TS転生軍人少女、『太陽系』をもらう 作:ひのかぜ
「わぁ……美味しそう……!」
少し遠くから見ているだけでも美味しそうだった、本場アメリカ
在日アメリカ人の店長さんともう1人の日本人店員さんにより、私の待つテーブルに運ばれてきたそれらは、より一層の迫力と期待を与えてくれた。
一応、これら3つの商品のサイズはLとなっているものの、日本のLサイズとは訳が違う。下手すれば、複数人で食べても満足感を得られるくらい。
大林さんや警護の人たちも、全てがボリューミーなこの料理と私を交互に見て、流石に大丈夫なのかと不安そうな表情をしている。
背中の翼を除けば、見た目が日本の平均的な女子高生な私がこれを全部食べようとしているのだ。今までの食べっぷりを見てても、不安に思うのは当然とも言えるか。
まあ、だからと言ってある程度の量を皆に分けようかなとか、持ち帰りしようとは思わない。全てを1人で、なおかつこの場で完食するつもりだ。
「さあ、どれからでも構わん。チェイス、食べてみてくれ!」
「勿論です! では、ピザから頂きますね……っ!!」
と言う事で、まずは巨大ピザをピザカッターで手頃な大きさに切り分け、その内の1つを口に放り込んだ瞬間、美味しさのあまり目の前の世界が変わったように感じる。
初日の高級和食屋で、夕食にきつねうどんと天ぷらを食べた時に感じた懐かしさと感動を覚えた時とは、また違った感覚であった。
しかし、どちらにも共通するのは、美味しすぎて幸せであると言う点であろう。私自身が、日本人だった前世を持つ特殊な存在であるから、尚更その感情が強い。
出来立てで熱かったけど、それは私の食欲を止めるブレーキにはなり得ない。作法云々とか気にせず、次々に口の中へと放り込んでいく。
一応、中断した動画撮影は料理が運ばれてきた瞬間に再開していて、撮った動画は各種SNSのアカウントを作った後、本矢首相に事前に伝えた上で投稿する予定でいる。
これを見て、少しでも私に潜在的な恐怖を抱いているであろう人々に、好印象を持ってもらえれば嬉しいとの考えから、行うのだ。
(……)
ない方が良いのは言わずもがななんだけど、全員が好印象を抱かないことなんて当たり前だし、ある程度私への誹謗中傷が来る事だって想定済みだ。
今まで、祖国に原始的文明の生命体扱いされてきた人々と沢山関わってきたけど、私やモドの乗員に対する誹謗中傷や罵詈雑言がなかった星なんて、全くない。
何なら、変わり者の私ですら交流に匙を投げざるを得ず、女帝陛下に報告した瞬間に穏健的な交流は不可能と認定、然るべき部署に通達が行く程に全体が酷い星も少ないながらあったのだ。
それに比べれば、否が応でも大したことないと認めざるを得ないだろう。
勿論、誹謗中傷や罵詈雑言は人を精神的に殺しかねない刃であるから、それと比べなければ大したことはあると断言出来る。
(これ、死んだら絶対地獄行きだよなぁ……私)
ちなみにだけど、その星は惑星間弾道亜空弾を搭載した宇宙軍艦隊により、片手間で占領されて終わったと、3日後くらいに女帝陛下から聞かされている。
今でも、当時の私の振る舞いはかなり悪かったのではないか。最適な行動を取れていれば、少なくともああならずには済んだのではないかと、そう思う。
「このピザ、とっても美味しい……! ポテトとハンバーガーも一口……あっ、はふっ、ふーっ……こっちも美味しくて、頬がとろけそう!」
「おぉ……何と言う食べっぷり、作った身としては嬉しいぜ。しかし、流石は宇宙人、地球人とは身体の構造がまるで違うようだ」
「魔翼族って、必要なエネルギーが他種族と比べてかなり多いんです。身体の軽量化と飛行に耐え得る身体強度を両立させつつ、魔力を燃料として飛ぶ力を得た弊害だと学びました。まあ、それでも抑えなければ、私は大食いな方ですけど!」
「なるほどな。しかし、消費するエネルギーが多くとも、生身で空を飛べるとは、実に羨ましい限りだ」
「まあ、色々な面で応用が効きますからね。多用さえしなければ、便利ですよ。飛行能力」
少し気分が沈みかけた私だったけど、それも目の前に出されたピザやハンバーガー、ポテトを食べていく内にすぐさま元の気分へと戻っていく。
店長さんや店員さんが、私との会話に付き合ってくれるのも相まって、むしろ一層今が楽しくなっていった。
だからこそ、先程のような気分が少しでも落ちかねない事を考えるのは、少なくともホテルの部屋に居る時以外は基本的に止めよう。
今回は奇跡的に気づかれずに済んだから良いものの、下手に気づかれればピザやハンバーガー、ポテトの味が実はまずかったと思っていると、店長さんに思われる可能性を生んでしまうのだから。
「ところで、飲み物は要るかい? 水と一部のお茶、コーラを含めた各種ジュースしかないが」
「あー……では、りんごジュースをお願いします! 甘い飲み物も好きなんで!」
「おう! サイズは……愚問だったな。最大にしとくよ」
「はい!」
ちなみに、半分くらいを食べ終えた辺りで、何か飲み物が飲みたくなってきたんだけど、ちょうど良いタイミングで店長さんが聞いてくれたため、りんごジュースを選ぶ。
モドの船内食堂ないし祖国に居る時は、もっぱら水かお茶もどきばかりを飲んでいて、日本に来てからも緑茶やほうじ茶を筆頭とした甘くない飲み物ばかりを味わっていた。
他の甘い飲み物も良いけれど、やはり飲むなら前世で1番お茶以外で好きなりんごジュースが良い。
今日のお昼は、日本的感覚から見れば健康的とは言い難いけど、これはこれで実に楽しくて幸せな一時でもある。
魔翼族的にも大食いではあるものの、まだ種族特有の過剰エネルギーの魔力変換・放出プロセスでどうにでもなる領域なので、食費云々以外はさほど問題ないと言える。
間食も含めてこの量ともなれば、流石に支障をきたすとは思うけど、怖いので試す気にはならない。
「はいよ、お待たせ!」
「店長さん、ありがとうございます!」
だから、店長さんが持ってきてくれた凄い量のりんごジュースも、何の躊躇もなく私は喜んでがぶ飲みする訳だ。
(あー……うん。まあ、そりゃね)
なお、この際に大林さんが「うわぁ……」とドン引き、店長さんや店員さんすら苦笑していたけれど、当然の事なので気にしていない。
それよりも、残り半分となった料理群を少しゆっくりめに味わい、ここでの昼食をより楽しむ方向に舵を切る方が重要だと、ピザを頬張りながら心の中で私はそう判断した。
本小説の舞台に関して、少し迷いがあります。どちらが適切だと思いますか?
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