TS転生軍人少女、『太陽系』をもらう   作:ひのかぜ

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とあるコンビニ店長の憂鬱

 今現在、日本のみならず世界中を賑わせている外宇宙の存在である、翼の生えた少女チェイス。

 

 そりゃそうだろうと予想はしていたが、いかにもな宇宙戦艦に乗って来訪した彼女は、地球の国家元首と同等の歓迎を日本政府より受け、今現在は大日本ホテルに滞在している。

 

 で、外出するにしたって物々しい警備に守られつつ、どこかしらの高級品を取り扱う店なり、高級食材や最高峰の料理人が腕を振るうレストランとかに行くだろう。

 

 その人たちは大変だなあと、どこか他人事のような感じで俺は今日も1日、コンビニで変わらず店長業務をこなしつつ過ごすはずだったのだ。

 

「こっちは終わりましたー……西山(にしやま)店長? この世の終わりみたいな顔をしてどうしたんです? まさか私が何かミスを……?」

東屋(ひがしや)……喜べ、今日の14時頃件の宇宙人少女が来るってよ! はははっ、何でうちなんだよぉぉ……!!」

「えっ? は? ええっ?? もうすぐじゃないですか」

 

 しかし、それは少し前()()()()()()()()()店にかかってきた1本の電話、チェイスが昼食を店内のイートインスペースで取るから、申し訳ないが準備をして欲しいと言われた事により、不可能になった。泣きたい。

 

 向こうも急過ぎて申し訳ないとは考えているようで、滞在にかかる費用に加え、俺や今日バイトで働く東屋ともう1人に、特別手当が出るとの事。

 

 更に、本社からも同様の手当が出る旨の電話がかかってきたため、今月の給料はいつもより結構高くなる。

 つまり、ちょっとした贅沢が出来るだけのお金が手に入るので、全く嬉しくないと言ったら嘘になるかもしれない。

 

「いや、本当に何ででしょ……あっ。もしかして、レジ横の揚げ物コーナーの50%増量キャンペーンが原因……?」

「……絶対にそうだ! 日本政府の人が言ってたが、彼女は食べる事が大好きらしいし間違いねえ! 距離の問題なら、うちよりも近い別のコンビニはいくつかある」

「タイミングが悪かったですね。それにしても、高級店とかじゃなくても良いんでしょうか? もしかして、コンビニを高級店と勘違い……流石にあり得ないか。日本政府が説明しないはずないですし」

「分からん! だが、下手を打てば俺らは死ぬ……いや、日本がヤバい!」

「地球滅亡まっしぐら、ですね」

「洒落にならねえよ東屋。ちくしょう、今日休めば良かった……」

 

 しかし、何かやらかした時のペナルティーがあまりにもデカ過ぎる。と言うか、俺や東屋がやらかさなくてもうちの商品が不味かったとか、どうしようもない要素で機嫌を損ねる可能性だってあるのだ。

 

 いつぞや見た、公共放送や政府広報を通して公開された来訪を知らせる放送では、彼女の容姿はほぼ人型と抵抗感のない見た目、立ち振る舞いや仕草も大分友好的には見えたが、あれが本性とは限らない。

 

 文化とかも大幅に違えば、俺たちにとっては当たり前でも彼女や彼女の国では不快、ないし忌むべき事柄と認定されている要素だってないとは言えない。むしろ、あって当然だと断言出来る。

 

「はぁ……それに、日本政府のお偉いさんも来るんだよなぁ。胃が爆発しそうだ……帰ったら胃薬買っとくかな」

「でしたら、うちの目の前にあるドラッグストアーの胃薬はおすすめですよ。おばあちゃんが良く効くって愛用してますので」

「そうか。にしても、お前は全然動じてなくて羨ましいよ」

「まさか、平気な訳ありませんよ。どうしようもないですし、諦めて現実逃避しているに過ぎません」

 

 そして、彼女以外にも普段の生活では決して会う事はないであろう、日本政府のお偉いさんや護衛の人たちも俺の働くコンビニに来る。

 

 勿論、万が一に備えて警察官も大量に配備されるだろう。何かやらかした野郎共みたいな感じがして、胃が押し潰されそうなプレッシャーに襲われた。

 

 こんな事になるんだったら、何故か急に取りたくなった有給を本能に従い、先月末の時点で取る事にしておけば、こんなに悩まずに済んだはず。

 

 自慢じゃないが、俺の【予感】はおおよそ7割当たる。ここ最近は外しまくっているから、特に理由もないのに有給を取ると肝心な時に取れないから止めようと、理性で抑えたのは間違いでしかなかったと言わざるを得ない。

 

 そして、こんな事に付き合わせてしまった東屋と、もう1人の高校生バイトの子には非常に申し訳ない気持ちで一杯だ。

 仕事が終わったら夜勤の人たちに引き継いで、俺の奢りでどこか良いレストランにでも行って、好きなだけ食わせてやろう。

 

「て、店長さん! 向こうの道路から如何にもな車が3台来ましたっ!」

「遂に来たか……南原(なんばら)、頼んだ事は済ませてくれたか?」

「もちろんです!」

「来たばかりで本当にすまないな。流石はコンビニバイト経験者、優秀で助かるよ」

「いえ、大丈夫です!」

 

 すると、外で色々とやってくれていた女子高生バイト、南原が店内に駆け込んできて、宇宙人少女の乗った車がうちのコンビニがある国道に来た事を教えてくれた。

 

 店内の準備は電話を受けてから死にもの狂いで東屋と済ませ、外の清掃などは申し訳なく思いつつも南原に頼み、終わらす事が出来ている。

 

 取り敢えず、俺たちに出来る精一杯の用意はしてあるから、後は実際に日本政府のお偉いさんとも協力し、どの程度滞在するのかは分からないけど、何とか満足してもらえるようにしなければ。

 

(……はぁ)

 

 コンビニの駐車場に入ってくる黒い車を見ながら、俺は頭の中でそんな事を考えた。

 

本小説の舞台に関して、少し迷いがあります。どちらが適切だと思いますか?

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