、前世のよしみで田舎で農業を始めてみようかとのノリで、文明の発展に力を貸そうかなと考える程度であった。

 

 仮に存在し、発見できたとて、地球人に聞かれたらいい気はしないだろうし、リーガル人に聞かれたら更に変人扱いが加速しそうだから、言うつもりはさらさらないけども。

 

「分かりました。これで良いですか?」

「うむ、よろしい。それにしても、流石はかの一族の者だな。今後とも、帝国のためによろしく頼むぞ」

「勿論です。()()()()()()()()は」

 

 しかし、大規模星間国家をまとめあげるだけあって、女帝陛下の一挙一動により振り撒かれるプレッシャーは並大抵のものではない。

 

 同格の星間国家との戦争時に感じたプレッシャーよりは圧倒的にマシだけど、それは今が平常時だからだ。

 

 本気で怒りを露にした時の女帝陛下は、私でも身体がすくんでしまうくらいに恐ろしい。当時、直接怒気を向けられていた人が気絶していたのも納得でしかなかった。

 

「ふっ。人外レベルで頑丈なそなたの身が持たなくなるなど、あり得んだろうさ……っと、話が脱線してしまったな」

 

 思考を巡らせていると、笑っている女帝陛下が側に控えていた側近の持っている筒を受け取る。

 それからすぐ、玉座から立ち上がって私のところまで来て、明らかに高級な素材で作られた筒を手渡してきた。

 

 これが、私への褒美であることに間違いはないと思うけど、中身は一体何が入っているのだろうか。

 

「蓋を開けてみよ。中に、そなたの最も喜ぶであろうものがある」

 

 穏和な表情に変わっていた陛下から促され、蓋を回して中に入っていた紙に書かれていた文言を見て、一瞬だけ思考に霞がかかる。

 

「……どうだ?」

「陛下……感無量です、私」

「おぉ、そうか! やはり、わらわの調査に間違いはなかったようだな!」

 

 何故なら、陛下から渡された褒美は1つの星系……前世の呼び方をそのまま使用するとするならば、太陽系の所有権を保証する証明書一式であったのだから。

本小説の舞台に関して、少し迷いがあります。どちらが適切だと思いますか?

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