TS転生軍人少女、『太陽系』をもらう   作:ひのかぜ

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のんびりゆったり

 スイートルーム。そのホテルにある普通の客室よりも、ありとあらゆる面でランクアップしている客室を表す言葉である。

 

 無論、宿泊するには相応に高くなった宿泊費を支払う必要があり、それが普通の客室すら高級なホテルのスイートルームともなれば、どれだけ凄いのかは言わずもがなだろう。

 

「えっと、柳沢さん。ここに、私が1人で泊まれるんですか?」

「勿論ですとも。当ホテル自慢の最高級和風スイートルーム、本矢首相よりお話を頂いた時から準備しておりましたので」

「なるほど……」

 

 案の定、和食料理屋での食事を終えた後に合流してきた、大日本ホテルの総支配人【柳沢(やなぎさわ) 正治(しょうじ)】さんに案内された6階にあるスイートルームは、私の語彙力では言い表せないくらいに凄い部屋であった。

 

 内装や家具、その他細かな部分まで私がイメージしていた、和の雰囲気をそのまま体現したかのような場所であり、こんなにも素晴らしい部屋に1ヵ月近くも、金銭面を気にせず泊まる事が出来る。日本の人たちには感謝でしかない。

 

 清潔感に関しても素晴らしく、未開の地に分類される星の中ではまず間違いなくトップクラスである。

 

「うわっ、結構沢山ありますね。本矢首相、これを揃えるのは大変だったのではないでしょうか?」

「確かに、選考には苦労しましたね。ただ、それさえ済んでしまえば後は早かったですよ」

「あはは……もう少し、詳しく言っておくべきでした」

 

 しかも、事前に日本の文化娯楽を少しでも体験しておきたいと伝えていたためか、部屋の中には最新式のテレビやブルーレイ機器一式と、無作為に選ばれたであろうお堅い小説からライトノベルに漫画、アニメ映画やドラマのブルーレイディスクまでもが、きっちりと揃えられていたのだ。

 

 元日本人の前世がある故か、日本語であればほぼ問題なく理解出来るし、仮に他国の言語であっても翻訳機ないし魔法でどうとでもなるので、今すぐにでも楽しむ事が可能なのは実に嬉しい事だと断言しよう。

 

 ルームサービスで食事もこの部屋に持ってきてもらえるらしいので、極論滞在中ずっとここから出ずに過ごすのも可能だ。勿論、せっかくの貴重な休暇、そんな事をするつもりはないけれど。

 

「それでは、私共はこれで失礼します。滞在中何かありましたら、備え付けの電話機かスタッフ呼び出しボタンを使用して下さいませ」

「チェイスさん、私たちも公務がありますのでこれにて失礼させて頂きますね。万一に備え、両隣の部屋には私の秘書2名と警護員の方々10名が居ますので、用事があればいつでもお声がけ下さいね」

「はい、分かりました。色々とお気遣いありがとうございます」

 

 そこからおよそ30分程、部屋の案内だったり備え付けの各種機器の使い方などの説明を詳しく受けた後、私についてきてくれていた柳沢さんや本矢首相は、各々のやるべき事を行うためにこの場を立ち去っていく。

 

 忙しい中、時間を工面して私のために動いてくれて、本当に感謝でしかない。

 

(……うん、まあそりゃそうか)

 

 と、1人になって気分が落ち着いてきたその時、自分自身が汗ばんでいる事に気が向く。

 

 作りたてで、温かいきつねうどんを3杯に天ぷらセットを2つ食べた事、日本に来た事による気分の高揚、一国を束ねる首相とのやり取りによる緊張、他にも細々とした要素が合わさった故だろう。

 

(バスルームは確か、こっちだったよね?)

 

 本当ならこのままふかふかソファーに座り、今世の日本にも変わらず存在していた、某ロボットと少年の友情物語を描いたアニメでも見ようかと思っていた。

 

 でも、いくらどこかのタイミングで清掃してくれるにせよ、だからと言って汚して良いなんて事はない。

 そもそも、汗ばんだ状態のまま居るのは不快なので、私はまずバスルームへと向かう。

 

 当然、お湯が溜まっていない以上シャワーとなる訳だけど、全く構わない。湯船に浸かるのなんて明日以降でも容易に出来る事だし、食事をしてからすぐと言うのが理由なためだ。

 

「ふぁぁ~~」

 

 手早く服を脱いで適当なところに置き、お風呂場に入ってからは小さなイスに座り、シャワーを浴びる(湯船に浸かる)行為。

 

 何の面白味もない、リーガルでも戦争時以外は基本毎日行う入浴ですら、日本に来た途端に楽しくなるのは、やはりそうなのだろう。

 

 湯加減は自分で調節するものだから除外するとしても、コンディショナー配合のシャンプー、ボディーソープの香りも私好みのもので、何と言うか落ち着く感じである。

 

 お風呂場の端に置いてあった箱の中にある、ゆずの香りがすると書いてある入浴剤に関しては基本日替わりらしいけど、希望があれば融通は利かせてくれると言ってたし、明日は変えないでとお願いしておくか。

 

「ふぅ……すっきりしたっ!」

 

 で、湯船に浸かって色々楽しむならまだしも、シャワーを浴びるだけなら長くお風呂に入る必要も別にない。だから、身体や頭を洗ったらさっさと上がり、全身をちゃんとタオル拭いて服を着た後に、髪の毛をドライヤーで乾かす。

 

 備え付けの各種タオルも素材が高級だからか、それとも私の来訪に先んじて新品にしたからなのかは不明だけど、身体を拭く時の肌触りがとても柔らかく、普段使いにいくつか欲しいなと思ってしまう。

 

 当然、備品なので持って帰るなんてしてはならないけど、これと同じタオルが売ってないか、聞いてみるくらいはしても良いはず。

 

「さてと。すっきりした事だし、アニメアニメ~」

 

 で、お風呂に入る前に見ようと思っていた例のアニメの映画版ディスクを機械に入れ、テレビの電源をつけてからソファーに座って見る体勢を整えた。

 

 おおよそ2時間、私が日本に到着した時は既に夕方ではあったので、見終える頃には日本時間で午後9時を回る計算だ。

 

 寝る時間を次の日の午前0時とした場合、寝る前のトイレと歯磨きなどを考慮すると、頑張ればこの映画1本と通常のアニメ3~4本は見れる。

 

 今世の日本でも人気なようで、かなりの本数がこの場にあるから、このアニメだけでも見切るにはそこそこ時間が必要そうだ。場合によっては、実際に購入して続きは日本を出てから見る流れになるかもしれない。

 

 まあ、こうは言ったけど全部見終えれたとしても、前世からの思い出だったこのアニメだけは、どのみち何度も見返すために買えるだけ買おうと、私の中ではもう既に決まっているのだけども。

 

(今日は、アニメ見て終わりそうかな。リーガルじゃ、ほぼあり得ない流れだ)

 

 と、そう考えながら私は、テレビ画面に流れ始めたオープニングに目を向け、意識も集中させ始めた。




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