TS転生軍人少女、『太陽系』をもらう 作:ひのかぜ
「とうちゃーく! 皆、お疲れ様」
『ええ。お疲れ様です、イラ様。とは言え、この程度ならなんてことありませんけど』
太陽系第3惑星【地球】の衛星で、そこに住まうありとあらゆる生命にとってなくてはならない存在である【月】。
実際に地球の人間が降り立った事もある最も身近な天体でありながら、コストの面を筆頭に様々な問題から未だに殆んど手付かずらしいこの場所に今、あらゆる貨物を載せた輸送艦と共に私は降り立っていた。
地球に降り立ち、休暇の限りを尽くしている私の大親友たるチェイスが、私に地球旅行を楽しむ許可を出してくれたからである。勿論、チェイスと一緒に。
技術面を筆頭にいくつかの面では、リーガル大帝国はもとより交流のある星間国家には遠く及ばない。言い方は悪いけど、未開の地と言う。
無論、やるつもりなんて微塵もないけど、武力では鎧袖一触に蹴散らせる程度だ。
しかし、星の環境はかなり素晴らしいもので、文明自体も未開の地に分類される文明圏の中では相当上位であり、宇宙進出の黎明期には達している。地域によってバラつきはあるものの、治安もそこまで悪くない。
「まあね。戦争でも他の仕事ですらない、そんな船旅だったから」
『はい。とは言え、我々は貴女と輸送艦の護衛という仕事を遂行してはいますが……実質、休暇みたいなものですね。実に気楽なんで』
「私のためだけにありがとうね、軍人さん」
『どういたしまして』
だけど、こと各種娯楽文化に関しては全体的に非常に優れている上、一部国家の娯楽文化はもはや優れているとの言葉では表せない程。それだけで、存在価値を見出だす事が可能と言えよう。
チェイスが休暇中に行っている、ないしこれから行く日本・アメリカ・イギリスなんか、その最たる例だ。
偶然か必然か、娯楽作品で実際に星間国家で広く使われている技術の論理がそのままで載っていた時は、この3ヵ国の人々の想像力に恐れおののいたもの。
もしかしたら、深く探れば核心技術の論理がそのまま、ないし一部正解の状態で載っている娯楽作品だってあるかもしれない。下手すると、更に未来の技術のヒントがどこかに載っている可能性だってある。
これ、作品の原作者とか編集者を連れていって、色々勉強とかさせたりしてから技術部に放り込んだら、更なる大帝国の発展に繋がるかもしれない。
(太陽系があるの……リーガル大帝国の領宙内で、本当に良かったかも)
護衛艦の軍人さんはもとより、搭乗している凄く優秀なメカニックの魔翼族さんが、「地球人のポテンシャルは、他の未開の地の人間を凌駕している」だとか、「やはり、未開の地と表すのは少し違うかもしれないねぇ」と評すくらいだから、特異なのだろう。
基礎的な技術を提供しさえすれば、宇宙史の観点で見たらとてつもない早さでそれを吸収して発展、ついでに統一国家を形成させて、最初期の星間国家まで駆け上がっていくと見て良さそうだ。
でも、そのせいでせっかくの娯楽文化が衰退してしまうかもと考えると、何だかとても勿体ない。だからどうか、地球人はこのまま優れた娯楽文化を絶やさないように、頑張って欲しいな。
「さてと。チェイスから連絡来るまで暇だし、地球でも覗いてみようかな……うん。無人機に空間波動中継器乗っけて、ステルスフィールド展開っと。よし、後は――」
「イラさん~、何してるんです?」
「わぁっ……えっと、地球の自然とかをリアルタイムで見るための中継器飛ばしたんだよ。フォーリーも見る?」
「一応見てみます。でも、未開の地に面白いところってあるんですかねー?」
「きっと面白いよ。少なくとも、宇宙にある有象無象とは格が違うかな」
「ふーん……」
「駄目なら駄目で、
なんて事を考えながら、暇潰しのために地球の様子でも見ようかと思って準備していた時、お世辞にも美味しいとは言えない
全く警戒していなかったのと、彼が魔法に長けた種族である点があっても、一切の気配も魔力も音も感じさせないのはかなり異常。よっぽど、私がこれらの思考と準備に夢中になっていたと言う事だろうか。
まあ、それでも誰かとの会話中だったり、戦争中とか緊急性の高い何かが起きている時じゃなければ、別にそれ程気にする必要もない。
それよりも、何とも言い難い味のする栄養補助食をボリボリ食べ続けている方が、気になって仕方ない。
いやまあ、安価で大量生産出来るものだから良いものの、よくもまあ好んで食べれるものである。
多分、地球人がこれを食べたらあまりの不味さに吐き気を催し、2度と口にしたくなくなるに違いない。まあ、色合いからして何をトチ狂ったのか真っ青だし、手に取ろうとは思わなそうだ。
私も戦争時に良くお世話になっているけれど、味は百歩譲っても、色合いだけはもう少しマシな色にしても良かったのではなかろうか。
「前言撤回。確かに、色々と面白いものが地球には沢山ある。けど、どちらかと言えばインターネット見てた方が僕は面白いや。それにしても……本当、どうして魔法が全く使えないのに、ここまで凄い【魔法】が想像出来るんだろ?」
「本当だよね。でも、これ見てチェイスが地球にはまったのも理解出来た。もしかしたら、女帝陛下でさえも虜になるかも?」
「うんうん。十分あり得るよ、それ」
ちなみに、最初はあまり地球に興味を示していなかったフォーリーも、私が地球の風景やインターネットを通したアニメなどを、護衛艦の乗員室のモニター越しに見せたところ、先程までのそれは何だったのかと言いたくなる程に、態度が一変した。
まあ、私も最初はどちらかと言えば興味ない方で、似た感じで興味を持った質だったから良く分かる。自分よりも優れたものに触れた感覚を、未開の地扱いのこの星で味わうなんて予想外だっただろうから。
(この様子だと、私も普通に暇は潰せそうかな)
この瞬間、最初の目的地たる日本に降り立つ時が、より一層楽しみになっていくのであった。
本小説の舞台に関して、少し迷いがあります。どちらが適切だと思いますか?
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お好きな方で